ドミネ・イエズ

Midi Domine Jesu(主イエスキリスト)

■6月17日「火曜日 PM7:00〜9:00」 7: ドミネ イエズを歌う

私は4年前の1999年に合唱団に入会させていただいた。 もちろん、音楽が好きで、歌うことが好きだったからであり、合唱団に参加したいと言う、ずっと以前からの思いがようやく実現したのである。

合唱でイメージするのが、年の瀬に各地で歌われるベートーヴェンの第九であろう。 私も、この第九が歌いたかったのである。

市民合唱団と言えば、第九を歌うものだとばかり思い込んでいたのである。

市の広報に「市民合唱団員募集」とあるのを見つけて、思い切って申し込みをしてみた。 だが、戸惑いもあった。視覚障害者でもレッスンについていけるのか、歌えるのか、レッスン方法は…

それと言うのも、他の合唱団の話ではあるが、視覚障害故に入会できなかったと言うことも耳にしていたからである。

担当の市民文化事業団に確認の電話を入れてみた。

「あのー、合唱団に入りたいのですが…」

「はい、どうぞおいでください」

「あのー、視覚障害ですが大丈夫でしょうか」

「合唱のけいけんはありますか」

「いいえ…小学生の時に少し…」

「問題ないとおもいますよ、お待ちしていますので どうぞおいでください」

案ずるより産むが易しである。

残念ながら、高岡市民合唱団では「第九」ではなくて「ミサ曲」であったが、思いがけず、ミサ曲の奥の深さを知ることができた。

こうして、ライフワークともいえる合唱がスタートしたのである。

前曲のラクリモーサが特別にインパクトの強い曲だったために、ドミネ イエズは私の中では非常に印象の薄い曲だった。

だが、実際に歌ってみると、これがまた、なかなか素敵な曲なのである。 また、曲調もラクリモーサとは対照的で、テンポが速くて明るく爽やかで楽園をイメージさせられるような曲であり、ラクリモーサとは見事に対比していると思う。

ドミネ イエズはテンポが速いこともあり、なかなか難しい曲のようだ。

難しく感じるのはテンポが速いばかりではなくて、耳慣れない新しい歌詞が多いことが一番の原因と思われる。

デフンクトゥルム インフェルニ プロフンド デ オレ レオニス ネ アブソルベアトゥ ネ カダントゥ イン オブスクルム などの言葉は今回初めて耳にする言葉だ。

メロディーが分かっていても、新しい言葉は思うように口に出てこない。

「え〜っと 次の言葉は?」と思った瞬間、次の歌詞が思い浮かばない。歌詞につまずいて歌えなくなってしまう。

何とも歯がゆいが仕方が無い。 何度も聞いて、何度も歌って、理屈ぬきで脳にインプットするしか方法はない。

♪エトゥ セニニ エユス もう一つのポイントが歌い出しのタイミングである。

4声が一緒に歌っているか、あるいはパートが連続して歌っている場合では特に問題ではないが、この曲のように、4声が追いかけっこして歌うケースでは、パートの歌い出しのタイミングが難しい。

2・3拍程度の短い休符は取りやすいが、数小節の休符後の歌い出しとなるとタイミングが取りにくい。 ドミネ イエズでもそうした箇所がいくつかある。

伴奏をしっかり聞くか、隣のテノールの声を聞いてタイミングを取るしかないのだが、これがなかなか難しい。

私は指で腿を打ちながら「1 2 3 4 2 2 3 4…」などと数えているが、思うようには伴奏とは合わないのである。

■6月24日「火曜日 PM8:30〜9:00」

この日は、仕事の都合で家を出るのが少し遅れた。 30分程度の遅刻を覚悟して万葉線を待ったのだが、これが、いつまで待ってもなかなか来ない。 急いでいるときほど電車は来ないものである。

通常は15分毎に来る電車も、午後7時以降は30分間隔になることをすっかり忘れていたのである。 レッスン会場の市民会館に到着したのが8時過ぎだった。

やがて、ステージでの合同練習が始まる時間である。 これから、パートのレッスン教室となっている2階へ上がっても、椅子に腰掛けたとたんに席を立つはめになってしまう。

仕方なく、すてーじ横でアルトのレッスンを聞きながら他のパートが降りてくるのを待つことにした。

そこで私は思いがけない発見をした。 ステージで歌っているアルトの歌声が以外と美しいことに気付いたのである。 4声で一緒に歌っているときは、あのように美しくは聞こえてこない。 はっきり言って、私を含め、各パートも声が出ておらず、音程もリズムもがちゃがちゃで、まだまだ合唱になっていないと思う。

ステージで自分が聞いている声と、会場から聞く歌声とは違うようである。 ステージの反響効果と言うか、会場の音響効果というか、私達の歌声を数段も美しく響かせてくれているようである。

思いがけない発見で私は妙に勇気付けられ変な自信を持ったのであった。 自分たちのレクイエムが、どのような合唱になっているのか、機会があれば一度会場でゆっくり聞いてみたいものである。

結局、この日は僅かに30分歌っただけだった。 ステージでの合同練習では、第7曲のコンフターティスから、ラクリモーサ ドミネ イエズと通して合唱する。

音程をしっかり取ること、言葉の発声法、特に子音をはっきり言うこと、地声で発声しないこと、緊張感を保ちながら歌うことなど、先生から細かな指摘をいただいた。


オスティアス

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