十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)

最終更新日:2020/12/29

越年姿勢(20.12.29)

年々薄らぐ
年の瀬だが
煤払いから

いつの間に
高い所など
苦手な体に

マスクして
密集避けて
手洗いなど

新しい生活
様式が社会
基準となり

伸びやかな
心身呼吸を
見失なわず

生き生きと
力強くなる
姿勢を質す

つなぎ(20.12.25)

スピーカー
ケーブルを
交換すれば

木彫御鏡を
飾るような
肌触りから

骨盤の向き
に釣り合う
胸骨の調べ

未知だった
体内姿勢に
目覚めれば

左右上下を
取っ替えて
引っ替える

兆しがする
使い古した
骨格や内臓

対峙(20.12.22)

清流に棲む
ヒキガエル
近づく蛇に

体膨らませ
四足を張り
間合いとり

戦わずして
ぶつかった
骨格の向き

角度違えば
両者ともに
すれ違って

出会いなく
成り行きが
乱す姿勢に

向き合うは
整う下半に
上半違えて

乗降姿勢(20.12.18)

暖房車内は
マスク姿に
スマホ操作

南北に走る
積雪歩道に
銀杏の落葉

東西違えて
黄金に浮き
茶色に沈む

換気を装う
隙間風から
取り残され

車窓を抜け
呼吸が届く
遠い山並み

はじまりは
不均衡から
立居振舞い

場所柄(20.12.15)

いきなりの
寒波による
背戸の積雪

長引く腰痛
間に合わぬ
事前の雪垣

老い負担が
重力めいて
集中しがち

力を抜けぬ
子どもらに
伝えられぬ

身体捌きを
どうやって
気づかせた

落ち葉など
払い落とす
老体の除雪

当たり障り(20.12.11)

街路樹から
枯れ落ちる
枝葉の隙間

曲がり抜け
風のように
幹を避けて

通り過ぎる
人影の肘が
触った木目

樹液が流れ
根こそぎに
木霊する梢

無意識から
意識に渡る
三層の吊橋

小我からも
大我からも
かけ離れて

拗れ(20.12.08)

打ち込んだ
雪吊り杭が
庭の配管を

壊すなんて
掘りが浅い
手抜き工事

養生が薄く
老いた体が
揺らぎだし

真っ直ぐに
歩き出せば
傾きそうで

右回りから
左回りまで
同時に呼吸

崩れにくく
整う歩きの
重力と権力

初工作(20.12.04)

両手で回す
錐を頼りに
穴を開けて

嵌め込んだ
板バッフル
スピーカー

腫れあがり
箸が持てず
匙で食べて

レコードを
載せるのに
凹凸合わず

溝を狙った
針おろしも
覚束なくて

鳴り始めた
響きに浸り
痛み忘れて

餓鬼(20.12.01)

晴れあがる
庭で眼鏡を
外した眺め

美しからず
呼吸する体
儚からずや

わが身一つ
食を生きる
弁当の旨さ

食べるほか
なにものも
見返りなく

美味いから
それだけを
全うすれば

生命が輝き
存在を試す
自然治癒力

張りぼて(20.11.27)

数えきれぬ
斜滑降から
覚えた滑り

伸び縮んで
開いて閉じ
左右の隙間

腹式呼吸で
開いた胸を
背へと担ぎ

上下が開く
背面回転で
自在な左右

肩が働いて
臍が動けば
腹が上下に

高さが違う
左右の間で
交互歩きに

不断稽古(20.11.24)

左足を消し
右足浮かす
下駄履きで

踏み散らす
庭の枯葉を
拾い集めて

屈託すれば
身体に障る
関節の痛み

時を費やす
排泄に食も
細くなるか

老い暮らす
疲れ具合が
声を響かせ

身体の上下
左右を試す
姿勢定まり

傾斜立ち(20.11.20)

柘植ならぬ
段作りした
枯れ枝の跡

裏表数える
柿の枝葉の
傾き具合で

真っ直ぐに
接ぎ木枝が
切り込まれ

根付きから
立ち上がる
傾き具合に

忍び込んだ
様々ならぬ
立ち会わせ

降り出した
雨脚が通り
過ぎる傾き

遠い田舎の
祭りの夜の
余興に飽き

祖母が待つ
家に何故か
いつまでも

帰りつけず
怯えそうな
物の怪など

暗がりから
撫でられて
竦む身体で

踏み出した
足の左右で
踏み分けた

半身が跨ぐ
中動態から
平常態まで

立ち歩み(20.11.13)

右から左へ
聞き逃した
爺婆の言葉

忘れた匂い
染みこんだ
教典の汚れ

左右いずれ
脱ぎ着する
着物を畳む

お手玉から
綾取りまで
時空を数え

初歩の夢を
手渡された
動きを託し

尻から胸へ
向きを反転
振り分けて

乗り反り(20.11.10)

枝葉に隠れ
左右に開く
幹の開放性

山川草木を
辿り抜けた
等身大の夢

天地が誘う
括れからも
辿り直して

絡み合った
足形と腕形
噛み合えば

立ち所から
体幹に漲る
左右の張り

頭通り抜け
左から右へ
自在に反転

落ち零れ(20.11.06)

白くなった
山肌に残る
滑走姿勢が

滑ることを
止めた体に
残っていて

一本歯下駄
で立ち易い
右回り姿勢

右に向いた
下半身から
左向く胸板

スキーやら
自転車から
縁が切れて

出生以来の
乗り物たる
身体自体に

踏み外し(20.11.03)

一日をどう
過ごすかは
起きてから

目覚めても
朝の運動は
その日だけ

何をしよう
が瞑想など
迷走の極み

ほとんどが
やりたくて
できぬこと

試しにやる
だけならば
自分らしく

生まれ動き
全て自分で
何かを行い

視聴(20.10.30)

収穫どきの
カボチャを
指で弾いて

体の奥から
跳ね返った
可聴周波数

田舎家から
漏れ聴いた
他人の空耳

脛や腕から
抜き取った
バチさばき

四足歩行を
脱ぎ捨てた
二足の草鞋

歩み忘れた
歩行姿勢が
忘れ形見に

徘徊(20.10.27)

松の梢から
秋の高さが
見下ろせる

徘徊しても
塀より上に
登らない猫

左り回りが
軽快なのに
重い右回り

追いかけて
突き詰めた
匂いの体位

幻の国体に
惑わされて
生成消滅に

草木国土を
見下ろせる
悉皆成仏が

背に腹を(20.10.23)

接木をして
蘇った旨さ
指折り数え

座布団返し
花札の陰の
焼け焦げに

めくっても
飾り気ない
日捲りの絵

酒焼けした
記憶の底の
湯呑み茶碗

捲りに捲る
頁に沁みた
茶渋の響き

もぎたての
水島柿から
木洩れ陽が

排泄(20.10.20)

弾き出され
大風呂敷で
仕切りとり

体ごと持ち
込んでみた
縁側の戸袋

机入れたら
身動きなら
ぬほど窮屈

真っ直ぐが
最短距離で
なかろうに

背中越しに
見下ろせば
立ち上って

頭いっぱい
身体感覚で
満たされて

目測(20.10.16)

日陰になる
窓際を離れ
日溜まりへ

多年草から
一年草まで
刈り取られ

むき出しの
庭土を踏む
親指と腰痛

久しぶりの
ギックリ腰
持ち運べば

脛の二骨の
隙間が開き
下駄の横幅

膝曲げない
竹馬歩きに
乗りかかる

擦れ違う(20.10.13)

演って行く
なんとなく
演って来る

どちらから
でもなくて
こちらへと

倒れかかり
足の指から
頭頂を眺め

両腕両脚に
扇子の扇ぎ
揺らす辺り

左右決まり
身体開いた
限界が作る

確かな形を
得られれば
反転可能に

未熟者(20.10.09)

木犀香漂う
黒々とした
庭土を踏み

草履や草鞋
や下駄など
履き潰した

裸足の指で
水田の底を
探った素足

摺り足から
浮き上がる
主語の在処

握り具合の
手応え忘れ
拳の作り方

第三の観点
が成り立つ
内観と外観

独楽回し(20.10.06)

内側からも
外側からも
届かなくて

考えること
静止すれば
倒れなくて

緩衝材なら
教養のあり
無しが要に

先入観から
再起動する
妄想までの

主語のない
無意識から
飛び出して

見落とした
紐で巻いた
意識の回転

軽重浮沈(20.10.02)

見上げれば
雲間を動き
浮かぶ明暗

寝る直前に
気付いたら
デジカメに

イマココの
ズレを覗く
前後左右に

揺れ震えて
下は重くて
上は軽そう

昨日今日を
明日に繋ぐ
シャッター

もしかして
たらればで
ズレる時間

滞留(20.09.29)

手で考えて
土踏まずで
思いを馳せ

足の甲から
立ち上がる
想念の伏流

体感すれば
心身が噛み
分けた経験

しゃがんで
肘を合わせ
スッポンで

水抜きして
水洗便器の
洗浄復旧で

身体動作を
洗い出して
揃える隙間

挫折(20.09.25)

帰り道など
占ってみる
三本の道に

待ち伏せる
いじめっ子
避けたくて

街道筋より
裏道抜ける
か通学農道

走り抜ける
術もなくて
固まらずに

意に介せず
歩き続ける
自分の足が

途絶えたら
倒れこんで
硬い地表が 見晴らし(20.09.22)

刈り残した
庭の夏草が
剥ぎ取られ

剥き出しの
庭木の間の
間隔を抜け

近所の猫が
自粛を解き
往来を再開

刈り込まれ
整えられた
隙き間から

樹間を繋ぐ
蜘蛛の巣も
一網打尽に

樹皮を覆う
割れ裂目が
閉ざす眺望

絞りこみ(20.09.18)

盗み見るも
事程左様に
見様見真似

箸使いから
歩く姿勢も
駒落としで

再生すれば
見落とした
歪みと力み

使い続けて
気づかない
経年劣化に

艶消された
隙き間から
筒抜けても

漏れてくる
新しい響き
繋ぎ合わせ

無造作(20.09.15)

手の消毒に
マスクなど
街ブラの枷

左右が違う
訳も知らず
妻の靴選び

猛暑も去り
下駄履きで
裏の草刈り

腰にわ紐を
巻くだけで
腰痛も緩和

身体を選ぶ
靴と違って
左右のない

下駄履きで
身体の働き
なごやかに

空手紙(20.09.11)

拳振り上げ
ても届かず
触れなくて

癇癪起こし
身悶えたら
解けなくて

骨董品から
鉢植えなど
委ねられて

宛先不明の
手紙に包む
末期の呼吸

吹き抜けて
舞い上がる
夜の帳から

露わになる
生きながら
卑怯な秘境

きときと(20.09.08)

虹が見えず
消えた休み
を追いかけ

庭を掘って
泳ぐ練習を
夢見ただけ

どれくらい
掘り下げる
深さの試み

呼吸を忘れ
意識しない
本当の呼吸

距離だけが
浮かばせる
間合いから

さまざまな
生きものが
無意識変化

夏の風味(20.09.04)

図書館から
一歩出れば
街中の灼熱

夏戸に替え
開け放った
田舎家の夏

鼠を追って
梁を曲がり
くねる嗅覚

肥え太った
青大将から
垂れる味覚

遠隔触覚の
枠の内外で
様変わる運

今を生きる
老若男女の
生活度合い

遠望(20.09.01)

観天望気の
ログインが
途絶えた体

度重なった
割損ないの
方向音痴が

遅れ気づく
できなくて
あたりまえ

振り下ろし
呼び覚ます
主客転倒で

斧が身体の
感性を使い
真っ二つに

納屋の奥に
積み上げた
薪の隙き間

無音庭(20.08.28)

遠い山並み
高空の巻雲
来りなば秋

祖父由来の
庭に立てば
灼熱の雑草

花咲かせて
際立たせる
花のない庭

表替えした
畳や障子の
張り替えに

乗り遅れた
ぼろエッジ
スピーカー

母の手指が
草抜き続け
苔庭もどき

伝承(20.08.25)

カバーして
持ち出した
立ち読み本

大型本など
買えなくて
棚埋まらず

作り付けた
書架が崩れ
落ちそうに

本は読むな
祖父の声が
仏壇の奥で

そんな暇が
ないほどに
身体を使え

擦り切れて
めくり難い
教典が3冊

街道筋(20.08.21)

訛りがない
のはなぜか
気がつかず

地元言葉に
消息を隠し
穿つ身の程

場を探して
修行すれば
唄い舞うか

鼻歌ひとつ
漏らせない
壊れた風呂

盥を水鏡に
聴き損なう
出自を尋ね

踏みしだき
孤から個へ
踏み分けて

奉公先(20.08.18)

長い梅雨を
忘れ去って
汗ばむ日々

孫と遊んだ
記憶のない
ロボットは

歩行以外に
寝起きして
回転したり

個でもなく
汗もかかず
孤でもなく

お座りして
手を合わせ
る姿勢など

命令以外の
縁や運など
料理に宿し

素縁(20.08.14)

田舎の庭で
姉が植えた
実生の栗が

引越し先の
裏庭で育ち
伐り倒され

連れ添った
イチジクや
柿の木など

西陽を遮る
夏の木陰を
裏切る歳月

雑草が覆う
垣根越しに
迷走する蝶

紫外線まで
可視光線に
織りあげて

再生(20.08.11)

時と所など
想い出さず
忘れ果てた

LP再生でも
復活したら
蘇る部屋で

いつの間に
慣らされた
人工の音響

針を落とす
緊張感から
解放されて

聴こえない
サウンドや
輝きに触る

経絡を流れ
集い出逢う
体感と体観

遊行(20.08.07)

山間を辿り
歩き疲れて
引き返せば

街道沿いに
灯り始める
家屋の明暗

鬱蒼とした
神社の杜が
閉じる息を

左手に聴き
お寺の裏へ
回り道して

山の匂いを
消し去って
村の裏道へ

身体記憶を
辿りなおず
呼吸の遍歴

機嫌(20.08.04)

嘘で固めた
シーソーの
両端踏めば

視点挟んで
いずれ傾く
自罰と他罰

騙し騙され
責任回避が
射程の範囲

先入観から
心身の歯車
噛み合わず

的を外せば
外すほどに
芯が増えて

身体に兆す
多元化する
中心性の実

裂け目(20.07.31)

桐の花匂う
木陰で習う
薪割りの音

炭の爆ぜる
寒さが乾く
火鉢の灰に

火箸で描く
植物採集や
虫捕りまで

引っ越して
庭木を移す
庭土を盛り

枯死を免れ
緑鮮やかな
松の根回り

風雨を聴き
傾く灯籠も
地震で崩れ

好物(20.07.28)

囲炉裏端で
こんがりと
焼かれた蝗

日露戦争に
駆り出され
なかったか

分からない
祖父の料理
の腕前の謎

煮て焼いて
蒸すほかに
下手物まで

料理の三角
はみだして
揚げ物なし

無くて七癖
魚嫌いなど
以ての外に

証拠(20.07.24)

長靴履いて
草っ原から
昆虫少年が

孤独の虫を
補虫網へと
解き放った

身体を感じ
私でもなく
貴方でない

その間から
生まれくる
エネルギー

でもなくて
それら全部
ひっくるめ

広がる視野
が次の世界
に届く場所

空だ(20.07.21)

職場からの
半ドン帰り
の横断歩道

渡る途中で
撥ねられた
車種コロナ

整形外科に
運ばれたが
打撲傷だけ

壊れた板を
担ぐ帰りで
雪崩に遭遇

凍結階段で
見事に転び
山では滑落

運なるもの
体のどこに
張り付いて

桃太郎(20.07.17)

河原遊びや
山歩きでも
石を積んで

26個なんて
とてもじゃ
なかったが

竹馬に乗り
静止できた
覚えなんか

一本歯なる
下駄履いて
想いだせば

土踏まずで
拾い上げた
地軸の傾き

仙骨に乗る
骨の数から
紐解く母体

無影(20.07.14)

匂いを頼り
風に乗って
彷徨う身体

昆虫少年が
体位を翻し
体内観察へ

重箱の隅に
潜む鍵穴を
捜し回って

肢体ぐるみ
羽ばたけば
鳥だったり

こきざみに
もがくだけ
魚だったり

通ってきた
時空を巡り
騒めく無が

泡と影(20.07.10)

訪ね歩けば
剥き出しの
肌の微発泡

折り畳まれ
切れ切れの
家系の名残

川の土手を
迂回したら
山小屋まで

別離の瞳を
見比べたら
擦れ違って

駅のホーム
から漁港の
突堤までも

ことごとく
断ち切られ
エロスの網

銀河抄(20.07.07)

縦横無尽に
分かたれて
分かちあう

はじめての
線分を刻む
幼い掌から

握りしめた
1を呑めば
どこまでも

探りあてた
0を埋めて
あてどなく

脇を締めて
隙を見せる
攻めと守り

自知欲から
身体知まで
加減を質す

現役(20.07.03)

水族館なら
なによりも
小魚の群れ

夏に向かう
庭の蜻蛉の
ホバリング

常に動いて
定まらない
基準の更新

恥を知らぬ
血が流れる
空席の眺め

身体知から
飛び去った
意識の行方

取り残され
抜け殻こそ
加減できる


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