図書館を上手に使うには

quesbook.gif富山大学附属図書館の場合


  1. 図書館を覗く
  2. 多少の利用心得
  3. 所蔵資料を利用するには
  4. 図書館のいろんなサービス

 近年はどこの大学図書館も十数年前と比較にならないほど整備され,充実してきています。それぞれ規模や機能に違いはありますが,ここでは一応平均的な図書館も想定しながら,富山大学附属図書館の話を進めましょう。
 よその図書館を訪ねて利用する時にも何かの参考になるといいですね。

1.図書館を覗く

 図書館に入ってまず目に付くのがOPACなどと呼ばれているパソコンや,引き出し付きのカード箱でしょう。これらは閲覧目録といって,図書館にどのような図書(単行書)や雑誌(逐次刊行物),あるいは視聴覚資料が所蔵されているかを調べる道具です。
 図書館にある資料は著者,編者,書名,シリーズ書名などのほか主題分類番号や主題件名標目(キーワード)からも検索できます。
 ここ十数年の所蔵目録のデータベース化によってカード目録が凍結され,最新の所蔵はOPACでしか調べられない図書館が増えています。OPACをはじめとした図書館の情報検索端末の利用には,パソコンの基本的な操作を欠かせないという時代になってしまったようです。インターネットを利用して学外からのオンライン検索で求める資料の所在の有無を確かめてから,図書館を訪れるなんてことがフツーになってきています
 たいていカウンター近くの利用者の目に付きやすいところに新着展示コーナーというのがあって,新着雑誌や新着図書のブラウジングができる便利な図書館もあります(富大図書館では学生用図書の新着展示のみ)。図書館のホームページにある図書や雑誌の新着情報にアクセスできる場合もありますが,定期的に新着コーナーを覗きに行く習慣を身につけておくと思わぬ拾い物があるかもしれませんね。展示期間は数日から一週間が普通です。
 カウンターあるいは参考係の近くには辞書,用語集,住所録,データ集などの参考図書や索引誌・抄録誌の類がレファレンスコーナーとして一画を占めているでしょう。これらの冊子体のレファレンスツールに加えてCD−ROMやオンライン・リソースのかたちで導入されている2次資料や,3次資料も使い分けるなどすればよりいっそう効率良く必要とする1次資料を探し出せるでしょう。すぐにでも閲覧したい1次資料が館内にあるかないかはOPACやカード目録で検索すればすぐわかります。
 資料室や書庫は資料の種類によって区分され,図書は主題分類順,雑誌は誌名のアルファベット順や五十音順で配架されているのが一般的です。

■図書館の利用

                【学習・研究・診療】
                    │
                    ↓
              ■■■  入  館  ■■■
               │          │		 
               ↓          ↓          
            【希望文献】      【研究主題】
               │          │二次情報サービスの利用
               ↓          ↓
           ┏所蔵あり【所蔵の有無確認】所蔵無し┓
           ┃      目録で探す      ┃
           ┃      直接,書架で探す   ┃
           ┃      カウンターで尋ねる  ┃
           ┃                 ┃
           ┃   ┏━館内閲覧        ┃
           ┃   ┃             ┃
           ┗━━━━━ 複    写       相互貸借
               ┃           サービスの利用
               ┗━館外貸出
                    │
                    │
                    ↓ 
              ■■■  退  館  ■■■
                    │
                    ↓
                【学習・研究・診療】
2.多少の利用心得

 今日ではほとんどの図書館が開架方式といって,資料室や書庫(富大では入庫の際に学生証をカウンターに預けます)には自由に出入りができます。書架の見方で案外知られていないのが雑誌や図書の配架の流れでしょう。常に゛左から右へ,上から下へ″の方向で所蔵資料が配架されています。書棚が変わっても配架は同じように見てください。

■書架の見方・歩き方

            ■■ 書架の見方 ■■

  第1列    第2列    第3列    第4列    第5列
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 第2列の上へ 第3列の上へ 第4列の上へ 第5列の上へ 次の書架の第1列の上へ


            ■■ 書架の歩き方 ■■

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↓
 次の書架へ
■雑誌の配列

 一般に雑誌はその時点での雑誌名で配列されています。もし,雑誌名が変更された場合には,新しいその誌名で配列されます。例えば,雑誌名が「サイエンス」の時は,「さ」の棚に,現在の「日経サイエンス」に変更された時は「に」の棚といった具合です。
 また,雑誌は正式誌名によって配列されていますので,例えばHoppe-Seyler's Zeitschrift fur Physiologische Chemieを探すにはZeitschriftではなくHoppe-Seyler'sから探さなければなりません。
 その他2次資料雑誌や特定の年代以前のバックナンバーを別置する等,それぞれの図書館の配架・運用基準というものもありますから,慣れない図書館で雑誌を探す場合はまず雑誌の配架案内を確認しておくことが大切です。

■雑誌と図書の区別

 雑誌なのか図書なのか区別のつかないものがあります。例えば「〜シリーズ」「〜MOOK」,Advances in 〜,Current Topics in 〜,Yearbook of 〜などの類は,図書館によって扱いが異なります。書架で探して見つからないときは,OPACなど閲覧目録で確認したり図書館員に尋ねると良いでしょう。

■大系書やシリーズものの配架

 大系書やシリーズものでは,各巻ごとに主題が特集されていることがあります。本来は主題ごとに主題分類番号が与えられ,その番号の位置に配架されるべきですが,一般には一括して各巻の番号順に配架されています。

■図書館の構成

┏────────────────────────────────────┓
│    【書庫・資料室】         │     【閲覧室】    │
│                     │              │
│                     │              │
│             【参考図書】  │              │
│  【製本雑誌】             │              │
│               【索引誌】 │              │
│               【抄録誌】 │              │
│  【図 書】              │              │
│             【未製本雑誌】 │              │
│                     ┻    【所蔵目録】    │
│────────────┫【情報の高度化と媒体の多様化】┣───────│■
│                     ┳              │入
│      【図書館職員】        │    【利用者】     │口
│                     │              │■
┗────────────────────────────────────┛
3.所蔵資料を利用するには

 OPACや目録カードは図書館にどのような図書や雑誌があるのか,あるいは何巻,何号が所蔵されているのか,どの書架に配架されているか等を知りたいときに役立ちます。
 図書の書名から探すには書名目録,著者や編集者名から探すには著者名目録で調べられると良いでしょう。特定主題に関する図書を探すには,主題件名標目(キーワード)からアプローチできる件名目録が便利です。
 主題分類はたいてい日本十進分類法(NDC)やアメリカ国立医学図書館(NLM)の分類表が使用されています。主題分類番号は同時に書架での配架位置を示し,主題分類の番号・記号から図書を探すには分類目録があります。
 雑誌の場合は誌名のアルファベット順や五十音順で書架に配架されています。

■富山大学附属図書館の雑誌の利用案内■
雑誌運用区分 概  要 所蔵を調べる 配架場所 補足事項
理工系雑誌   WWWOPAC 本館南2階雑誌情報室 館内閲覧・複写利用
人文社会学系雑誌   WWWOPAC 本館南3階雑誌情報室 館内閲覧・複写利用
本学紀要・報告類   WWWOPAC 本館北2階自由閲覧室 館内閲覧・複写利用
他大学紀要・報告,一般教養誌,コンピューター誌   WWWOPAC 本館北書庫3〜4階 館内閲覧・複写利用
工学専門図書室雑誌   WWWOPAC 工学専門図書室 館内閲覧・複写利用

 Chemi. Abstr.や科学技術文献速報などの2次資料は本館南2階電動書架の先頭に,キリル文字,中国語,そして朝鮮語の雑誌は本館南3階電動書架の最後尾に配架されています。

■富山大学附属図書館の図書の利用案内■
図書運用区分 概  要 所蔵を調べる 配架場所 補足事項
学生用図書   WWWOPAC 本館北・南1階 本館1階opac所在表示
研究図書(昭和60年度以降受入)   WWWOPAC 本館南4〜6階 本館南4〜6階opac所在表示
参考図書   WWWOPAC 本館北1階 禁帯出,本館1階opac所在表示
昭和59年度以前受入図書   目録カード検索,遡及入力データは書庫opac所在表示 本館書庫1〜3階 学生証を預けて入庫(平日9:00〜17:00)
工学系図書   WWWOPAC 工学専門図書室 工学図・工学専門図書室opac所在表示
文庫本類 岩波文庫,ブルーバックス WWWOPAC 本館北1階  
新書本類 東洋文庫,文庫クセジュ,中公新書,岩波新書 WWWOPAC 本館北2階自由閲覧室  
本学教官執筆図書 本学教官執筆図書案内 WWWOPAC 本館北2階自由閲覧室  
ヘルン文庫 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の旧蔵書2,435冊ほか関連図書 WWWOPAC 本館南5階 本館・ヘルン文庫opac画面表示,利用に際し貴重書閲覧手続き必要。オンラインで「ちりめんページ」,「神国日本検索ページ」,「ラフカディオ・ハーン 関係文献目録」,同全文検索が利用できます。
近世文書 川合文書,菊池文書 川合文書データベース菊池文書データベース 本館北2階近世文書室 冊子体「川合文書目録」あり,利用に際し貴重書閲覧手続き必要。
旧制高等学校蔵書 旧冨山高等学校及び旧高岡高商の蔵書 目録カード検索 本館北書庫4階   

4.図書館のいろんなサービス

 図書館にあるさまざま学術文献は引用(Quatation)から成り立っているといってもいいでしょう。日常の社会のみならず,科学の社会にも「他人の言葉を誤って繰り返す行ない。誤って繰り返された言葉」がまかり通る事実,つまり他の論文の引用を順次使っていくうちに,最初の発表者の意味するところと全く異なって引用される事があります。
 ですから,引用する際には極力原典に当ることが必要であり,そのためには図書館のサービスを十分に活用しましょう。

■カウンター係・参考係

 図書館の窓口です。書架から取出した。図書の貸出・返却はもちろんのこと

 など,遠慮なくどんどん尋ねてみることです。きっと役に立つ答えが返ってくるはずです。
 カウンター係・参考係に多く寄せられる質問の一つに文献リスト上の略号がありますが,その代表的なものを三つばかり説明しておきましょう。

■複写サービス係

 複写を依頼する際には,著作権法とのからみで注意が必要です。図書館は著作権施行令での認められた施設にあたり,保管している公表の著作物から複写を行なう場合には,その著作物の一部分一人につき一部しか提供できないことになっています。
 また,この制限内であっても

  1. 調査・研究のためではなく,趣味・娯楽用である場合
  2. 著作物が公表されていない場合
  3. 一冊の本全部あるいは半分以上,一冊の雑誌全部の複写
 に該当する場合,著作権の侵害となるため複写は受付けてもらえません。

■相互貸借係

 必要な文献が図書館においてなかったり,製本中で読むことができない場合,他の大学図書館や情報サービス機関から借用(原則として著作権の許容範囲内での複写物)することができます。カウンターに相互貸借申込書が用意されていますので,この用紙に記入して申し込まれると良いでしょう。
 どのような雑誌や図書をどこの図書館が所蔵しているか,という国内情報をまとめているNACSIS-Webcatや「学術雑誌総合目録」といった申し込みの際に欠かせないツールを使いこなすことが文献収集の秘訣です。

■文献情報サービス係

 図書館によって名前はさまざまでしようが,特定主題そのほかの文献情報などに関した検索サービスやネットワークツールを利用した情報探索サービス提供のほか,図書館・情報関連インターネット情報源の案内などをしています。

■図書館サービスの楽屋裏を支える人たち

 図書館では直接的なサービスを担当する係員とほぼ同数の職員が裏方として働いています。その一つが雑誌や図書の受入係で,さまざまな出版関連情報源からいろんなデータを集め購入する雑誌や図書の選定・発注・支払いをしています。
 整理係の仕事は,受入れた雑誌や図書の記録や目録の作成,総務係は図書館予算の算定,各部署との連絡・調整です。図書館への苦情,施設の改善要求あるいは情報提供への期待といった注文は総務係が窓口となっています。

■暮らしの中の図書館利用

 休日の図書館利用といえばまず公共図書館に足が向かいますが,近年は大学図書館の一般公開も行なわれるようになってきています。富山大学の授業期間中であれば,平日の仕事帰りや土曜や日曜の昼前から夕方まで利用目的に応じた図書館の使い分けが可能です。

富山大学附属図書館サービス時間案内
サービス名 平 日 土・日(休業期間中を除く) 備 考
貸出・返却 9:00〜22:00(短縮開館時17:00) 10:00〜17:00 返却ポスト=通年
書庫入室 9:00〜17:00 −−− 学生証を預ります
文献複写 9:00〜11:30 13:00〜16:30 −−− ILL(相互貸借)
情報検索 9:00〜11:50 13:00〜16:30 −−− 公費支払

富山大学附属図館の端末利用時間
利用者端末 平 日 土・日(休業期間中を除く) サービス範囲
OPAC検索端末 9:00〜22:00(短縮開館時17:00) 10:00〜17:00 富山大学蔵書検索
OPAC/CD-ROM検索端末 9:00〜22:00(短縮開館時17:00) −−− 図書館導入CD-ROM・内外OPAC検索
WWW情報探索端末 9:00〜16:50 −−− インターネットで図書館関連情報を調べる
DHCP接続利用サービス 9:00〜22:00(短縮開館時17:00) 10:00〜17:00 IP接続可能携帯パソコンの持込み利用


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