十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
-最終更新日:2016/07/01撮り溜めた
写真の壁紙
シャッフル
紫陽花から
半夏生まで
九十九折で
散策しても
拡がらない
庭の奥行き
受話器から
数十年ぶり
ヨメの知人
やっつける
手際料理で
食いつなぐ
日々の幸せ
指摘されて
孫話に落ち
遠い田舎道で
老馬と少年が
交わした無言
遺物のような
錆びた銃弾と
磨かれた胡桃
三反百姓家で
幼老を結んだ
引き揚げ家族
失念していた
年齢差が65
だったりして
竜巻のごとく
過ぎ行く時の
痕跡のなかで
胡桃を揉んで
柔らかくした
指で磨く錆び
空模様がらみ
伸び縮みする
パラシュート
ザリガニから
メダカまでを
混泳させても
観察できない
動きの秘密を
閉じ込めた夏
食べられず声
も出ない働き
から動きまで
綾なす伸筋と
屈筋の群動が
織りなす行い
体癖に従って
紐を添わせる
気が即動即変
足で書いた
田畑や庭の
植物誌から
手で書いた
家畜ならぬ
動物誌まで
捲り続けた
良い日悪い
日普通の日
あるがまま
身体を晒す
晩年の祖父
重度介護で
介護ならぬ
老いた母が
時間知らず
眺め上げた
見返り仏様
雲漉く風に
雨根が乾く
屋根を滑る
アクセルと
ブレーキが
絡み合えば
考えないで
触れ合える
枝葉と幹の
影が傾斜に
残されても
再現できぬ
組み合った
言葉の働き
と動かなさ
勝手気儘と
怒りっぽさ
をとりなす
みな古株で
花もまばら
庭の躑躅の
植え込みを
ひんぱんに
往来する猫
動植物化が
露わになる
住人に似て
動きも鈍く
暑さ寒さも
耐え難くて
一輪挿しに
挿す薔薇の
棘に刺され
撮り損なう
装花めいた
揚羽蝶の影
砂利道から
舗装道路に
切り替わる
風向きから
垣間見えた
一瞬の静止
芝居を作り
演じる迄の
楽屋と舞台
打ち急いで
打ち遅れる
打ち上げに
見逃される
たった今に
止まること
水平からも
垂直からも
見放されて
十数年やった
頼まれ仕事を
終えた曜日は
サイクリング
日和なれども
お出かけバス
足して百四十
歳の老夫婦が
乗り込む隙間
好きでも嫌い
でもない仕事
に招かれたら
先がないのを
見極められる
橋を渡るだけ
請われたなら
仕事になるが
天職は叶わぬ
水田を掠め
宙返り燕が
皐月の切札
覚えのない
手捌きから
溢れる渇愛
囲炉裏端で
煮炊きされ
孫の胃袋へ
田植えから
稲刈りまで
畦道の弁当
日々繋いで
女系模様の
卓袱台囲み
それぞれの
幼児食から
介護食まで
毛虫の姿が
消えた庭に
蝶が舞えば
軒下を伺う
無人機から
降下する影
富貴の人が
気づかない
リングの汗
蜂のように
闘い終えた
ボクサーが
立ち向かう
老いた体を
見舞う震災
瓦礫が覆い
隠す破局の
無常の果て
月明かりに
惑わされる
七つ星の光
人差し指と
親指の骨が
出会う指圧
丁半見極め
座頭の耳が
閉ざした目
落語が語り
尽くせない
衆生の体癖
恣意が繋ぐ
棟割長屋の
縁起を訊ね
夏風が導く
山腹辿って
信貴山絵巻
緑の枝ぶり
透かし見る
飛行機雲が
交差すれば
今朝の運勢
揉み消され
縛るでなく
相まみえて
這わせれば
居合わせた
見知らぬ空
地図届かず
巻き飛ばす
竹とんぼの
軸が震えて
擦り抜けた
手のひらに
紐の間合い
取り替える
季節外れの
写真立てに
時計草から
紫陽花まで
刻まれた旅
置き所ない
花の一枝が
投げ込まれ
貰い受けて
徳利の肌理
銘酒で磨き
水切り刃で
研ぎすます
花びら散る
下駄箱から
仏壇はさみ
床の間まで
吹き荒れた
五月の風と
葉裏の毛虫
齧られても
空を流れる
雲の擦過音
追いかける
聞きたい音
見たいもの
仕込み杖に
空耳かざし
空目浮かべ
振り返った
庭木の影が
寿命を数え
傾く軒端で
壁抜け促す
白紙の余白
虫ゴム替え
一夜寝かせ
走り出せば
なだらかに
抜け落ちる
脇を吹く風
萌え翻った
緑の粘膜が
躍動すれば
亜脱臼して
こすれ合う
新型自輪車
空回りさせ
漕ぎ出せば
側溝が迫り
避け損ねて
溜め溢れる
見返り漕ぎ
吹き荒れた
風に耐えて
新芽が傷み
青葉害虫に
風穴残さず
出し抜かれ
咲きたくて
見出せない
花の有り様
蜻蛉の尾が
溜池を打つ
波面の拡散
魚眼を隠す
水草に絡む
気泡が揺れ
均衡破れた
水の隙間に
溢れる魚影
数珠繋ぎに
均衡を先へ
伝える毛虫
気づかない
身構えから
崩れ落ちて
日常纏った
体の張りが
緩みほぐれ
日頃隠され
抑えられた
自分が蠢き
知らなくて
待たされた
新たな均衡
いまここで
崩れそうな
縁を渡って
四月の雨が
洗う羽織を
脱ぎ捨てて
二足歩行で
思い起こす
娘の初立ち
野生公園で
餌欲しさに
立ち上がり
相棒の肩に
手をかける
熊公と八公
いまここの
立ち姿から
世界に触れ
縦横いずれ
どんな形で
語り合うか
まったりと
朝靄が隠す
残雪の山肌
雀の春子が
戯れ揺らす
木の芽時に
飲みたくて
アイラ島の
10年物など
名前を忘れ
臭い香りが
ボトル姿で
どう見ても
飲むために
飲むだけの
繰り返しを
目指すほど
酒量の衰え
自転車から
乗り換えて
昼風呂掃除
萌える緑を
引き裂いて
亀裂が走り
満期退職を
祝う集いの
年金生活者
ライブから
アーカイブ
へ肩代わり
図書館から
書店を覗く
行き掛かり
耳から遠い
熊本在住の
書き手の声
照葉か猫か
区別しない
玄関感知器
人気のない
静かな庭が
モニターに
こっちから
あっちから
うえからも
交差しては
通り過ぎる
飼い猫の影
縮むように
暮らし保ち
十重二十重
剥き放たれ
周回軌道に
照り返され
緑ほころぶ
街並みから
抜け出せば
記憶の中の
映画館から
図書館まで
開け閉めの
音も忘れた
シャッター
閉園された
観覧車から
看板を数え
自転車から
空気を抜く
アーケード
裏から表へ
通り抜ける
空洞の響き
7年経った
朝の線香を
等分に折り
ひと知らず
生死を分つ
粘葉装の頁
芽吹かない
盆栽の陰で
冥想を重ね
花瓶に挿す
花の寿命を
刈り込めば
植え込みを
行き惑って
雑草が伸び
引き抜いて
振り下ろす
背中の判断
鳴き合わせ
競うように
咲き揃って
春の幕間で
見上げれば
山車の軋み
雑踏の奥で
捲し立てる
香具師の声
皺多い手に
宿場町まで
連れ出され
祖父と孫を
隔てる歳が
着流す掘割
喧騒を輪に
ゼンマイを
巻き戻す船
読み書きの
つなぎ目を
綴じ合わす
見開きなら
これまでと
これからの
裏表すべて
見通せない
和装本から
数えきれぬ
虫食い跡で
読み落とす
いまここの
交差点から
立ち消えて
新たな間に
立ち現れる
転機の狭間
襖や障子の
開け閉めで
返す手の甲
しなやかに
開く背中が
呼び覚ます
掃き掃除や
除雪作業に
薪割りなど
祖父の背を
伝い落ちた
汗が滲んで
渇く老いの
編み目深く
絡め捕られ
結び方から
忘れ果てて
ほどけない
回転翼なら
何でもいい
設計志向で
山間の村を
飛び立った
羽搏く音に
ポケットの
あずき蛇を
解き放って
部室を離れ
竹刀が届く
体育館裏へ
虚弱な力を
分岐させる
術も知らず
藪漕ぎから
滑り落ちて
麓に目覚め
外観からは
雨上がりの
郷土の眺め
寒の戻りに
暖簾を潜る
熱燗の誘い
畳の上での
寝起きから
呼び戻され
片膝立ちの
草むしりで
疲れない体
着崩れ無し
自在な腰の
立居振舞い
肩掛けから
腰蓑までに
気づく仕草
里山を抜け
寄り道した
陽溜りから
手折っても
尽くせない
蕨の温もり
仕舞い込む
スキー板で
滑り足りず
回転感触を
身体各部に
埋め戻せば
解体しつつ
取り外せる
雪囲い仕様
割れた体で
縮みこんで
時節合わせ
木製の床を
撓ませたら
ガラス開き
環状線から
抜け出せば
水鳥の出番
旅立ち前の
水掻きから
泡立つ水深
水面を打つ
名も知らぬ
樹影が崩れ
爪先立った
自撮り棒に
問いかけて
折り返せば
背後に迫る
未知の関門
無くなった
羊水が磨く
母音の群れ
枝分かれを
引き絞った
雪吊り外し
腐葉土深く
仕舞い込む
子音の欠片
母の庇護の
根から葉へ
幹を揺らし
大洋を渡る
船のように
発語を櫂に
海流を割る
島影が語る
方言の潮目
一人称では
語られない
場所の獲得
自動階段や
昇降機だけ
利用できて
ミクロから
マクロまで
見尽くせず
壊れやすい
世界と触れ
合う情緒が
潜る身体の
回廊を辿り
殻を破って
終わり時を
いつまでも
置き去りに
濃霧を切り
開くように
爪切る音が
見ず知らず
花の蜜吸う
小鳥の踵に
風に煽られ
撓む小枝を
結び合わせ
無名の袖を
見つけ通す
腕前の指先
掴み損ねた
挨拶を潜る
頭角の先へ
唄う顎から
運指で辿る
練習曲まで
満開の梅枝の
鶯を撮り逃す
心地よさから
山なし谷なし
筋なし物語へ
逃げ出せるか
いつか捲った
頁で蓋をした
地下の書物蔵
遠い読書から
活字の履歴を
数えた閲覧へ
運動嫌いでも
なくて本当は
学校体育嫌い
集団で競った
球技などから
逃げ果せたか
三月の光が
捲り落とす
着雪モール
登り下りで
急ぎ遅れる
出会い頭を
追い越して
抜き加減に
行当たれば
還暦過ぎの
鞍部に休み
泡立つ心身
スポ少から
部活までの
初心の構え
身に余って
あってなき
抜け殻にも
振り切れない
針の先で輝き
遠ざかる星に
行き場ないと
文字で刻んだ
指のひび割れ
寒ブリ宣言も
取り消された
冬の湾内深く
粉々に刻まれ
深海潜水艇に
積み込まれて
取り残された
裸身際立たせ
泡立つため息
心身の時空に
絡め取られて
編まれた網目
弾けないで
爪痕残した
ギターの傷
磨いた爪を
頭突きまで
突き詰めて
爪先立って
弾き飛ばす
額の先まで
無手勝流の
気後れから
逃げ腰まで
乗り遅れた
体を割って
追い込まれ
鱗を逆立て
魚群が描く
道具の動き
色づき始め
なだらかな
梅林の丘が
産毛の陰で
グラス傾け
泡立つ口内
波打ち際に
歩み寄って
寒雀の鼓動
稜線を外し
呼吸に沈む
窪みの辺り
雪解け誘う
谷筋を聴き
分ける歓び
成り成らぬ
斜面を弄る
陽射し撫で
寒暖激しい
コブ斜面が
日替わりで
空カートの
轍を辿った
買い物散歩
二人分かれ
一緒に見る
別々の映画
多様な向い
風に居着く
対象の内側
逡巡すれば
妄想紡いで
歩き疲れて
たった一人
で実感する
誰かが勇気
青の方角に
分からない
垂直と水平
路駐が多く
路線バスが
走れなくて
バス停から
振り返った
初滑り斜面
音のしない
飛行機雲に
吸い込まれ
孫を背負い
滑り降りた
シュプール
遠い稜線に
巻き上がる
雪煙の彼方
踏み抜いたら
深さが分かる
空の高さまで
横切る二羽が
前後を譲って
消えゆく辺り
なんの事だか
分からないと
告白されても
教科書不要に
切り替えたら
答えはどこに
調べることが
どういう事か
分かり合えず
向き合ったら
板書出来ない
書き損ないが
雪化粧薄く
ゲレンデを
遠く望んで
立春の朝に
上ってみた
活字の階段
木目模様の
ガラス越し
見聴きした
読書空間が
更新される
演者と聴衆
ステージと
観覧席から
消えた楽屋
窓越しでも
通りすがり
街中の踏台
降り積もり
雪解けまで
作為もなく
覆い隠され
割線が入る
偶然の直感
呼び込まれ
心身深くへ
溶け込ませ
寒気去らず
布団からは
出にくい体
試合に負け
悔し泣きも
できない躰
快眠快食を
貪る体操で
起き上がる
昨夏休みの
窓口越しに
見えなくて
信と不信が
寄せて返す
教育の浜辺
前後13期の
乗り継ぎに
居合わせた
新旧校舎を
遠く揺らす
天地異変も
介護と病の
見取り図も
描ききれず
最終授業を
終えた教室
居残る学生
手袋をして
掘り返せば
狭まる動き
朝の除雪が
積み上げる
抜け水の音
庭の雪玉を
叩き落とす
素手の心地
寒い縁側と
階段を抜け
氷柱の寒さ
極渦の影が
靡いた袖に
地軸を通し
抜け落ちた
作為の塊に
書き置きが
行き帰りの
風向きから
抜け出せば
静まり返る
校舎の陰の
身体の暗闇
身内なれば
勝敗に拘る
目くらまし
結果ばかり
追いかけて
終われない
中途半端な
腰砕けこそ
褒めどころ
食い詰めた
肝のあたり
裏返されて
白い摩擦に
覆われたら
滑らないか
布を巻いて
紐に託せば
着崩れして
暴力祖父の
着物姿から
より遠くへ
心身違える
隙間目掛け
巻きつけて
解けそうに
密着すれば
観察できず
内向すれば
老齢と死が
腑分けされ
螺旋階段か
直登階段か
どちらかに
気づいたら
足がかかる
待ち合わせ
テーブルと
椅子を支え
ガラス張り
せり上がる
舞台めいた
吹きさらし
夕暮れ烏が
駅舎を埋め
舞い飽きず
ロビーには
行き先なく
咲く啓翁桜
捨てがたい
枯れ木鉢を
抱き上げて
垣根越しに
受け取った
宅配便の箱
下ろす床に
雪吊り枝を
縛った縄目
正月に着た
着物の紐と
帯が蘇って
雪吊り縄の
支柱に映る
庭木の内観
腐葉土深く
根こそぎに
葉脈が溶け
飛び石伝い
切り抜けて
追い越され
川沿いから
消え去った
密集カラス
消息を問う
というより
生存確認が
渡り鳥鳴く
夕暮れ空に
誤配されて
明日の池を
探すように
滑空する羽
夜の階段で
墨を含ませ
足跡を消す
無駄な手が
年明け結ぶ
庭の雪つり
見届けつつ
数十年ぶり
招く旧知に
辿りきれぬ
生き様写す
絞り具合で
一期一会の
新年会から
環世界まで
踏み外した
碁石を打つ
響きが貫き
ミクロから
マクロまで
拡がる微動
数十年ぶり
袖を通した
着物の汚れ
嫁の手慣れ
雑煮の味も
今更ながら
ヤゴを脱ぎ
飛び立った
里山の眺め
覚えのない
着心地とは
何だったか
腰のあたり
纏まり良く
解き放たれ
箸の捌きも
お節を前に
よどみなく