十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
最終更新日:2021/07/02半夏生から
ドクダミが
匂う花盛り
囲炉裏端の
現の証拠が
夏場の飲物
見え隠れに
行き来した
加越線越し
鉄橋渡れば
母が手折る
一家心中か
思い留まり
濁流渦巻く
揺れる橋桁
雨音響かせ
梅雨前線が
南下する庭
手渡さずに
祖父が投げ
寄こす小銭
手を上げる
から手を上
げる力まで
片手の指の
間から間へ
渡すコイン
拳に載せて
掴み取った
掌のコイン
症状即療法
だとしたら
身丈の範囲
手がとどく
核から殻へ
体内物差し
梅雨の庭で
ひょろ長く
揺れる雑草
土と空気と
太陽そして
土中の細菌
堆肥の夢を
断ち切って
刈り倒せば
バリカンの
刃に挟まる
殖の切れ端
刈り時図る
体内時計が
諦念を告げ
身体の中で
起き上がる
物差しまで
明けやらぬ
六月半ばの
大の字寝床
微かな痛み
覚え始める
左の二の腕
感染防止で
昨晩のバド
練習は休み
思い当たる
初回接種の
昨日の医院
立ち待ちで
疲れそうな
待合室の密
各自粛粛と
接種待つ背
撫でる換気
若葉すべて
食いあらす
紫陽花毛虫
丸坊主姿を
どうやって
感知してか
毛虫不在を
見越しての
若葉再生が
枯れきった
葉脈を隠し
生き生きと
害虫に弱い
受け身から
立ち直って
開き直った
弱さ志向が
目指す開花
庭木に網を
張り巡らす
女郎蜘蛛は
風に乗って
昆虫探しの
接写レンズ
躑躅の花を
見え隠れに
棚蜘蛛の巣
かろうじて
街中に出す
望遠レンズ
ワクチン接種
が未来を開く
が棚引き始め
掛け違えた
マスク紐が
解けない街
三徳を収め
使う事ない
銅製火鉢に
法隆寺から
眺め忘れた
蓮を活けて
彫り刻んだ
鶴亀が聴く
開花音の謎
頭上弾ける
星の慣性に
引かれ浮く
右の踵から
軸足までに
反転する幕
家の核から
女が生まれ
殻で包む男
樹木の梢で
向きを変え
囀る高さへ
吸い上げる
水の響きが
聞こえたら
年輪を遡り
立ち現れる
揺らぐ双葉
見えずとも
地中に滴る
毛根の震え
堆肥の山へ
突っ込んだ
素手の温さ
傾く樹齢を
絡め取って
蠢く紐と襞
暑さ寒さでは
老いた体には
全てを疎遠に
昆虫模様など
刷り込まれた
子ども着物を
図鑑のように
視聴室の壁に
飾り吊るせば
暑さ寒さから
遠ざけられて
早世した形見
絶望や覚醒の
島に漂着する
こともなくて
頭でっかちの
心身に挟まる
死顔の手触り
ストトンと
抜けおちた
晴れ間から
舞い降りた
野鳥が運ぶ
山野草の種
踏みしだく
年毎に違う
無名の花壇
腰をかがめ
覗き込んだ
望遠レンズ
暖かい風が
撫で過ぎる
首から背筋
腰を落とし
しゃがんで
立ち忘れて
泳げずとも
風呂に入り
感じる浮力
病は気なら
分けられる
病気と気分
体内自然が
隠し持った
産地記憶を
手探りする
老い衰えの
質や時間が
辿り着いた
足腰屈んで
崩れた姿勢
弱さ梃子に
上り下りる
日々の階段
枯れた欅を
鉢植えから
抜き乾かし
放置の形に
整形された
玄関の片隅
祖父が残す
形見の様な
手触りだが
形見の品の
銅の火鉢に
差し置いて
座りの悪さ
様にならず
床の間にて
嵌め台座に
禁煙由来の
箱焼き灰皿
物と事など
区別できる
年頃までは
昆虫少年や
植物少女の
会話のよう
左右の違い
を見分ける
体つきから
ふらついて
上下の働き
循環すれば
体内展開の
フィールド
ワーク開始
気分と病い
仕分ければ
根本姿勢に
起きて半畳
寝て一畳の
山小屋の夜
戸や襖など
全て外して
陽に干す畳
柱が支える
屋根と床を
吹き抜けて
山小屋から
見下ろした
夏の大掃除
干からびた
家父長制が
塒を巻いて
掃き出され
埃まみれの
家族解体図
庭木の緑の
葉裏で茂る
雑草の開花
見分け難い
老眼よりも
手振れ防ぎ
接写撮影し
PC取り込み
画像で眺め
名も知らず
雑草という
名でくくり
山野草など
眺め歩いた
身体の衰え
辿り着けぬ
祖父の老に
追い越され
軽飛行機が
筋雲に見え
隠れする空
胴を抜けて
首から頭へ
追いかける
親子関係を
畳み込んで
萌える緑に
写り込んだ
老化と衰え
の眼球模様
手や足から
迷走すれば
迷路を抜け
動く前から
動いた後へ
可能な動き
五月の空の
南へ傍線を
引っ張る鷺
囲炉裏灰に
埋め戻した
進化の火箸
煮炊きして
命をつなぐ
骨格の来歴
脊椎動物が
記憶する頁
の果てまで
胴体と頭の
バランスが
定まらずに
読み取った
めまいから
定まる恐怖
田植え前の
水田が映す
尾根の残雪
遅れたきた
腰痛で知る
除雪時の体
伝えたくて
伝わらない
ほんとうが
深まるほど
遠ざかった
家族関係に
閉ざされた
臆病風から
抜け出して
庭の片隅で
芽吹き始め
揺らぐ漣に
座ってから
気を抜いて
立ち上がり
乗り込んだ
身体を包む
宇宙窓から
眺め下ろす
庭の雑草の
蔓延り具合
建て込んだ
箱型BOX内
の行住座臥
座り込んで
手で食べる
板の間生活
立ち座りに
浮かび立つ
身体的自覚
危なくない
端っこから
何が見える
勝ち負けを
競えなくて
鍛えられぬ
宇宙の端を
妄想しても
立つ能わず
居座れない
立居振舞で
極まる不安
内と外から
はみだした
境目が整い
いまここに
観えぬ総て
立ち返って
萌え木から
蝶の道まで
舞い出たら
見上げた空
掻き消して
降り注いだ
星を纏って
未成以前に
出会う身体
泣き叫んで
通り過ぎた
呼吸の始り
宿命の如く
刻印された
星占いまで
立ち返って
動きを繋ぐ
運命の糸が
竹刀や木刀
日本刀など
振ってみて
その材質が
違っていて
寸法が同じ
同行二人で
抜いて納め
道中知らぬ
動きの謎に
隠れた筋道
確かならず
失ってみて
気がついた
小物の数々
調べ探さず
更新される
待ち時間が
久しぶりに
疾走すれば
蘇る老体に
噛み合った
ギア変換が
できなくて
乗り慣れた
自転車でも
新車みたい
風に煽られ
拠ん所無い
車幅感覚に
身体傾けて
踏み込んだ
街路樹の下
花水木など
過ぎ去りし
林縁遊歩道
花が散って
新緑そよぐ
庭先を過ぎ
鳴り響いた
チャイムに
覗き込んだ
モニターで
尻尾の影を
拭き取って
鳥の羽音に
飛び乗った
指先の視界
切り取られ
馴染めない
世相の視野
老い吐いて
ふらつけば
練りこまれ
どの辺りに
届いている
視覚の辺縁
揺らめいて
安らいでる
触覚の先端
差し入れた
感覚以前の
未成の端緒
横たわって
抱きとめた
昼間の星に
予期しない
身体感性が
上下に抜け
不意の床で
春雷二発に
解き放たれ
部屋にいて
鳥と草木の
頁を眺めて
空気が抜け
冬を越した
自転車の艶
老いかけた
動きに追い
着くまでに
着崩れした
バランスに
乗り換えて
消化できる
腹八分目が
目安になる
筋骨休めて
内臓の働き
辿り直せば
ありのまま
ゆりもどす
おのずから
あさからず
つきかえす
ふかみまで
しめつけて
つつみこむ
ひろがりに
わけもなく
ふみいれば
りくつなし
めいていや
かくせいも
いとなまず
みずからが
なすままに
ひきこまれ
傍を軽々と
駆け抜ける
歳月の足音
歩き抜けて
振り返れば
見知らぬ国
掬い上げた
水面に映る
昼間の星に
腹を仰向け
開いた肩で
夜を呼吸し
滞在すれば
未知の建て
付けの部屋
入れ替わる
季節の旬に
和みの影絵
折れかけて
歪んだまま
芽吹く庭木
雪の重みが
残っている
竹の支柱跡
膨らむ蕾に
忍び込んだ
開花記憶を
呼び覚ます
植生記憶が
根こそぎに
身体記憶と
生命記憶の
挟み撃ちに
編み直され
仮託される
異界と他界
何処となく
人知れずに
交わす挨拶
しゃがんで
立つように
階段を上る
窓の桟から
習い覚えた
掴まり立ち
何時の間に
しゃがんで
階段を下り
内観働かせ
交差し合う
幼年と老年
異性と語り
合うならば
二人称一体
家主よりも
樹齢で勝る
庭木の傷み
雪害具合を
際立たせる
雪吊り外し
重力に抗う
身体だって
気づかない
無理をして
そのままが
機嫌を左右
鈍感こそが
あたりまえ
を突き崩す
生前からの
身体時間を
生かす稽古
雉が啄んだ
薄明の響き
谺すからだ
ひらがなや
カタカナや
どんな漢字
空っぽから
隙間風まで
吹き抜けて
機嫌損なう
体や身体や
躰體躯骸が
見え隠れる
等身大なら
神出鬼没に
戯れ遊んで
意識の川に
溺れる心身
冬を越した
汚れを洗う
融雪ホース
巻き上げた
跡に現れる
雪の街道筋
屋根雪覆う
切妻と寄棟
と入母屋が
貧富の構え
覆い隠して
豪雪家並み
雪下ろしを
終えて村中
総出の雪割
スコップの
歯が立たず
立ち尽くす
厳しい傾斜
迂回路誘う
林間コース
せせらぎに
なびく木立
河川敷抜け
滑り抜けて
走り抜けた
木洩れ陽に
振り返って
いられない
郷愁の体感
着衣が透け
放熱に撓む
皮膚の彼方
内臓の力み
遠ざかって
銀河に浮く
叩きつける
雨脚が洗う
窓越し風景
風に震えて
美しく歪む
雪折れ庭木
輪に結んだ
紐を交差し
た両手首を
時計反時計
回りに上げ
下げすれば
腕を忘れて
背筋繋がる
上下運動に
拳腕立てで
体を浮きに
地球を釣る
動くものが
動物ならば
ロボットも
冬を越して
空気の抜け
たタイヤで
走り込んだ
距離を測る
空気入れが
フレームに
書き込んだ
動物の語源
呼吸したら
気体を抜け
液体の先へ
個体となる
認証不明の
エネルギー
散歩の行き
帰りの間に
砕ける結晶
蒸発すれば
生命体から
生命が分離
発信力なら
中途半端が
持続の要に
食べる事で
鬱散できた
母との食卓
衣食住から
出入りする
日々の出会
自然界から
人間界まで
繋ぎ止めて
市内バスが
チェーンを
巻いた響き
腰を下ろす
体に甦える
匍匐の振動
胡座を抜け
猫を追った
四つん這い
這うように
茶の間まで
やってきた
祖父の手に
にぎられた
三本足の響
手探りから
足探りまで
体探しの道
崩れ石灯籠
斑雪の陰に
取り残され
寄りかかる
庭木の枝を
手掛かりに
腰を落とし
体を浮かし
抜いた呼吸
積み直して
遊びを消し
揺れ閉ざす
頭上の星が
眺める庭に
降り注いで
肘を揺らし
全身に漲る
テンション
日一日毎に
地べた広げ
日差しと影
万病は内外
の不一致が
齎すならば
いかように
木の芽時の
不調に対処
防げずとも
ズレと一致
を見極める
丹田を過ぎ
手足に届く
呼吸の径路
中断しない
中途半端が
養生の秘訣
庭木来歴に
露わになる
雪折れ一本
枯死しても
捨てられず
欅の盆栽枝
祖父の手の
跡形もなく
残された鉢
濡れた傘を
突き立てる
玄関脇から
茫茫として
外を眺めた
祖父や母の
後ろ姿映す
居住まいを
畳み直せば
硬い雪面の
影を踏んで
逃げ込んだ
獣の足跡が
われに帰る
雪山の静寂
人馬一体で
駆け抜ける
骨格標本を
突き破った
呼吸の力が
漲る斜面に
起き上がり
二つとない
弧を目指し
斜に構えて
擦り抜ける
明暗の段差
庭の残雪も
隠し果せず
夜来の風雨
薄毛になり
顔痣狭まり
小じわ増え
人足も休み
暗雲震わせ
揺れる足場
臆病者なら
体内掻分け
満たす呼吸
内臓定まり
萎縮遠ざけ
心身働けば
揺れもなく
作業が捗り
踊る言葉も
体を浮かす
一夜積りの
サラサラ雪
手のカメラ
向ける前に
逃げ去る鳥
スコップを
握る身体に
かかる重力
凍りついた
雪を動かす
力の作用軸
過不足ない
釣り合いも
その場限り
足場を築き
壊し逃げる
風の来し方
給油口から
タンクまで
辿ってみて
固く沈まぬ
庭の残雪に
潜む折れ枝
目線高まる
圧雪歩きが
写した新芽
南極仕様の
長靴が踏み
抜いた裏で
冬を越した
雑草の緑が
溶けだせば
雪下駄から
踏み越した
豪雪記憶が
着物を着て
熱燗を嗜む
時の肌触り
小一時間も
屋根雪など
除雪すれば
息も上がり
座り込んだ
へばり具合
忘れ去った
やすらかな
赤子の姿勢
衰えた骨や
筋肉頼みの
生活習慣に
呼び戻され
心身安らぐ
内臓の隙間
背伸びする
家並みから
垣間見える
雪下ろしで
腰痛知らず
の祖父の体
歳をとれば
分かるはず
の身体観が
培ってきた
作業姿勢を
学べぬまま
分かち合う
日常時間が
稽古の場に
五体各部が
身体全体に
分散すれば
スコップを
跳ね返した
庭先の圧雪
晴れ上がる
滑走日和の
遠い山並み
出来た事が
駄目になる
頃合い迎え
思い寄らぬ
思い込みの
思春期の謎
過ぎ去った
乳胎児期の
エロスの刃
何のために
生ききるか
問いきれず
読みさしの
本を伏せた
屋根を隠し
深深と積る
雪あかりに
籠った部屋
崩れ落ちず
差し迫った
屋根雪の端
屋根裏深く
ざあざあと
伸びる氷柱
幻聴の体を
捲り直して
聴き辿れば
芯が整って
明るく開く
胸の身体へ
目覚めれば
ふりしきる
雪の静かさ
染み入れば
落雪を促す
屋根の傾斜
竹スキーで
踏み越えた
村の冬から
抜け出した
カービング
スキー板へ
踏みつけた
下駄履きの
身体感覚が
雪かきする
脚腰に響く
固有の呼吸
鰻の寝床で
寝返ったら
粘膜のよう
履き替えた
足袋に蘇る
素肌の触り
幼児に舐め
尽くされた
手探りの跡
滝の裏側に
身を潜めて
寝返ったら
寝巻きから
抜け落ちた
身体を包み
着物の帯が
着せ替える
抱き合わせ
雪吊り撓み
望む軒端に
氷柱の穂先
丑年明けて
除雪すれば
脚腰の衰え
背伸びして
着雪払えば
庭木が震え
松の根元で
寛いでから
行き来した
猫の足跡を
かき消して
積もる新雪
冬を響かせ
飛び去った
野鳥の一声