十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
最終更新日:2019/06/28梅雨空から
降りてくる
生乾きの瓦
屋根の下で
溢れ出した
内部の自然
置き忘れた
番傘が開く
音が聞こえ
もろ肌から
老い疲れが
脱がれ落ち
虫食い葉の
紫陽花から
半夏生まで
濡れそぼる
鷺のように
単独遡行が
ふらつけば
足元に擦り
寄る猫の頭
半島引揚げ
母子家族を
待っていた
明治育ちが
取り仕切る
里山暮らし
ひ弱な育ち
履き潰した
草履に下駄
履き捨てた
地産地消の
一本歯立ち
公界彷徨い
極む身の程
踏みしだく
庭で昆虫を
戦わせたら
喧嘩もどき
脱ぎ急いだ
厚歯下駄を
両手の甲に
構えもなく
振り回せば
怯んだ相手
いじめから
脱ぎ揃えた
もぬけの殻
変態下駄を
裏返し履き
逆立ったら
歯車もどき
吹き抜ける
螺旋階段に
蟻の隊列の
始まりから
終わりまで
穴だらけで
葉脈を晒す
紫陽花の葉
朝飯前には
仏前の掌で
口を閉ざし
音をたてず
味わい質す
箸の持ち方
裏山からの
雑木担ぎが
鉈の通り道
口から胃に
腸へ抜けて
繋ぐ身体に
下駄履きが
追い立てた
庭の小蟷螂
風に煽られ
毟り残した
雑草の隙間
踏み倒した
偶然と必然
綴じ合わせ
自然に抗う
庭の手入れ
作業半ばで
祖父と母が
畳み終えた
古文書の謎
学びの力が
薄い重力で
繋ぎ合って
下駄で歩く
狭い庭にも
梅雨の晴間
濡れた枝葉
避けながら
捌く自然体
軒端遊びで
眠りこけた
手足の記憶
対になって
触知される
左右観から
触る隙間を
舐めとれば
我を忘れて
下駄を脱ぎ
手に履かせ
振る虚空へ
目に鱗など
と言わずに
体内に潜り
腑に落ちる
皺だらけの
面影が鱗に
八方破れの
着ぐるみに
縫い合わせ
着膨れせず
老いの自然
に習う稽古
一つ身から
着せ替える
仮縫い肌に
浮き沈めば
漣のごとく
力みが抜け
ネット越し
真向かいに
立ち会って
体を開けば
ラケットが
振り幅描き
物心前から
見え隠れに
纏わりつき
体を覆った
編みヒモに
気づけない
鱗を解して
編み直せば
毛穴が開き
歳とともに
重さを質す
内臓の向き
時候で始め
身体で終る
田祭り便り
外的自然を
内的自然に
置き換えて
手をつなぐ
半ズボンの
少年と老人
朝の仏壇に
白米を供え
合掌した肌
化学肥料や
農薬などに
縁がなくて
手を抜かず
疲れにくい
手探り作業
振り返って
区別し難い
直線と曲線
磨り減った
経典の頁に
祖父の余韻
整えられて
位置関係が
安定すれば
求められる
一つの力に
射抜かれて
行われたら
立ち消える
余韻の彼方
止まっても
動き続ける
内から外へ
移り定まる
夢のような
素手で掴む
現の身体を
旅人の如く
漂泊すれば
後追いする
地図に跡を
刻み込まれ
脱ぎ去った
日々が紡ぐ
筏に流され
中洲か島か
見分け難い
彼岸と此岸
見え隠れて
抜手を返す
波間で脱皮
切り株から
生えてきた
茸を写真に
根元近くで
剪定しても
跡絶えぬ花
庭の片隅で
垣間見える
散歩者の脚
消えて遠い
外遊びする
子供らの声
聞こえない
耳に届いた
名無しの臍
内と外から
挟み込まれ
飼い慣らす
定まらない
風向きから
反転する帆
濡れた腕の
産毛が鱗に
乾いて揺れ
水田で遊ぶ
手製の船を
くり抜いた
丸木に潜む
髪切虫から
匂う製材所
見飽きない
大工の技に
紛れ込んで
おがくずに
埋め込まれ
忘れた初心
定まらない
立ち位置に
自閉する幹
不揃いでも
伸び広がる
枝葉の歪み
虫食い葉を
透かし見る
芋虫の嗜好
首筋に巻き
胴体を隠し
角度を極め
弧を抜けて
滑り込んだ
色と手触り
身体を畳み
分け左右に
生きる半身
吹く風向き
揃う幹から
枝葉が整う
石を畳んで
樹上の蛇に
届く肌合い
輪廻の夢を
脱皮できず
振動する座
体幹遊ばせ
転げ回れば
手足が掴む
立ち位置の
距離を測る
道具の迷路
触る樹皮に
風の行方を
聴き分けて
六人住まい
から二人に
なった家の
開け閉めが
左右で違う
戸の不具合
上り下りに
傾斜が違う
南北の階段
老に向かう
開け放しの
部屋が増え
食器洗いや
掃除などで
立居振舞う
速さ遅さに
気がつけば
老いてなお
木地屋住む
集落が消え
失せた辺り
隠れ流れた
伏流水から
浮かび出て
お椀や盆に
尾鰭を付け
浮かべたら
海べりから
遠く離れた
街中に浮遊
家相薄らぐ
囲炉裏端に
埋め込まれ
手足を操り
潜り抜ける
身体の行方
身を隠した
ように母が
遺した図鑑
野草や樹の
頁に隠れる
祖父の聖典
頂きますと
御馳走様が
呼び起こす
親鸞を語る
月忌参りの
僧侶の胡座
誰もが持つ
生と死との
真っ只中で
置き忘れた
浄土を探す
身体に着せ
春風に揺れ
雨に洗われ
響く鰓呼吸
口遊びから
体遊びまで
手を拱いて
伝い歩いて
振り返れず
背伸びして
覗いた東の
空が途切れ
迷子の体に
よく似合う
後の祭りも
口呼吸から
血を感じて
立ち騒げば
地に帰るか
重く膨らみ
青大将憩う
作業場の梁
猫に追われ
鼠が逃げた
精米機の上
機械を止め
落下を防ぐ
籾米収納口
喰らいつき
獲物諸とも
飛び跳ねて
転げ落ちる
頭と胴体の
せめぎ合い
折り畳まれ
生涯の幅を
測る年齢に
光り輝いて
揺れる柿の
青葉の隙間
滑り落ちる
小さな蛇を
潜ませたら
中学部活の
暗い部室で
着替えた肌
蚯蚓腫れを
膏薬で覆う
隠す練習後
抜け殻残し
居残ってる
不自然な痣
骨格と肌で
膨らませた
河豚の泳ぎ
色褪せても
心揺さぶる
田舎の庭木
折れ曲がる
祖父の指が
剪定した庭
飲み手失い
埃を纏った
グラスの底
しゃがんで
苔を残して
草を毟る手
当たり前の
体を培った
不便と貧乏
生涯かけて
広さを測る
年齢の奥行
庭の山桜の
根元に咲く
水仙が萎れ
日によって
勾配が違う
二つの階段
デジカメを
支える手の
左右の震え
焦点が合う
地面からの
響きのよう
ワイン畑の
土の香りを
酌み交わし
微動を歌う
指の傾斜に
滑り落ちて
慌ただしい
季節の移り
遅れがちに
ついていく
庭の古木や
老樹の眺め
黒い枝ぶり
満開の空に
透けて見え
立ち所から
揃う体調の
緊張と圧縮
成し終えた
中芯を為す
何一つ無く
立ち所にて
物事を問う
以上と以下
空を掃いて
木蓮の白に
並ぶ桜の紅
雲のような
履き心地の
薄い下穿き
胎児の情が
遠出をする
布のおしめ
肩の脱臼で
垂れ下がる
幼児の感触
下書きした
独善の肌に
着込む壮年
老いて食す
行住坐臥の
道理知らず
散歩がてら
カラ瓶積み
カート引き
そよぐ風に
大小花開く
モクレン科
用水路沿い
入居者待つ
賃貸建築に
山陰うすく
梅から桜へ
移ろう鳥影
曲がり角で
鶯の初鳴き
待ち受けて
年々歳々と
調べの違い
聴き分ける
軒端を離れ
遊ぶ毎日を
抜け出して
働く以外に
潰しようの
ない日々に
追い出され
動きようも
もどかしく
いままでと
これからを
抜け落とし
とりあえず
引きこもる
姿勢もどき
割戻せない
身体を包む
視野に遊ぶ
芽吹く庭で
底をついた
灯油タンク
杖をついて
立ち止まる
明治生まれ
振り返れば
松と一緒に
写した祖父
行き帰りの
農道に居た
蝮を一撃し
皮を剥いで
持ち帰った
身体の捌き
教われない
祖父の体力
映す世代観
多分明日も
トレーニング
してますよ
MLB引退を
する会見の
席での言葉
頭を使わず
出来ている
昨今の野球
野球発祥の
地の後追い
など不必要
日本野球が
面白くあり
続けるには
変わっては
ならぬ頭の
使い方から
カーペット
の端っこや
畳の縁など
躓きそうな
身体捌きが
一筆書きに
売文業者と
もの書きの
余白の孤独
舞い上がる
凧の響きを
聞き取る臍
図式からも
年表からも
遠ざかれば
できるだけ
ゆっくりと
日常を動く
何処からも
四隅と縁が
見渡す程に
居心地よく
机や椅子が
動線を導き
ヒトの心の
コトに触れ
感応する隅
鼻から臍へ
黙して抜け
る身体の声
僅か三行で
語れそうで
説明できず
傍に居ても
邪魔ならぬ
掛替え無さ
幹を染める
雨に誘われ
散る花びら
見るほどに
やつれ果て
たどる術も
無用の用に
紛れこめば
浮かぶ老体
どのような
状態なのか
成さぬ力も
消え失せて
観るべきは
無残な枝葉
立ちすくみ
転びそうに
揺らぐ天地
揺れながら
立ちすくむ
古木の間で
ブランコを
揺り戻した
手足の緩急
掃き溜めた
堆肥の奥の
蚯蚓の動き
身投げして
釣り上げた
三枚下ろし
取り出せず
演った感も
見当たらず
素のままに
転び続ける
手前の動き
水たまりを
飛び越した
別れの挨拶
内なる声を
探し求めて
外からの声
切れ切れの
力の断片を
繋ぎ合わせ
関係と換勁
緊張と弛緩
立会い稽古
真似る型を
呼び込めば
内なる形に
纏めあげる
体捌きまで
程遠いから
見当たらず
探し歩けば
倒れそうに
一人二人が
入り込めば
出し抜かれ
止まらない
誰かの瞳に
声が響けば
挨拶交わし
前後左右に
名乗り合う
誰れ彼なく
ぶっつけて
跳ね返った
柔らかさが
指先通して
体の芯まで
いつ咲くか
競う事なく
紅白並ぶ梅
内外がある
田舎家から
引っ越した
庭木の梅が
枯れ果てた
名残の軒下
巧拙を問う
体捌きから
解き放たれ
剪定の術と
技に気づく
マンション
閉じ籠って
出られない
体の勘違い
干した傘の
影をめくる
庭の日差し
落とし卵の
殻に隠れた
重心の行方
お湯が出ず
水で洗った
皮膚が透け
心身という
言葉の先へ
橋渡されて
転がり出る
その時々の
好きな色が
匂い立って
目立たない
感覚を染め
梅蕾む庭に
漂う防虫剤
剪定の角度
抑えられて
起き上がる
向きと高さ
巡り合って
立たされた
最前線なら
踏み止まり
限界が消え
去るほどに
隔てられた
枝分かれに
隠された力
跳ね除けて
伸びる幹に
根が出会う
体調を占う
朝の食卓の
箸使いには
御飯味噌汁
に香の物が
お揃いなら
干物焼きに
海苔や卵や
納豆などは
上げ下ろし
前後左右に
箸の運びを
無造作でも
整えあげる
体捌きの要
お茶を注ぐ
小指を使う
急須の形に
表裏返すも
包み隠さず
死角の窓が
入れた足に
小石も触る
下宿の炬燵
夕暮れ伝い
踏みしだく
冬枯れ土手
鰻の寝床に
泳ぎ着いた
膝小僧と唇
手探り誘う
映画館から
山小屋まで
抱き合えば
取り落とす
四足獣の痣
先行きから
取り残され
踏み迷えば
素潜りして
翻る水かき
波紋に隠れ
光り眩しい
ゲレンデを
水面に映し
魚影を探し
歩行を隠す
岸辺の水鳥
閉じられた
甲門を叩く
幻の遊覧船
探し求めた
身体と体が
乗り合わせ
雪も綻んだ
立春の庭に
行き交いし
家人と共に
住み慣れて
見慣れぬ体
浮ついた床
建て付けの
狂う戸障子
使い古して
見落とした
我が身の宿
姿勢を質し
汲み替える
老いの井戸
覗き込めば
共に尽きぬ
間取豊かに
銀杏並木を
通り抜けた
遠い書割り
すれ違った
背中が語る
無言の挨拶
土に埋めて
掘り起こす
までの匂い
消える前に
手繰り出す
問わず語り
物陰密かに
歌い踊って
聞き耳たて
最も大きく
響く音など
聴き分けて
除雪機会を
裏返す庭の
圧雪と着雪
陽射し揺れ
雪モールが
滑り落ちて
生死の幅と
寿命までの
深さを測り
生き届ける
距離感への
引き込み線
生命線から
切り替わる
運命線なら
溶け込んで
入れ替わる
生きる価値
滑り降りる
屋根雪まで
這い上がり
曲げ炙った
竹スキーの
幼年の眺め
なぎ倒され
負け続けた
中学部活や
遭難しかけ
危うかった
山歩きまで
押さえ込む
五体の軛を
縺れさせて
物事に触れ
関わる前の
力の拠り所
やせ細った
幹や枝葉を
撓ませる雪
払い落とす
雪煙が舞う
老いた樹皮
凍りついた
ひび割れが
剥がれ落ち
老いぼれて
衰える体が
無くす知恵
無理出来ず
頑張れない
弱さの感触
受ける風に
後先変わる
真っ直ぐが
宅地造成で
跡形もない
雑木山の奥
陸続と這い
出して掴み
切れなくて
首から下が
露に埋まる
夏の早起き
負い目ない
季節の縁を
辿り尽くし
噛みちぎる
生活の質を
問い質せば
覆い隠した
標本箱から
零れ落ちて
野鳥の姿も
見かけない
庭木の枝に
幹を伝って
猫のように
逆上がれば
天地を軸に
眺め渡した
見通し暗く
歪みを除く
観察眼から
垣間見れば
等身大まで
抜け出した
生活投影像
生きる為の
暮し向きに
生きること
ポリタンの
灯油を持つ
背に日差し
背後の塀に
凭れながら
乗る竹馬で
跨ぎ越した
門松の影が
遠のいても
背筋を整え
手甲脚絆に
響く祭囃子
噂と違って
虚弱児でも
踊り出たか
止めどなく
流れのまま
抜ける動き
縺れ続けて
ほどけない
知恵の輪を
壁に吊るし
眺め積もる
塵を払えば
埃っぽくて
米糠まみれ
精米作業に
かぶら寿し
や味噌作る
田舎暮らし
出来具合を
気遣う前に
食べつくし
醸し出した
傾く納屋の
腐敗と醗酵
体の芯から
端っこまで
着物姿の影
庭に出れば
立ち尽くす
春の日溜り
肌身離さず
庭木の樹齢
冠雪の隙間
潜り込んで
手を翳せば
人の怖さが
蓋をすれば
我が身纏う
普段着綻び
着替えれば
纏まり整い
揃う身体が
正月恒例の
着物を着る
のも省いて
心置きなく
三段重ねの
御節平らげ
風通し良く
纏った夏の
作務衣から
引き継いだ
目立たない
仕立ての空
衣食住から
束の間でも
解き放たれ
気を感じて
どこまでも
袖を通せば