十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
煤払いする
踏み台から
揺らめいて
左右を取り
違えている
虚と実の差
技術の巣が
編み込んだ
虚飾に塗れ
脱ぎ捨てた
肌身を探す
遡行を試み
描き起こす
稽古録から
透かし見る
逆光を辿り
振り返れば
未踏の境地
どんな側に
佇めば気を
交わせるか
上へ下へと
乱気流崩で
不時着の朝
着替え際に
掛け違える
空っぽの釦
見慣れすぎ
当たり前を
飲み損ない
気が向かず
意識もない
日常の狭間
何かやれば
身軽になる
虚体の身体
山田の奥で
抜き忘れた
踵から爪先
座らされて
置き忘れた
案山子の尻
裏地を隠し
膕から跨る
騎乗位探し
肘を揺らし
腰を屈める
沈み込みに
膝の辺りを
解き放てば
上下に抜け
前後に揺れ
静まり届く
姿勢の船底
空と歩道を
占うような
買い物散歩
中学部活の
忘れ形見に
瞑想と摺足
肥桶担ぎで
背中に刻む
漢字読めず
薪割りとか
農作業腹に
書き込まれ
伸縮自在な
筆法を習い
覚え忘れて
38億年の
生命時間が
のたうって
凍った朝に
井戸水放つ
融雪ホース
雑誌捲れば
詩人と語る
研究者の頁
手当たりの
年鑑で探す
地肌の消息
書き込まれ
纏められた
乃音を求め
検索端末を
叩く書店が
静まり返り
息を潜める
旅の約束が
管から溢れ
架け替える
事などない
橋を渡れば
一方通行で
気づかない
帰りの風景
身を翻して
送り届けた
荒巻の返信
捌くほどの
身のこなし
習い覚えて
出生の程を
切り分けて
骨身に沁み
老いてこそ
噛みしめる
無分別なら
食虫植物が
姿を隠して
地表を覆い
氷の裏側で
幼虫に会う
成虫の無言
祖母の手が
白身と黄身
混ぜ合わせ
ひび割れた
記憶を壊す
パッケージ
声も通らず
やり直せず
そのままに
藁灰の煙の
奥へ消えた
身体へ脱殻
田んぼでは
見かけない
わらぼっち
庭木の梢に
根付かせる
沈黙の深さ
書くことは
読むことで
編み上げて
支柱の高さ
見定めれば
今年の樹高
幹と枝との
張り具合が
出会いの数
一人ぼっち
の体幹から
繰り出され
光り輝いた
浜の茂みに
吸い込まれ
山あい遠く
流れ着いた
入り江の香
四つに組む
筏となって
埋まる窪地
吹く風向き
合わせ舵で
乗り出せば
膨らむ帆に
撓み続ける
帆柱が響き
腐葉土溶け
山肌を透け
死出の愛し
通り過ぎる
交差点では
共鳴を覚え
三叉路から
Y字路まで
調律違えば
震え立った
音叉が響く
安らぎの間
無音の奥へ
辿り着けば
無臭の分別
骨と皮との
間で謳えば
内臓の表情
日々出逢う
身体が舞う
心に聴いて
縺れた様に
印字される
日捲り人体
左右何れか
写り込んだ
最初の一歩
掴み取った
肋骨の裏の
臓器の名前
真っ直ぐに
聞こえない
匂いの感触
雌雄を嗅ぎ
分け散歩を
記憶する手
真っ直ぐに
突き出せば
消え去る胴
耳のように
そばだてて
身体を聞く
住み慣れた
物心のまま
言葉で訊ね
耳慣れない
姿と形から
始まる愛聴
気づかない
同行二人の
合わせ鏡に
伸び広がる
天と地まで
響く息遣い
見てくれと
異なる姿勢
で回る風車
身体を通る
管のような
入口と出口
抜き取られ
納めるまで
辿り着けず
掴み取った
空を手放す
骨と皮の間
使う道具で
触っている
身体の感触
骨格を辿り
歪みを治す
内臓の姿勢
崩れる前に
出生前へと
遡行すれば
小魚や蛙を
捌いていた
小川の流れ
紐で縛った
ヤゴの尾を
追った距離
歳月を潜り
自作の凧を
手繰る唸り
いまここを
呼び寄せる
音楽と礼節
体格を解く
記憶の中の
幼い体付き
そういえば
手掴みする
骨の時間が
蜻蛉が壁に
時を刻んで
秋の日差し
水平飛行と
交差させる
垂直姿勢に
気づくまで
剥がれない
錐揉み姿勢
抜け出した
呼吸が繋ぐ
内臓揃って
後ろ向きに
歩き出せば
近づく他者
迫り出した
背中を抜け
内に潜めば
誘い出され
区別できる
好天と荒天
自然の渚に
打ち寄せる
贈与の潮時
身を浮かべ
舳から艫へ
気を走らせ
膨らむ帆を
前後に張り
占う風向き
波に洗われ
拡がる船腹
甲板を傾け
船倉を抜け
寝返ったら
左右知らず
通り抜ける
銀杏並木の
左右非対称
乗り合わせ
身体で聞く
ズレと歪み
なだらかに
骨身に触れ
響く丘陵地
枯葉羽織り
一足ごとに
傾く扇状地
蛇行し緩く
内臓に触れ
季節が流れ
散り漂えば
岸辺に沿い
動き覚めて
古靴脱いで
葉脈たどり
枯葉の海で
音と訓読み
解けぬ結び
脱ぎ捨てて
素足を掴む
二艘の舟を
交互に履き
蹴り放った
爪先までの
鼻緒の長さ
伸び撓んで
左右に漕ぐ
足裏を櫂に
前へ後ろへ
幹で捌いた
体感が響く
刈り込まれ
違和を隠す
庭木の姿勢
100年過ぎ
張り巡らす
枝ぶりから
見下ろせば
日差し辿り
根張りの跡
包み包まれ
幹を隠して
年輪が撓み
自然の如き
動きを秘め
飛び立つ蝶
木陰に散る
跡形もない
位置と構え
這い回る蟻
庭から消え
風雨の機縁
剪定作業の
落ちこぼれ
松の双葉が
日差し乾き
棕櫚の箒で
払った姿勢
老い先近い
玄関先から
腰痛が消え
渡りきった
太鼓橋から
振り返れば
接地破れの
雨樋を抜け
這い出す蟻
子持ち鮎や
松茸の様に
背筋が伸び
秋の食欲に
立ち上がる
背骨の傍で
前後左右に
身体の芯へ
揺り戻され
腸の奥まで
橋渡される
未踏の老い
差し向かい
打ち合わす
奥の手から
響き渡って
矩形の風が
切り取られ
踏み止まる
庭先に続く
蟻の行列が
書き損じた
字体の如く
途切れたら
振り出しに
戻れなくて
泣き叫ぶ闇
足探りから
手探り辿る
背骨の両側
刷毛で嗅ぐ
感覚めいた
体内の節目
樹間を走る
動植二心を
張り巡らせ
しかるべき
時と居所を
諭すように
蜻蛉や蝶が
弓形の島を
俯瞰するか
追いかける
鳥の体位と
動きめがけ
風習に抗う
風力発電の
耳障りな杭
肢体を洗う
季節に晒す
骨格に筋肉
日暮れても
囁きかわす
子猫と幼児
見せ場から
探し尽くす
場外乱闘も
健康であり
健康でない
その有り様
踏み外せず
病的階段の
上り下りに
本当らしい
姿勢を質す
ためらいが
見尽くせず
伺いきれず
躰の不思議
群れきれず
孤立できず
繋ぎ目だけ
まるくない
十五夜から
輪を描いて
三点を結び
動きまわる
三角形こそ
切り取られ
場に浮かぶ
三つどもえ
前後左右に
上へ下へと
零れ落ちて
さだまらず
たもてない
初対面から
とりあえず
会釈交わす
不安定まで
目覚めれば
アメデオの
裸婦像から
立ち上がる
朝の姿勢が
心づもりに
日に一度は
試していた
上下逆さま
腹を捌いて
吊るされた
眺めの中へ
歩き出して
やってみて
芽生える的
昨日までを
洗い落とす
腹づもりに
担ぎ手から
遠ざかった
お神輿の影
俵担ぎから
解放された
収穫の欠如
在るはずが
身近すぎて
担われざる
物に埋まり
便利すぎて
分からずに
進化を経て
手に入れた
成れの果て
枝葉伸ばし
幹の層へと
伸びる切株
滑りそびれ
逃した体で
春画を捲る
はめ殺しの
窓から覗く
身体の内側
内臓に乗り
滑り込めば
溶ける手足
無意識から
溢れる蛹が
伸び広がり
浮世絵から
はみ出した
腸管を潜り
ねじったり
ひねったり
しない体調
逃げ出せば
飛んでくる
小石や罵声
案山子まで
立ちすくむ
棒立ち下校
姿勢の裏で
縮みあがる
骨盤の記憶
誰に向ける
胸を張って
伸ばす背筋
傾く夕日に
樹木の影が
墓標の傾き
腹を割れば
立ち揺れる
弥次郎兵衛
寝違えたら
馴染まない
身体と時間
波長合わず
踊り間違え
ストレッチ
姿見えない
相性となら
擦り合うか
弱まる程に
星座の形が
見える視力
吸い取られ
見えてくる
女性性から
欲するまま
腹を緩めて
伸ばす背筋
繁る庭木が
剪定されて
深まる夜空
樹下の草が
削り取られ
更地もどき
老眼なりに
背筋伸ばし
裸足で掴み
樹木の様に
立ち絡まる
若木を夢見
伸び縮みが
スライドの
梯子を畳み
前後左右に
重ね稽古で
上下を探る
四季が崩れ
季語も失う
昨今の季候
植木職人の
手が入って
整えられて
家の中まで
忍び込んだ
庭の佇まい
帰り着いて
散歩の後か
走った後で
違っている
身体地図を
辿り直せば
身包み抜き
背骨を挟み
挨拶交わす
切り倒され
売り払った
桐の木の株
花の香りが
乗り移った
枯れ一葉を
厚歯で踏み
磨り減った
鼻緒が切れ
裸足で帰る
砂利道から
走り歩いて
何を踏むか
一足ごとの
挿げ替えに
歩くことと
走ることの
素足の記憶
痒みを伴って
繰り返される
毎日の皮膚も
手が届くから
掻いてしまう
老いの繰り言
七年も経てば
入れ替わって
蝉の抜け殻に
取り残された
近所住まいの
古老の後ろ姿
思い為す事が
ひび割れ続け
る老いの手相
どうしようも
こうしようも
人ならざる心
絶滅しても
古代生物の
図鑑動物園
一部だけが
書きかけの
不明の図柄
何ごとかを
始める前の
どんな形が
どのように
乱されたり
崩されても
子どもには
わからくて
見届けたい
立ち位置を
探し続ける
当て所なさ
ボタンを押し
横断歩道から
見上げた夏空
首を畳んでは
伸ばすように
空をゆっくり
絵筆のような
寝起きの鷺が
調整飛行して
伸び縮みする
羽ばたき音が
体育館に消え
寝転がっても
気づきにくい
体内空間では
足裏から頭へ
ゴロゴロする
波動が抜けて
何にもなら
ないように
できていた
歩み方でも
きれぎれの
棒のように
折れ曲がり
散らばった
足跡どれか
踏み当てて
拾い上げた
どれか一つ
手にしたら
踏み惑った
無数の余剰
数えあげて
誰か一人が
壁に刻んだ
雑草の庭に
虫の居所が
見当たらず
デジカメの
焦点を体に
向けながら
線のように
ズームする
意識を絞り
掴みとった
蝗の腹から
伝わる響き
取り出した
雛の鼓動を
包む掌から
落ちた跡が
下腹に残る
囲炉裏端で
気掛かりな
タクシーと
空模様だが
夏風邪から
はじまった
体内の季節
共同墓地の
上り下りが
整備されて
JRやバスの
乗り継ぎが
往復ともに
乗り心地も
混み具合も
ほどよくて
天と地から
海辺からも
ほど遠くて
絡みついた
蔦を手繰り
崩れそうに
吊るされて
体が揺れる
視線の底へ
影のような
夏の井戸に
身を投げて
浮かび出た
無意識から
手がかりが
ここまでを
消し込んで
これからも
汲み上げて
見切る先へ
飲み干せば
入り込めず
そっと遠く
眺めるだけ
声は聞けず
場面だけが
入れ替わる
踵を浮かし
宙なる腕が
泳がす体に
覆い被さる
闇の演者が
穿つ紙芝居
捲り終えた
場面を綴る
紙縒り作り
見出された
場を見切る
無類の演技
分かったと
分からない
が鬩ぎ合い
どうとでも
なりどうに
もならない
台風の目が
朝方に通過
したはず?
円弧の端が
崩れるのと
釣り合った
創生を成す
もう一方の
端をつなぐ
下と上りが
描く傾斜に
生命の輪が
庭先を掠め
老眼で読む
動く草書体
振り返れば
縦走路隠す
無音の瀑布
終始不明の
蟻の隊列が
纏わりつく
雲海に対い
ほんとうの
自然を問う
蜘蛛の巣を
描いた手で
蝗を捕まえ
黒焼きする
祖父の手の
囲炉裏端へ
老いの渚で
痩せた脛を
洗い出され
脱ぎ捨てた
下駄の奥へ
漕ぎ戻れば
三つの〈〉の
分散力へと
引き裂かれ
地団駄踏む
処世の船底
ひび割れて
積み上げた
習慣も破れ
耐えきれず
包み包まれ
隙間に縋る
肉体が笑う
寄生と共生
いずれとも
見分け難い
昆虫絵本を
開いたまま
戸惑う重心
這い出して
運び屋探す
幼虫の群れ
しがみつき
運ばれ先に
咲き散る花
離れ離れで
有為転変に
ばらまかれ
出会い頭の
再飛行あり
巣篭もりへ
足の甲から
ころがした
礫を指掴み
重さを点に
取り込んだ
肉体が拓く
放物線から
抜き取った
接線が伸び
掴み上げる
愉快な腰で
トンボ返り
舌で拾って
丸めた玉に
拡がる宇宙
老い先短い
罫線で刻む
稽古の門人
猛暑日なら
隙間を作る
外出着込み
ぐんにゃり
凹みそうな
舗道の雑草
引き抜けば
火花が散る
コンセント
二点を繋ぎ
駆け抜けた
身体を包み
手つかずに
目から鼻先
掴み出され
来し方から
解体される
行末までも
いつの間に
開け放した
夏の顔から
溢れ落ちる
飛沫が乾き
消える響き
聞き取れず
聞こえない
振りをして
やり過ごす
景観を巡る
起居動作に
埋め込まれ
隠れた声を
掻い潜って
身体の奥に
震え伝わる
雨降る叫び
こっそりと
朝陽に浮く
仕立て下し
飛び跳ねる
呼吸を絞る
蜘蛛の巣に
干からびて
抜け落ちた
老いの手本
同じ年頃の
祖父の姿に
胴体着陸し
反転揚力で
体内感覚に
潜り込めば
胎児以前に
溯るほどに
死後へ遊行
構もせずに
怠りもなく
待ち受けず
身も蓋とも
僅かばかり
翻るだけで
来し方から
行末見えぬ
ホバリング
国家の起源
跨ぎ越せば
住居の始原
崩れかけた
民家が遮る
格子の彼方
語りこぼし
蚊帳を捲り
夏の縁側へ
夏風邪ひき
立ち止まる
踊り場から
緑を裂いて
這うように
滑空する燕
蕩けすぎた
日常の中の
立ち姿では
手も届かぬ
羽の生えた
背骨が翔ぶ
着古された
皺だらけの
普段着から
抜け落ちて
浮き羽搏く
黒い稽古着
透し見れば
老い半夏生
雨に濡れて
木虫籠擦る
棒切れ握る
名残の掌に
爪先立って
雑巾掛ける
嫁取り民家
組み合った
家と身体が
上へ下へと
叩き出され
見え隠れた
夏の大掃除
掘り起こす
縄文遺跡に
身体の記号