[作成:吉田惠吉(「高屋敷の十字路」管理人)]


目      次
00.はじめに
00s.図書館と情報機器
01.図書館における情報サービス
02.図書館の情報サービスの位置づけ
02s.データベースと図書館サービス
03.図書館の情報サービスの種類
03s.インターネットの利用と検索サービス
04.情報サービスに必要な情報源とそのコレクション
04s.コンピュータ通信ネットワークと情報サービス
05.情報サービスの基盤とレファレンスの過程
06.資料(情報)源の使い分けと情報サービス
06s.ネットワーク・アプリケーションと情報サービス
07.情報サービスにおける資料(情報)源の活用
08.情報サービスの担い手と図書館

00.はじめに

 いざというとき人々は何をどう探し求め(ようとし)たか、東日本大震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県における検索ログデータを対象に検証した「Yahoo!検索 スタッフブログ」の考察「東日本大震災で被災地のひとは何を検索したのか」が興味深い。
 被災した3月の11日から16日にかけて、被災3県から常時多く残された検索語は、「県庁」「市役所」「役場」をはじめ、地元放送局や新聞社、県教育委員会に学校、県警や各警察所、「道路関連」、水道・ガス・電気などのライフライン、「地元主要交通機関」等に集中していて、このような言葉に関連するサイトは危機災害時の情報源として大きな期待が寄せられ、積極的な情報の配信が求められていたようだ。
 ところが、東日本大震災では情報を求めるサイトにアクセスできないという事態が起き、必要とされる情報を配信するということに大きな問題が起きていた。災害発生以降のアクセス集中による大きな負荷がサイトへの接続を困難にしただけでなく、サイトそのものが甚大な被害にさらされ、情報の収集や更新ができなかったり、インターネットの設備や環境そのものに起因して情報提供ができないトラブルが起きたようだ。
 東日本大震災で生じた「情報空白」では、通信・接続手段が欠落しただけでなくメディアそのものが欠如したことがわかる。そして、危機的な状況を乗り切る接続手段としては、光ファイバー、高速無線インターネット、そして衛星ブロードバンドの順で、通信手段としては、音声電話、携帯電話メール、スマホ一般メール、ソーシャルメディアの順で、それぞれ機能したようだが、実際にどれくらい被災者の〈いま・ここ〉の「安否情報」から「緊急生活情報」までカバーできたのだろうか。また、検索ポータルサイトが「公共性の高いサイトに関してキャッシュを行う」というかたちで災害時の情報を集約していた働きも見落とせない。検索ログデータに「図書館」という言葉はなかったようだが、被災者から検索の対象となった「県庁や市町村の役所のサイト」で何が見つかり何が見つからなかったか。
 博物館、美術館、文書館、公民館などとならんで東日本大震災で被災した図書館の復興をめぐって、「図書館は、単に本を蔵書するだけでなく、その土地の文化や、住む人々の生活の具体的な支援に役立つ拠点とも思われます」(福島大名誉教授今野順夫)と語られたり、「平常時から非常時への備えを行う恒久的な機関・機能を常設することを提案」(アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表岡本真)されたり、従来の図書館への「現状復帰」がほんとうの復興と見なせるかどうかが問われることになった。
 それぞれの図書館への思いを胸に富短の司書課程を選択した履修生が授業に臨んでいる教室の天井には、あたかも「授業料」と「司書資格」を「商品交換」するみたいな経済活動の現在が投影されている。親のスネをかじったお金と資格取得の有用性を取り替える、交換価値と使用価値のやりとりがうまくいけば、富短で司書資格取得した卒業生を象徴する価値が派生する。
 商品交換の網の目で三位一体となって価値情報が交叉するコミュニケーションの回路を模写するような、消費資本主義社会の情報のハブとしての拠点のひとつの図書館では、集められ整理された資料の提供が情報サービスの作法になっている。
 図書館が受け入れた資料の組織化によって所蔵資料の情報次数を高次化した2次情報データベースをOPACで公開し、利用者が求める資料の書誌・所蔵情報の情報次数の低次化へと導く。あるテーマに関する高次情報資料の参照から始まる情報次数の階段を転ばぬように下りるのを助け、利用者を1次資料へと導くルートが図書館のパスファインダーに書き込まれる。事例として「東日本大震災[福島第一原発事故]について調べるパスファインダー」を平成23年度の情報サービスの授業で作成してみた。
 3.11以降、原子力発電所に関わる言論がかまびすしくなる一方で、原子力についての本当の知識を全くといっていいほど持ち合わせていない現状があらわだ。
 科学や技術の進歩が暮らし向きを良くするだけじゃなく、同時に普通の生活者に多大な知的な営みを要求してくる。誰かに「わかりやすく説明してください」と言って済ませられなくなった「知識社会」における情報サービスの作法とは?
 「情報爆発『読売新聞』2010年3月17日〜5月12日 第1〜8回連載」(参照:「図 情報爆発」@『エンタープライズ2.0とサーチ』IT Leaders)とまで呼ばれるまでに情報量が増大し続けている現在、これまで「情報資源」の組織化とその利用を図ってきた図書館は、これからの「情報サービス」をどのように展開し得るか?

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00s.図書館と情報機器

 平成15年度から「情報」が高等学校の必須科目になったようだが、「情報機器」が図書館で使われはじめたのはかなり前からのことだよ。「公共図書館の設置及び運営上の望ましい基準」[平成13年7月18日 文部科学省告示第132号]の第2章の3項で「都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク」として「都道府県立図書館は、都道府県内の図書館の状況に応じ、コンピュータ等の情報・通信機器や電子メディア等を利用して、市町村立図書館との間に情報ネットワークを構築し、情報の円滑な流通に努めるとともに、資料の搬送の確保にも努めるものとする。」と示されていた「基準」が、平成20年6月の図書館法改正後の「「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についての報告案」(文部科学省)において、「情報化の進展に伴い、インターネットやウェブサイト上で提供されているデータベース等のネットワーク情報資源が多様化・量的増加され、図書館において、ネットワーク情報資源の活用の重要性が増している。そのため、従来の図書館資料とネットワーク情報資源との併用により、豊富な情報の提供が可能となる。」ような「図書館におけるネットワーク情報資源の活用」として、「情報化に対する図書館の対応、とりわけ、ネットワーク上の情報(一次情報を含む)に対する図書館のサービスの在り方について、図書館は、読書環境及び情報環境の整備の双方を行う必要がある。」から「情報環境の整備については、様々な情報を自宅から入手可能となるよう、ホームページの充実や、電子メールによるレファレンスサービス、メールマガジンの配信等も充実すべきである。」とする「紙媒体と電子媒体の組合せによるハイブリッド図書館 の整備」を掲げた「提言」のように見直されているが、実際のところ図書館の現場ではどのような展開を見せているのだろうか。
 図書館で入館者がとりあえず何か調べようとすると館内のOPAC(オンライン閲覧目録)その他の「情報機器」を使いこなさなきゃいけないというか、とにかく使えた方が何かと便利というのが図書館利用の現状になってきているね。
 大学図書館の所蔵資料(情報)もずいぶん多様化していて、たとえば「コレクション」(愛知淑徳大学図書館)などを見ても、いろんな資料(情報)が閲覧できるようにさまざまな「情報機器」が導入されていることが想像つくよね。
 情報サービス面だけじゃなく、図書館の資料(情報)の保存といった面でも、「電子情報の長期的な保存と利用」(国立国会図書館)に見られるように、増え続ける電子情報を保存していつでも見られるようにするためにも、いろんな「情報機器」からなるシステムが必要になってくる。
 自宅や勤め先から直にインターネット(「インターネットの概念図」[PDF])で図書館にアクセス[「ホームページへの大量アクセス事件 岡崎市立中央図書館の弁明に異論相次ぐ」(J-CAST)岡崎市立中央図書館事件(ウィキペディア:フリー百科事典)]できることも当たり前というか、図書館に足を運ぶ人たちだけが利用者じゃないということになってきたのも、図書館の現場にいろんな図書館・情報システムが導入されそのシステムを構成するさまざまな機器が動き続けているからだね。
 今どきフツーの図書館利用者も少しは図書館で使われている情報機器について知っておいた方がいいけど、これから図書館で働こうとする人にとってはそれこそ「必須科目」になってしまっている。[「図書館システムを取り巻く課題と今後の展望」[PDF](三菱総合研究所)]
 手書きだったカード目録の情報が1970年代から、「MARCとは」(TRC)としてコンピュータで扱えるようになったものだから、それを利用したOPACシステムが構築され、ネットワーク(「ネットワークの基本の学び方」小林典子@NEC Eラーニング事業部)を利用して館外からも本や雑誌を探せるようになったのだ。
 本などで図書館に関する考え方を眺めると、「図書館」学から「図書館・情報」学へとシフトしてきているように見えるが、この「図書館」と「情報」(「情報の定義」高木義和)の間に挟まった「・」(中黒)がどうやらコンピュータという名前の“ブラックボックス”のように見えてくることがある。
 図書館の本や雑誌に関する書誌・所蔵情報を調べるOPAC(「NDL-OPAC国立国会図書館蔵書検索・申込システム」で関心のある本や雑誌の「書誌情報」を確かめてみよう)は、以前はカード目録に登録されていた、請求記号、タイトル、責任表示、出版地や出版者、出版年、形態、ISBN(国際標準図書番号)などのデータを、「ディジタル」(IT用語辞典)情報として表現できるようにしたものだ。
 『目録システム利用マニュアル 第5版』(国立情報学研究所)の付.B.2「図書書誌レコードの仕様」を見たらわかるけど、文字列の項目や数字(整数)の情報項目が幾つも集まって、ひとつの「本」の目録情報ができあがっているね。このように、複数の情報項目が集まった情報のことを、複合情報またはレコードと呼んでいる。
 書誌レコードのフィールド別データ入力可能文字数が「バイト」(Wikipedia)数で示されていたようだけど、コンピュータの中で情報はどのような形になっているのだろうか?

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01.図書館における情報サービス

 インターネットを利用して各国の図書館にアクセス(「Libraries in the World 世界の図書館 (筑波大学附属図書館)」)できるようになってきていますが、国内にはどのような図書館があり、それぞれが収集・蓄積した資料(情報)を使ってどのようなサービスを実施しているか眺めてみよう。
 日本には自治体に設置された公共図書館、大学に基盤をもつ図書館、企業や官庁、博物館、研究所や公益法人に所属する図書館(専門図書館)などがありますが、「日本の図書館統計」(日本図書館協会)を見て、近年の国内の公共図書館や大学図書館の数や規模のおおよそを掴んでおこう。それから専門図書館協議会の「専門情報機関の現状」のページや、「ACADEMIC RESOURCE GUIDE リンク集-専門図書館」を見ると、さすが専門を名乗るだけあって、さまざまな図書館があるようだ。これまでに皆さんがどんなふうに利用してきたのか、ちょっと気になる学校図書館については、「平成22年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果について」(文部科学省)を見ておきたい。最後に、国立国会図書館というのが控えているんだけど、どれくらい知っていたかな?、というようなところから、図書館の情報サービス@インターネット・ツアーを始めよう。耳慣れない言葉や略語、分からない図書館業界独特の言い回しに出会ったら、あいにく手元に「図書館用語集」がなくても、オンラインネットワークが使えるようだと「図書館用語集」(四天王寺大学)などで調べられるからね。
 ところで、5タイプに別れそれぞれの図書館がサービスしている「情報」って何だろう。そのものズバリの「情報の定義」ってのを見比べても、人それぞれの見方が交差するあたりで、考えながら見定めていくしかないようだ。神奈川の高校生が、情報やコミュニケーションの変遷について、歴史的に眺めている「Hand Down To The Future」を読んだり、皆が何を手がかりにある事柄を見つけだして物事の判断に役立てたりしているか、日常の行動をそれぞれ振り返った手触りから「情報」の目鼻立ちを掴んでみよう。
 それぞれの図書館において、さまざまな情報(資料)が収集され、整理作業によって組織化され、蓄積されたコレクションによるサービスが行われているが、それらに携わることによって生計を営む業種が成り立つに至った、日本の産業構造が高次化した現在を、“消費社会”と言ったり、“情報社会”とか“ICT社会”とか呼んだりしている実態は、どのようになっているのだろう?
 ひとつの見方として産業構造がどうなっているか、「人口動態と産業構造」(The World Compass(三井物産戦略研究所機関誌)2005年7-8月号掲載)あたりを見ると、第3次産業が主体になった社会に生きる人々に対応できる、図書館の情報サービスのこれからを考える手がかりがありはしないか。
 分業化し対象化された労働が場所を変更する交通の分野における技術革新によって、第3次産業にたずさわる人たちがもっとも多くなり、肉体労働と精神労働の区別が曖昧になった「高度情報化社会」において〈情報〉はどのように位置づけられるか?
 コンピュータ通信ネットワークによるダウンロードのように、情報・文化・教育など純粋な情報の形でコンテンツをやりとりできるようになり、「歴史から見る次世代産業−第四次産業としての「創造産業」」(読売ADリポートojo 2005年7-8月号掲載 連載「経済を読み解く」第59回)に見られるように、「情報」の形で価値を残す第4次産業が具体的になり、第5〜n次産業が予測される日本の高次産業社会のイメージを射程に入れた図書館の情報サービスのこれからが問われるようになってきている。
 アパート探しや、見たいもの、聴きたいもの、読みたいものを探すとき、何かを手がかりにしてますね。新聞の不動産広告だったり、CDやDVDのタイトルだったり、漫画家の名前だったり、ベストセラー本の書名だったり、とにかく求めている本体の題名や、書いたり歌ったりした人の名前などで探していないかい。
 いろんな「情報」の本体がそれぞれ具体的な形になって流通している媒体、ここでは新聞や電子メデイアや本の形をした資料の姿をしてますが、それらを識別したり評価するのに共通する基本的な仕組みはどうなっているのだろう。
 皆さんが、いま読んでるウェブ・ページも「情報」の入れ物のひとつだけど、「「図書館メディア」の基本形と情報(資料)次数」を説明している図に見られる三つの要素に注目してくれると、説明しやすいのだが。
 このシンプルな構造に基づいて、実際に図書館で「1次文献」と呼ばれている資料の識別や提供サービスが行われているだけじゃなく、これから理解してもらう2次や3次といった資料(情報)サービスの仕組みも、どこまでも増え続ける1次資料それぞれの三要素からさまざまな手がかりを取り集めることによって発展しつつあるっていうこと、これが「情報」を見つけだすポイントだからね。
 “Header”の部分には、題(タイトル)名や著作(責任)者名が含まれ、それぞれの固有名を1次資料(情報)を識別する手がかりとして取りだし書誌事項を加えて編集したものが、題(タイトル)名や作(責任)者名で調べる索引としての2次資料(情報)になるんだ。
 “Body”が本体で、資料(情報)の中味というか内容そのものの主題を要約して「抄録」に取りまとめたり、その主題を表すキーワード(件名)を切り出すか与えるかして、固有の主題から1次資料(情報)を識別できるように書誌事項を加えて編集したものが、それぞれ抄録索引やキーワード(件名)索引と呼ばれる2次資料(情報)として、とくに医学・生命科学や化学分野のなくてはならない検索ツールとして使われている。
 “Footer”の部分には、著作(責任)者が本体の作成にあたって、引用したり参照したりした文献のリストなどが含まれる。科学雑誌に掲載された論文の引用文献を編集対象とした、引用文献索引も2次資料(情報)のひとつとして、既知の文献に類似した最新の主題を扱った最新の「1次文献」の書誌事項を見つけだす手がかりにもなるんだ。
 この文献の基本形を、さまざまな形をした資料(情報)に共通した構造と見なせば、2次資料(情報)の本体にあたるのが、「1次文献」の書誌事項を集めた情報だということも分かるよね。では、いろんな2次資料(情報)の書誌事項を集めた情報を内容とした資料(情報)はなんと呼べばいいかな?
 「1次文献」を構成する三つの要素からその識別子を取りだし、それぞれの書誌事項を加え編集加工したのが2次資料(情報)だから、2次資料(情報)を識別するために編集加工したものは3次資料(情報)、ということになるよね。
 東日本大震災や福島第一原発事故によって被害を受けた図書館の復興作業が続けられていますが、被災直後から情報サービスをめぐるさまざまな関連情報源が現れ続けています。具体的にどのようなものが参照できるか、「東日本大震災[福島第一原発事故]について調べるパスファインダー」を見てみましょう。おおよそリンク先の情報次数によって、「1.東日本大震災[ならびに福島第一原発事故]に関連したキーワードの参照情報[高次情報]」、「2.東日本大震災[ならびに福島第一原発事故]に関する情報源について編集・加工された新着参考調査情報[2次情報]」、「3.「過去の災害を調べる(地震・津波・火山噴火・水害等)」(リサーチ・ナビ@国立国会図書館)参考史・資料[2〜3次情報]」、「4.雑誌・新聞等掲載関連文献を調べる情報源[2次情報]」、「5.関連Web情報源」そして「6.震災等に関連する図書館のレファレンスサービス支援情報源」の6グループに仕分けました。各自のパスファインダーのテーマが決まったら、身近な図書館を出発点として、必要な時に適切な資料(情報)が探しだせる水先案内として役立つ「パスファインダー」(「パスファインダーのためのパスファインダー」嘉悦大学図書館)のひな形を期末までにまとめましょう。
 適切な調べ方――資料(情報)の特徴はどうなっていて、資料(情報)を見定めて所在を確認するツール(道具)をどう使い、資料(情報)を入手するにはどうしたらいいか――を知っていると、図書館業務としての情報サービス現場だけじゃなく、いろんな仕事の現場や実生活で調べなきゃならない場面でも何かと便利。
 図書館利用の現状では、まず冊子体あるいはそれ以外のメディアで提供されているさまざまな2次資料(情報)のフロアで、探し求めている資料(情報)の書誌事項を調べ、その所蔵の有無を確かめてから、目的の雑誌や図書などが置いてある所で現物を見つけだすまでの流れが、情報サービスの基本線なんだ。図書館が収集する資料(情報)の書誌情報と所蔵情報をコントロールし、そのコレクションにその高次化情報を付加するのが情報管理業務であって、それとは逆向きに、付加された高次化情報を低次化するように、利用者が求める資料(情報)にアクセスできるようにするのが情報サービス業務になるんだよ。どのように資料(情報)を、高次化したり、低次化したりするか、これこそが「情報」を扱うポイントだよ。

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02.図書館の情報サービスの位置づけ

 日々増え続ける一方の資料(情報)の中から必要なものをいつでも取りだせるようにしておく、なんて事はとても一人の手に負えないけど、社会的に解決できるように定められた、情報サービスに関する条文を見ておこう。
 公共図書館の情報サービスについては、「図書館法図書館法施行規則)」の第3条の3項や7項が該当するようだが、具体的にどのようなサービスを行うかは、それぞれの自治体にまかされている。平成20年の法改正で削除された第18条に基づく「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(文部科学省)があって、「「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についての報告(案)」(平成20年/文部科学省)の「これからの図書館サービスに求められる新たな視点」などから、公立図書館の情報サービスにかかわる指摘が読み取れた。この「報告(案)」に先だつ作業として、情報にかかわる社会状況や制度的変化にともなう新たな課題に図書館がどう対応すべきか、「これからの図書館像−地域を支える情報拠点をめざして−(報告)」(平成18年3月 これからの図書館の在り方検討協力者会議)における提言や事例から、新たな情報サービスの見通しが検討されていた。
 平成24年12月19日付けで、図書館法(昭和25年法律第118号)第7条の2に基づく「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(文部科学省告示第172号)が告示され、同日から施行されたが、平成13年に「望ましい」とされた「基準」が平成24年にどう変わったか「新旧対照表〜改正後(平成24年文部科学省告示第172号)/改正前(平成13年文部科学省告示第132号)〜」(生涯学習政策局社会教育課)で確認できる。
 耳慣れない「レファレンスサービス」や「レフェラルサービス」、そして「情報の提供」といった事柄を受け、それぞれの自治体の図書館設置条例のもとに、例えば「成田市立図書館の管理及び運営に関する規則」の第2条の(4)、(7)および(8)のように、情報サービスの項目を定めている公共図書館もある。図書館の情報サービスの目玉とされるレファレンスサービスとはどうのようなものか、都道府県の図書館サービスをバックアップしている「国立国会図書館リサーチ・ナビ」の「『「調べ方案内」利用ガイド』」にアクセスして、実際に試してみよう。
 このように位置づけられているレファレンスサービスがどのように研究されているか、「レファレンスサービスの新しい潮流:研究文献レビュー」(「カレントアウェアネス」No.283 2005.3.20)で、ネットワーク環境下での新しい動向もうかがえるね。また、地域の情報サービスの利用状況については、「地域情報化に関するアンケート調査結果について」(北陸総合通信局 平成18年3月22日)によって、もっとも活用されている「地域公共ネットワークの利活用」として、「図書館の蔵書検索・予約」が約80%で1位、となっていることがわかる。いわゆるICT技術の進展を踏まえて可能となる、具体的な図書館の情報サービスの在り方については、「地域の情報ハブとしての図書館−課題解決型の図書館を目指して−」(平成17年1月28日 図書館をハブとしたネットワークの在り方に関する研究会)において、地域の情報拠点としての公共図書館ネットワークの形成を情報基盤とした、いろんな情報提供とさまざまな利用者サービスがイメージされている。
 平成16年度から、「国立大学法人法」等の施行に伴い、その第6条で「国立大学に、附属図書館を置く。」と定めていた「国立学校設置法」が廃止されたが、大学図書館の情報サービスにかかわる規定としては、「大学設置基準」(昭和31年10月22日/文部省令第28号)の第38条の2や4を見るべきだ。「短期大学設置基準」(昭和五十年四月二十八日/文部省令第二十一号)の第29条でも、同じように書かれているね。
 1990年代の学内LANの整備拡充とインターネットの普及にともない、各大学図書館の情報サービス拡充の指針となったのが、「大学図書館機能の強化・高度化の推進について(報告)」[平成5年12月16日 学術審議会学術情報資料分科会学術情報部会]に続く「大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について(建議)」[平成8年7月29日 学術審議会]ということになる。
 「大学図書館と学内及び学外との連携協力」によりそれぞれの大学が所蔵する情報資源の有効な活用システムを整備し、「ネットワークと電子化情報の活用」を推進し、大学内外の「新しいニーズへの対応」を目指して、「大学図書館のサービス機能を強化・活用する必要がある」というように、「学術研究情報流通体制の整備の一環として」の「学術情報システムにおける大学図書館の役割」を持ち出してきているあたりが、公共図書館の場合とは大きな違いじゃないかな。ひき続き、そのような方策を強力に推し進める一手段として、大学図書館の電子的機能の充実と強化が推進され、現在に至っている。
 電子的な図書館の情報サービスを支える、「学術情報の流通基盤の充実について(審議のまとめ)」[平成14年3月12日科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会情報科学技術委員会 デジタル研究情報基盤ワーキング・グループ]において、学術情報の電子化という状況を踏まえ、当面の具体的方策として掲げられた「電子ジャーナル等の体系的収集」や「大学等からの学術情報発信機能の強化」などが、大学図書館の情報サービスの課題とされ、それに続く「学術情報発信に向けた大学図書館機能の改善について(報告書)」[PDF](平成15年3月17日 文部科学省研究振興局情報課)によって具体案が示され、その後「SPARC Japan: 国際学術情報流通基盤整備事業」(国立情報学研究所国際学術情報流通基盤整備事業推進室)といったプロジェクト事業も進行している。
 そのほか大学の中の図書館をめぐる新しい動きについては、「【討議資料】大学図書館をめぐる動き」[PDF](大学図書館問題研究会)などから、どのような議論が交わされてかうかがい知ることもできる。
 大学図書館の法的根拠そのものについては、「国立大学図書館の管理・運営に関するガイドブック」(平成12年4月/国立大学図書館協議会図書館組織・機構特別委員会)の第1章第1節のような位置づけができなくなり、例えば「附属図書館あり方懇談会報告書」[PDF](長崎大学附属図書館)で見られるような事柄が検討されてきている。これまで大学にとってなくてはならないものとして位置づけられてきた大学図書館のそれぞれが、現状では「東京大学附属図書館事務部組織所掌事務規程」に見られるように、事務分掌として情報サービスを位置づけている。
 国であれ、地方自治体であれ、学校法人であれ、設置者がどのように変わろうが、図書館は“資料(情報)を蓄積し流通させる”という共通の基盤にたつことによって、公的な資料(情報)へのアクセスを保証している一例として、「著作権法」第31条の「図書館等における(著作物の)複製」という条項があることも知っておこう。
 法的な位置づけのもと、設立主体を異にする図書館活動における情報サービスをどう評価するかについては、高次産業社会におけるネットワークサービスの高度化という指標も、組み入れなければならない状況になっている。
 小学校、中学校、そして高等学校には「学校図書館を設けなければならない」と定めている「学校図書館法」も、その改正に際し、学習情報センターとしての機能を推進し、情報機器の整備に努めることなどが明文化されていたんだよ。皆さんが通った現場は、いまどう変わりつつあるのだろう。
 国立国会図書館の、他の図書館や一般大衆に対する情報サービスについては、「国立国会図書館法」の第21条に定められている。国内の官庁の図書館、地方議会の図書室及び民間企業、各種団体、大学、調査研究機関の専門図書館が行う情報サービスについては、それぞれの所属組織が定める諸規則に従っている。
 法的な約束事に先立って日々情報が飛び交っているソーシアル・ネットワーク的な現実に取り囲まれつつある「公共図書館における情報サービスの課題と問題点」(根本 彰 )には、3.11を経験した知識社会における地域の情報のハブとして全天候型の働きも欠かせない。

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02s.データベースと図書館サービス

 友だちの住所や電話番号、それからメールアドレスなんかをどんなふうに記録しているかな。住所録や携帯電話に記録したり、どんなふうに見つけやすく整理して個人データとしているかをヒントに、「データベースの概要」(Four-Dimensional Data, Inc.)について、図書館を例に、データベースシステムの特徴や代表的なデータモデルとリレーショナル型データベースを中心に学んでおこう。
 図書館の目録データ(目録データベースの構築とビブリオグラフィック・ユーティリティとしての「NACSIS-CAT:国立情報学研究所(NII)目録所在情報サービス」)も、単に蓄積しているだけじゃなく、多様な目的にそって必要な部分が取り出せないと「情報」として役立たない。ある主題内容について調べるには、さまざまな媒体の1次情報から切り出された2次情報や3次情報が編集・加工・蓄積され、利用者が書誌事項やキーワードを頼りに、効率よく1次情報が得られる目録情報データベースが維持されていないとね。
 図書館にかぎらないが、蓄積したデータから、必要な事柄を取り出すことを検索といって、検索しやすいように効率的に蓄積されたデータのことを「データベース」[の使用例とその技術](教えて!goo)といっている。
 目録データベースが日々更新されているように、データを入力したり、データを操作したりできるプログラムも欠かせない。
 たとえばMARC(「わが国における書誌情報データベースの標準化と共用化について−公共図書館での活用を中心に−」斎藤誠一)のように、コンピュータが処理できる形式のデータとして記録しておくと便利なものが、身の回りに沢山あるようだけど、それぞれが「データベース基礎中の基礎」(藤本 壱)から導かれ確立されたデータの処理方法により、一定のルール(「テーブル(表)」)に基づいたデータの整理の方法をデータモデルとするリレーショナルデータベース(「データベースとは」BitArts)として運用されている。
 複数のテーブル(表)を関連づける、プライマリキーによるリレーションの作成によって、テーブル(表)に対するさまざまな操作が行えるから、いろいろな観点から眺めたテーブル(表)を参照できることになり、汎用性や拡張性の高いデータ処理が可能となったのだ。
 膨大なデータを扱ったり、同時に複数の利用者がアクセスしたりするような本格的なデータベースを作成し、運用するには、データベースを管理する専用のソフトウェアが必要になる。このようなソフトウェアのことを、データベース管理システムといっている。
 図書館の蔵書管理システムを例に、その特長をあげてみよう。
(1)「データ操作言語」によって「指示」をあたえ、ある条件のデータを特定して書き換えられるから、個々のデータの書き換え作業をまとめて行える。
(2)「データのあるべき範囲、条件」などを指定して、範囲や条件を外れたデータの入力に対して警告を発し、正しいデータ入力でないと受付けないようにできる。
(3)検索にあたって物理的なデータ構造(ファイル構造)に依存する指示を行わないから、検索のためのユーザインタフェースプログラムを変更する必要がなくなり、「データ独立性」が保たれる。
(4)複数のコンピュータ上に分散させておいてあるデータを、あたかも一つにまとめておいてあるかのように扱える「分散データベースシステム」上で、利用者は、データの所在を気にすることなく、データの追加や削除、更新を行える。
(5)データをいくつかにわけることによって、「データの重複」が起きないようにすることにより、なんらかの変更が必要となった場合も、容易にすばやく対応できる。
(6)ネットワークを介してやってくる、時々刻々と変更が加わる貸出・返却情報などの同時アクセスで不具合が起きないよう、あるデータは同時に一人のみが見ることができる(あるいは変更できる)、という設定が行える。
 収めるべきデータの特徴をよく理解し、これらの機能や特徴を活かした、データベースの設計や構築ができていない図書館のデータベースシステムは、いつまでたっても扱いにくく、拡張性のないシステムとして取り残されてしまう。
 構築したいデータベースシステムの「設計図」ができあがったら、それをコンピュータ上に実現するために、キーボードを叩いたり操作して、設計図(スキーマ定義)をDBMSに教えてやらないといけない。そのためにデータ定義言語を使用し、できあがったテーブルにデータを入力するデータ操作言語を使用することになる。
 リレーショナルデータベースの、データ定義言語及びデータ操作言語の標準ともいえる、「SQL(Structured Query Language)」(Four-Dimensional Data, Inc.)によるデータベース定義の方法がある。
 DBMSとSQLを使い、データベースシステムが構築され、データを入れて検索ができるようになったとしても、そのまますぐにデータベース利用者がSQL文を考え、キーボードで打ち込んで使えるというわけにはいかない。そこで、利用者にとってわかりやすく使いやすい仕組みが必要になる。
 ユーザインターフェースがそのような働き、利用者の要求をSQL文に変えてDBMSに送ったり、その結果を利用者にわかりやすく見せたりすること、を実現させてくれないといけない。
 図書館ではそのほかに、貴重書のコレクションを画像化して検索できるようにしたマルチメディアデータベースシステム(「北方関係資料総合目録」北海道大学附属図書館)のように、書誌情報のような2次情報だけでなく、テキスト本文や画像のような1次情報そのものをディジタル化してコンピュータ内に収め、文中の任意の言葉で検索できる全文データベースシステムなども導入されている。
 それから学術雑誌の分野などでは、SGML(「全文データベースのための技術: SGML」(石塚英弘)による全文データベースに基づいた電子出版方式が採用され、出力は、印刷、CD−ROM、オンラインサービス等メディアに合わせて、後で指示できるため、複数のメディア文書の利用が効率的に行われている。
 インターネットをより有効なコミュニケーション手段として役立てるには、ネットワーク参加型アプリケーションの間でやり取りされる情報表現に共通なルールが必要とされ、「XMLとは」(WWW INFOMATION )Webページを作成する「HTML」(HTML 4仕様書邦訳計画)の問題点を解決するとともに、そのような目的に沿うものとして注目されている。

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03.図書館の情報サービスの種類

 これまで見てきたように法的な位置づけの違いがあるから、「デジタル・レファレンス・サービス実施館:Digital Reference Service (DRS)」の表のような、質問や利用の範囲も館種に沿ったものとなっている。専門図書館の場合も、「建設関連図書館利用規則一覧」のように、それぞれ設立母体によって違う。
 さて、レファレンスとは何ぞや?その例を「市川市立図書館 レファレンス事例集」を紹介している「レファレンスサービスとは」に見ておこう。また、どのようにレファレンス情報源が仕分けられているか、例えば「岐阜県図書館しらべかた案内」(岐阜県図書館)が集めているリンク先が、どのような媒体のいかなる情報次数にあてはまるか考えてみるといい。
 日本語の定訳が定まっていない「レファレンスサービス」(ウィキペディア)の受け付け窓口はさまざまですが、慶応義塾の図書館の「質問のすゝめ!(オンラインレファレンス)」への対応も、来館だけじゃなく、手紙やFAXのような文書、そして電話やWebフォームや電子メールといった通信も受け付けていて、「レファレンス・カウンター」(駒澤大学図書館)に限定しない間口の広さがあたりまえになっている。目立たないようだけど、「レファレンス・ルーム」(Wikipedia)に配架する「レファレンスブックリスト」(江戸川区立図書館)をはじめとしたレファレンス資料を収集し、図書館の設立目的にそったレファレンスコレクションを編成したり、必要な情報機器環境の整備など情報サービス窓口を裏で支える、間接的なレファレンス業務も見落としちゃいけないぞ。
 大学図書館のレファレンスワークとして、公共図書館ではあまり見られない、効果的な資料(情報)入手のための図書館の利用案内が行われているようだが、そこから一歩も二歩も踏み込んだレファレンスサービスを実現するには、日本の大学図書館におけるレファレンス事例データベース作成にかかわる「モニター意見(まとめ)」の[(データベース作成以前の)日本の大学図書館におけるレファレンス・サービスの諸問題]が、インサービス・トレーニングに頼るしかないと指摘しているよ。「採用までの図書館員教育課程には、改善をすぐには期待できない」とも書かれているけど、司書課程の授業で「参考業務」のイロハは学んでいるが、これだけでは図書館員の養成現場とレファレンス現場との落差が縮まりそうにないって事なんだろうね。
 教育を支援する図書館の振興を目指した「「これからの図書館の在り方検討協力者会議」これまでの議論の概要」(文部科学省)においては、レファレンスサービスを「これからの図書館サービスのあり方」の一等最初に位置づけて見直されている。ところで「レファレンス・ライブラリアン募集広告(米国)」(松下)を眺めると、日米におけるレファレンス・ライブラリアンの要件、待遇(給料、地位)等の違い以上に、図書館のレファレンスサービスそのもの社会的な位置づけの違いが大きいようだ。
 利用指導(案内)と資料(情報)提供という、「参考調査(レファレンス・サービス)」( 富山大学附属図書館)の二つの顔があって、いずれも「レファレンスツール」(KITIE - 用語集)を把握し、「レファレンスインタビューの方法」[PDF](脇谷邦子)にはじまるレファレンスプロセスで、そのレファレンスに答えられるような所蔵資料や関連情報源を見きわめ、場合によっては「代行検索」もこなせるような、情報サービス部門の基礎体力を養っておかなければできないね。個々の図書館の現場で、レファレンスその他の業務マニュアルや事例を整備したり、とりわけ「利用者を手ぶらで帰さない」姿勢を保つためのトレーニグが必要になるわけだ。
 レファレンスの形態としては、たとえば大阪市立図書館の「調査相談(レファレンス)サービスとはなんですか?」にあるように、利用者からの相談や質問を、「日常の疑問の解明」や「仕事上必要な統計・情報の調査」に切り分けながら図書館のレファレンスデスクやカウンターで受付けている。利用者の質問に答えた事例は「こんな調べものがありましたーレファレンス事例集ー」で参照できるようになっていて、国立国会図書館の「レファレンス共同データベース」に蓄積されていることがわかる。
 都道府県内のすべての図書館や公民館図書室が十分なレファレンスサービスを行う体制にないから、 例えば北海道立図書館の「協力レファレンスのご案内」に見られるように、図書館の種別や規模の壁を超えた相互協力レファレンス・サービスも利用できるようになっている。
 それぞれの図書館および各地域の図書館協力によっても解決しなかった事項や資料については、国立国会図書館がレファレンスを受付けている。といっても、「国立国会図書館レファレンスサービス」(国立国会図書館)となっているから、個人が質問しても相手にされないよ。インターネットの普及によってレファレンスがどのように変化しつつあるか、海外では「米国におけるデジタルレファレンスサービスの動向」(「カレントアウェアネス」No.281 2004.12.20)が参考になるね。
 どんな規模の図書館だって、単独で利用者の要求をすべて満たせないように、レファレンスでも自館で提供できない資料(情報)については、館外にある書誌その他の情報源に頼らざるを得ないから、「フロアガイド1階(レファレンス室)」(関西大学図書館)のレファレンスカウンターで見られるように、「図書館に所蔵しない資料の利用と入手」に関連したレフェラルサービスをやっている。東京都立図書館の「専門図書館ガイド」が、"専門分野に関する資料を所蔵し、文献・情報提供サービスを行っている専門情報機関のうち、公開性のある機関"を調査して紹介してくれている。今日的には、業務に欠かせない資料(情報)源の調査や収集も冊子体だけじゃなく、オンラインで利用できる「インターネット・リソース」(東京大学情報基盤センター電子図書館部門作成)も参照できるようにしておかないと、サービスに“モレ”が生じそう。とりわけ学術情報を扱う図書館の場合は、日頃から準備している専門分野のリソースファイルの更新に努めていないと、充実した対応ができない。類縁機関の水先案内にしても、「諸外国の公的機関&国際組織のホームページ(略号からも検索できます)」(京都大学大学院法学研究科附属国際法政文献資料センター)みたいに、それぞれの地域や分野に特化されたものが公開されるようになると便利なんだが。
 カレントアウェアネス(「Current Awareness Portal:図書館に関する情報ポータル」国立国会図書館)サービスを代表する、特定雑誌の最新目次情報サービスのひとつ、新着雑誌のコンテンツサービスも、シートから電子媒体へと提供形態が変わってきている。学術雑誌の出版社のサイトが目次情報を公開したり、「コンテンツシートサービスの高度化」によって外国雑誌のコンテンツサービスを導入できるようになったことが変化をもたらしたんだ。特定主題分野の利用者の最新情報要求に対する書誌情報サービスは、図書館の情報サービスの枠内にとどまらず、「文献情報提供サービスサイト」による「JDream III SDIサービス(科学技術振興機構)」のように、有料の最新情報予約サービスとして提供されている。
 利用者がすばやく求める資料(情報)を入手できるように、図書館はいろんな情報サービスを提供しているけど、検索サービスというとコンピュータによる「オンライン検索・CDーROM検索・OPAC検索」(『資料検索法テキスト』第4章「情報検索の方法」2001年2月28日現在 2002年10月03日追加 文責 : 高山正也、岸田和明 )が常識になっている。マニュアル検索と違って、いずれもランニングコストを見込まねばならないから、利用傾向に見合った導入とアフターケアが必要だよ。
 そのほか利用対象や主題を絞ったサービスとしては、「国際子ども図書館」(国立国会図書館)や、「ビジネス支援サービス」(大阪府立中之島図書館)といった公共図書館のサービスなどが行われている。

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03s.インターネットの利用と検索サービス

 「図書館員のためのインターネット:Internet for Librarians」(管理・運営:長谷川豊祐)などからもうかがえるように、国内の図書館でもインターネットで何ができるか注目されてきたが、今じゃWWWなどは図書館システムを支援する基礎システム技術の一つとして定着してきている。公開当初はtelnetでログインしていたOPACも、すっかりWWWのフォーム(「Web OPACs by Vendors ソフト別」Keiso Katsura)へとそのインターフェースを変えてしまっている。
 Webページには、画像や音声、動画など、図書館のさまざまな情報をデジタル化してまとめておくことができるから、貴重資料や古文書そのほかの情報を発信したり、いろんな資料(情報)の全文データベースを公開したりする仕組みとしても使われている。どのような作業がWebページ作りに必要か、「はじめてのWebドキュメントづくり」(内田 明)を見ながら実際に書いてみるのがいい。できあがったHTML文書の内容はともかく、文法が正しいかどうかを「Another HTML-lint gateway」(石野 恵一郎)のようなサイトでチェックするなどして、Webページ作成の腕を磨くこともできるよ。
 さまざまな母語が使われている地球上で、日夜を問わず伸び広がってきたインターネットの歴史を「Hobbes' Internet Timeline v12」で、国境を越えるインターネットの広がり具合を「インターネット普及率の推移(国際比較)」(社会実情データ図録)で眺めることができるが、いろんな言語で増え続けるWebページからどうやって必要な情報を探せばいいのだろう。
 どこにどのような情報があり、そしてそれがいつ更新されているかわからない、そのようなWebページに書かれている言葉を手がかりに、キーワードとして入力した言葉を含むページを探しだしてくれる、データベースサービスの仕組みの登場が待たれたのだ。
 インターネットを介してデータベースを利用するのに、ブラウザが使えるととても便利。そんなやり方ができるようにするには、サーバ側で、データベース管理システムに代わって利用者とデータをやりとりする機能を持ったソフトウェアを動かす必要がある。
 世界中に分散しているインターネットのホームページは、ちょっと見当がつかないくらい膨大なものだ。そんな中から、特定の探したい情報を表す適当な言葉を入力して検索できるようにしているホームページがある。このようなサービスをインターネット検索サービスといっている。
 その一つがサーチエンジンと呼ばれるもので、キーワードを入力すると、そのキーワードを含むWebページを探しだしてくれるデータベースである。もう一つは、インターネット上にある情報源への膨大なリンクをカテゴリ別に分類整理して調べやすい形で提供しているから、ディレクトリサービスというように呼ばれている。
 図書館でもインターネットで情報を探索するとき、データベース検索で問題とされがちな「検索結果の「再現率」と「適合率」(Hatena::Diary)に無頓着というかおかまいなしに、サーチエンジンやディレクトリサービスのお世話になっているようだが、「検索エンジンの相関図」(SEO調査レポート)や「検索エンジンのインデックスサイズ調査」(SEM-RESEARCH)などから、検索エンジンが対象としているWebページがおおよそどのくらいあるのか推し量ってみるしかないのだろうか。
 サーチエンジンは定期的に、インターネット上のWebページからコンピュータで自動的に情報を集めているが、ネットワーク情報のすべてを網羅しているわけではない。また、以前はあった情報が、最近になって削除されたりすると、サーチエンジンでヒットしても、“リンク切れ”というエラーになり、情報にたどり着けないこともあったりする。
 その一方で、ディレクトリサービスは人手で更新されるから、最新の情報が反映されることも多いが、その反面、人手なるがゆえの調べられる情報の少なさという限界がともないやすい。
 二つの系統がたがいに長所短所を補うように、工夫されてきているインターネット検索サービスについて、「検索デスク検索キュレーションページ」(検索デスク)で使い方を調べ、いろいろ検索を試した結果にどのような違いが生じるか確かめることもできる。
 ちょっと変わったインターネット検索サービスの使い方もあって、公開したホームページが更新を重ねてページ数が増えて分かりにくくなった場合など、「サイト内の検索にGoogle.comを使う方法」(結城 浩)を用いたりすると手軽に、サイトの管理者だけじゃなく来訪者にとっても、すばやくどこに何が書いてあるか探せてとても便利になる。
 いつの間にかURLが変わったり、消えてしまったようなHTMLファイルを探したい時など、特定のWebサイトのURLを入力すると、保存されたWebページからそのWebサイトの歴史が表示される機能を持った「Wayback Machine」を公開している「Internet Archive」を使うといい。
 ここに登録されている“1996年から現在までのおよそすべてのWebサイト約110億ページ”をインデックスしていて、これらすべてのHTMLのテキストに対して全文検索が行なえる検索エンジン「Recall」のベータ版が2003年9月に公開され、その後いつの間にか消えてしまったが、登録Webページそのものは現在も増え続けている。

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04.情報サービスに必要な情報源とそのコレクション

 図書館に就職したとしたら、とりあえず最初にやっておくべきことは何だと思う?新人のうちに休憩時間はもちろん、暇を見つけては館内をひたすら歩き回って、どこに何があるかを確かめながら、とにかく手に取って触っておくのだ。レファレンスコレクションみたいに貸出禁止になっている資料の状態などを見ると、利用傾向までうかがえそう。
 あちこちの書架に配架された蔵書全体を眺め下ろした見取り図が見えはじめ、それぞれの書架の資料(情報)の形態や次数の高低によって立体化されたイメージマップが描けるようになったらしめたもの。縦軸に資料(情報)次数を、横軸に資料(情報)媒体をあてはめると、あらゆる資料(情報)が表せるようにならないかい。

表04-1図書館資料(情報)処理次数\媒体図    
次数 \ 媒体 B 単行本 J 雑誌 M 会議録 D 学位論文 N 新聞 R レポート その他
3〜高次 参考図書 総説雑誌          
2次(意味子、参照子)   抄録索引         
2次(識別子) 目録 目録 目録 目録 目録 目録  
1次 原文 雑誌論文 会議録 学位論文 新聞 レポート  
参考1)中井悦夫;雑誌3次文献索引とその理論 薬学図書館 29(1) p27−32 1984
参考2)馬場重徳文書リスト 2002/10/27 URL;http://www.ulis.ac.jp/~kitaniy/baba-list.htm

 既存の資料(情報)はもちろん、冊子とか電子化とかの形態にとらわれないで、これからも現れるどのような情報源もおおよそこの図のどこかに当てはまるはずだ。門外不出の貴重図書などが閲覧用にデジタル化された電子版の次数を1.5次とすれば冊子体と区別できる。目録作業によって1次資料の書誌事項が抽出される2次情報化の祭に、目録システムが新たに付加する書誌IDやコード化情報は2.5次として位置づけ可能だ。
 情報サービスの拠りどころとなる情報源を次数と媒体できちっと捉えられるようになれば、館内でなぜ資料(情報)が別置されるのかも説明できるだろう。どの次数のどんな資料(情報)を低書架に並べたり、帯出禁止扱いなどの運用法も見当がつくよね。
 予算不足になったりすると真っ先に2次資料(情報)がカットされがちだけど、収集対象になっている分野のコレクションを構成する資料(情報)の次数のバランスが崩れると、意外なところで情報サービスのコストが増えたりする。
 インターネット検索サイトの「資料と情報源」(gooカテゴリー検索)や「各種資料と情報源」(YAHOO! Japan)、そして「情報源と資料」(@nifty@search category:ネットの厳選リンク集)を見ると主題項目別にリソースが集められているのが分かるけど、例えば次数と媒体によれば、インターネット上の図書館関連リソースだって、「情報探索デスク:The Internet Guide to Research of Online Resources」みたいな図によって表せる。図書館のコレクションに隣接する情報サービスの領域をうめる、資料(情報)や書誌の情報源が、社会の産業構造の高度化を支える情報技術の進歩とともに、従来の図書館という壁を取っ払ったみたいに浸透してきているね。

表04-2図書館サービス概念の変化
コレクション+目録・索引+利用者 伝統的図書館サービス
コレクション+OPAC+データベース検索+利用者 図書館情報サービス
コンテンツ+コンピューティング・ネットワーキング+利用者 電子図書館サービス

 情報サービスに必要な情報源が“コレクション”から“コンテンツ”へと変容し、時空の制約を超えてあらゆる資料(情報)をシームレスに利用できる情報環境の実現を目指す動きが見えてきたかな。
 高度情報化社会になって図書館のコンピュータ化が進み、情報サービス、資料提供サービス、そしてレファレンスサービスそれぞれの輪郭がはっきりしなくなった反面、印刷媒体や電子メディアその他の媒体であれ、図書館が利用者の情報行動を予測して必要とされる情報源を収集し、組織化して提供できる体制を強化しなければならない。
 インターネットを下敷きにした図書館の情報サービスについては、「公共図書館における情報サービスの課題と問題点」(東京大学 根本 彰)で、「レファレンス情報サービスとしてのネットワーク情報資源の導入」を前提とした情報システム図の「コレクション」にある「上記以外のネットワーク情報資源」の具体例のひとつが「図書館員おすすめ情報源」(大阪市立大学学術情報総合センター 図書部門)ということになる。
 公共図書館職員が評価するレファレンスツールを調べた「レファレンスツールの評価」(PDF)[2009 年度 JLA 中堅職員ステップアップ研修(I)領域2区分 B(1)吉田昭子(東京都立中央図書館)]を見ると、2009年の冊子体のランキングしか分からないが、今日的にはインターネット情報源が百科事典的な使われ方をしているんじゃないかという傾向はうかがえそう。インターネット上の情報資源の組織化については、納本制度審議会による答申「ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方について」(平成16年12月9日)において、国立国会図書館の納本制度に組み入れないで別の組織による収集に委ねられることとなった。
 オンライン資料としての図書や雑誌、いわゆる「電子書籍」の収集については、「オンライン資料の収集等に関する国立国会図書館法の一部改正について」(国会図書館)にあるように、電子書籍や電子雑誌などの「オンライン資料の収集」(国立国会図書館)が制度化された。
 国内の大学図書館によるインターネット情報源へのゲートウェイサービスの先行例ともいうべき、「理工学系ネットワーク情報資源へのゲートウェイ(別画面表示)」[尾城孝一(東京工業大学附属図書館)/ACADEMIC RESOURCE GUIDE[ARG-030]1999年05月25日]で、「単にネットワークリソースのメタデータの組織化だけに留まらず、リソースそのものの保存庫(アーカイブ)としての役割も担っていく必要があるかもしれません。」というように、新たにネットワーク上のリソースも図書館の情報資源としてコレクションの対象にされてきたことがわかるだろう。
 国内のインターネット資源をアーカイブする試みとしては、ウェブや電子雑誌のコレクションを目的にした、国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業」や「デジタルコレクション」、そして国立情報学研究所の「GeNii [ジーニイ] :NII学術コンテンツ・ポータル 」が公開されたりしたが、インターネット上に散在する情報源(データベース)について書誌情報(メタデータ)を作成し、それぞれのサイトへ誘導するサービスが、“インターネット情報資源ユーティリティ”としてなくてはならないものになってきている。
 オンラインで調べられる参考図書情報としては、国立国会図書館が1995年4月以降に受け入れた参考図書のデータを、分類別・最近3ヶ月以内の図書の受入順に紹介する「参考図書紹介」や、辞典協会の「優良辞典・六法目録」などがある。総合的な参考図書の解題書誌を含むガイドとしては、『参考図書の解題書誌作成:慶應義塾文学部図書館・情報学科1996年度卒業論文』(古屋牧子氏作成)[「WayBack Machine」で探せば読めます]のような試みもあるが、とにかくこまめに印刷媒体の情報源を調べないといけないね。

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04s.コンピュータ通信ネットワークと情報サービス

 この世界でいったい誰が最初にコンピュータを実用化したかについてのドキュメンタリー映画『モークリー:コンピューターとスケートボード(Mauchly: The Computer and the Skateboard)』(Wired Archives「東海岸縦断ギーク捜しの旅:『エニアック』発明家の悲劇」by Michelle Delio[][]を参照)が作られるような事情があったようだが、「コンピュータの歴史(年表)」(関西外国語大学 短期大学部 上山清二)を見てみると、ひとつの巨大なコンピュタをみんなが使い分けるということにならず、小さいコンピュータをみんなが持つという形になってきている。そして、その小さなコンピュータどうしを接続して通信するコンピュータネットワークがつくられた。ネットワークは通信の発展形(「通信ネットワークはいかに進化してきたか〜電気通信の技術史」大木 利治)といえるが、コンピュータより通信(コミュニケーション)のほうがはるかに歴史が古いね。
 コンピュータの登場によって、それぞれのコンピュータをつないで通信を行うようになり、コンピュータの通信システムをコンピュータネットワークあるいはネットワークといっている。
 インターネットを通じて世界の人々がさまざまな情報交換をしていますが、コンピュータ相互の情報のやりとりを成り立たせている取り決めのことを、通信プロトコルあるいは単にプロトコルといいます。
 中国語しか話せない人と、日本語しか話せない人とでは会話ができにくいように、対応しているプロトコルが異なると通信することができない。お互いにどのような言語を使い、電話あるいは手紙いずれの媒体で、というように人の意思の伝達を2つの階層に分けて考えられるように、コンピュータ間の通信に使われるプロトコルにもいろいろある。
(1)通信線を接続するコネクタの形や通信線を通る信号(電流や光の強弱)に関するプロトコル。
(2)ネットワークを通して情報を送るのに、正しく送ることができたかどうか、手順を確認しながら送るプロトコル。
(3)何台かのコンピュータを中継して通信する場合、その中継の経路を決めるプロトコル。
(4)情報の表現方法を規定するプロトコル。
(5)ホームページを参照したり、電子メールを送ったり受けたりするときに用いられるプロトコル。
 「インターネットの歴史と仕組み」(平 研究室)を見ると、現在まで標準的に使われている通信プロトコルであるTCP/IP(「TCP/IP通信とは」佐藤一郎)を用いて接続されたネットワークの集合、というのがインターネットの第一の定義のひとつにされている。
 コンピュータのハードウェアやソフトウェアが違っていても、インターネットで通信できるようになっている。「LAN技術の標準化とプロトコル」なくして、ここまでの「インターネットのしくみとサービス」(IEC「情報教育学研究会」内)の普及は考えられない。
 インターネットでは、データをパケット(「パケット【ぱけっと】(ITmedia)」)と呼ばれる単位に分けて送る方式がとられている。パケット通信のいいところは、「パケット交換/packet」(Mitsuharu Matsumoto)にありってところだね。
(1)電子メールを送るときやホームページを読み出すときなど、ネットワークを通したデータのやりとりは、常時持続されているわけではなく、必要なときにだけ行われるのが一般的。
(2)データが正常に届かなかった場合は、パケット単位で送り直せるが、パケット通信だと、パケットをつくったり、パケットごとに送り先まで届けるための処理を要するし、送り先など余分な情報を付ける必要がある。
(3)パケットはプロトコルの各階層でつくられ、インターネットでは、パケットの送り先として、インターネット層ではIPアドレス(「IPアドレスとはパソコン初心者講座)が、アプリケーション層ではメールアドレスやURL(「URLってなに?七鍵)などが指定されるというように、それぞれの階層で定義されたアドレスが記入される。
 ところで相手のアドレス(番地)がわかっていないと、通信そのものができないよね。だから、ネットワークにつながっているものそれぞれに番地がついてないといけないのだ。
 IP(「初心者の為のTCP/IP入門」Mitsuharu Matsumoto)アドレスは、インターネットにつながっているすべてのコンピュータ(ホストともいっている)を識別するビット列で、LANなどのネットワークを識別する部分と、ホストを識別する部分からできていて、その分け方が五つのクラスに分類され、ネットワークの構成に応じて使い分けられている。
 もともと32ビットで表されていたIPアドアレスは、32ビットですべてのホストを識別するにはビット数が足りなくなってきていて、128ビットでIPアドレスを表す新しい形式(「IPv6」)が利用されるようになってきている。
 コンピュータの名前を指定するのに、「ドメイン」(e-Words)といって、IPアドレスに対応していて人が識別しやすい文字列の名前が使われているが、ネットワーク上の「名前解決」(e-Words)の仕組みのことをDNS(Domain Name System)といい、ドメイン名/IPアドレス変換処理を行うコンピュータをDNSサーバといっている。
 インターネットでは、ネットワークとネットワークをつなぐのに用いられる「ルーター(router)」(Mitsuharu Matsumoto)と呼ばれる装置が、インターネット層の機能を持っていて、パケットに記入されている送り先のコンピュータのIPアドレスをもとに、次にどのルータに送ればよいか経路(「ルーティングの仕組み」Mitsuharu Matsumoto)を決め、そのルータにパケットを転送する。こんな形を繰り返しながら、パケットはいろんなネットワークを経由して、送り先のコンピュータに届けられる。
 ネットワークの通信速度が向上すると、短い時間で多量の情報を取り込んだり、多様な処理が行えるようになる。とりわけ、音声や画像などの情報は、データ量が多くなるので、通信速度が重要な問題になる。
 データを一定時間内にたくさん送れるようにするには、通信線を増やす方法と、通信速度を上げる方法の二つがあげられる。CPU内部のバスや入出力装置をつなぐケーブルには、通信線を増やす方法が使われているが、ネットワークの通信回線のように、長い距離の間でデータを送るには、コストがかかり過ぎる。というわけで、通信回線ではシリアル伝送といって、1本の通信線で、1ビットずつ順に送るという方式がとられている。このシリアル伝送では、どこから意味のあるデータが送られるのかを示すためのビットまたはビット列を送って、相手に知らせないといけない。
 ディジタル情報の通信では、1秒間に送ることのできるビット数で、通信の速度を表示する。これがbps、bit per secondの略だ。ちなみに、LANでよく使われているイーサネットの典型的な通信速度が100Mbps、1秒あたり100Mビットのデータを送ることができることを示している。ISDNだと、1回線あたりの通信速度が64Kbps、1秒あたり64kビットのデータを送ることができるね。
 図書館のホームページを訪れる利用者の、インターネットへの接続方式はまちまちだから、どのくらいの速さでどのくらいのことができるのかは実感として知っておいたほうがいい。DVDビデオ画像は4〜15Mbpsの転送速度だから、100MbpsのLANで伝送が可能のようだが、連続的にこの伝送速度を保たなければならないので、多数の動画データを流したり他にコンピュータを沢山つないで使ったりするとうまくいかない。10Mbpsぐらいあれば、小さな動画やコマ数の少ない動画なら、インターネットで見るには十分な速度だが、64Kbpsとなるとインターネットを見るのにちょっと遅く、文字だけのメールなら十分使える。
 学内LANを介した図書館サービスを実現してきている大学図書館そのほかになくてはならない、コンピュータ通信ネットワークを利用した学術情報支援基盤については、「我が国の学術情報基盤としての コンピュータ及びネットワークに関する地図」[PDF](文部科学省「学術情報基盤の今後の在り方について(報告)」附属資料4)のような網の目がはりめぐらされ、さらなるネットワークと電子化情報の活用に向けた「電子情報環境下における大学図書館機能の再検討」[PDF](REFORM平成16〜18年度科学研究費補助金基盤研究(B)平成17(2005)年度研究報告)が積み重ねられている。

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05.情報サービスの基盤とレファレンスの過程

 富山短期大学では、図書館学課程が経営情報学科内に設けてあるけど、無料を原則としている図書館の情報サービスの基盤として、利用者が資料(情報)と出会う場はどのように考えられてきたのだろうか?
 図書館の経営管理について日本やアメリカでどれくらい考察が積み重ねられてきているか、それぞれの雑誌記事の数をインターネットで調べられるよ。上のフレームにリンクしてある「情報探索デスク」の「雑誌文献情報」収載リソース、「NDL-OPAC:雑誌記事検索」や「Ingenta」で、キーワードはそれぞれ日本語と英語を使って、今すぐ検索してみよう。
 比較にならないくらい日本語の文献が少ないようだが、「情報の科学と技術」のバックナンバー目次に「特集=図書館のマーケティング」があったり、「日本情報の国際共有に関する研究 文部省科学研究費補助金国際共同研究(課題番号10044018)平成11年度報告」には「情報サービスのマーケティングと情報管理の品質:Marketing and Quality of Information Management」[エリザベート・ジモーン (Elisabeth SIMON, Hon FLA) ]というのもあるから、図書館の情報サービスの基盤を見直そうとする動きがまったく無いということではなさそうだね。
 「平成17年度大学図書館職員長期研修講義要綱 目次」を見ても、図書館のマーケティング関連講義が行われていたり、大学でも「図書館・情報センター経営論」(駿河台大学) が開講されたりしてきているが、これからの図書館の情報サービスのあり方に関わるマーケティングとはどのようなものなのか。地域の“IT革命”のかけ声だけじゃなく、これから議論が積み重ねられ、情報サービスの基盤についての社会的な政策基準が明確にされていくなかで、図書館のレファレンス(情報)サービスの動向がどう変化し、レファレンスの理論や技法がどのように見直されていくのだろうか。
 図書館のネットワークサービスの草分けというか、図書館の情報サービスを代表するOPACにもようやく新しい動き、「WorldCatのローカライズ版”WorldCat Local”」(CA-R@国立国会図書館)が現われたようだ。「WorldCat Local、ワシントン大学図書館が提供開始」(CA-R@国立国会図書館)によれば、ワシントン大学図書館のOPAC検索で、館内所蔵資料やオンライン提供資料だけでなく、同館所属コンソーシアム参加館についでその他の館の所蔵資料の順に検索結果が配列され、その一覧表示で当該資料の配置・利用状況を確認し、資料の請求(相互貸借を含む)まで可能とのこと。WorldCat.orgに追加された4つの雑誌記事索引データベース(ArticleFirst、GPO、ERIC、MEDLINE)もWorldCat Localの検索対象になったらしい。同館が印刷媒体または全文データベースで購読契約している資料についても、資料請求または全文データへのリンクが表示されるようになっているというから、関連情報を1箇所で簡単に見つけられるユニバーサルOPACの第一歩といえそう。
 2000年から2004年までのレファレンスサービスに関する日本語の研究文献をレビューした「レファレンスサービスの新しい潮流」(小田 光宏/『カレントアウェアネス』No.283 2005.3.20)が、これまでの研究状況をはっきりさせ、“新しい”動向に目をむけて整理してくれているよ。
 2005年あたりから「Library2.0」という業界用語が登場してきていて、「Web2.0」のツールを利用した図書館の情報サービスの展開がどう根付きつつあるのか、その動向が図書館のマーケティングにどのように関わっているか、「図書館とWeb2.0」(「情報の科学と技術」Vol. 56 (2006), No.11)といった特集記事が組まれるようになってきている。
 大学図書館におけるレファレンスサービスがどのように行われているか、例えば「図書館のすすめ - 大学図書館利用ガイド -」(東北地区大学図書館協議会)から、その具体例がうかがえる。
 学生が与えられた課題に対してどう対処し、どのような手順でレポートを作成すべきか、ひとつの例として「愛知淑徳大学パスファインダー:レファレンス」を読めば、「レファレンス」に関する事柄を調べる際の手順としてだけでなく、いろんな事柄を調べるレファレンス作業に共通する過程が見えてこないかい。図書館の情報サービスにおける、レファレンス・ツールの一つとして位置づけられつつあるパスファインダーを作成・公開している「パスファインダー事例」が参考になる。「東洋学園大学図書館パスファインダー」、「三重大学附属図書館 パスファインダー一覧」、「愛知淑徳大学図書館パスファインダー」、「情報への道しるべ:パスファインダー」(名古屋大学附属図書館)や、それらを収集・登録している「Pathfinder Bank 」(私立大学図書館協会東地区部会研究部研究分科会.企画広報研究分科会)などを参考に、各自で考えた検索テーマにふさわしい「ひな形」を作成してみよう。(参考:パスファインダー[はてなアンテナ - 図書館の孔 ]
 実際のレファレンスサービスの場合は、まず最初にしっかりした「レファレンスインタビューの方法」(PDF)[2010年度中堅職員ステップアップ研修(1)脇谷邦子]によって、利用者の質問の意図を正確に掴まないことには、図書館の数あるレファレンス・ツールの中から何をどのように使って調べるか選べないし、その時々のレファレンス・ワークを確かなものとするには、その図書館が現実的に持ち合わせている情報サービス環境がどのような状態にあるかを知っておかなければならない。
 利用者からもっとも尋ねられやすいのが、「所蔵調査」ということになる。最初から聞いてくる場合から、自力で探したけど見つからないというのまで、とにかく正確な書誌情報の確認が大前提になる。事項調査の質問を受けて「あることがらについて」調べるには、どんな資料(情報)を参照するか、レファレンスツールを選択して使いこなさなきゃならない。冊子体からオンラインまで、いろんなツールのどれを使うべきか選択眼が必要とされるのは文献調査の場合も同じだけれど、大学図書館においては、「資料・文献の探し方」(慶應義塾大学信濃町メディアセンター)のような利用指導を行い、自力開発した「GACoS」(東京大学情報基盤センター)で利用者(学生)自身に調べさせたり、利用者(研究者)に代わって図書館員が有料のデータベースを「代行検索」 したりしている例もある。

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06.資料(情報)源の使い分けと情報サービス

 課題図書の中から選んだ感想文だとけっこう集まるが、何でもいいから一冊読んで感想文を出しなさいというと、なかなか集まらない。自分で書店や図書館に出かけ、まず読む本を見つけなければならないからだ。レポートや卒論だけじゃなく、社会に出てから職場で報告書や企画書をまとめる場合も、まず自分で資料(情報)を探しださないことには前に進めないね。
 とりあえず「自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる」(読書猿Classic: between / beyond readers)ことができるようになってきているが、こと“試行錯誤”しながら実践できる機会は、キャンパスライフを逃したら二度とめぐってこない。
 入学時に「図書館を上手に使うには」(「高屋敷の十字路」2001.4.16)どうしたらいいかを身につけ、それぞれが選択した課程に関わる「 情報と資料の種類」(『資料検索法テキスト』第3章 2001年2月28日現在 2002年10月03日追加 文責 : 高山正也、岸田和明 )の扱い方を身につけて卒業してくれたら、というのが現役図書館員の頃の願いだったかな。
 図書館の蔵書の書誌事項に所蔵情報を付加して2次情報化した目録や、雑誌掲載論文の書誌事項に主題情報を付加して2次情報化した抄録・索引誌などから必要な情報を特定する「情報検索(図書館情報学)」(ウィキペディア)から、コンピュータを使ってデータベース化された大量のデータ群から情報要求に適合するものを取り出す「情報検索」(ウィキペディア)まで、「情報サービス」の手前での手習いも済ませないと。
 インターネット上でいろんなデータベースサービスが展開されている現在、以前は図書館でないと得られなかった資料(情報)が、実社会に出てからも簡単に手に入るようになってきているが、「文献の検索法」(『資料検索法テキスト』第5章 2001年2月28日現在 2002年10月03日追加 文責 : 高山正也、岸田和明 )から「データベースサービス(インターネット/オンライン)」(BOOKS KINOKUNIYA)を含む「インターネットによる図書館関連情報の探し方」(作成当時そのままで、URLそのほか未更新のWeb教材です)まで、社会的な情報探索の窓口は時と所を選ばないで展開しつつある。なかでも、よく整理されていて統制が行き届いた蓄積情報を提供しているのが「商用データベース」(WING HEAD)ということになる。
 情報探索ツールのひとつであるサーチエンジンについては、例えば「Google の秘密 - PageRank 徹底解説」(Hajime BABA, Ph.D/Department of Astronomy, Kyoto University)を読んでみたり、「検索デスク」(searchdesk.com)などに定期的にアクセスし、インターネット検索の最新の動向や使い方に関する知識を新しいものにしておくように。

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06s.ネットワーク・アプリケーションと情報サービス

 ネットワークを利用した図書館サービスの遠隔化の端緒となったのがOPAC(「OPACとは」千葉商科大学付属図書館)であり、次いでメールやWebフォームを利用したレファレンス・サービスその他のサービスへと拡大しつつあるといえるかな。
 今じゃ、コンピュータだけじゃなく、「携帯」や「スマホ」からもインターネットを通して、「電子メール」(IT用語辞典)をやりとりできるようになっている。コンピュータネットワークを通してディジタル情報のメッセージを送る仕組みが、インターネットで最もよく使われる人と人との情報交換の仕組みになったといえよう。
 電子メール(以下、メールという)は、メールサーバというコンピュータによって管理されていて、インターネットを通して、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)というアプリケーション層のプロトコルに従って、その受け渡しを行っている。利用者それぞれに、届いたメールを保管しておくメールボックスと呼ばれる入れ物を用意し、利用者からの要求に応じて取り出せるようにしてある。
 メールを送ったり受け取ったりするには、そのつどメールサーバに接続することになるから、メールサーバに自分のユーザ名とパスワードを登録しておかなければならない。
 メールの宛先である(電子)メールアドレスは、メールサーバに登録したユーザ名をもとに構成され、そのユーザ名とメールサーバのドメイン名を@でつないだ形式になっている。たとえば、info@joho.or.jpというメールアドレスは、joho.or.jpというメールサーバに登録された、infoというユーザ名を持つ人のアドレスということになる。
 メール機能を利用したサービスに、「メーリングリスト」[メーリングリストとは(A. SATO)]とか「BBS:電子掲示版」などがあり、図書館でも利用者とのコミュニケーションに使われたりしてきた。現在では、Facebookとかtwitterなど「SNS」(IT用語辞典)が利用されつつある。
 インターネットを通してテキストだけじゃなく、画像、音声、動画などのデータを手軽に統合して扱え、世界中のサーバ(内の資源)に自由にリンクを張ったり、簡単に分散データベースを形成したりできる方式として、1990年代から「World-Wide Web」[高田敏弘](WWWとは何か? 簡単な歴史と仕組み、yoppa.or)を使った情報提供が爆発的に増えてきている。図書館のホームページも続々と公開されるようになり、WWW(World-Wide Web) の技術が図書館の情報サービスの現場でも生かされつつある。
 主にWebサイトの更新情報を公開する手段として、「RSSの発展と図書館サービスへの応用」(慶應義塾大学メディアセンター本部:田邊 稔「カレントアウェアネス」No.285 2005年9月20日)が注目されてきたり、「ライブラリーニュース」(鹿児島大学附属図書館)のように、「ブログ」(IT用語辞典)を用いた情報サービスが図書館の情報発信手段の選択肢の一つになったり、「Wiki」(IT用語辞典)や「SNS」(IT用語辞典)など「CMS」(ウィキペディア)と呼ばれるWebによる情報提供技術の動向を無視して図書館・情報システムによる情報サービスのこれからは語れない。
 なかでもWebブラウザとサーバーを含む周辺技術の標準化の進展と普及によって、「Google マップ」に代表されるブラウザ上での非同期通信とインターフェースの構築ができる「Ajax」(IT用語辞典)のような技術や、新世代ブラウザにより飛躍的に実行処理速度が向上した「JavaScript」(IT用語辞典)ほか、従来のOSなどに固有な「API」(IT用語辞典)の世界からWebAPIへの流れを象徴する「Chrome OS」(Google Japan Blog)の登場が告げる、さまざまな処理をすべてブラウザのみで実行できる時代の到来。
 こういった情報技術の進展傾向を背景として、以前の「ASP」(IT用語辞典バイナリ)や「SaaS」(IT用語辞典)などをキーワードとした技術を言いかえたような「クラウドコンピューティング」(ウィキペディア)を援用した図書館情報システムの運用形態にシフトした図書館情報サービス環境の構築と利用について考えてみよう。
 図書館のネットワークサービス担当者の日常業務においては、「簡単で正しいHTMLの書き方」(Toda, Masalu)や「XML」(ykr414)だけじゃなく、作成したWebページをWWWサーバに登録したりする「FTP」(IT用語辞典)や、基本的な「運用管理に必須のツール/コマンド群(@IT - アットマーク・アイティ)」の使い方なども知っておくと何かと便利だね。
 さまざまな見栄えの図書館のWebページが公開されてきているが、現時点で何を標準にどのように見直すべきかの一例として、「DL講習会 大学図書館におけるインターネットの活用事例」(長谷川豊祐)あたりが参考になるよ。
 

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07.情報サービスにおける資料(情報)源の活用

 長いこと図書館で働いてみて、驚きそして感心せざるを得ないのは、大抵のことはどこかで誰かが既に書き記しているかもしれないし、誰かが思いつくようなことが以前に考えつくされていたりすることだ。調べることと考えることの見分けもはっきりしなくなるくらい積み重ねられた資料(情報)の断面を抉るように、インターネット上で図書館が資料(情報)の活用を例示してくれている。
 1990年代の半ばから競うように図書館もホームページを立ち上げ、今じゃ利用者にとって図書館の第一印象がそれぞれのコンテンツで決まったりする、というようなことも珍しくなくなってきている。
 いくつかの図書館のウェブ・ページを訪れ、どのように資料(情報)源が紹介されているか見比べ、それぞれの情報サービス姿勢の特色や違いを眺めてみよう。
 それぞれの図書館の情報サービス・ページにおける資料(情報)の活用ガイドに、何を見たいかに関わる資料(情報)媒体の違いや、どのようなことを調べたいかに関わる資料(情報)の次数が、どのように反映されているかを学習のポイントにしなさい。

表07-1図書館における資料(情報)源の活用ガイド例
「関西大学図書館」図書館活用術/文献の探し方 (http://www.kansai-u.ac.jp/library/how_to/bunken/)
「大阪府立中之島図書館」おおさかページ〜大阪資料と古典籍〜 (http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/osakatop.html)
「文献の探し方」(一橋大学図書館) (http://www.lib.hit-u.ac.jp/retrieval/search/index.html)
「リサーチ・ナビ」(国立国会図書館) (http://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/)
「筑波大学附属図書館:図書館活用術」 (https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/lib/ja/support)

 これから図書館の資料(情報)サービスを利用する人たちにむけ、図書や雑誌のような冊子体、CD-ROMなどの電子媒体、そしてネットワーク・リソースなどの情報源別に、さらに分野別に、どのようなガイドが必要か、それぞれが図書館の情報サービス利用説明会の担当者になったつもりで企画してみよう。
 インターネットを使って誰でも自由に資料(情報)源を利用できる「ヴァーチャル・ライブラリ」(Internet Virtual Library)の試みとしては、草分けとしての「ipl2」((c) 1995 - 2008The Regents of the University of Michigan, (c) 2009-2012 Drexel University)や「The WWW Virtual Library(別画面表示)」( I.C.Y. Publishing)などがある。
 さまざまな資料(情報)のオンライン化が進んでいるように見えても、例えば国内の大学図書館が所蔵する図書の書誌・所蔵情報のデータベース化(国立情報学研究所が運営するNACSIS-CATには2007年までに1,188 の機関が参加し、1985年にサービスをはじめてから、約800万件の書誌レコード、約9,000万件の所蔵レコードから成る書誌・所蔵データベースが形成されてきた)は2割強という具合だ。まだまだカード目録や冊子体目録に頼らざるを得ない場合もあるし、国書については「国書の探し方−国書(江戸時代以前の図書)を探す時には特別なツールを使う必要があります−」(京都大学図書館機構)や、「『国書総目録』の使い方−和書の所在を調査する−」(中之島図書館)に見られるような特別な資料(情報)の使い方を知っていないと探せない。そのほか、どのような資料(情報)源がどのような情報の探索に役立つのか、ネット上には「すべての学問分野をネットで無料で探すための210個のリソースまとめー新入生におくる探し方その2」(読書猿Classic: between / beyond readers)のように、図書館の情報サービス担当者の補助ツールとして欠かせないものもある。

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08.情報サービスの担い手と図書館

 履修生がレポートしてくれた図書館の探訪先のほとんどが公共図書館だったが、筆者が大学図書館で働きはじめた1960年代に全国で800館しかなかった公共図書館が1980年代から急に増えはじめ、21世紀に入った現在では3,261館を数えている。
 かって大橋図書館(「大橋図書館について」)で、少年時代の「川上澄生(かわかみすみお 1985−1972)」や「芥川 竜之介(作家別作品リスト:No.879)」が読書や調べ物に時を費やしたような近代図書館の姿が遠のく一方で、図書館不在だった地方自治体にあたかも行政サービス機関のように図書館が普及し、情報技術の進歩を取り込んだシステム化に支えられた現代図書館の姿が整いつつある。戦後の占領軍の指導(「占領期における図書館政策の推移―CIE関係文書による」[根本 彰、三浦太郎、中村百合子、古賀 崇(東京大学大学院教育学研究科)])に始まった公共図書館の時代を経て、図書館のイメージも「司書」(「司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在り方について(報告)」文部科学省)の姿も様変わりを強いられつつ、今日に至っているわけだ。
 国内の公共サービスとしての図書館の情報サービスの運営主体がどのようになってきているか、「図書館の様々な運営形態:研究文献レビュー」(「カレントアウェアネス」No.287 2006年3月20日)を参考に、司書の情報サービス業務の民間化、あるいはパートタイマー化ともいうべき現象を、高次産業社会における職場と就業構造の変容にかかわらせながら、派遣を含めた対応業務の担い手の今日的な様相がどうなっているか眺めておこう。全国的に図書館数は増えているのに、1998年度に1館当たり3・1人いた正規職員が、2008年度に2・1人まで減少したようで、普及率では全国平均に劣っていない富山県の公共図書館で働く正規雇用者の割合は、2009年度に20.1%になり、非正規化率は79.9%で全国3位だったという。
 アメリカ人司書が運営していたといわれる占領下の日本のCIE図書館のことが大江健三郎(大江健三郎ファン倶楽部)の小説に出てきたり、村上春樹の小説『海辺のカフカ』(イメージの中の甲村図書館salon de“kafka”)で私立図書館が重要な舞台となったりしているが、図書館で働く人(司書)については、映画や漫画に出てくるその姿が一般的なイメージに近いかな。
 「図書館映画データベース」の主宰者による「図書館映画への招待」(お話 和光大学附属梅根記念図書館 市村省二)で指摘されている図書館(員)像から、「漫画にみる図書館職員の人物像(1990年代以降)」(沖縄国際大学総合文化学部日本文化学科 山口真也)で集約されている図書館員(司書)の職業的イメージまで、しっかり定着している姿からどのような情報サービスの姿勢が感じとれるだろうか。
 このようなイメージを流布させている図書館の窓口の内側を目指す「司書への道:図書館で働くために」といったアドバイス、そして「21世紀の大学図書館と求められる司書の能力」( 大城善盛/『教育文化』10号)のような展望が語られるところに、情報サービスの担い手としての司書の現在形がある。
 インターネットによる図書館の情報サービスのツアーを試みてきたけど、地べたの図書館利用の場面では、まずさまざまなメディアで提供される2〜3次資料(情報)を使って、探し求めている資料(情報)の書誌事項を確かめ、その所蔵の有無をOPACその他で確かめてから、目的とする雑誌掲載文献などの1次資料(情報)そのものにたどりつく流れが、一般的な情報サービスの基本線となっていたよね。
 紙媒体から電子媒体まで、ハイブリッド図書館が収集する資料(情報)の書誌情報と所蔵情報をコントロールし、コレクションやコンテンツの利用に導く高次化情報を加工する情報管理業務と、それとは逆向きに、組織化されたされた資料(情報)に付加された高次化情報を低次化するように運用し、利用者が求める資料(情報)に到達できるようにする情報サービス業務との噛み合わせを重層化し、地域社会の情報咀嚼力を高めるように働かせ、利用者の情報消化をバックアップする司書の力はどこから。
 たとえば、東日本大震災ならびに福島第一原発事故後に高まった政府や関連機関への不信感、テレビや新聞報道を信用しきれなくなった人々の情報欲求不満の受け皿となるような、情報ネットワークを「Web2.0」ならぬ「Library2.0[「CA1624 - 次世代の図書館サービス?―Library 2.0とは何か / 村上浩介」カレントアウェアネス No.291]」技術で利用者に提供する試みはどこに。
 平常時の書誌・所蔵情報サービスから緊急時の地域ライフライン情報提供までを内包する、地域の情報のハブとしての働きが、コンピュータによる情報通信ネットワークが普及した情報化社会におけるシステム指向から、知識社会における利用者指向サービスへとシフトしつつある図書館の情報サービスの力点となりそう。

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「インターネットで見聞する情報サービスと図書館 」kyoshi@tym.fitweb.or.jp  2016.07.18