十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)

最終更新日:2022/07/01

気掛かり(22.06.28)

空梅雨でも
猛暑日続き
夏バテ気味

老化の流れ
乗り合わす
高齢夫婦に

夏場に強い
なんて嘘の
蟹座生まれ

健康診断も
国政選挙も
自他ともに

信じられる
社会成熟が
あってこそ

内なる自然
気付くべき
外なる自然

導觀路(22.06.24)

眺め触れた
庭の昆虫の
行方知れず

余震の能登
未明の月に
並ぶ7惑星

探し眺める
体内が宿す
臓器の配列

老い過ごす
ほどにいま
ここにある

だけで凄く
途轍もない
身体の現存

歩けば歩く
程に逸れる
似非matrix

座り消し(22.06.21)

座りも緩む
腰回りから
加齢と老化

時鳥が囀る
朝の来ない
不眠の夜明

寝返る腸や
骨や筋肉の
左右裏表が

気分も良く
透けて見え
ないならば

振り返らず
折り返せば
老いの節目

骨格無くし
贅肉垂らし
歩くだけに

罫線仕様(22.06.17)

上下からや
前後左右に
内外もあり

そして裏表
引き回せば
掬われるか

痛みに触れ
恐怖が視え
不安を聴き

不穏が臭い
切れ切れな
味覚の明滅

全部違って
みんな同じ
という前提

村意識から
織り上げた
木虫籠の目

左右裏抜け(22.06.14)

朝焼け雲に
郭公の声が
谺す寝起き

座右離れて
書架の高み
居並ぶ古本

本の天から
零れ落ちる
劣化の埃を

確かめ払う
手足が上り
下りる踏台

読みづらい
字面よりも
著者肖像の

頁から左へ
捲り続けて
背表紙裏へ

右往左往(22.06.10)

格子模様の
水田が映す
遠い田祭り

古民家から
町屋までの
木虫籠の幅

振り回した
たも網から
落ちこぼれ

屋根裏から
古畳からも
縁の下まで

追い回され
行く先々へ
叩き出され

行き詰まる
身体の奥に
取り残され

地動説(22.06.07)

ひょろりと
風に揺れる
雑草の群れ

ゆっくりと
バリカンで
刈りきれず

なぎ倒した
に過ぎない
作業疲れに

立っている
庭木の疲れ
知らずの陰

地の動きに
沿う立木の
微かな揺れ

より大きな
働きとなる
僅かなズレ

挙手景観(22.06.03)

季節を巡る
虫を狙って
庭に訪れた

小鳥の姿も
忘れ去った
庭木の陰で

今にも崩れ
そうで崩れ
ない石灯籠

消し去った
火打ち石が
灯した静寂

茅葺屋根を
跨ぎ越した
甍の家並み

囲炉裏塞ぎ
反り返った
柱の罅割れ

交差像(22.05.31)

横書きの雲
縦書きの雨
肌触り交差

畳み込まれ
左右に惑う
処世の裏表

還元される
標高の差と
地形の違い

対癖狂わす
魅力の体壁
探しあぐね

護送船団に
収まらない
落ちこぼれ

体型と姿勢
融通無碍に
はみだせば

回帰基地(22.05.27)

川面を断つ
釣り糸から
目を離せば

ゆったりと
通り抜ける
裸身の影に

覗き込んだ
性の両岸に
明け渡され

雌雄を別つ
釣果を競う
三枚下ろし

放流地図を
試し尽くす
俯瞰視線が

肉体を離れ
遡行すれば
身体の極み

異相(22.05.24)

免許返せば
ドライブmy
ボディの道

足腰迷えば
下駄を履き
傾く右側へ

行き止まる
幅があれば
左へ寄って

入口出口も
分からない
身体が孕む

縦書き文を
奥から前へ
読み解けば

隣合わせに
向き合った
沈黙の相聞

普通と稽古(22.05.20)

右で守れば
残り時間が
気になって

効率を考え
整理をする
身繕いだけ

裸身を覆う
無駄や面倒
そのままに

左右分かつ
糸のような
言葉の像が

波紋を纏い
体癖が刻む
偶数と奇数

縦に数えて
西方浄土へ
向かう速さ

御来光(22.05.17)

等高線から
まじわれば
上り下りに

状態線から
這い回れば
右から左へ

交差軸から
登りつめる
山頂の輝き

独峰を綴る
手書きから
縦走の谷へ

母の匂いを
跨ぎ越して
仰ぎ見れば

山並み遠く
近く波動が
響き寄せて

処女地(22.05.13)

縦書きの指
探り当てる
出生の粘り

舐め動いて
闇に潜めば
泡立つ契機

黙契の波に
包み込まれ
深まる角度

貝の呼吸で
舞い上がる
海底の砂が

海面に巻き
上げる幻の
島の浜辺で

打ち寄せる
母の瓦解に
我を忘れて

薫風(22.05.10)

五月の空を
孕んで走る
自転車から

降り立った
手足が辿る
縄文の眺め

握りしめた
胡桃を包む
村人の幻想

父母を遡る
無意識から
取り残され

切れ切れの
身体が時と
場を超えて

繋がったり
筋骨離れて
神仏と想像

異人譚(22.05.06)

突き放され
戻れないで
独り舞台へ

見え隠れる
母の物語に
立ち尽くし

通りすがる
角度が匂う
Y字路の奥

紡ぎあって
離人化する
縦糸と横糸

織り模様の
可動域から
綾なす角度

弱さの自覚
気付く程に
因果の果へ

天空まで(22.05.03)

春風を受け
秋風に晒す
雑踏を離れ

渚や川原で
夏の局部の
アフター5

色とりどり
決闘させた
田舎の裏庭

目見えては
母性の引力
気づかされ

擦り剥いた
唇と膝頭が
記憶する匂

ゴム製虫が
骨抜かれて
夕焼け雲に

帰還(22.04.29)

aとtheから
挫折したら
若葉の季節

身体を満す
狂おしさが
芽生えたか

苦手の数学
がとりもつ
縁に捌かれ

棲み分けた
街と田舎の
境界の混沌

裏表もなく
言葉以前に
紡ぎ出され

父を殺して
母を生かす
出生地まで

心身無尽(22.04.26)

決め手なら
身体に深い
縦書き文体

横書き文で
見失われる
殺戮の出自

武器以外は
戦地調達を
擦り抜けた

出生地から
梨の礫まで
抉り出され

近代崩れの
無表情から
横紙破って

心身を分け
隔てのない
握力で探る

波動(22.04.22)

目は前の方
耳は後ろで
匂う下へと

見下ろせば
丘から沢へ
左右の触覚

三点支持の
第一関門が
開け放たれ

閉ざされた
火口を開く
未知の境界

洞窟の奥へ
掻き出した
潮位と船底

微塵の歯型
痺れ震えて
登攀と下降

共振(22.04.19)

揺らぎから
とどまろう
とする働き

波動の先に
盛りあがる
谷間の呼吸

上手く揃え
たようでも
上手く違え

るだけでも
命の機微が
結び合って

表から裏へ
裏から表へ
生き抜ける

表裏一体を
そのままに
受け取って

工作者(22.04.15)

釣り上げて
見てわかる
縦縞と横縞

ストライプ
好きな男と
女の交差線

水族館から
動物園まで
繋ぐ縞模様

闇の斜面で
上下に絡む
縞蛇の群れ

おたがいの
腹は見えて
見えない背

縦横自在な
割れ目から
響く斧と鉋

散り際(22.04.12)

木の芽時の
ふらつきで
歩きにくく

低車高なら
跨ぎやすい
妻の自転車

辿りつけば
花筏が綴る
葉桜の余韻

さがせども
退くように
身を隠して

敷き詰めた
花弁が隠す
古老の人影

風に散り花
巻き上げて
傾く桜並木

春夢繚乱(22.04.08)

公衆電話で
隣合わせた
メガネ美人

人伝の縁で
一宿一飯の
岡大学生寮

それぞれに
自分の信を
自覚する心

素膚の奥に
他者を敬う
無為の表情

何が信仰か
客観的じゃ
ない理性が

春雨に煙る
一人旅での
宇高連絡船

光背力(22.04.05)

背戸の景色
背負わせて
ガラス障子

タバコ盆を
たたく音が
空に消えて

きざみ残る
三点支持の
足裏の響き

昼寝を挟み
担ぎ残した
背嚢の距離

お天道様が
数えきれぬ
後光の配慮

縦に割れた
背後に潜む
自在な複雑

繋ぎ魂(22.04.01)

見えないが
背負ってる
後ろの何か

気にしない
力と根拠が
前に向かい

行き過ぎず
気づかない
老いの場に

馴染まない
身体具合を
振り払えば

何が来ても
関係なくて
気にならず

胃腸が渡し
胴が進めば
手探り掴む

どこ吹く風(22.03.29)

雪害もなく
過ぎこせた
庭に春嵐禍

小枝を折り
根を残して
古木を倒し

片付け前の
雪囲いなど
吹き倒され

想定外など
逃げを打つ
詰めの甘さ

老いるほど
だらければ
見えるもの

ゴロゴロと
寝返る体で
分かること

飽き迷路(22.03.25)

山道で迷う
前に学校で
自分を失う

方法を学ぶ
子どもから
大人になり

習慣の筏に
協調すれば
気づかない

乗り合せた
友達も同じ
流れに乗り

聞いて学び
見て学んで
飽きてきて

子ども同志
直感で学ぶ
なぜ生きる

背信路線(22.03.22)

乗り合せた
廃線の中で
見失なって

身構えれば
囚われ易い
苛めや洗脳

反応すれば
するほどに
狭まる視界

体型が抜け
答の在処に
囚われた頭

呪縛される
縮小体型へ
嵌め込まれ

身体溶かし
液状化する
停止線まで

命も力も(22.03.18)

消え去った
庭の根穴の
寄る辺なさ

托鉢ものに
蓋をしたら
翻った余力

勝手気まま
弄れなくて
持てあまし

手を拱いた
脱力視線で
眺めるだけ

頁を開いて
読み進めば
目で聴く音

作品ならぬ
道無き道の
外から内へ

遺跡逍遥(22.03.15)

白梅紅梅が
揺れ動いて
骨絡みの枝

所在無さに
床を捲って
穴倉の里芋

迷い抜ける
浜辺で拾う
貝殻合わせ

気恥かしさ
嗅ぎ分ける
土偶の欠片

匂う生壁に
押し付けた
嫌悪の物語

腑分けした
体内地図が
食い破られ

啓蟄散策(22.03.11)

一見すれば
踏まれない
草叢のよう

そよぐ風が
撫で分けて
通う下草道

匂い誘われ
纏わりつく
息遣いから

探り当てた
鞍部を跨ぎ
春の斜面へ

土掻き分け
雌株と雄株
立ち煌めき

薫る窪みに
沁みる響き
海への源流

初見(22.03.08)

庭の斑雪に
辿り着いた
見えない跫

男から女に
手渡された
若いエロス

初乗りした
二人乗りで
書き変わる

手紙言葉が
身体の奥へ
溢れた日に

仕損なうが
死に損なう
祖父の口癖

公界からが
聞き違えて
苦界からに

呼称網(22.03.04)

人がヒトに
乗っかって
歩き続ける

歩く無駄が
呼び覚ます
気づき稽古

田舎庭から
五十年前に
郊外宅庭へ

移植庭木の
隔たりから
共存感へと

人格を認め
さんづけの
挨拶交わし

手足の先へ
枝分かれる
縦割りの光

老いの庭(22.03.01)

雪解け庭の
水たまりに
逆さの庭木

翁と般若の
一位彫りが
背中合わせ

面を隠せば
幹が抜けて
枝葉だけに

立ち竦めば
親子継いだ
骨格が消え

立ち歩けば
大口海鞘に
吸い込まれ

老若泡立つ
軟体動物の
立居振舞い

独り往復(22.02.25)

凍てついた
道を歩いて
朝ゴミ出し

息を吸って
歩くだけで
通りが過ぎ

簡単な事を
何度となく
やってきて

季節により
日によって
違う体調が

未熟に育ち
老いる事に
裏切られて

骨抜かれた
骨格を消し
去る歩みに

融雪散歩(22.02.22)

降り積もる
碁盤目状の
街並み散歩

飛び跳ねる
融雪水避け
阿弥陀籤を

辿るように
折れ曲がる
道筋の選択

逸れ続けて
洗脳された
高麗鼠の脳

無意識から
弾き出され
縦割り身体

数えきれぬ
0と1から
抜け出して

夢路(22.02.18)

分け入って
墜落し損な
った秋山で

滑落免れた
縦走路での
引っ掛かり

軽い体重や
荷物の幅に
助けられて

墜落夢から
飛翔夢経て
迷子夢まで

ドローンを
叩き壊した
ブーメラン

追いかけて
生命空殻に
追い抜かれ

体感宇宙(22.02.15)

季節と体が
擦れ違えば
自転と公転

スキーから
自転車まで
繋いだ季節

動き違えば
身体各部が
擦り合わせ

擂り鉢状に
老いの共感
振りほどき

骨折回復中
の妻と歩く
ナビモード

切り分ける
天動説から
地動説まで

消失体(22.02.11)

冬の鉢巻が
凹む植込み
持ちこたえ

梢の囁きが
雪吊りから
伝い落ちて

雪解け庭の
枝葉の影で
仕切られた

庭土が翳り
根元に浮く
器官なき木

曲がり果て
雪折れから
立ち直って

痕跡を残し
限定された
場面の往還

冬の鏡(22.02.08)

握りしめた
雪玉の芯を
抜き出して

放り投げた
庭木の枝が
落雪に震え

融雪歩道に
消え残った
凍結の地図

雪解け匂う
風が運んだ
氷柱の傾き

獣道ならぬ
買物歩道で
見ず知らず

つかのまの
晴れ間から
溢れる挨拶

寒暖風触り(22.02.04)

街道を挟み
仕事場まで
住居と往復

薄暗がりの
田舎の厠で
寝ぼけ眼に

谷筋の風が
吹き上げた
トイレの闇

山小屋から
季節を吹き
抜けた眺め

庭を作って
魔神を避け
豊作を祈り

神棚の高さ
身を畳めば
仏壇の低さ

袋小路(22.02.01)

壊し掴んで
重機揺らし
積み重ねて

路地の陰に
古き木造の
郵便局の跡

米屋時代に
運ぶ一俵の
60kgから

ビニールか
紙袋の5kg
や10kg入り

ゴミ袋へと
使い回せば
遠のく重さ

忘れ果てた
身体感覚も
行き詰って

未踏疾走(22.01.28)

ご当地から
ロケ便りが
届く映画で

振り返って
漕ぎ残した
自転車道路

出番遠のき
沈みがちで
玄関に鎮座

回し続けて
燃え尽きる
までもなく

見放されて
乗りこなす
速さと距離

翳す忘却の
湾岸自転車
ロード地図

冬場凌ぎ(22.01.25)

神棚が庭で
庭が神棚に
置き変るか

量と質から
極めにくい
睡眠や食事

動物的にも
植物的にも
見計らって

生産性など
問われない
料理の稽古

食材求めて
凍結歩道を
回避すれば

楽しい事や
不愉快事も
漕ぎ分けて

模写(22.01.21)

手をつなぐ
図鑑好きの
孫との散歩

出会う虫の
名前は言え
ても触れず

蟷螂を掴ん
で見せたら
泣きだした

祖父の躯に
身を背けた
甥や姪たち

吐瀉物から
排泄物まで
鷲掴みする

感覚経験が
我ならざる
我を演じて

三つ巴(22.01.18)

張りつめた
線から点へ
差し合わせ

始まるのが
事物が先で
言葉が後で

揺れ柳腰に
結ばれた個
から他まで

命と身体の
はじまりが
外界を計り

言葉に至る
人間の頭を
植物の心に

動物らしい
人間を身体
に絡ませて

身離れ(22.01.14)

お鏡は木を
削った物で
間に合わせ

注連飾りは
水引を丸め
てぶら下げ

老いゆえの
逃げ口上も
見掛け倒し

引き攣った
目元や顎の
噛み合わせ

不具合など
細い丸紐で
烏帽子巻き

伸びすぎた
髪を切った
軽やかさに

鼠の小屋(22.01.11)

掘り返され
埋め戻した
季節限定の

山小屋の夜
跡形もない
登山ルート

鞍部に出て
振り返れば
見え隠れて

揺らぐ夜景
跨ぎ越して
見上げた星

住居からも
小屋からも
立ち退いた

短冊に匂う
一期一会の
囲炉裏端で

松の内(22.01.07)

身を震わせ
払い落とす
庭木の着雪

家に留まる
身体細胞の
息苦しさに

気づかない
楽チンさを
纏った肉体

根元露わな
松の梢から
広がる吊縄

添え丸太を
縛り付けた
幹の手解き

生を活かし
班に溶ける
暮らしの底

滞留風(22.01.04)

曇天の玄関
センサーの
チャイムで

覗き込んだ
モニターに
一条の朝陽

冬場を凌ぐ
日溜まりと
南中の角度

溶けだした
庭雪の過剰
或は過小に

隙間を殺す
憑依の影を
埋め合わせ

建設的から
不毛までの
地獄の方位


ご意見・感想:keikichi111i@mac.com

「高屋敷の十字路」に戻る