1: イントロイトゥス レクイエム「入祭唱」

Midi Requiem(入祭文)

■4月22日
今日から第1回練習が始まる。定期レッスンは毎週火曜日の19時から21時までの2時間となっていて、その他に月に1度、日曜日の午後に全体練習が予定されている。
練習は、ソプラノ あると テナー バスと各パート毎に分かれて行われるが、男声は人数が少ないこともあり一緒に行っている。 20時30分までがパート練習で、その後ステージで合同練習となる。

第1曲のレクイエムを階名で歌い始める。 私は未だ何の前準備もできていないので歌詞はもちろん、階名も判らない。
伴奏のピアノや先生の声 メンバーの声に注意をはらいながら練習模様をカセットに録音する。この録音テープが明日からの私の貴重な練習教材となるのだ。

練習はイスに腰かけて行う。初心者や自信のない人ほど先生から離れた後ろの席に座ろうとするが、これはかえってマイナスだ。 後ろの席ではパートの声が全く聞こえてこない。 前に座った方が上手な人の声が後方から耳に入ってきて正しい音を聞き取ることができるのである。 私はいつもTさんやSさんの隣か前に座らせてもらっている。

♪ラーラソソラーシードーシーラーシー… ほとんどの人が、結団式の日に購入した楽譜に階名を書き入れて読んでいる。 適当なフレーズで区切ってバスとテナーがパートを交互に歌い、その後で一緒に歌う。

♪ラーララララーラーラーラーラーラー… 階名が読み終わったところまで「ラララ」で歌う。 言葉の切れ目の箇所でブレスするようにと先生から注意が出る。

覚えたばかりの短いフレーズを他のメンバーに合わせて口ずさんでみる。 楽譜もないし練習も始まったばかり。外れて当たり前。失敗を恐れてはいけない。とにかく声を出すことが大切と先生は言う。

ラーラーラーラ…おもいきって大きな声を出してみた。喉が痛くて声が出ない。 どうも今日は喉の調子が悪いようだ。どうやら未だ基本的な発声ができていないらしい。本当はもっといい声なのだと自分では思っている。

♪レクイエム エテルナム ドナ エイス ドミネ。 ラテン語は、ほとんどローマ字読みに近い読み方で発音するらしい。

喉の声に頼らないようにする。声の幅を一定に保ち響かせるようにする。薄っぺらい声にならないように、かっこよく演技して声を作る。皆さん一人一人が声楽家ですよ… ラテン語の歌詞の一言一言の発声について細かいアドバイスがある。

♪エトゥ ルクス ペルペトゥア ルチェア エイス  エクサウディ オラツィオネム メアム アド テ オムニス カロ ヴェニエトゥ

今回のモーツァルトは1曲が比較的短く、ほとんどが50小節前後だ。ちなみに第1曲の、レクイエムは48小節である。 以前のミサ曲には1曲が300小節以上、15分近い大作のものもあった。

時間の関係もあり、レクイエムは半ば強引に、階名、ラララ、歌詞と最後まで進められた。 私の耳には階名とメロディーのイメージが少し残っただけだった。 明日からは録音テープを聞き返しての楽譜作りなどが待っている。

おだててみたり、すかしてみたり、お経や太鼓の話し、富山弁での冗談も交えてM先生のレッスンは実に楽しい。2時間はあっと言う間に過ぎてゆくのである。

■4月29日

この1週間に、パソコンで自分だけのテキスト楽譜モーツァルト「テキスト楽譜」を書いた。 合唱するためには楽譜は絶対に必要だ。レッスンの録音テープやCDだけでは歌うことはできても合唱することは不可能である。

幸いにも妻が少し楽譜を読むことができる。 いくらパソコンが使えても誰かに楽譜を読んでもらわなければテキスト楽譜の作業は成立しない。その点において私は幸運だった。

テキスト楽譜が出来上がると、録音テープのパートの声を参考にして1音ずつ階名や音長などが違っていないかを確認する。 弱視の彼女には音符や記号などを見まちがえるケースも多いからである。

テキスト楽譜の読み返しと録音テープの聞き返しを繰り返しながら先ずは階名を覚える。 これは1音ずつの高さと長さをしっかり認識するために欠かせない行程だ。 なかでも、半音記号のシャープやフラットなどの付いている音は要チェックである。パートの中で一人外れた声があると、特別に浮いてしまうし、全体のバランスが崩れてしまって合唱にならない。

階名がある程度わかったところで次にラララでメロディーを歌ってみる。 録音れーぷやCDに合わせてメロディーを口ずさむ。 途中に入っている休符の長さをチェックする。 これも重要なポイントだ。指揮者を確認できない私は、この「間」を認識していないと一人だけパートから飛び出してしまうおそれがある。

忘れている箇所や外れている箇所をテキスト楽譜を開いてチェックする。 階名とメロディーが安定したところで、テキスト楽譜を読みながら歌詞を1音毎に割り振ってゆく。 そうしてまた、フレーズを短く区切って録音テープやCDと合わせて歌い、テキスト楽譜で再チェックする。

毎日この作業を繰り返して覚えるしかない。とにかく暗譜するしか方法はないのだ。

この1週間でレクイエムはほぼ暗譜できたと思っている。とは言っても、それは自分の中だけの話で、メンバーと合わせるには今暫く時間が必要だ。 それなりに練習に着いていける程度に歌えると言ったところであろう。

この日のレッスンには、都合により前半のパートレッスンの90分だけの出席となった。 先ずは前回のレクイエムを歌う。ある程度の暗譜ができていたのでメンバーと合わせることができた。

♪レクイエム エテルナム ドナ エイス ドミネ ゆっくりと、しずかに、重く深く祈りをこめたメロディーが流れてゆく。

声が浮いてしまわないように、声の太さを同じに、のんべんだらりと歌わずに、感動を、色を付けて訳詞に合った声を作りなさい… 先生からは細かい指示が出るが、外れないように歌うことで精いっぱいで、訳詞を読むなどの余裕は全くないのである。 訳詞も一般楽譜に添付されているのだが、それに目を通せるのは、まだまだずっと先になりそうだ。


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