本流を行く

本庄追分[WAV]

私の師匠は、Mさんと言う現在70歳代の女性で、その先生は秋田民謡の梅若梅清(うめわか・ばいせい)であり、更に、その師匠は三味線名人の朝野梅若(あさの うめわか)先生である。

つまり、私は名人の曾孫弟子という事になるのである。

朝野梅若−ういき


それなのに、いつまで経っても腕が上がらずで、先生方には誠に申し訳ない次第である。

三味線をやっていない人には(何、それ?誰なの?)って感じかも知れないが、これは、私にとっては非常に幸運なめぐり合わせであった。

初めから本物の民謡を、三味線を耳にすることができたと言うことである。

M先生はアマチュアですが、梅若梅清先生は秋田民謡のプロであり、津軽三味線でも(長谷川裕耕)と言う名を持つ大師範である。

朝野梅若先生は改めて言うまでもない。日本一の民謡歌手を何人も育ててこられた秋田民謡の第一人者である。

私の周囲にも民謡会は沢山あるが、流派によって三味線の手というものは様々である。

そんな中で幸運にも、最初から本場の津軽三味線と秋田三味線の音に触れることができたのだ。

三味線を聞くだけならCDなどで楽しむ事もできるが、やはり、生の三味線は全くちがう。

ましてや、本場のプロの音には心を揺さぶられる。心にしみてくる。

僅かに数回だけだが、梅清先生の生音を聞かせていただいたことがある。

プロの音には一音一音に何か意味があるようだ。

小さな音、細かい音、優しい音、柔らかな音、強い音、硬い音、大きい音……

また、それらの音やリズムには(キレ)というものがある。 更には、弾き手の気迫と言うかエネルギーを強く感じる。

特に津軽三味線では、そのダイナミックでリズミカルな音の奥深くに、奏者の感情が色濃く表現されているように聞こえる。

だからこそ、鳥肌が立ったり、泣けてきたりするのではあるまいか。


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