(型)から入る

外山節(そとやまぶし)WAV

4月の盲学校入学と共に、毎週土曜日に先生の家に出向いて稽古をつけていただくことになった。

先生も、これまでに数多くの人に三味線を教えてこられた方なのだが、全盲は初めての事で、きっと困惑されたに違いない。

通常は、譜面を見ながらとか先生の手元を見て習うのでしょうが、私にはそれができないからだ。

音を出すよりも先に、型から教えて頂かねばならない。

三味線の持ち方やバチの持ち方、姿勢などといった基本的なところだ。 見えない私には、音よりも、実は型の方が、はるかに難しいのである。

音は、先生の鳴らす音を真似て、勘所を押さえれば、それなりの音が出せる。

元々、音感は悪い方ではなかったから、何とか合わせることは難しくないが、型は、見て真似るということが不可能だからだ。

特にバチは、持ち方も太鼓のそれとは少し異なる。三味線が上がっているとか下がり過ぎとか、立ち過ぎとか寝過ぎとか、顔が横を向いているとか…

時には、(どんな風にバチを持っているのだろう。三味線の構えは)などと先生の身体に繋がらせて頂いたこともあった。

どうしても、自分の癖というものが出てしまうのである。

中でも、バチの打ち込みは今でも分からず、ずっと悩み続けている。

ただ単に糸に対して真上から打ち込むだけだと思うのだが、それが思うようにならないのである。

理屈で分かっていても、手の方がその様に動かないようで、なかなか自分の思った音にならない。

私は、空間認知というものが悪いのでは…などと思ったりもする。

この、(バチの打ち込み)で、音が全く変わって聞こえる。いわゆる、音のキレというものが違うのである。

この、音のキレこそが、プロの先生と私達・素人との一番の違いのように感じている。


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