1Board transverter


ここでは、トランスバーターそのものについて紹介したいと思います。
現在の所、5GHz以上の周波数帯を運用する場合、トランスバーター等に依存するのが通常だと思います。
一昔前は、キャビティ回路を制作しないとマイクロ波を運用することは困難でしたが、基盤の多様化・ストリップライン技術の向上により、アマチュアの世界でも基板上でもマイクロ波を簡単に得る事が出来るようになりました。
また、それぞれの回路をユニット化して安定度等を追求するに越した事は有りませんが、軽量小型化・価格の面で1枚の基板上に全ての回路を組み込んだ1ボートトランスバーターの出現は、マイクロウェーバーの増加につながりました。
各地のマイクロ波愛好グループが盛んに色々な1ボードタイプの基板を発表したのは、1995年頃かと思いますが、その後、マイクロ波トランスバーターで有名メーカーのマキ電機が、5GHz帯を最初に10GHz・24GHzと次々に1ボード基板を利用したトランスバーターを発表した事による、マイクロ波運用者の増加には目を見張る物があり、そのノウハウを凝縮した基板自身も公開販売された事は、私たちマイクロ波愛好者には大変ありがたい事です。
(最近は、ミキサーダイオードの入手難からFETミキサーとなっています。)

5G10G24G

マイクロ波愛好者は、以外に作る事が好きな昔のラジヲ少年が多いようです。・・・・(今はとうちゃんや、じいちゃんが主のようですが・・・・hi もうちょっと兄ちゃん・あんちゃん達の活躍を望むのですが・・・)
どんな物でも最近は自作のほうがお金が掛かるようですが、トランスバーターもその例外では有りません。
自分の人件費が考慮しなければ多少安く上げるは可能ですが、あくまで自分の勉強だと思ってトランスバーターの自作を行うのが、後くされなくて良いと思います。
(作った物が上手くいかないといってメーカーに鳴きつくのは、愚の骨頂ですょ)


前述のマキ電機の基板を利用するのが、1番手っ取り早く自作のトランスバーターを制作する手段だと思います。
5GHzの1ボード基板を利用した場合を例にその概要を紹介してみます。

主な必要部品

                                                           価格単位はK円

品名 仕様 数量 価格 その他 品名 仕様 数量 価格 その他
1ボード基板 マキ電機製 7 基板のみ 7660 JRC等 0.3   
FETデバイス SFC11等 2.1 5V三端子 7805 2 0.1   
半固定VR 10KΩ程度 0.49 チップ型が良い 8V三端子 7808 0.1 場合により10V
ミキサーダイオード HSE11等 マイクロ波用 ダイオード 1ss953 0.12   
検出ダイオード 1ss99等 0.2    リレー G5Y-1オムロン 0.3 以前はG4Y  
2SA1020    0.2    送受切替 マイクロ波リレー 4 SMA型が良い
2SC1815    0.1    コンデンサ 貫通型1000p 0.3   
74HCU04    0.1    電解コン 10μF 必要数 0.5   
同軸セミリジ コネクタ付き 0.6 ジャンク チップコン 10p1000p等 必要数   
同軸 1.5D等 必要数 0.5    チップ抵抗 20Ω1kΩ等 必要数   
本体ケース 適当 1 タカチ等 スイッチ・ヒューズ 電源系パーツ 1式   
trボードケース 自作可能 1 マキ製が無難               

価格は5GHzボードでのあくまで参考ですから、詳しくは販売店にお聞きください。

ちょっと思い出しても上表の物は要るでしょう。これの合計が28Kを超えますから、その他抜けている物を合わせると30K位必要に成ると思います。
また、局発部分は含んでいませんから、マキ製の局発を使うかドレーク等で自作するかは自由でしょうが、10K程度加算が必要になるでしょう。
従って40K位の経費は必要で、格安店などでパーツを揃えても35K以下の調達は、中々困難と思われます。
しかしながら、少しでも安価にトランスバーターを作りたいのは人情で、その分パーツを持っている方は、その分だけ安価に制作出ますから、マイクロリレーやデバイスの在庫を持っている方は自作しても損はないでしょう。
さらに、上記の物ではパワーアンプを考慮していませんから、出力もせいぜい100mW程度と思って下さい。100mWも有れば数百kmの交信は十分可能です。


自作ドランスバーターのメリット・デメリット

メリット
・なんと言っても、自作機器(一応)だとエバレル・・・・( ̄^ ̄)エヘン
・上手くすれば安く出来る。(前述のようにあまり過大な期待をしないこと)
・一応自作と言う事で、故障した場合でも自分で修理可能・・・・・・なはず・・・・・・・hi

たぶん完成には、幾度の試行錯誤が必要となるはずですから、絶対に勉強になります。マイクロ機器ということではなく、FETの使い方やバイアスの掛け方、ミキサーとはどういう事か、ATTの数値の求め方、キャリアコントロールとはなんぞや、発信と増幅の違い、信号の結合、マイクロ波の損失、通常なぜSMA等のコネクタを使用するのか、・・・・など等、上げればきりが有りません、FETに流すドレイン電流などはオームの法則で簡略的に求めれますからこれらの勉強にも成りますょ

・デザインが自由で、作り変えも可能。
・あわよくばデュアル・トリプルのトランスバーターに発展・・・・・などetc

デメリット
・安価目的で作ろうとした人に限って、余計高くついたりして・・・・・hi
・ゴミが一杯出る。
・変なことしてキズ判のおせわになったりして・・・・・私は身に覚えがあります。
・製作中はシャック等に閉じこもって家族と疎遠になる・・・・単身赴任の方には関係有りませんが
・etc

これらの事を理解して制作に掛かりましょう。    家内安全  御身大切  浪費節約  ですぞ


Transverterの制作

パーツ等が集まれば次の要領で制作してみましょう。(局発は出来ている物として)

1.構想を練る。
私などは、とにかく作ってしまえとやんぎりもんぎりと早急に、制作に掛かってしまいます。
ところが、作ってしまった後で「こうすれば良かった」「あぁすれば良かった」と思ってしまう事が良くあります。
最初の構想が見た目の出来栄えに左右しますから、デザインも考慮したユニットの配置やメンテナンス性を十分に考えておく必要が有ります。
完成後に故障はあるものですから、蓋の開けやすさやチェックのしやすさも重要なポイントです。
ドリルを持つ前に一晩紙に書いて眺めて見ましょう。
メーカー製と見間違うような出来栄えのトランスバーターも夢では有りません。

2.1ボードの制作。
1ボードの基板を入れるケースが調達できたら、最初に入るかどうか確認してください。
確認後、ケースから再度取り出して、組立を始めましょう。

@電源回路 
最初は、電源部から制作しましょう。
ケースイン後は、貫通コンデンサを通して直接電源ラインに12Vが掛かるようにしても良いのですが、1A程度のダイオードを通してから、電源が加わるようにしましょう。
電源は、送受回路の三端子の5V系(受信)と8V系(送信・・場合により10V等)を最初に制作し、ちゃんと12Vが5Vと8Vに成っている事を確認しましょう。
ただし、受信側の初段はダイオードで減圧していますから3V程度になるのですが、FETの動作前は電流が流れませんから、5Vに近い値のままでしょう。(このようなダイオードは、0.6〜0.7V/1本の減圧効果が有ります。)
それぞれのFETのドレイン抵抗(数十Ω程度)をハンダ付けし、信号ラインのドレイン側にも正電圧が加わる事も確認してください。
その後5V系を7660icにより正負反転し−5Vを得る回路をはんだ付けしてください。7660のicの足は狭く小さいですから、先の細目のハンダコテを利用してください。
(昔は、canタイプの7660が有り重宝した物ですが、そんな7660を知っている方も少なくなってしまいました。)
7660の出力が−5Vになっている事を確認後、半固定VRによりバイアスが−5V〜0V程度可変できる回路を付け、それぞれ7つのFETのゲートに掛かる電圧が可変出来また、ドレイン側に受信と局発増幅のFETには+5V、送信の最終段には+8V前2段に+5Vが加わることを確認します。
(  ※ ただし送信側は、キャリコン回路が出来てからでないと、ドレイン電圧は出てきません。キャリコンが動作すると送信側に電圧が加わります。)
電圧は、ゲートの抵抗値(1〜2KΩ)によって−3V程度からの可変値となる事も有りますから、必ず−5Vになっていなくても正常で、可変できる事が確認できたらマイナスの最大電圧値にして次作業に入ります。
この作業前には、絶対FETを付けてはダメです。
また、これらの一連のバイアス系の抵抗には、発信止め等の目的でバイバスコンデンサ1000pF程度がパラレルに付きますが、これをハンダ付けしても短絡等がない事も確認します。

Aカップリングコンデンサを付ける。
電源回路が完成したら、信号ラインのカップリングコンデンサを付けましょう。
カップリングコンデンサは、5GHzの場合数十pF程度が良いのですが100Pや1000Pでも実は、大丈夫なのですょ。(5GHzだと通常20PF〜30PF ただ、10GHz等では、結合量が高いと発振の原因にもなりますが・・・)
ただし、このチップコンデンサは次段との結合に使いますから、ショ-トさせると上手くありません。
ハンダ後の正負電圧チェックは怠り無く

Bミキサー回路とIF入力回路
基板には、局発ミキサーと送受信のそれぞれのミササー回路の合わせて3ミキサー回路が有ります。
送受にはマイクロ波用のミキサーダイオードが付きます。ハンダする時は小さいので飛ばさないように。
また、取付向きに注意してください。
OSCミキサーのオープン側には50Ωの終端抵抗をお忘れなく。
IFの入力は通常は1200MHzのハンディ機等を利用しますが、この信号はストリップライン結合でキャリアコントロール信号となっています。
また、送信IFレベルは数十mW〜数百mWが普通で、ミキサーにはせいぜい10mWも加わるようにすれば十分で、信号に合わせたT型アッテネーター回路を考慮します。
ミキサーダイオードに余り大きな入力が加わるとダイオードが・・・・・(^人^)ナンマイダァ
ひどいときは、T型のアッテネーター回路抵抗が火事になります。・・・・・消防車出動
適正なアッテネーター値は、マイクロお助けシートのアッテネーターのシートで計算してください。・・・・hi

Cキャリコン回路
この基板の中でもこの部分は曲者です。背の低いチップパーツと比較的背の高いパーツが入り混じって居ますので、順序を考えハンダして下さい。
どんな基板でも、背の低いパーツを付けてから背の高いパーツを付けるのが常套手段でしょう。
74HCのICやトランジスタも有りますから、足の配置等間違いの無い事を確認して、回路図等を見合わせながら手順良くハンダして下さい。
一連のパーツが付いてからキャリコンのリレー(G5Y)を差し込んでみます。
従来の基板ではG4Yのリレーを使うようになっていて、リレーを付けるとケースインする事が出来なくて困ったものです。
しかし、基板も改良されリレーもG4Yが入手困難となった今はG5Yに変更され、リレーを付けてからでもケースイン出来るようです。(しかし、ハンダ付け前に確認しましょう。)
ちゃんと出来ていれば、1200MHz等を入力するとカチャカチャとリレーが切替わる音が、小さく確認できるはずです。
今までこの部分が上手く動かなかった原因の殆どが、ハンダ付けの不良か、パーツの付け間違い・付け忘れでした。(北陸マイクロウェーブでの講習会の話)
よくよく確認してください。
ミニパワーでもキャリコンを動かすには
場合によるとストリップラインの結合が弱く、100mW程度のハンディ機ではリレーが動かない事があるかもしれません。
そんな時は、ラインに0.5P程度の容量のチップコンデンサで渡りを掛けてみます。こうするとほとんど動くはずです。
また、渡りのコンデンサは片側のみのハンダ付けでOKです。
(ここまで出来たら、前述の送信側FETのドレインにも、電圧が加わる事を確認してください。)
Dデバイス貼付け
ここまで出来たら、1ボード基板は出来たような物ですが、最後に緊張のGaAsFETの取付作業が待っています。
つけるFETによっては、リードが長いので適当な長さに切ってください。
取付は、送受で向きが逆ですから気を付けましょう。
取付は、きちっとセンターに付けさえすれば、ショートしませんから、必要以上に神経質に成る事は有りません。
また、付ける前に電圧の再チェックは必ず行いましょう。
全部付いたら1ボードは完成です。(ただし未調整。)

3.ユニット結合
それぞれのユニット(局発・1ボート・切替リレー・場合によってはパワーアンプ)を、当初計画した構想に従ってケースに取り付けていきます。
ここでのポイントは、送受切替のマイクロリレーを1ボードのキャリコンとシンクロさせる事でしょう。
消費電流の少ないリレーは、そのまま1ボードの端子を利用出来ますが、消費電流の多いものは別途に切替リレーを介しても良いでしょう。パワーアンプ等が有る場合は、その方が便利かもしれません。
最初の自作機には、12Vのフェールセーフタイプのリレーをお勧めします。ラッチ式は回路的にはちょっと面倒ですが、消費電流を抑えることもできます。
それぞれの結合は、SMAのコネクタを介してのセミリジットで接続するか、直接基板からの配線という方法を取るしかないでしょう。
フレキシブルのケーブルでの配線等は非常に便利で、メンテナンスの面からもお勧めです。

4.1ボート調整  測定機器がほとんど無いとして・・・・(でも検出計位は欲しいなぁ)
3.まで出来上がればトランスバーターが出来たわけです。
しかし、QSOは出来ないでしょう・・・・・・・・hi 最後に調整しましょう。
ユニット間の結合によっても全体のバランスは微妙に違いますから、最初に調整をした方も再度この時点で調整する事に越した事は無いでしょう。
@送信
最初に送信部を調整します。
始めに、局発増幅の部分ですが、ゲート電圧が−1V程度にしてみます。・・・VRを可変して。
通常は、この程度でもちゃんと増幅します。
ちゃんと電圧が変化したら、この時点でドレインに流れる電流が20mA程度を目安とし調整しましょう。(ドレインに入っている抵抗が20オームなら、その抵抗の両端電圧が0.4V程度を確認・・オームの法則)
特にこの部分はスタブ等は必要が有りません。
次に3段の送信アンプ部分を調整します。
調整方法は、局発増幅と同様に最初調整します。最終段の部分に簡易検出計や持っている方は、パワー計で出力を見ながら行います。
この部分は、上記調整後、まず銅片等でスタブを付けて最大出力が出るようにします。
ほとんどの場合、デバイス際やカップリングコンデンサ際にスタブポイントが有ります。
フィルター部分にはスタブを立てないようにしましょう。スペアナ等がない場合は、スプリアスを増幅してしまう事が多いでしょう。
スタブ調整後に、バイアス調整VRを回し再度最大出力が出てくるようにします。
ここまでで、ほぼ送信調整は終わりですが、この時点で基板上に手をかざして動かして出力が変化するようなら、発振しています。
手をかざしたり、蓋をかぶせても出力が変化しない程度ならOKで完了となります。

A受信
5GHzの場合は、144MHzを40逞倍すると5760MHzになりますし、960MHzの6逞倍でも5760MHzを得る事が出来ます。
144MHzの場合は、ハンディ機等を利用しますが、レベルが低いのでトランスバーターに簡易ANTを付けその側で直接144MHzを発射します。
受信側の3段のFETはそのドレイン電流が10mAが目安とします。
調整は、送信系と同様です同じドレイン抵抗ならその両端電圧は0.2Vが目安です。
144MHzの信号がこの時点で捕まえれたら信号を聞きながらスタブ・バイアス調整をしましょう。
出来れば、逞倍数の少ない発振機が有れば最高です。また、ビーコンが発射されている地方は、実信号を聞きながらの調整が有効でしょう。
送信同様。手かざしや蓋をつけても受信信号が変化しなくなったら完成です。

5.実運用での調整
完成したトランスバーターは、相手を見つけてQSOしてみましょう。
うまくQSO出来た時の喜びは、何ともいえない物が有るでしょう。
100mWでも十分数百キロのQSOは出来ます。
よくよくノウハウを得てから、HPA(ハイパワーアンプ)を作っても遅くは無いでしょう。


このように、トランスバーターは自分でも自作できますが、ローカルに測定器を持ったOMさんが居ると、より正確に確実により早く完成できます。
基板の改良によって検出計だけでも10GHzのトランスバーターも、最近は再現性良く制作する事が出来るようになりました。

5GHz⇒10GHzと製作してから24GHzを作ってみましょう、ただし24GHzともなると・・・・なかなか  (^o^)丿
また、マキ電機さんからは、ある程度パーツの付いた基板やパーツの相談にも乗って頂けると思いますので、自分の技量や予算と相談しながらの自作が大切でしょう。

※ 注意 自作が上手くいかなかったと言って、メーカーさんに無理難題を持ちかけるのは、お門違いと言う物です。ヒントは教えていただけるかもしれませんが、動かなかったからといってメーカーにお願いするとかは絶対に思ってはなりません。このような心配が有るのなら最初から出来合いの物を購入されるべきでしょう。