十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)

最終更新日:2020/07/01

立ち方(20.06.30)

今年は特に
蚊がいない
庭先を出て

自粛明けの
街中はじめ
体育館へも

マスクやら
消毒などが
常態の接触

半ズボンの
脛を擦った
ペダルの傷

放置すれば
共感しない
接ぎ木の技

老若問わず
健康よりも
好きな事を

分立(20.06.26)

天袋を覗く
手に触った
制帽に黴が

半島遥々と
持ち帰った
母の手から

幼少の頭に
冠った時の
亡父の感触

手が届かぬ
床の間飾る
亡夫の遺影

制服制帽が
包み込んで
見えない体

サイズ違い
知るほどに
程遠い体感

食み出し(20.06.23)

いつの間に
立ち消えた
庭の梅の木

祖父が漬け
母も漬けた
紫蘇の香が

体に沁みる
天日干しの
網目の記憶

難を逃れる
朝の梅干し
未だ忘れず

昼に炊いた
米の旨さに
見合わせた

顔から溢れ
体内に潜む
体感記憶に

余所見(20.06.19)

蜘蛛を払い
愛でるほど
枝切りした

薔薇一輪を
花瓶の煙の
木に点せば

姿勢を変え
眺めが違う
視点の変化

ロボット化
した欲望が
張り巡らす

無責任から
垣間見える
世間的な層

何も見ない
集中力から
育つ観想力

回り道(20.06.16)

一方通行の
世の動きに
かかわらず

春鳥が去り
はや夏鳥が
鳴き始めた

庭先を抜け
漕ぎ出した
買い物籠を

今日も充す
残り少ない
小商い店舗

生鮮食材を
妻の手並で
頂く食卓に

座る体から
抜け落ちる
渋滞や停滞

囲炉裏端(20.06.12)

見上げれば
空を分ける
緑の万華鏡

外的時間が
触れ合った
樹木を隔て

内的時間が
導管を流れ
根付くまで

切り倒して
断ち運ばれ
振り上げた

斧が裂いた
隙間に潜む
髪切虫模様

飛び散った
樹液拭って
羽搏く言葉

鞘抜け(20.06.09)

おしりから
引っこ抜く
瞑想抜け殻

十年余りも
探り判らぬ
老体抜き身

松の枝から
垂れ下がる
蓑虫の揺れ

虚空めがけ
抜け駆けた
刀身の反り

ミクロから
マクロまで
計りきれず

扇形を描く
振り幅まで
動き納めて

移動(20.06.05)

積雪少ない
冬を過ぎた
庭に蔓延る

草花の常に
動きたがる
種子の形態

半世紀前に
田舎に捨て
置いてきた

山の動きも
忘れ去って
行方知らず

結果として
移動距離を
計る速度を

見失わずに
紛れ込んだ
体内時間が

枠抜け(20.06.02)

庭を歩けば
透き通った
新緑の木陰

下駄履きの
素足からも
はみ出した

影を踏めば
張力満ちた
新緑の響き

擦れて揃う
中心のない
庭に散蒔く

種の由来を
今年も隠す
多様な雑草

土踏まずを
見上げれば
透ける呼吸

臼と杵(20.05.29)

山登りやら
スキーなど
止めたのに

身体に残る
おにぎりや
酒の美味さ

自粛明けで
街中に出て
戸惑う眺め

透き通った
新緑の陰で
縮こまった

消費行動が
冷え込んだ
動きの描写

気取られた
都市生活の
必需と選択

隔たり(20.05.26)

出会い頭の
裏庭で鬩ぎ
合う蛇と蛙

柔らかくも
張り詰めた
互いの集注

両者が立ち
去るまでの
見切り時間

杖を右手に
庭木の傍に
立つ祖父が

山に向かう
農道で蝮を
一撃で殺し

後ろを歩く
孫に振向く
隙間もなく

浮き石(20.05.22)

県境の辺り
を跨ぐ風に
石楠花揺れ

重なり合う
水鳥の囀り
街中を流れ

淀みを漉す
直感力から
飛び立って

血を躍らせ
巡り滾らす
手足の隅々

踊りだした
主人が織り
なす息遣い

見つけても
引き分ける
相打つ相手

真ん中(20.05.19)

田舎からの
引越し以来
咲き続ける

庭のバラの
蕾が怯えた
ように折れ

萼から下が
無くなった
蕾の行方を

託してみる
フィルムを
張った小瓶

突きさせば
棲み分ける
受動と能動

日々の体調
向き合うは
自分の身体

  • 米国議会図書館(LC)、同館提供の音楽素材を利用してヒップホップミュージックの作成が可能になるWebアプリケーション“Citizen DJ”を発表(カレントアウェアネス・ポータル@国立国会図書館) https://current.ndl.go.jp/node/40873
  • 国立国会図書館デジタルコレクションで読む「やまぐちの幕末・維新人物誌」(山口県立山口図書館) http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/yjinbutsu-NDL
  • 青空文庫の児童文学全作品(ブンゴウサーチ)  https://search.bungomail.com/juvenile
  • 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」〜世間に転がる意味不明:伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」(日経ビジネス電子版) https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00070/
  • 【IWJ検証レポート】日本でもっとも販売数の多い除草剤「ラウンドアップ」に使用されている化学物質「グリホサート」に、世代を超えた発がん性の危険がある! 東日本大震災の津波被害農地に専用の「グリホサート」を散布させる二重の悲劇!! 2019.5.23(IWJ) https://iwj.co.jp/wj/open/archives/449276
  • 図書館休館で「論文が間に合わない」 コロナ禍の「若手研究者」に降りかかる困難(Yahoo!ニュース) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200514-00011216-bengocom-soci
折り返し(20.05.15)

入り口から
出口までが
同じなのに

抜き差しが
ただならぬ
繰り返しに

呼吸が乱れ
分からない
止めどなさ

居るべき所
居るべき時
なすべき事

肉体からも
脳髄からも
かけ離され

精神からも
感情からも
遠い身体感

眺望(20.05.12)

若葉以上に
澄み切って
際立つ山並

大陸からの
汚れ少なく
照り返す甍

各種生産の
操業停止が
もたらした

背景を望み
今年も巡る
田植え作業

子どもらの
遊び声なく
田植え機の

響きが谺す
空の隙間に
身柄を呈し

穴抜け(20.05.08)

抜け切った
空の高みに
届く居心地

デジカメで
コデマリに
群がる羽虫

覗きこめば
相互に動き
触れ合わず

五円玉から
抜け落ちた
満月のよう

水辺の虫の
尻尾を縛り
飛ばしたり

ドローンを
狭い部屋で
紐付き飛翔

戯画(20.05.05)

ランチなど
量が多くて
外食嫌いに

コロナ禍で
遠ざかった
懐かしい味

肉体的にも
身体的にも
裏返されて

表裏一体を
尽くす前に
寝返ってる

母が鶯嬢を
やった時の
候補者以外

投票自粛で
対応の型も
食傷気味に

まっすぐ(20.05.01)

ラジオやTV
ネットなど
本と一緒に

折り畳んで
庭に出れば
五里霧中の

風向きなど
見向きせず
眩しい新緑

柿の木から
落っこちて
床に伏した

明治育ちの
祖父は大の
医者嫌いで

ひたすらに
体内に篭り
生き治って

ずれ(20.04.28)

本当に旨い
と感じ撮る
料理写真の

シャッター
チャンスを
逃し続けて

手ぶれする
出会い頭を
決めかねた

逡巡からも
見放された
行き止まり

迷い忘れて
出来る限り
手間取らず

逸れ続ける
儚い焦点に
揺さぶられ

間合い(20.04.24)

竹とんぼは
手を離れて
風まかせに

200g無い
無人機なら
電源入れて

手の内なる
操作機器を
扱う指任せ

はじめての
事態にでも
余裕の隙間

見きわめて
対応できず
成行き任せ

散らばった
それぞれの
離着陸地点

距離(20.04.21)

閉じた掌が
開くような
三角州の陰

獲物を狙う
鷺の静止が
貝の嫉妬に

揺らめいて
その背後を
喪失したら

露わになる
奥行きから
響く感触が

胸回りまで
弄る指なら
肋骨の隙間

貝のように
綴じ合わせ
挟む隙間に

足下(20.04.17)

新芽が香る
庭先を歩く
履き心地に

背伸びした
頭に触った
蜘蛛の歩み

草臥れても
歩き慣れた
足裏の傾き

図書館から
遠ざかった
巣籠もりを

窓際近くで
羽休めする
鳥に覗かれ

積ん読から
解き放たれ
体感に耽る

水抜き(20.04.14)

旧居の隣の
防火用水を
汲み出して

見え出した
生き物らを
眺めおろす

思春期来の
人と人から
距離を測る

振り被った
竹刀の角度
そのままに

打ちかます
体と体から
飛び散った

規則を離れ
流れ去った
法則の解体

肘当て(20.04.10)

ささくれた
家の中では
どんな歌が

聞こえたか
思い返せば
行き止まり

両肘ついて
抜け出せぬ
思案投げ首

掌を結んだ
三角形から
自在な構え

縫い繕って
腕を通せば
気持ちよい

姿勢を求め
異国の丘に
届く歌声が

居場(20.04.07)

人気のない
児童公園を
見下ろす雲

見上げれば
無意識から
意識へ開花

無生物から
生物へ隔て
られた枝葉

持ち堪えて
花開く迄の
足掻きから

変わりゆく
同じものを
飛び越せず

突き刺さる
退歩と進歩
胸突き八丁

方位(20.04.03)

穴あき銭で
切り取られ
古い鍵穴に

取り残され
出番を失い
そのままに

宛先のない
絵葉書から
広がる起伏

立ち所から
体幹に響く
重力に乗り

合わせたら
途轍もなく
広がる大地

正しいより
気持ちよく
求める姿勢

手探り(20.03.31)

庭の日差し
浴びながら
花を覗けば

カメラから
電池切れの
瀬戸際など

きそわない
今年の春の
咲き具合に

剪定絡みで
優劣などを
気にしない

祖父の目が
摘み取った
枝葉の記憶

死去されて
こそ甦って
くる立ち姿

揉み手(20.03.27)

何番目かの
春の訪れを
告げるのか

風の節々が
揉みしだく
竹やぶから

飛び立った
花の香りを
指折り数え

親指を胸に
届かせない
あしらいに

潜む戒律を
人差し指で
頭に知らせ

背と腹から
皮膚までを
残りの指で

換気(20.03.24)

猫の顔など
目もくれぬ
三月の天気

だだ漏れの
国会中継が
汚す室内で

鳴り響いた
雨風の音に
急かされて

撮り溜めた
過去10年を
振り返って

十数枚から
飾る写真を
入れ替える

荒んだ棚を
吹き払った
儚い空気で

字余り(20.03.20)

言葉足らず
余計なこと
言い募って

祖父の口を
飛び出した
入れ歯の音

言われても
その通りに
やってみて

駄目ならば
言われた様
にしなくて

もっと駄目
な事になる
しかなくて

混沌極まる
身体感覚を
持て余して

余剰(20.03.17)

打ちつける
霰が砕けて
溶け去った

COVID19
関連報道が
埋め尽くす

庭の雑草に
消え残った
荒れ模様を

死刑判決の
テロップが
洗い流して

不要不急が
居座ってる
無観客席も

切り取られ
歪んで整え
はみ出され

きづき(20.03.13)

真夜中でも
揺れの先に
目覚めたら

察知しても
目覚めない
身体の層に

投げ出され
響き渡った
危機の投網

止めてなお
止められず
止むまでに

止まらない
止め方から
止めること

出来なくて
出来るまで
出来るまま

浮標(20.03.10)

窓際の庇を
掠めて翔ぶ
水鳥の囁き

初源を探し
水面を掻く
雲の流れに

揺れる葦と
倒れこんだ
傾斜の結目

上流と下流
尽きるまで
押し流され

後ろ向きに
しがみつく
父の背中は

母の背後に
隠し通され
渦巻く始原

浮き足(20.03.06)

下駄履かず
着物の袖を
通さなくて

寒さに感け
おろそかな
部屋の掃除

単純極まる
身体動作を
繰り返せば

無に帰した
耳栓で聴く
身体の雑音

手足の上げ
下ろしから
こだわりが

抜け落ちて
さかさまに
立位の拘り

カウント(20.03.03)

世界なんて
我が身一つ
背負えずに

どう手足を
良い体勢に
動かし探し

産道抜ける
危機的層の
内と外側で

寝技で絡み
絞り尽くす
滑空摩擦熱

揺り籠から
一つの長い
墓場までが

心臓が一つ
肺が二つで
整えられて

闇感覚(20.02.28)

電線に群れ
止まり騒ぐ
不吉な影も

突然の霰に
滑りそうで
不安な道も

ドローンで
俯瞰すれば
制御可能な

身振りから
背後からの
攻撃を躱す

手足の上げ
下ろしから
習慣の癖を

抜け出せる
見切り型で
退歩すれば

主役(20.02.25)

小学生なら
ではの体の
使い方から

試合終えた
内臓の声が
聞こえたり

勝ち負けで
肚の痛みに
目を逸らす

肩に増して
手首や肘が
力みすぎて

床を叩いた
ラケットの
グリップを

脇の働きが
居着かない
スィングで

指問答(20.02.21)

手をつなぎ
小指を絡め
どこまでも

別れた折の
手洗いから
ここだけの

五本の指が
夫々交わす
内緒話まで

親指は胸に
人差し指は
頭に囁けば

上へ下へと
背筋を質す
中指が問う

肩を撫でて
肚を座らせ
答える薬指

店仕舞い(20.02.18)

一夜積りの
重たからぬ
雪の足跡を

振り返れば
思い出した
二度寝の夢

褒めたりも
貶したりも
しないのに

身に覚える
着こなしが
当たり障り

しないのが
長続きする
抜き差しで

絶頂のない
遣り方こそ
あたりまえ

崩れ山(20.02.14)

這い上がり
乗っ越しを
見下ろせば

膝立ちした
陰影の窪み
から匂った

名も知らぬ
山の名前が
崩れ落ちて

揺れる双丘
滑り降りて
潤う麓まで

逆巻く脈が
谷間の底で
掴み取られ

剥がれ落ち
触り降りる
山頂の眺め

風の便り(20.02.11)

屋敷森から
聞き取れぬ
字数が飛散

西方からも
屋根に届く
不審な足音

お祓い詞が
日差し傾く
軒先を離れ

村から町へ
行き着いて
不在の耳に

後生だから
聞き取って
忘れないで

消えそうな
古民家まで
吹き抜けて

渡りに船(20.02.07)

危ぶまれた
冬季国体の
ご当地開催

気象予報に
インド洋の
海水温低下

北寄りから
偏西風路が
南下すれば

新雪ならぬ
神雪降らす
冬の寒気団

風に乗った
渡り鳥なら
足裏の泥が

遥か彼方の
ウィルスを
持ち運んで

幻聴音階(20.02.04)

未明からの
混沌とした
脱出もどき

兄弟姉妹が
母体までの
接触障碍で

織りなした
擬似音階を
上り下りて

家族からも
地域からも
剥きだされ

話し言葉や
書き言葉に
はならない

親兄弟など
不在届けが
奏でられて

手張り(20.01.31)

竹製ならば
張りやすい
ラケットが

スチールに
変わったら
変形しがち

原型に戻す
横糸の張り
加減が微妙

メッシュを
張り巡らし
探る体内に

無意識まで
居着かせた
力みや歪み

気づかない
不気味さに
崩れる姿勢

逢瀬(20.01.28)

聞き忘れた
士盛り前の
田んぼの声

敷地に立ち
ぐるり廻る
日差しから

風向きまで
春夏秋冬に
耳を澄まし

設計前から
身体が住む
立地と対話

満たされぬ
家族構成の
容れ物なら

日々新たに
身体素性を
組み替えて

無縁(20.01.24)

寒の針先が
駆け巡って
光る蛍烏賊

片肺飛行の
音響機器が
不時着して

浜辺の闇へ
聴覚が騒ぐ
部屋の片隅

遺産を争い
寂れ果てた
散居村の跡

縺れ合って
手繰れない
親兄弟の印

二人の間で
確かな性が
際立つ響き

身解き(20.01.21)

靄のかかる
トマト畑で
齧った夏休

畝の間から
湧きあがる
旨さの体感

休み明けの
部活剣道を
始める前に

身もて余す
庭の掃除や
農作業まで

老体向けに
貰い受けた
ひいらぎに

じゃこなど
噛み締めて
小魚仕様に

手狭(20.01.17)

塩や味噌の
貸し借りに
おすそ分け

引っ越しの
挨拶だけの
隣近所から

支え合った
影や形など
見失われて

中途半端な
身体を癒す
隙間の行方

滞ったまま
判別できぬ
初見と未知

手前味噌で
抜き差しも
ならぬほど

格好(20.01.14)

出番のない
雪吊り縄と
融雪ホース

表と裏から
届けられる
天気予報図

二分法じゃ
分からない
風の変り目

吹きすさぶ
立ち位置の
危うさから

果たすべき
本来的なる
課題の追求

神ならぬ人
姑から嫁に
活き映され

実体(20.01.10)

暖冬の空を
占っている
雲の切れ目

滑り止めて
よみがえる
滑走感覚は

抜け出した
生活体から
普通体まで

行方不明の
自然体から
問い返され

内臓探れば
湧いてくる
興味と意欲

指先までの
形ある力と
精霊力の間

水切り(20.01.07)

下駄を履き
動き変わる
正月の着物

乗り込めば
目を見開く
自覚自省に

誘う他者が
際だったら
空(から)だ

いまここに
あたいなく
立ちすくむ

空っぽから
果てしない
命がけまで

あてどなく
さ迷い尽す
様変わり身

臍の緒(20.01.03)

曇る寒空に
輪を描いて
翔び去る鳶

偶然の輪を
待ち受けた
夜回りの鷹

安定すべき
不安定から
ぶら下がる

蝙蝠の喉を
擦り抜けた
初詣の境内

ふらついて
躓く時空に
羽搏く瞑目

見えだした
瞬間が動く
場となって


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