十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
朝の冷気を
引き裂いて
飛鳥の鳴声
軒端を過る
ほとぼりに
目覚めるか
隔離された
身体を導く
緩傾斜の街
過ぎ越し縁
遠去かれば
日々新たに
案内されて
天ざるそば
の温に冷酒
何もしない
有りからも
味わう無が
何も知らず
何を話すか
公園の雀ら
小さく細い
足跡が残す
残雪模様に
散りばめた
橇のように
枯葉浮かべ
出来ない事が
できる未来に
影を投げかけ
剥がれ落ちる
あたりまえが
うすらぐ日常
群れなす雀が
飛び立つ先に
どんな未来が
お会いでき
稀なご縁に
はぐくまれ
内に作らず
外に拘らず
自分が直に
できごとや
環境を感じ
内外ともに
上書きする
日々の頁が
更新されて
一つになる
体感能力が
ブーストし
静まり返る
界隈の積雪
撓む枝振り
ひとり歩く
住んでいる
界隈の散歩
自転車だと
足に伝わる
上りと下り
寒暖の差に
定まらない
着物に食事
娘夫婦らと
パスタなど
食べ比べて
寄る年波に
鈍くもなり
鋭くもなり
乗り手失い
玄関で傾ぐ
自転車の轍
家族ごとに
花の好みを
言えようか
崩れる牡丹
祖父が耕す
仏花の畑に
落ちる椿は
母の好みの
庭木の陰で
枯れる薔薇
一本だけが
五十年越し
萎む朝顔は
夏の姉弟の
水やり当番
溢れる梅と
散る桜から
舞う菊まで
買い物など
二人の時は
しなかった
買い忘れが
いざ一人に
なると常習
雪吊り姿で
帰りを待つ
無言の庭木
軒端越しに
耳を澄ます
独居の物音
部屋ごとに
肌合い違う
家族の余韻
思い返せば
凡て年長の
庭木の樹齢
雪吊り後の
縄屑も無い
庭に陽射し
接触しない
樹冠の縁を
辿るうちに
山歩きから
迷い込んだ
広葉樹の夏
霧が湧いて
役立た無い
地図や磁石
晴れるまで
待てなくて
動き出せば
重力に従い
崖っ淵避け
沢音が招く
萎えた花を
間引きして
新しい花の
一夜越した
凄い水揚げ
花瓶も軽く
重なる腰椎
杖のように
辿る路地で
読み捨てた
頁のごとく
散らばって
見上げれば
剥き出しの
象形文字か
木に横棒を
差し込めば
本の一言が
山岳と海を
隔てる狭い
平野の傾き
読みさしの
本を伏せた
甍の向きが
吉本さんの
8月15日の
敗戦の海や
秋の夜空を
赤く染めた
大火の記憶
猛暑の夏を
錦秋の秋へ
乗り越せた
空白の頁に
脆い身体が
透けて見え
日差し浴び
銀杏並木を
私服で歩く
退院までの
お仕着せの
ジャージー
下着なども
全員一律に
着込まされ
消え入った
無意識こそ
下着の闇に
他人の声に
心を奪われ
息切れても
着替えれば
治療表現の
隙間時間が
二百七歩で
往復できた
院内の廊下
折り返せば
立山連峰と
富山湾まで
四階からの
パノラマが
一望の東西
一人暮らす
寂しさ彩る
庭の紅葉に
日差し浴び
落ち葉拾う
指先が震え
枯葉を洗う
融雪舗装の
放水テスト
妻と歩いた
猛暑の路の
買い物帰り
側溝に潜む
病葉が夏の
名残を隠し
想い返せば
民間療法の
症状即療法
亡くなって
姿を現わす
自然な身体
老いに潜む
抑鬱症状が
手を繋いで
蔵書破壊が
話題になる
図書館報道
本の破壊が
常態だった
精神病棟で
抑圧された
子供の頃の
隠れ場所に
手を届かせ
救い出せる
大人の会話
二ヶ月ぶり
帰宅できた
剪定後の庭
弱っていた
段作り姿の
柘植が幻に
聴き入る
肌と皮膚のあいだ
書いている 考えること
聴いている
空と海のあいだ
波打つ言葉の穂先
する と している
分けいる できる
分かるまでも
感じていること
感じている自分
生身の音楽[カラダ]だから
拍のまとまり
場が立ち騒ぐ
感覚の固有躁
とある範囲で
すぐにも変わりうる
しゅうちゅうと集注
〈契機〉とか〈縁〉とか
〈脱〉の実現
非宗派的な信仰生活者
〈超〉の不可能性
天変地異〜森羅万象
人・事・物の真性
無自覚な皮膜
楽器[アナタ]か音楽[ワタシ]か
乗りのよさに
瀬戸際のできるか
できないかの境界線[ヨロコビ]
幼少期の宝庫
思春期の黄金律
石ッコ賢さん*
無意識層を掘る
〈中空〉の洞窟描写[スケッチ]
大地と天空を拡げ
こころが動く空間[スキマ]
「意識」を〈意識〉できず
〈夢〉そのものになれば
「夢」見ることもなく
不可分な「夢身体」[ユメウツツ]と身体[カラダ]
になること 鐘を打つ時間[トキ]
何処で誰と何を聴くか
無意識の焦点化
夕日の呼吸と深呼吸
祖父が遺す
盆栽の欅が
枯れた形見
台風で傾く
幹を支えた
枝葉の嘆き
林から森へ
山歩き誘う
樹々の語り
街路樹など
刈り込まれ
緑陰の散会
野鳥の飛来
窓越し見た
大樹の伐採
命を愛でる
女人の様な
樹木の存在
女郎蜘蛛と
黄金蜘蛛が
常連だった
蜘蛛の巣が
跡形もない
庭に打ち水
散水に輝く
虹色の傘が
揺れ動かず
植え込みに
潜む影なき
棚蜘蛛の穴
水滴避けて
逃げ込んだ
奥の院から
木霊す響き
が供養する
柘植の枯枝
お盆過ぎに
朝夕隔てぬ
アキアカネ
目立たない
秋の気配が
低空飛行で
庭草避けて
干からびる
蚯蚓の亡骸
堆肥の中を
手探りした
川釣り記憶
老い耄れた
身体を探る
骨格の軋み
折りたたむ
運動を離れ
螺旋の動き
定食などの
ボリューム
胃にあまり
硬めの飯や
御菜なども
喉を通らず
夫婦ともに
老い疲れで
お墓参りも
覚束なくて
お墓の写真
飾って眺め
仏壇を前に
手づかみの
物足りなさ
あちこちに
迫りくるは
生の枠組み
猛暑の庭を
覆い隠して
揺れる雑草
老い枯れる
段作り柘植
住人に似て
祖父の手が
職人二代に
引き継がれ
その時々の
見る影ない
半世紀の果
剪定を重ね
玉作りから
様々な形へ
形崩れして
一人稽古に
踏み止まる
思春期こそ
想い想われ
振り振られ
恋の暖簾が
男女を隔て
資質の闇に
神獣ならぬ
獣道が誘う
浮世の性が
またとない
一期一会に
擦れ違うか
偶然ならぬ
積み重ねが
導く歪みに
見え隠れる
原点に届く
煌めく初心
議論もせず
耳も貸さず
ひたすらに
彼方此方を
彷徨い訪ね
起伏の律動
夏の連山に
冬の独峰の
スロープを
引き剥がす
谷間へ傾き
くねる稜線
響き広がる
遺伝子から
楽譜読めず
分解と生成
の両端から
零れ落ちて
補虫網から
取り出した
夏休みの虫
裾を捲って
Tバックの
美尻を晒し
振り返った
夏の笑顔に
朝顔が匂う
田舎を抜け
郊外までの
自転車の旅
乗り換えた
タクシーで
猛暑の買物
二次疲労の
ブルースが
漏れ聴こえ
細い角材と
竹籤で組み
立てた虫籠
格子を通り
抜けた風に
紛れた昆虫
罫線で時を
刻みつけた
日時計花壇
山岳信仰の
裏の装景に
秘められた
男女の性に
恋愛の華が
咲き乱れて
軟乳の丘に
倒れ伏した
少年の胸中
暑くて刈り
切れぬ庭草
掻き分けて
格子を抜け
夏戸に届く
青大将の舌
天井裏から
鼠を追って
下り来たか
梯子を登り
入り込んだ
あまの心地
くねる様に
事に耽った
蛇行の直進
中二階から
覗き覗かれ
民家暮らし
庭に虫など
見つからず
舗道歩けば
萎れ果てた
花萼が虫の
死骸に見え
美味しいと
美味しそう
な店の差に
昆虫食など
以ての外の
少子化進行
知行合一が
文武両道の
繁殖行為に
凹凸の歩で
身体時間を
割り込めば
猛暑続きに
怠いなどと
言うも怠く
裸体からの
脱皮果たす
変態美から
老体までに
纏わりつく
虫の耳まで
田植え枠を
転がす音も
聞き忘れて
和らぎ輝き
匂い導かれ
花開く律動
重心転がし
透かし見る
日時計花壇
水辺の独奏
二人乗りの
自転車の音
暮らす歳月
二人合わせ
割戻せない
人知らずが
人を責める
振りをして
自分の失敗
見落とした
海辺の砂丘
波の華散る
松林抜けた
風の行く手
二人の間を
取り持った
水源の響き
とりあえず
魅惑の丘と
扇状地から
呼び覚ます
楽器が先か
音楽が後か
入れものと
器が奏でる
極上の心地
仕方もない
行き詰まり
の成せる業
絡み合って
解けなくて
縺れただけ
別れぎわの
瞳の輝きに
寂しい予感
草刈機から
掃除機まで
コードレス
巳はみんな
已になかば
己はしたに
内に向かい
中に入れば
奥はどこに
独峰の俯瞰
滑降すれば
樹氷の蠕動
家の内外を
自在に縛る
多面出入り
埋め合わず
取り違える
多層な表裏
山の端上る
梅雨の満月
傘寿も過ぎ
夜風に緩む
下駄の鼻緒
絡み合えば
背中で星が
瞬き囁いて
行方知れず
行き帰るは
草地と砂利
噛み分けて
痕跡を辿り
軋む観覧車
誰彼もなく
人影浮かぶ
一夜明けた
中空あたり