第5回レポート


テーマ  「選挙の現実と理想」 −−なぜ立候補しないのですか?−−
日 時  6月15日(木)7時半〜9時半
場 所  珀水サロンビル2階(金沢市清川町1番10号)

文責  中川 恒雄


■ はじめに
■ 選挙の現実(干場氏の場合)
■ 新しい風(下口氏の場合)
■ 討論
■ あとがき


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■ はじめに

 6月の例会は、政治改革・政党再編の流れの中での初めての統一地方選挙が終わり、久しぶりに日本政治のハードな部分にスポットライトをあてて話し合う機会を得た。
 中谷氏より、ゲストコメンテーターは「敗軍の将、大いに語る」ということで、アタリをつけたので、案内文を頼むとのこと。で、以下のとおり御案内し、お集まりいただき、前 正篤会員に司会・進行をお願いした。ただ、干場氏他数名への案内文のテーマは、取り敢えず記した「ザ・選挙」のままだったことをお詫びしなければならない。


 案内では紙幅の都合で、割愛した思いがあった。それは「この会からも引き続き多くのメンバーや理念・志を同じくする候補を、政治の現場へ送り出さねばならない」が、今のシステムでは、一つの選挙で1〜2名の当選が関の山だろう。いくら優秀な議員を議会へ送っても、ニワトリ小屋の新しいニワトリ同様ツブサレてしまう。改革は議会の多数を制しなければならない。世論多数と議会多数が一致しないもどかしさを「永田町の論理」という言葉にこめ、これを解消すべく政治改革はスタートしたのではなかったのか。少なくとも有権者の多くは一縷ののぞみを託した筈である。
 当日の発言・討論の記録に先立ち、選挙というものを日本百科大辞典(小学館・池田政章氏の記述)より転載し、共通認識を得ておきたい。



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■ 選挙の現実(干場氏の場合)

*敗軍の将と言うが、候補者は将ではなく駒にすぎない。選対の命じられるままに動いていた。
*高校時代から一度は政治に出たかった。
*自民党政権崩壊以来、政局が変わって行く中で政治に参加できればという思いがますます強くなった。
*従来の日本の政治は政党システムのレベルで言えば自社の1か2分の1政党制で、不毛な
 イデオロギー対立の政治であった。
*具体的な政策を巡って争うような政治ではなかった。
*自民党が1党支配を行ってきた。1党支配が諸悪の根源であった。密室で物事が決定される。政治が矮小化された
 形で利益配分になっている。結果として停滞している。
*何より大事なのは政権交替がある、政権を巡って政治勢力が争うというシステムがなければ政治はよくならない。
*政治で今、一番大事なことは決して内容によって政党がまとまるという、内容の問題よりもシステムの問題である。
*政権を巡って競争をするシステムというものが日本の政治に一番大事。
*そう言う意味で自民党に対抗しうる政治勢力が1つか2つ必ず無くてはならない。

*立候補に至る経緯
    ・8月5日民社党県連の川委員長と会った。
    ・8月24日民社党に入党。
    ・8月27日民社党議員団会議・民社友愛3役会議で決定して新聞発表、民社党公認という形で出馬をする
     ということで新聞発表がされた。

*以後どのような活動をしたか
 1    秋から冬にかけて民社党系の労働組合の定期大会に出て挨拶をする
 2    民社党系の労働組合    対応するのは委員長・書記長
 3    催物(親睦会・スポーツ大会)に出来るだけ参加をする
特に1月には
      各組合が旗開きをやる
 4    親戚・友人・知人
 5    門立ち(顔を知って貰うため)
 6    街頭演説    票にならないということで数回でやめた。
 7    県内全域の各組合3役(委員長・副委員長・書記長)の自宅訪問
 8    10月以降、組合員一人一人の個別訪問(選挙法上問題があるが)
 9    組合員から後援会への紹介(1人3件のノルマ)訪問 全部は回れなかった
 10    地元・夕日寺小学校校下4団地(1200軒)

*選対会議
    ・候補者は出席を許されない。
    ・組合で決定をし、組合役員が組合員に依頼をする。
    ・組合員が地縁・血縁・職縁を辿って後援会加入者を求めていく。
     その中では政策を訴えていくことはできない。地方選挙においては政策で争う事は困難
    ・中央の選挙でも中選挙区制では政策で争う事はできない。選挙区から同じ政党の人間が複数でるということ
     になれば政策の違いがない。
    ・しかし、小選挙区選挙になったらすぐに政策選挙ができるかは難しいと思う。
    ・特に地方選挙の場合は政策選挙というのは今の日本の政治風土ではまずむりであろう。

*選挙戦のさなか12月9日に民社党が解党し、翌日新進党の結成大会が行われた
*石川県で新進党の組織は、これから作ろうという段階だったから、民社党公認を名のれない。
*新進党公認というかたちを希望したが結局は新進党推薦、石川民社推薦

*告示後
    ・3月31日告示、10日間の選挙期間
    ・2日半ほど、街宣カーに乗った。
    ・街頭演説を1〜2度中心街で
    ・労組が職場集会を開き挨拶する。
    ・個別訪問

*選挙中に何を訴えたか
    ・自分の場合は組織でやる選挙
    ・組織だけで当選が可能であると組織の側も判断し自分も判断していた。
    ・結局は組織の人に一番訴える。
    ・民社党系の労働組合の代表として労組の為の利益媒介をする。
    ・労組の属する会社の利益媒介・業界の利益媒介・代弁をする。
    ・言っている自分自身、何が出来るのか曖昧であり、あまり責任をもって言えるような主張ではなかった。
    ・しかも、大変な不況の中で選挙直前、春闘があり不況の中で殆ど賃上げがない。
    ・そうなると組合員にとって組合の存在意義そのものがない。
    ・いわんやその組合の代表として政治に代表がいるのかということになる。
    ・組合利益を代表する、会社利益を代表すると訴えても効果がうすい。
    ・本当に訴えたかったことは従来から考えていたこと。
    ・日本の政治は政権をめぐって政策で競争する、本来そういう政治システムが必要である。
    ・議員はみずから政策を立案し、その政策で議員同志が競争すると言うことを地方政治においても
     行わなければならない。

*敗因分析
    ・組織の弱体化
    ・組合員の減少
    ・職域の拘束力の弱体化
    ・逆に、地域の拘束力は残っている。
    ・地域に職域が負けた。民社党だけでなく社会党も組織だけに頼った候補は落選
    ・地域・地元への取組みの欠如
    ・候補者個人の問題
        パフォーマンスができない。
        コミュニケーションもうまくない。
        知名度がないものには期間が短かった。
        無党派層への取組の欠如
        組織だけで当選するという判断が間違っていた。




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■ 新しい風(下口氏の場合)

*政治とは本来、時代にやっとついて行くようなしろものではなく、むしろ透徹した歴史観をもとに、時代を読み、
 時代をリードしなければならない。そうでなくてどうして政治に、政治家に国民の信頼と期待が寄せられようか。
*今は、時代の大転換期であり、旧いものが終わって、同時に新しいものの”はじまり”の時期である。
*混乱期であるがゆえに、なおさら政治が先導役を果たさねばならない。

*国政と地方政治の違い
    ・国の場合は議院内閣制だから、議員が執行部側へ回ることもできる
    ・地方の場合は大統領制で、執行権をもった知事や市長を有権者が直接選び、議会の持っている権限は
     議決権であり、議決のための審議権、審議のための調査権しかない。
    ・地方議員には執行権がない。
    ・国会議員と地方議員との執行権に関する差異を殆どの国民が、議員ですら混同している。
    ・地方議員候補が公約で「当選したら**をやります」という立場にはない。
    ・本気で物事をチャントやろうと思ったら執行権を持たなければできない。
    ・市長のやるのを見てたら本気になれば自分にもできると思った。

*政治とは何なのか
    ・現実・理想・政策の3点
    ・政治家は正確な現実認識・現状認識に長けていなければならない。
    ・現状の本質をシッカリと把えなければならない。
    ・陳情も受けなければならない・いろんな所へ行っていろんな人と接して
    ・現状だけではなんの発展性もないし意欲も情熱も感じられない。
    ・時代をリードしていくという政治の本来もつ使命を果たせない。
    ・理想・ヴィジョンを明確に持つ
    ・現実と理想との間には大きなギャップがある。
    ・現実を理想へ近づけていくものが政策
    ・理想には基礎に哲学がなければならない。

           −空間:宇宙観・社会観・世界観  自然環境 防災
     3つの間−+−時間:歴史観          都市計画 建設
           −人間:人生観          福祉(老人・児童・障害者)
                            文化・教育・経済(農林水産商工観)

    ・「本来はこうなくてはならない」というヴィジョン
    ・理想を語ることこそリーダーの条件
     政治家よ! もっと理想を語れ!! そして議論せよ!!
     経済人よ! もっと理想を語れ!! そして議論せよ!!
     教育者よ! あなた達こそ純粋に熱心に理想を語れ!! 理想をもとに議論せよ!!!
    ・陳情・調整・総与党:受け身
    ・攻め:積極的前向き 理想実現に向かう
     政治とは政権によって理想を社会的に実現すること
    ・野心という言葉は悪く使われることがあるが良い意味での野心


*選挙とは
    ・良き政治家を、良き野心を持った政治家を選ぶための手段
    ・手段であるべき選挙を目的とした政治・政治家が多くなり間違いが
    ・選挙を変えねば政治が変わらない。
    ・95年1月 加賀市長選を通じて大いなる実験をやってみた。

*立候補者の少なさ
    ・無競争当選の首長・議員が多数出現
    ・物事が発展していく原理・法則の中に「競争の原理」がある。
    ・選挙は良い意味での競争の原理だから、大いに選挙すべきである。

*競争としての選挙を阻む3つの要因
 1 やる気・情熱・野心・魅力・理想  候補者・支持者の中にあるか
 2 落選に対する恐怖
        デメリット
        リスク         本人・支持者にもある
        犠牲
 3 金がかかる
        資金不足
        借金
        回収できない 回収しようとすれば汚職 1の理想と矛盾
 2.3を上回る、乗り越える1があるか
 2・3をどのようにカバーするのか:有権者意識・制度整備
    ・制度 落選しても復職できるか、選挙期間の休職扱い
    ・他の選挙(市長選)に立候補するときに、現在の職(市議)をやめなくてもよい制度にして参入しやすく
     すべきだ。

*組織
    ・自陣営は全くの草の根運動であり、対する現職は巨大な組織
    ・受け皿として「新しい風」という政治団体を急遽つくった。
    ・ここから女性だけの「いきいきレディーズ」という会が独立した。
    ・隣市(小松)の市長の後援会長(女流作家)が応援に来てくれて大きな広がりが生まれ、女性の会だけで、
     1,200〜1,300人の大集会をやってくれた。
     これは加賀市にとって新しい大きな動きであった。
    ・同級生の会
    ・選挙対策本部は県会議員が1名対2名、市会議員は1名対22名という比率
    ・既存の政党に依存して選挙する時代ではないという意識をもっていた。
    ・政党別で言うと一切の政党の推薦は戴かないと宣言して立候補を表明した。
    ・そうせざるを得ない理由もあった。新生党と共産党以外は全て現職を推薦していた。
    ・業界別の戦いではなく、ほぼ各業界の100%が現職推薦
    ・地域別・地域間の戦いでもなかった。
    ・自分たちの意識を鼓舞するためにも、平成時代の加賀の一向一揆と位置付けをした。
    ・「民の治めたる国」というのが、かつて我々の加賀の国にあったが、本来の民主主義、一部の人から政治を
     取り戻すという草の根選挙

*活動の中で広報宣伝活動が最も大きかった。
    ・広報宣伝の中でも機関紙、パンフレット、ポスター、ステッカーなどを郵送、手渡し(知人・街頭・集会)、
     新聞折り込み、各戸配布した。
    ・新聞折込みは普通はできないが、キチッとした政治団体を作った場合には可能。

    ・普通、宣伝カーと言うと告示後の宣伝カーのことだが、立候補表明してから選挙まで3ケ月あったので
     「新しい風」という政治団体の宣伝カーを作った。
    ・連呼や流しではなく、騒音にならないようにキチッとした訴えを
      街頭遊説 辻説法700回(斉官議員)
      修業に近かった。
      今まで共産党しかやらなかった。
      余程の信念が
      告示後の宣伝カーも
      公設掲示板のポスターと同じく、宣伝カーには車・運転手・マイク持つ人の人件費に公費補助がでるので、
      候補者の負担を軽減するメリットも考慮の要
    ・マスコミ、新聞・テレビが19年ぶりの選挙で今までと対立構図が全く違うということと4月の統一地方
     選挙の前衝戦ということで非常に取り上げてくれた。

*活動の2番目の柱は会員募集だった。
    ・最初の10日で6千名の会員を集めてくれたが、これには対立陣営より、非常な圧力が加えられた。
    ・支持者・運動員の天敵探しで、生命線を抑えてきた。
    ・人間100%自給自足している人はいない。誰かのお世話になっている。得意先や生命線から抑えられ
     ると、商売している人は一番弱い。これで随分、脱落していったが、それでも立ち向かって、やり通し
     てくれた人が何人かいた。
    ・人口7万人 有権者5万2千人 最終的には1万8千名の会員を3ケ月の間に集めて(得票数とほぼ同数)

*集会(出前だけでなく、来て頂く 元気のでる会)
    ・ミニ集会はもっとやればよかった。やった所は非常に浸透したと実感した。7人、8人、10人ぐらいの
     単位で2時間位やりとりして
    ・それまでは何故かということが、「そうなのか!」ということで、次の日からその人達が運動を
     始めてくれた。
    ・そのミニ集会にも物凄く妨害があったし、開くことに大変勇気が必要だった
    ・企業の朝礼で挨拶も40箇所ほど、呼んでくれる側は勇気と苦心があった。両陣営を呼んで前と後で
     どちらが効果があるか。

    ・校下単位の中規模集会(17程)も徹底してやったが、これにも圧力がかかって、実質は10人前後の
     ミニ集会になった。
    ・こちらが案内電話する以上に相手陣営から行くなという電話が入っている。だからあることだけはよく
     わかるが、参加できない。
    ・それでも行くと偵察が来ていて次の日に職場などで・・・
    ・来て呉れた人は何をしたいのか判ってくれて輪が広がっていった。

    ・大規模集会は殆どやれなかったが、唯一、先術の「いきいきレディーズ」が女性中心の1,200〜1,300人の
     集会をやってくれた。

*個(戸)別訪問    候補者本人・妻
    ・告示前迄は後援会活動として合法的な、個々にあたるのは非常に効果がある。
    ・玄関に入り、応対に出る人達を通じて伺えるその家の生活、その地域社会の様子が伝わってくる。
    ・選挙だけの効果ではなく、政治家・候補者本人にとって、これが後日、政治を担当していく上で
     参考になる。
    ・選挙で激しく競争することの必要性・効果は
    ・有権者から吸収していく作用がある。
    ・だから時間と体力の許すかぎり一軒一軒訪ねることは、政治をやっていくエネルギーを蓄積し、
     そうした中で自分を充電することになる。

*電話作戦
    ・宣伝カーの騒音と同じく問題があるが、やらないと支持者から叱られる
    ・感触を捕まえる市場調査的な役割も
    ・活動としては広報宣伝活動・会員募集・集会・戸別訪問・電話作戦が主軸

*資金・経費
    ・多くの有能な人の立候補を妨げる理由の一つ
    ・日本の政治の混迷は政治と金の関係が間違って、迷路に入ってしまった。
    ・角福戦争のなかで、数の論理・多数派工作で政権を目指した。
    ・多数派工作のためには金が要る。
    ・金を集めるためには利権という構図
    ・期待した細川政権も金にまつわる問題で新しい政治の流れを作れなかった。
    ・ここから抜け出すには選挙制度をいじるより、身近な選挙に金をかけずに当選するモデル作り。
    ・金をつかう選挙が馬鹿らしくなり、受けなくなるようにしたい。
    ・日本一、金をかけない市長選挙をするために収入を如何に綺麗にし、支出を如何に少なく綺麗にするか。
    ・収入は自己資金300万円の他はカンパ募集、全部で1000万円強
    ・従来は議員も党から金を貰って選挙した。イヤだと言ってもお前だけ取らないのは駄目だ。
     取らないとバラすのではないかと疑われる。だから取らせる。取らなくなると除け者になった。
    ・斉官議員を筆頭に皆カンパしてくれた。カンパ箱には10円玉も入っていた。
    ・新しい風の精神:手弁当・手電話・手油(灯油とガソリン)
    ・食料もカンパ、物資、労力(ほぼ100%ボランティア)
    ・自分の懐から出してでもやるという面白み・素晴らしさを多くの人が味わった。
    ・貰ってやる選挙は後ろめたく悪いことだと思っている。出してやるのが本当

    ・支出は無駄を省かなければならない。
    ・血税にひとしい真心のこもったお金・物資を、無駄な使い方をしているということが見えたら運動は
     ストップするから
    ・広報等必要なものにはかける。
    ・飲み食いはしない、食事も有料、告示の数日前から炊き出しを始めたが全員一食200円を箱に入れて
     チャリンという音をきいてから食べる。
    ・選挙事務所の食事はイヤという潔癖な女性もお金を出して食べるのなら心安く食べられる。
    ・取材に来る報道陣も金を出して食べるから買収ではない。

*理想を実現するためには
     権限を持たなければならない。
*そのためには勝たなければならない。
*支持してくれる人達が冷飯を食わされる。
*これだけの圧力を加えられて妨害を受けて、負けたら大変な復讐を受けるので、勝って貰わないと困る。

*自分たちの思いが通じなかったという挫折感が一番の精神的な冷飯かもしれない。
*冷飯を食わされていると判るのは本当の関係者だけで、食わされているとは言わない。言うとモッと食わされる。
*言って意味のある時期が来るまで言わず、鬱積し蓄積されて次の変革のエネルギーとなる。

*今回の戦いの本質は何だったか
    ・何と何の戦いだったか
    ・何に勝ち何に負けたのか
    ・新しいものと旧いものとの戦いだった。
      政党・国会議員・県会議員・市会議員系列の構図との戦い
      業界・地域等の怨念の選挙との戦い
    ・時代の要請、時代認識・政治感覚・地方自治・首長像
    ・新しい政治像・政治家像・首長像

    「清新 VS 沈滞」、「公正 VS 偏向」、「向上 VS 腐敗」、「攻勢 VS 退潮」
    「愛情 VS 権力」、「お金を出す VS お金を貰う」
    「改革 VS 現状維持・現体制保持」、「主体的 VS 受動的」、「本音 VS 建前」
    「フェアプレー VS アンフェアプレー」

    ・立候補表明させまいとする、出馬させまいとする無競争工作、当選させまいとする妨害活動
    ・フェアプレー:批評・批判はするが一切の個人攻撃・デマ中傷・妨害行動はしない
    アンフェアプレー:無競争工作、妨害活動、デマ中傷、経済的威圧、集会妨害、怪文書

*質では勝ったが、量では44%、政権を取るには至らず。
*質を高めて、洗練して、本当に理解して貰う活動をトコトンやって量でも勝利すべき。
*理想に向かった行動を取っていきたい。
*投票率は78%、現職対新人は初めて



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■ 討論

*政治関係の話には引いてしまうが、なぜ立候補しないのかの反対で、なぜ立候補するのか、動機は?
 (虎死而残皮、人死而残名? or 楚人沐猴而冠耳?)
*政治家になって何をやりたいのか(斉官市議より干場氏へ)

干場氏
*どうしても政治家をやりたい。
*野心、権力欲(物事を決める力)
*政治と言うのは様々な利害や主張がある。その中で最終的に決めるのが権力である。
*政治を決める場に自分が参加して自分の力を試したい。
 (政策を訴えられなかった)
*4年後に再挑戦して退職する人間を雇う職場はない。
*サラリーマンが立候補して政治を改革していくことは非常に難しい。

山野市議
*野心 Ambitious<Ambition 自己顕示欲
*政治の一番の魅力というのは国・県・市を自分が正しいと思うベクトルに一歩でも近づけるという
 ダイナミズムである。
 (現実から理想へ向かうベクトル、理想も理念も無ければベクトルは有りえない)
*これでいいのかという霧や霞の様なものを凝縮して一滴一滴のインクにしたものが政策
*正しい情報に基づいた具体的な政策を訴えたい。
*現状に対して不満があった。
*選挙管理委員会に届け出る選挙費用は告示以後のもので信憑性がなく、ヴォランティアも時給換算して届けなければ
 ならなず、ナンセンスである。
*後援会活動を含めた全ての政治活動資金として選挙費用の公開をした。
*優秀な人材が政治に出られなくなっているというのは、日本と言う社会システムが敗者復活戦が難しいからである。
*最近、転職などが前に比べると容易にできるようにはなったが、立候補するには・・・
*自分より優秀な友達が、組織もカネもないという理由で政治を諦めている。
*300万円程なら平均的サラリーマンでも不可能ではないと思い、今回の選挙費用を公表した。
 (先輩他派議員からイヤミ・中川前市議の後盾があったからこそできた)
*新聞記者が発表の意図を解せず、趣旨が通じない。

福田市議
*無投票の補欠選挙への推薦
*行政の壁をクリアしたい。
*父親の弔合戦
*政治を志す意思のある人は立候補して信任を問うことができるシステムが必要
*社会を良くして行く基は選挙である。
*カネはかけるつもりはなかったが、結構かかった。
 (今までの選挙を変えなければという思い、取り組みかたが伺えた)

斉官市議
*議員になるつもりはなかったが、山中町加賀市の合併問題で中間地域の代表 兼 漆器業界代表を出そうと汗を
 かいているうちに御鉢が廻ってきた。
*議会に入って政治も勉強させられたが、今の現実の政治と有権者が考えている地方議員というのがかなりの差がある。
*政治家・議員がどんな事をしなければならないのか未だにジレンマに悩んでいる。
*何故これで議員しているのかと思い、それで干場氏に聞いた。
*石原慎太郎のように議員という職業を投げ出したい気持ちで、疑問を感じている。
*国の政治も地方の政治も議員の仕事をもっとハッキリしないと、単なる地域代表であったり、業界代表だったり、
 それだけが仕事であるということになる。

高井氏
*企業(政党)も非常に変わろうとしている。昔のように経営者(右)対組合(左)というようなものではなく、
 皆で創る企業(政党)という時代だ。
*「経営者・管理職をやめたい。下にいるのが一番よい」という風潮だ。
*今からの組織の在り方というものをよく考えなければならない。
*昔のようにカネをもっていれば企業(政党)を経営できるという時代ではない。
*一つの考え方を持っていなければ企業(政党)はなりたたない。そうでなければやめればいいし倒産すればいい。
*企業は税金を納めるべきであって、税金を使う企業になってはいけない。
*(企業も政党も)組織を先に作るのではなく、考え方(理念)を優先すべきである。
*労働組合も新しい在り方を創ってほしい。

干場氏
*従来の日本の政治には競争がなかった。
*内容以上に競争できるシステムを作るため、組織を頼った。
*企業は競争があるからこそ(内容や理念に移れる)
*議員自身が政策を立案して競争するシステムが必要。
*競争の中からよりよい内容の政策が出てくる。
*競争がない場合には行政にオンブのダッコで議員が政策立案するシステムではない。

高井氏
*組織という点で、自民党も皆(新進党も)倒産すればよい。早く倒産しないからオカシくなる。
*新しい考え方(理念)がないと、政治が動かないから、既存の政党は全て倒産すべきであり、新しい組織(政党)を
 創らねばならない。そのために自分たちの主張を出していかねばならない。
*既存の企業に勤めるのではなく新しい企業を起こすべきだ
 (既存の政党に支持するのではなく新しい政党を起こすべきだ)

干場氏
*先ず、今のシステムを改革するようなものをやる。
*改革した後で内容に即した2〜3 の政治勢力が創られるべきである。
*新進党はイロイロ問題はあるにしても改革する勢力である。
*政治改革、行政改革、経済改革をやる勢力である。
*日本の政治は先ず改革で、内容はその後だ。
*自民党の一党支配を断ち切るために細川内閣を作ったから、その方向で進むべきだった。
*その後に内容に即した「リベラル VS 保守」または「社民 VS 保守」へ再編すべきだ。

高井氏
*放って置いたら倒産する筈の企業に肩入れしているような気がする 。
*二つの力関係だけの(内容のない)ものに力を貸す必要はない。
*組織は一度作るとナカナカ潰せない。これを潰すために、また力関係だけの組織を作らなければならなくなる。
 これではいつまでたっても良くならない。
*後で潰さなければならないような組織(新進党)は作るべきではない。

中川(レポーターの特権で当日、言えなかったことも・・・)
*今までの日本の政治・政党を物理学的(宇宙観)に見ると、外からの磁場に引っ張られて磁気を帯びていただけの、
 ただの鉄の塊だった。
*自民党は西の、社会党は東の磁極に引っ張られて、それぞれの支持者も本当は、外の磁力に引っ張られていた。
*世界を東西に分けた巨大な電磁石の電流が切れてしまったら、少々の残留磁気があるだけで、もともと自分の磁力で
 集めた票ではないから無党派としてこぼれてしまった。
*そんなものが二つ(自民党と新進党)に離合集散しても何の意味もない。
*鉄の塊も構成する原子の向きが統一されると、それぞれの原子核を回る電子が一つの電流として、内なるコイルの
 電流として機能し永久磁石となる。
*理念を同じくする者が集まることにより、大きな磁力(勢力)を得ることができる。
 この磁力でベクトルを創らねばならない。
*先ず理念を明確にし、その同じくする者で新党など新勢力を創るべきだ。

クリス・デイル氏
*日本の政党は共産党(好きではないが)以外には理念が感じられない。
*高井氏が指摘するようなOver Reaction(過剰反応、肩入れ?)の危険がある。
*日本の政治に疑問がある。
*投票権があれば、Sound Truck(街宣カー)で連呼する候補者には絶対に投票したくない。
 (前回、スイスのブリジットも同趣旨の発言)
*日本の政治は、阪神大震災の処理や国と地方の関係など、責任と権限をハッキリすべきだ。
*地方も47都道府県というのは多すぎる。だから県が弱すぎる。北陸三県を廃止して北陸州としたらどうか。
*1票の格差についてオーストラリアでは、10%を超えるとRedistribution(再配分)しなければならないと法律で
 定められている。最高裁の判断はユルイ。
*オーストラリアでは候補者名と政党名の両方で投票し、選挙活動としてはテレビ、新聞、チラシ、看板、戸別訪問
 などで、選挙カーは無い。

選挙カーについて(山野市議)
*候補者名の連呼だけでなく、辻説法を120〜130ケ所でやった。
*東京と違って必ず何人かの人が立ち止まって聞いてくれていた。
*「今まで知らなかったが応援する」、「連呼だけでなく、自分の考えを話す候補者は初めて」、「話を聞いて投票
 する気になった」と言う聴衆もいた。泣いて聞いてくれている人もいた。
*選挙カーで良い思いをさせて貰った唯一の候補者かもしれない。
*しかし基本的には選挙カーは無意味で、禁止にして、語りたい人はハンドマイクを使ったらどうか?

下口氏
*戦いの相手は対立候補ではなく旧い時代認識・旧い政治感覚で、その中にいた自分自身が、そこ(自民党)から抜け
 出すことが最初の戦いだった。
*深い問題意識や、何と戦うかという内容がそんなに薄ッペラではないという自負があった。
*当選するには進みすぎていたかも知れない。
 (力学的には、誰かが進み過ぎたベクトルを持っていないと、思う所へは?)

高井氏
*企業というものに照らし合せてみると、ものの考え方に差があったというのは大きかったが、
 斉官議員がいて救われた。
*企業でも経営者がいて他にスタッフが経営者の考えをどれだけ浸透させるか信者をどれだけ作るかにかかっている。
*それでも、信者を作りきるには余りにも差がありすぎた
*落選した候補者を、ただ補償する訳にはいかない。食えなくなったら選挙に出て、落選すれば生活安泰とならない
 ように得票率何%以上については次回選挙までの生活費を支給してはどうか。

広報活動
*後援会報を1回出すのに20〜30万円(郵送費・封筒詰めの人件費?)
*(下口氏は)会員だけに1000部程から、後で3000部になった。
*(福田議員は)2ヶ月に1回で13号迄出した。臨時に出すと選挙違反になるが、定期的購読物だと違反にならない。
 選挙のときに後援会に入って貰った筈の人に送り、全く反応の無い人には次から出さない。返事の帰ってきた人には、
 反応のランクに応じて送ったり送らなかったり・・・
*(斉官氏は)議会で質問した議事録を自分でワープロを叩いて、有権者に報告している。本来、議員は有権者に
 替って行政情報を貰っているのだから、その行政情報を支持者に知らせなければならない。議会で政治家が何を
 しているか、殆どの有権者はわからないので、せめて支持者には報告して、意見のある場合には行政へのパイプ役
 にならなければならない。
*政治家は自分の政治理念・理想・ヴィジョン・政策を、選挙の時期だけでなく常に有権者に訴えていくべきだが、
 その費用と労力を如何に軽くするか。
*広報紙(誌)は印刷費用・配布費用など配布部数と回数にもよるが、ここにも新規参入(立候補)を妨げる
 原因がある。
*パソコン通信・ワープロ通信を使えば、候補者個人の(広報)費用はタダ同然になる。有権者は各々が少々の電話賃を
 負担して、書込まれた内容を読み、気に入ったところはプリントし、身近な人達に配布することができる。
*山野議員は、先日の議会で金沢市にパソコン通信をやるよう質問してくれた。
*将来的には各議員も自分のボードを持って、有権者に報告し訴えれるようにすれば、そんなことができない議員は
 誰か、多分、今のところ殆どの議員が使いこなす以前に、訴えるべき何物も持っていないだろうけど、そんな議員
 をアブリ出せる。
*5年後、10年後には、こういうことに何の抵抗感も持たない世代が有権者の大半を占めてくる。そのためにも行政
 は独自のホスト局を開設して民主的な言論の場を早急に確保すべきである。
*さらにはCATVなどでの双方向(Interructive)の通信の利用が考えられる。
加賀市松任市も議会の模様を中継して茶の間で見ることができる。
*加賀市のケーブル放送は加入料2〜3万円
*松任市は農水省の補助で加入料は無料、工事費もタダ、毎月千円、議員の質問の仕方も議会の中での態度も変わった。
*金沢市は営利企業が行っているので加入時が8万円、毎月3千円というのはトンデモないことだ。
*通信事業法が改正されれば、この設備が電話回線として使えてしまう。そうすれば電話代タダで言論の場を確保する
 こともできるのに・・・。

下口氏
*日本の政治が官僚政治によって安定していた点もあるが、今後はやはり政治家が主導権を持たなければならない。
 (「政令にて云々」と書かれていない法律は? 諸外国では? ここに官権の根拠が!)
*そのためには政治家がキチンとした理想を持っていなければならないし、持った政治家が立候補できて当選でき
 なければならない。
*市役所職員など行政マンの、意識改革をしなければならないが、そのためには政治家自身が意識を高めないと結局は
 官僚に思うように踊らされるだけという状態が続く。
中谷氏
*今日はどうして負けたのかを中心にやりたかった。
*負けた原因は政策が無いからで、選挙民は政治家に期待しているが政策が聞こえてこない。
*パフォーマンスや人柄以上に求めているのは政策と手法である。
*倒産すべき政党が倒産しないのは、倒産したら代わってやるべき政党、スローガンではなく現実に基づいた政策を
 提言していく政党がないから(我々が創るべき?)
*青島・ノックは過渡期の現象で、あの人達がキチッとした政策を持っているとは思えない。

干場氏
*地方選挙はどれもそうだが、具体的な政策が何も打ち出されていないのは問題ある点だ。
*具体的な政策を打ち出すということは、口で言うのは簡単だが、極めて難しいことで、大変な勉強をして、大変な創造
 (想像)力を必要とする。しかし、その間に選挙運動は非常に沢山ある。勉強しながら政策を打ち出していくと、
 選挙運動ができない。
*政策を打ち出せば、票を入れてくれるのか、政策を聞いてくれるのがどれだけいるのか。

福田市議
*首長選挙と議員の選挙と違うかもしれない。(執行権の有無)
*極論すれば、議員の選挙は口のウルサイ、執行権を持つ人に辛口のことを言う人を選べばよい。首長はキチンと
 ヴィジョンを持って行政をシッカリやれる人を選ぶべきと思う。
*議員であってもヴィジョンを持って政策を打ち出せる人を選ぶのが筋だ。

斉官市議
*実際は辛口の議員は少ない。辛口だと票にならない。だから地元迎合型で何でもハイハイでないと・・・

干場氏
*だから政策を打ち出せば票になるのかということになる。
 (有権者不信、何%の有権者が政治的に賢明であり続けられるか?)

*ここで選挙のシステムが問題になる。候補者個人の名前を書く選挙は問題が多い。

その他
*最近の政局では、党で選ばれた比例代表議員が、離党して別の党の議員となっているが、離党すれば議員資格を失う
 のが筋ではないか。
*選挙法の問題点(民主主義の足カセ)
*地方の選挙でも国の法律に縛られて、自主的な改革はできない。(地方分権の必要性?)
*地方政治の問題点はマスコミもあまり取り上げない。時には、当事者となり利権に
 (マスコミのオウム化?)



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■ あとがき

 2時間の予定が4時間。用意された録音テープも3時間迄で、後の1時間が更に濃い内容だったような気がして残念である。出席者の胸の内にクスブって、後日、補足されることを願うのみ。時計を気にしながら、誰も中座せず、渋々、散会したのは翌日まで残すところ30分もなかった。

 今回の統一地方選挙戦のさなか、山野陣営にあって中川外司市議(当時)より、非常に示唆に富んだ言葉を聞いた。「目開き千人、目暗(盲)千人」
 これは坂本代議士に旧石川2区で雌雄を争った故稲村代議士が奉った言葉だという。すなわちクリーン(理想)選挙・政治を支持する有権者は1000人居るかも知れないが、そうでない有権者も1000人いる。或いはそれ以上かも知れない。自分は後者の票を頂く、との意味のようである。この言葉は中選挙区制が小選挙区制に変わっても、死語となるどころか、ますます現実味を増してくるのではないだろうか。

 その憂慮の念に、加賀市長選挙における下口候補と斉官市議の実験は、一服の清涼剤であり、大いに勇気づけられた。そして、この実験を引継ぎ、引継がれ、実験ではない当たり前のこととなる日を迎えたい。しかし、いずれ選挙法・制度をいじらずには済まない幾つかの問題点が浮びあがってきたようである。
 「政治理念の実現に再挑戦しようとする場合には、食べていけさえすればよいという訳にはいかない。理念の敵となるかも知れない人や団体に借りを作って生活する訳にはいかない」と以前に話された下口夫人の言葉が思い出され、干場氏もさぞやと推察する。落選しても「天敵」なしで自活できるような資格や能力を取得できる制度も整備されねばならない。7月23日投票の参議院選挙に、神奈川選挙区で帰化した青い目の候補が立候補している。是非とも議席を得て国政にも世界の視点での「新しい風」を吹かせてほしい。

 有権者という言葉は一般的に選挙(の投票)権を有する者にしか使っていないが、本来は被選挙権を有する者も有権者なのである。多くの有権者は政治不信を唱え、無党派層の仲間入りをする前に、なぜ被選挙権の有権者として行動しないのか。殆どの有権者の立候補を妨げているのは何か。投票率の低下を憂える前に立候補率のゼロ状態が問われるべきであり、今回のサブテーマ「なぜ立候補しないのですか?」が当会の内外で真剣に議論され、「こうなれば自分でも立候補できる」という理想を声高に主張していくべきだと思う。 その理想と思うものを『政治の秩序構想』と題して添付する。これは殆どが佐瀬昌盛氏の著書『西ドイツ・戦う民主主義』からの抜粋である。今回のテーマを、それなりにクリアしていると思うので、できれば本物を一読されることをお勧めしたい。経済学のホモエコノミクス(一切の義理人情や趣味などを排して、純粋に経済的に行動する架空の人間)と同様に、現実政治の選挙ともなれば、多くの有権者はホモポリティクスでありえない。理想に向かう強力なベクトルを伴に作っていければと思う次第ある。



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