十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
泳ぎやめた
回遊魚から
追掛けられ
走ることを
忘れられた
絵馬の裏書
夜回りから
五十年目の
立ち話でも
土地所有の
変遷に絡む
家並みと道
代替わりに
気づくまで
挨拶を忘れ
歳月を数え
残した体に
隠された老
庭木を縛る
雪吊りから
砕ける杣道
追いたてる
百蛇田から
逃げ回った
雪女が潜む
吹き溜りの
叫び声まで
下草径から
幻聴が絡む
幻視の杜へ
参道を抜け
辿り直せば
未知の産道
重い着雪に
耐える幹を
裏返す蛇腹
転がり落ち
跡形もない
窓打つ霰に
聴きなれた
太鼓叩きの
お手なみが
木を唸らせ
風のような
ベース音と
主旋律から
戸惑い出た
無音の拍子
消し忘れた
雑音の様な
テレビ音声
上書きする
無為自然に
天衣無縫が
冬支度など
揃えさせる
師走の寒気
冷たく響く
融雪水から
匂う井戸水
掘り抜いた
伏流水から
響く山の音
閉じこもる
雪囲いから
家守が覗き
部屋ごとに
架け替える
カレンダー
曲がり癖を
敷き伸ばす
床板の冷え
建て増して
書斎にした
納戸の二階
作り付けの
書棚が撓み
外壁覆う蔦
窓枠を伝い
机上を覗く
内視カメラ
上り下りが
楽しかった
階段の記憶
螺旋階段を
ジグザクに
直登すれば
幼児記憶も
解け始める
身体遊園場
鳥を追って
広葉樹林に
迷い込めば
カサコソと
舞い落ちる
樹木の分身
踏み込めば
深くて広い
樹木の表情
空を区切り
梢が揺れる
淘汰と排除
樹齢の跡を
探す樹霊が
思想を啄み
歩み出せば
群がる鳥が
地を分けて
老いらくの
執着と放棄
鬩ぎあえば
聞き分ける
身体の声の
便意と放屁
緩斜面選び
滑走楽しむ
老いの坂道
見送る両親
良縁を得た
子らの自立
御無沙汰の
向こう側で
充実の風聞
旧知交歓の
言葉に和む
老境の隙間
鶺鴒の雛が
遊び戯れる
街の緑地帯
浅い用水を
見つめても
降りられず
過ぎる車に
逃げもせず
振る尻尾を
追いかける
気配もない
野良猫や犬
積み重なる
時間の影が
渡る歩道で
見えなくも
間合い測り
心を背負う
間引かれた
歳月の跡を
透かし見る
雪吊り庭を
見上げれば
盆栽仕立て
振り返れば
一鉢にまで
土の履歴が
崩れ灯篭に
伸縮自在に
映し出され
里山からか
街道伝いに
四季を巡り
不幸の影が
剪定される
不可避な庭
青光りする
折り紙冒を
甍に被せて
起き抜けの
鈍い身体の
直接性から
屋根を滑り
庭木を避け
玄関先まで
逸れ蜻蛉が
陽だまりで
ホバリング
接地せずに
一瞬の挨拶
繰り返す影
聞き分ける
身体の声が
心の目覚め
障子を開け
秋空辿れば
秋雨が庭に
掻き集めた
枯葉一枚に
同じ形無し
揺れる梢が
空を区切る
林を見上げ
喜寿過ぎて
抜けきらぬ
風通し良さ
マントから
靴まで光る
又三郎の影
大地を離れ
引き寄せる
重さ確かめ
歯衣着せぬ
赤ちゃんと
年寄りなら
周回遅れで
表情豊かに
噛み合うか
モン族なら
脱ぎ捨てた
最初の衣服
胎盤の埋め
場所が違う
赤子の性別
通し柱から
精霊巡って
夫婦の床下
羊水離れる
空気中から
宙を巡って
繰り返しと
繰り返さず
が両立する
身体が宿す
考えること
と試すこと
紅葉透かし
公園に届く
眩しさから
声もなくて
誰でもない
噂みたいな
風のような
漆黒の闇に
呑まれそう
行きと帰り
道を違えて
寄り添えば
手放しても
使い慣れた
乗り心地が
乗り換えた
スキー板の
撓み具合も
使い倒した
音響機器の
響き具合も
忘れ果てた
挙句の体と
縁が切れず
切れ切れの
縦走路から
零れ落ちた
掌を返せば
寝返っても
怖がらない
お目当本が
書架にない
開架閲覧室
通りすがり
立ち止まる
詩集配架棚
バラバラに
散らばった
言葉の雑踏
消えゆく私
立ち上がる
無名の貴方
避け損なう
身体気配に
投げ縄の跡
馬に跨って
駆け抜けた
夜景の足音
崩れそうに
棟瓦が歪む
田舎家の跡
塒を巻いた
青大将から
鼬の屁まで
沢蟹の泡に
包まれ弾け
視線の後先
山田を繋ぐ
畦道を辿る
手足が揺れ
聞き耳立て
行き止りに
聳え立つ肌
触らないで
父母を殺め
這い回って
通りすがり
猫も居座り
寛ぐひと時
接地面から
圧を確かめ
空気を入れ
重さを測る
ように持ち
上げ運べば
内的自然と
外的自然を
走り抜ける
気張らずに
力みのない
受け渡しに
どんな魂も
呼び寄せる
独自の老い
傾く屋根瓦
這い上がる
朝の日差し
飛行場から
遊園地まで
水中翼船で
紅葉を望み
赤とんぼの
ホバリング
地面を押す
でもなくて
引き寄せる
腕立て伏せ
を繰り返す
腰から肩へ
転がる様に
解ける紐が
巻き戻され
畳と板の間
嗅ぎ分けて
左右の素足
触れずとも
予知してる
地べたの闇
さわっても
ふかくまで
ふれられず
届いた荷を
台車に乗せ
庭を横切り
空を区切り
蜘蛛の糸が
靡くばかり
吸い込んで
吐くだけの
繰り返しに
槍で突いて
杓子で掬い
白馬で跨り
急峻な崖を
なだらかに
見渡す縦走
袴腰で迷う
斜面に咲き
揃う石楠花
日本海まで
歩き続けた
膝が笑って
頬張ったら
歯に沁みた
青林檎の皮
下山したら
触覚が脱げ
放つ言霊に
紅葉の山肌
見上げれば
冠雪の稜線
見忘れても
手触り残す
滑落の恐怖
秋の味覚を
探し求めて
見失った肌
中ぶらりん
の脇を支え
灌木の茂み
植え込みに
凭れかかる
庭の石灯籠
倒れる度に
削ぎ落とす
沈みと浮き
持っていて
新しいとか
古くならず
60兆個の
バラバラな
集合体から
取り出せる
感覚なんて
分からない
茹で上がる
里山の栗を
真っ二つに
ギザギザの
スプーンで
ほじくれば
無数の粒を
通過させる
宇宙の渇き
剪定しすぎ
定まらない
庭の見通し
蜻蛉と蝶が
出会わない
タイムラグ
小上がりの
出入りにも
戸惑ったら
始まってる
進化の跡の
先祖返りが
四足歩行の
名残を呼ぶ
手指の塑像
身体内部を
様々な形に
抉り触って
色づいても
気配だけの
雲の向こう
夏の稜線を
辿る途中に
潜む水芭蕉
なだらかに
登る隆起が
途絶える窪
筏に組んだ
手足が探る
岩肌の縄目
谷深くから
吹き上げる
時雨の刷毛
爪を返せば
飛び散った
魂が匂って
なにくそも
くそったれ
から始まる
台所を介し
田畑と厠を
つなぐ廊下
乳母車から
介護車椅子
に乗り換え
糞転がしを
探し回った
里山の幼虫
揚羽からも
羽ばたけば
深山までに
どろどろに
潜り抜ける
黙契の縁起
松の梢から
北に棚引く
飛行機雲を
追いかけて
這い上がる
蓑虫の呼吸
奇数と偶数
表裏なくて
隠す肌合い
イワシから
サバまでも
鱗雲まとい
かけ離れた
生態を辿る
雌雄出会い
蓑にこもり
蛆虫のまま
雄を待って
庭草剥がし
更地の様に
根こそぎに
剪定で縮む
佇まいから
庭木の呟き
家の中まで
土の香りが
漂い残れば
ふれあいの
外に広がり
さわること
しかできず
人間の思い
など届かず
庭の一角に
刈り残した
雑草が伸び
夏を越した
枯れ具合に
染まる傍ら
通り過ぎた
昆虫や植物
少年の歳月
幻の蜘蛛の
標本を納め
た理科室で
読む事から
見聞きする
事に目覚め
内的自然の
発語を置き
変える土偶
春分の頃に
座右の一冊
見失っても
秋分の朝に
ひょっこり
出てきたり
五風十雨で
やり過ごす
爺婆の姿に
畳や茣蓙の
足触りから
泡立つ感性
深酒しても
何ともない
寝起きから
遠ざかれば
老いる程に
深まる体層
朝陽を浴び
体を温める
軒端の先端
櫂の尻尾は
太古の昔を
泳ぎ抜けて
生き延びた
現存よりも
羽搏く生命
群れたって
逆らう風に
徒党組まず
ぼんやりと
寝ぼけ眼の
ひらめきが
四方八方へ
動き動ける
喜びの飛翔
読み間違え
渡りきれぬ
深みと浅瀬
頁を閉じて
遠ざかれば
後の祭りに
走り損ない
転ばないと
未明の潮時
解けた体を
納得させる
愉快な日常
首にならず
定年もない
奈落の学び
光となった
役割照らす
相手の距離
刈り残した
庭の雑草の
まだら模様
知と無知が
入り混じる
草花と雑草
区別しない
知と区別が
判らぬ無知
入り混じる
無意識的な
あの世から
この世まで
下駄履きの
意識の歩幅
石ころ噛む
面妖な枕木
軋ませたて
空瓶めがけ
酒をそそぎ
空を掴めば
やってる感
など邪魔に
なるでけで
持ち上げて
下ろすだけ
手間が省け
腰回りなど
纏わりつく
手放し感が
逆ハの字の
Y字路から
浮遊の身体
丸め込んだ
親指を軸に
弾ける閃光
風に揺らぐ
アキアカネ
庭木の枝へ
尻尾を掴み
追い疲れる
電動草刈り
ミミズ一匹
殺さぬよう
ポール操作
生い茂った
地面に触る
握りで聴く
医療もない
太古からの
命の連なり
組み敷かれ
啄木の指が
反射する光
引き抜かれ
洗い流した
欅の手触り
間取りから
はぶかれた
屏風の行方
畳や建具も
棄てたのに
庭木を移植
引越し覗く
水鏡が映す
意識の裏で
言葉が隠す
臨場の響き
溢れる水際
石つぶてを
跳ね飛ばす
波打つ文脈
数の肌触り
字の色合い
まさぐれば
果てしなく
聞こえる音
目に見えて
駆けめぐる
五感の網に
誘い込まれ
立ちのぼる
匂いの闇に
脈動すれば
上下左右に
畳みこまれ
骨格も崩れ
身体深くへ
弾ける火花
固有の明滅
営業自粛で
昼飯定番の
一合がダメ
ワクチンの
接種証明が
云々される
禍々しさに
凌辱された
街中の衝立
除草剤から
農薬までも
隔離されず
ただ落下の
法則に従う
汚染の病葉
闇雲めいた
子供らへの
マスク強制
立てなくて
しゃがんで
歩けるなら
湿気の多い
残暑を嫌う
寒気の正体
散歩の折に
じゃん拳で
行き先選び
右から左へ
角を曲がる
上から下に
転ばぬ先に
動き疲れる
謎の旅から
帰還すれば
自然免疫の
風に晒され
拡大鏡から
活字を読み
取るように
接写すると
老眼に届く
藤袴の花弁
秋の気配に
書棚を離れ
床に溢れた
枝葉に紛れ
込んだまま
不明本の頁
光に塗れた
触覚を頼り
視野の外へ
某書店主が
本を並べた
棚が系統樹
肌寒く傾く
仏壇の花に
絡む線香煙
縫い物など
仕立て終え
祖母が寛ぎ
休む祖父の
タバコ燻る
キセルの音
使い古した
扇子の紐が
切れ落ちて
押入れ奥に
隠れ残った
母の切り絵
妻の絵皿に
棒鮨の旨さ
切り分けて
蝉時雨から
一夜明けて
集中豪雨に
刈り倒した
半生乾きの
陰で雨宿り
ミョウガの
偽茎を刈り
残す花茗荷
柿や無花果
など背戸の
切り株消え
出会い頭に
生を凝らす
逃げ方次第
捗る草刈り
電動ハサミ
虫を避けて
抜け殻かと
拾い上げた
幼虫蝉死骸
滅多に虫を
見ない庭の
夢もどきに
例年になく
庭木に低く
とどまって
散会寸前の
無鉄砲から
解き放たれ
矢を放った
弦の叫びが
地中震わせ
河原花火が
闇の導管を
筒抜け烈火
毟りきれず
伸び放題の
雑草の庭で
蝉の小便が
飛び散って
焼け石に水
役立ってた
網戸越しの
庭の眺めに
朝夕涼しい
夏に逝った
祖父の背筋
宿命なのか
運命なのか
歳月の波に
揺れ洗われ
お迎え日の
その夏まで
よく書けた
長編小説を
読み終えて
視線も揺れ
定まらない
分からなさ
あとはもう
眠るだけの
日の終わり
バラバラに
身体を割る
仮死の休息
目覚めたら
探し求める
視線の位置
出生以前に
没後の先へ
叩き出され
棒切れから
飛び越えた
部活の竹刀
抜くことに
秘められた
納めること
毟った草は
堆肥の中に
紛れ込んで
実生の栗が
実をつける
までの歳月
元の鞘なら
身一つから
抜けだして
五感を整え
様々な分身
切り結べば
夏の川沿い
堆肥の山に
差し入れた
洗い立ての
指先に触る
温いミミズ
空き缶から
逃げ出した
夏の肌触り
追いかけた
獲物が網に
入らなくて
釣ったのに
掬えなくて
取り逃がし
生まれ育つ
身体に兆す
老いの行末
登り降りが
面白いから
載せてみて
置くまでの
歳月を経た
上げ下ろし
もてあそぶ
身体自体が
のけものに
軒遊びから
身体弾かれ
縁の下まで
差し入れる
肘から膝の
間に浮かび
Y字路から
抜け出して
触れる言葉
真夏の影が
ジリジリと
傾くあたり
干からびて
行き止まる
カタツムリ
花落ちした
芙蓉を拾う
トングに熱
花咲き忘れ
古木バラの
出番のなさ
蕾のままの
花瓶の隣に
鹿の子百合
並べ置けば
匂い始める
白百合の花
宇宙船内で
どうやって
養生したか
レベデフの
「体の声」
に従ったら
二百日間も
身体保てた
宇宙暮らし
宇宙船内で
体内の声が
聴こえても
地上に帰り
何が聴こえ
見えたのか
危機去れば
沸き返って
雲霞の如く
手玉にとる
あずきから
コインまで
和裁姿から
寝もの話の
語り下ろし
針と糸まで
指の動きが
繰り出され
老い生地に
旬の模様が
織り込まれ
上目遣いに
纏い続けた
現役感から
片肌脱ぎの
弱さ認める
両肌脱ぎへ
地べたまで
及び腰やら
屁っ放り腰
他力本願で
たよらない
肉体や武器
動けなくて
もがかない
想像力から
見いだした
身体感から
身体観まで
正く怖がる
なんて言う
も愚かな!
視界不良で
見えにくい
納刀や抜刀
亀みたいに
蹲ったまま
床柱を支え
漬物石ほど
の動きから
ほど遠くて
ほどほどに
目立たない
床支えから
山に合わせ
木に合わせ
家を作った
大工さんの
仕事ぶりが
我家を支え
設計・積算
施工が危い
世相に揺れ
無意味じゃ
と言っても
意味がある
忘れかけた
幼少時から
喜寿過ぎた
身体由来の
常識などの
当て所なさ
つげ義春の
マンガから
橋本治まで
D.バーンの
ストップ・
メイキング
センスから
零れ溢れる
手や足の指