十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)

最終更新日:2016/01/01

過ちて(15.12.29)

小屋根や
植込みを
渡り消え

残された
子羊らの
初雪の跡

一コマで
刈り取る
非常勤務

誰からも
信頼され
ていない

1/4欠け
ケーキの
存在感に

忘れたら
塗り込む
初心の味

分身(15.12.25)

切り抜く
身体から
複製まで

数少ない
言葉での
やりとり

出かけて
見いだす
人称へと

心ならず
掛かった
技のよう

骨格まで
導かれた
足型の跡

歩き方が
成り立つ
姿勢の謎

身丈(15.12.22)

短い日が
差し込む
床の間で

夫婦鷹が
羽搏きを
閉じ込め

腰に潜み
幹を掴む
脚の付根

児童期を
境にして
着物忘れ

結婚して
着こなす
松の内に

見えない
袖丈から
言葉溢れ

過不足(15.12.18)

渦を巻いて
烏が水浸し
の空を埋め

読み込めば
推理が働く
ブラインド

個人文庫に
閉じ込めた
日本の養子

食み出さず
体いっぱい
美徳と悪徳

混迷を砕く
激流の闇が
船底を叩き

見逃された
厄災に絡む
無関心の病

絵本(15.12.15)

枯れ枝から
病葉を抜け
葉脈の渇き

普段着から
抜けだした
暖冬の夜空

汲み上げた
季節外れの
遊覧船まで

形をなぞる
星座の影へ
加速すれば

体内深くを
擦り抜ける
探査船まで

今日を限り
改訂された
絵本の生命

隙間風(15.12.11)

戦国武将が
越えそうな
積雪薄い山

スマホ静寂
埋め尽くす
定期バスを

留学生らの
英語混じり
叫喚が埋め

川面を染め
暖冬模様の
夕闇に沈む

戦争を語り
消息を断つ
先人物書き

薪割りから
雪かきまで
一足飛びに

姿勢(15.12.08)

原住民なら
死に場所が
見極められ

自然と同化
したような
枯れ木へと

成長すべき
違和を刻む
波紋に隠れ

捲り返した
年輪で働く
知恵の外へ

消費の旅を
ゆきゆきて
植物の如き

導管を抜け
藍染の空を
獣のように

行きずり(15.12.04)

死者を畏れ
霰をはじく
庭の雪つり

消える音に
耳を澄まし
未聴を訊き

射竦められ
体内回路に
回避すれば

人馬一体へ
駆け抜けて
異類を営み

身体で数え
ない計算で
仕訳けられ

世にも稀な
文字使いが
紡いだ言葉

中途半端(15.12.01)

手作り極め
土塊を払い
虫食い削り

それぞれの
冬の野菜を
貰い受けて

新聞紙など
畳み直して
過ぎ越せば

手作りでも
中途半端な
櫂で操って

閉じた本に
隠した身で
街頭に群れ

網の目から
血を流して
神経尖らせ

カラス(15.11.27)

通い慣れた
橋を渡った
午後の往復

水鳥一羽が
川面を叩く
土手を隔て

薄墨色めく
夕空を埋め
電線に群れ

羽ばたけば
黒い骸骨が
真っ暗闇に

貴種を流し
卑種を沈め
川沿いの街

路地裏辿る
足取り探す
町内案内図

無縁(15.11.24)

波打ち際で
ヤドカリが
脱ぎ忘れて

水鳥が啄む
気後れやら
当て所なさ

週休二日で
働く価値が
消費価値へ

コンビニで
食いつなぐ
派遣労働者

家族からも
友人からも
切り離され

携帯電話が
人を新たに
デジタル化

きりもみ(15.11.20)

右手のこと
左手のこと
お互い無視

足の親指は
反り返って
俯く指四本

突っ掛けと
スリッパの
はき心地で

階段の上り
降りが違う
足裏の感覚

無節操でも
構成各部が
協働すれば

出会い頭の
二体で育む
第三体から

寂幸網(15.11.17)

散歩帰りを
待ち受けて
寂しい蜘蛛

広げた脚に
鈍い朝陽が
照り返して

昨日見つけ
網を破らず
庭の落ち葉

拾わないで
ありのまま
やり過ごす

ご近所から
紅葉便りが
密かに届き

元気な姿が
角を曲がり
網の彼方へ

外野にて(15.11.13)

シーズンが
終わっても
擦過音響き

試合前から
追いかけた
打球の行方

球場の外へ
駆け出して
取り損ない

捕球姿勢で
野次を拾い
投げ返せば

届きそうな
始球式では
呼吸を整え

芝生席から
ずり落ちて
広がる視野

コマ割り(15.11.10)

木を数えて
分け入れば
木霊を聞き

割って入る
桐の花匂う
裏庭の日陰

学校帰りに
通り過ぎた
映画館から

連れ帰った
身包み剥ぐ
夢見る半身

一刀両断の
手ほどきを
祖父の姿に

絵と心情を
繋ぐ会話も
切り刻まれ

薄暮(15.11.06)

ベンチから
忍び寄った
不審な問い

間引かれた
行く末から
取り出され

問いかけが
雑踏に紛れ
掻き消され

空の言葉が
立ち位置に
差し戻され

通り過ぎて
振り返った
信号の明滅

傾く西空に
別れを隠す
帰路の挨拶

手数(15.11.03)

有明の月に
寝起き姿を
浮かばせて

漕ぎ出せば
素手で交す
挨拶の岸辺

♂と♀との
ビットから
編まれた幻

母の揺籠で
掴み取った
匍匐の手足

距離を掴み
形を舐める
異数の組手

結ばれては
解きほぐす
紐に縛られ

残量(15.10.30)

秋の虫の声が
途切れそうな
枯葉だまりに

自己嫌悪する
数え切れない
着メロの響き

危うい残量を
モニターする
夕暮れの車窓

不安定ならぬ
立ち位置から
振り返るには

模倣しかない
とっておきの
ローアングル

一つしかない
入り口からは
見えない出口

  • 国立情報学研究所(NII)、“CiNii Dissertations”を正式公開(カレントアウェアネス・ポータル) http://current.ndl.go.jp/node/29808
  • 米国議会図書館(LC)の米国民俗センター(The American Folklife Center)、フォークソング歌手ブロムバーグ(David Bromberg)氏からコレクションの寄贈を受ける(カレントアウェアネス・ポータル) http://current.ndl.go.jp/node/29815
  • 非親告罪化ってナニ?それでどうなるの? 桑野雄一郎(骨董通り法律事務所 For the Arts) http://www.kottolaw.com/column/001073.html
  • 「著作権70年」に延長。TPPがカルチャーシーンに与える影響とは(cinra.net) http://www.cinra.net/review/20151029-tpp
  • マンガは読書を促進するのか(BLOGOS) http://blogos.com/article/141437/
  • E1723ー東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2015/8/20現在)(カレントアウェアネス-E No.291) http://current.ndl.go.jp/e1723
  • 「E1725 - 欧州におけるオープンアクセス方針の実施に向けた準備状況」を書きました(ささくれ) http://cheb.hatenablog.com/entry/2015/10/29/173255
  • 『大学の図書館』の情報収集術特集に寄稿しました(ささくれ) http://cheb.hatenablog.com/entry/2015/10/28/192522
  • 恋をするほど美しい。休憩にもぴったりな「NYパブリック・ライブラリー」(OVO:オーヴォ) http://ovo.kyodo.co.jp/news/life/travel-news/a-637588
  • 海老名ツタヤ図書館共同運営会の撤退理由「運営の方向性の違い」とは?(Honne Blog) http://honne-review.com/192.html
  • TSUTAYA図書館と「理念あわなかった」 図書館流通センターがCCCと関係解消へ(ハフィントンポスト) http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/27/tsutaya-ccc-trc_n_8396072.html
  • TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由:CCCとの公立図書館運営の協業見直しへ(東洋経済オンライン) http://toyokeizai.net/articles/-/90216
  • TSUTAYA図書館の是非は!?元司書がセレクトするこれからの図書館を考える超オススメ本6冊!(振り返れば無花果の森) http://blog.livedoor.jp/ichijiku_boy/archives/46491456.html
  • ツタヤ図書館は”悪”?図書館を民間企業が運営するとイイことも!(BLOGOS) http://blogos.com/article/141583/
  • 「図書館」の真実をどれだけ知っていますか:思わず人に話したくなる薀蓄100章(東洋経済オンライン) http://toyokeizai.net/articles/-/89742
  • 脳と心の再生カンファレンス まぶたのピクピクはストレス警報(毎日新聞) http://mainichi.jp/m/?3PvsXx
  • 筆圧(15.10.27)

    玄関先では
    モニターが
    触手を休め

    影を舐めて
    塗り上げる
    日差しから

    横切る猫や
    宅配に紛れ
    木犀の香り

    吐息で貼る
    紙飛行機の
    安定姿勢で

    脱ぎ忘れた
    下駄履きも
    竹馬からも

    かかと先が
    下駄箱深く
    刻み込まれ

    なぞる(15.10.23)

    蜜柑の皮を
    剥くように
    ひもとけば

    軸の握りに
    息も乱れて
    姿勢も崩れ

    急須で注ぐ
    指づかいに
    なだめられ

    文字の林を
    細かく捌く
    和紙の麓で

    指を染めた
    墨を含ませ
    切り込む刃

    言葉の樹を
    削り起こす
    筆遣いまで

    痺れ(15.10.20)

    咲き乱れる
    コスモスの
    河原に埋れ

    川面を叩く
    釣り糸から
    鮎の煌めき

    秋祭りから
    遠のいても
    匂う襟足が

    脚を解いて
    橋の袂まで
    川面を渡り

    群がる鳶が
    輪を描けば
    橋桁が揺れ

    水音を裂き
    突き刺さる
    夕暮れの光

    綾取り(15.10.16)

    壁際から
    振り向く
    窓際まで

    秋の午後
    手を休め
    机の向き

    座席から
    出席簿が
    印刷され

    ID漏れの
    足音から
    はみだす

    疑問符が
    識別子の
    誘い水に

    指を洗い
    手を変え
    縄を編み

    構え(15.10.13)

    幹竹割の
    股間から
    十文字に

    宇宙まで
    解き放つ
    シャトル

    放物線を
    手放せば
    ジグザグ

    縁を繋ぐ
    関節技で
    躾けられ

    気付かぬ
    病原菌の
    体内抗争

    縄張りが
    息遣いを
    締め上げ

    岐路(15.10.09)

    カモシカに
    秋の山道で
    遮られたら

    木陰からは
    のっそりと
    ヒキガエル

    狭い洞窟に
    ぶら下がる
    蝙蝠の気配

    樹木の陰で
    ムササビが
    夜を待って

    飛翔夢から
    墜落夢まで
    繋ぎ合わせ

    還り道探す
    止り木なら
    天狗の団扇

    同郷(15.10.06)

    新しい靴で
    裏山めがけ
    けり込んだ

    秘密基地に
    遅れそうな
    古い楕円球

    グランドを
    横切ったら
    見咎められ

    怯えそうな
    革靴を脱ぐ
    裸足の反抗

    釦の眼から
    脱げそうな
    窮屈な制服

    止めに入る
    部長の言に
    同郷の響き

    柿もぎ(15.10.02)

    古網戸から
    メッシュを
    剥ぎ取れば

    人差し指と
    親指からも
    見放されて

    棒を掴めば
    たわむ腕の
    自在な手首

    身体操法の
    序破急から
    起承転結へ

    指が互いに
    反り返れば
    足で掴める

    四足歩行の
    記憶を辿る
    柿の木登り

    夜間飛翔(15.09.29)

    巻きとれば
    抜け落ちる
    夏庭の残水

    観覧車から
    電子書籍へ
    張り巡らす

    中秋の頁に
    手足を緩め
    耳を澄まし

    障子越しに
    カマキリの
    影が動けば

    時空を染め
    秋の収穫が
    五体に響き

    体内を抜け
    飛行機雲が
    角度を決め

    河川敷(15.09.25)

    滑空距離が
    短くなった
    離陸と着陸

    遅ればせの
    同じ手順が
    繰り返され

    風まかせの
    赤トンボに
    先を越され

    並外れでも
    低空飛行が
    保てるなら

    無芸徒食の
    航続距離で
    昼夜を跨ぎ

    不時着する
    芸を頼りに
    擦れ違えば

    白紙(15.09.22)

    振り返れば
    あっという
    短かさだが

    いまここに
    佇む影なら
    長く伸びて

    飢餓からは
    免れ得ても
    空腹からは

    法も国家も
    常識までが
    有為転変で

    善悪いずれ
    模倣の渦が
    弄ぶ身体へ

    はみ出して
    腹が据わる
    きっかけが

    周回(15.09.18)

    風まかせに
    なだらかな
    お椀が揺れ

    鞍部が開く
    稜線を辿る
    未読の足跡

    意識された
    ダム放水に
    無意識の虹

    飲み水から
    溢れそうな
    災害と事件

    因果の果て
    腑に落ちず
    迷路の呼吸

    周回遅れの
    幼児性なら
    父親代わり

    老い目(15.09.15)

    常願寺と神通
    両河川を又に
    自転車で駆け

    張り巡らした
    ルートを編み
    ハンモックに

    透けて見える
    ペダルの軽重
    扇状地の傾き

    仰ぐ山肌から
    降りる紅葉が
    身体を染めて

    枯れ葉の舟で
    散歩代わりに
    漕ぎ出す流域

    高齢化の窓を
    揺らす眺めに
    拭き取る言葉

    吐息(15.09.11)

    昼にスキーや
    サイクリング
    夜はバドなど

    あたりまえに
    していた体を
    しまい忘れて

    忍び寄られた
    他者と交わす
    挨拶も知らず

    軽くて重たい
    飲み残された
    ボトルの中味

    頂きますから
    ご馳走様まで
    締め括る介護

    ありがとうを
    朝夕繰り返す
    畏れのように

    背後(15.09.08)

    過ぎし夏の
    掌を返せば
    葉裏の響き

    無さそうな
    隙間からも
    調べが漏れ

    共感せずに
    反転しない
    他者の訪れ

    寂しい宿に
    灯をともす
    旅立ちの声

    有り得るか
    有るべきか
    架橋できる

    頂を極めて
    呼吸すれば
    緩む身体像

    相聞(15.09.04)

    築数十年を
    巡り越した
    佇まいにも

    庭木剪定で
    癒されてる
    夏の疲れが

    住居からも
    身体からも
    明かされず

    振り返って
    語られない
    老いの消息

    短い来し方
    日々重なる
    一日の深さ

    ご老体まで
    季節で測る
    違和に耐え

    壁抜け(15.09.01)

    昨夏の凪を
    忘れていた
    船出のよう

    生活視線が
    張り巡らす
    デモの分散

    ベルト締め
    タオル結び
    ヘルメット

    遠い戸棚に
    置き忘れた
    身分証明書

    家を離れて
    職場からも
    離陸できて

    俯瞰視線で
    身包み剥ぎ
    声を挙げて

    結び目(15.08.28)

    細く長くても
    太く短くても
    枯れてからに

    親鳥の魅力が
    雛鳥の庇護を
    呼び寄せたか

    離別してから
    親心子知らず
    関係の網の目

    朝に眺めても
    夕べになれば
    堕ちてしまう

    庭先の芙蓉を
    掃き集めれば
    夏の虫の死骸

    釣り上げれば
    水と餌が描く
    糸と釣竿の弧

    竹とんぼ(15.08.25)

    一輪挿しから
    抜き忘れてる
    回転翼の枚数

    ウレタン製の
    模型飛行機で
    滑走路を試し

    夏休み工作に
    用意したまま
    未開封のロボ

    届かなかった
    書架の絵本の
    改訂版が出て

    やり直せない
    書き直せない
    生命のもつれ

    2枚と3枚で
    飛ばし比べた
    原っぱの不在

    晩夏(15.08.21)

    電線に群がり
    稲穂のように
    鳩首を揃えて

    山地から下る
    アキアカネの
    飛来を待つか

    再開発新駅の
    賑わいを抜け
    山地の墓参で

    黒と金の線を
    思い出させた
    ハグロトンボ

    猛暑の中休み
    夕方の散歩で
    寄り添う風に

    吹き寄せられ
    羽根を休めて
    留まれ秋帽子

    風土(15.08.18)

    出かけるまで
    出かけてみて
    出かけなくて

    変わらなくて
    変わるまでも
    変われないで

    関わらないで
    関わっている
    関わり知らず

    差があっても
    差がついたら
    差がなさそう

    触れたようで
    触れないまま
    触れ過ぎたら

    めくれそうで
    めくられない
    親子世代相関

    郷愁(15.08.14)

    稲穂を濡らす
    雨の静けさに
    滲む夏の縄文

    アフリカ的な
    自然体が開く
    自由な暮らし

    夢見る前から
    聴くも語るも
    身体をあずけ

    繰り返される
    いま・ここの
    足踏みに迷い

    身の丈で習う
    直立歩行から
    四つ足の記憶

    狩猟と定住へ
    明暗を分けた
    郷愁の空間に

    夏の響き(15.08.11)

    夏の噴水越し
    ビルの窓磨く
    人影託す命綱

    幼児を抱く
    母の散歩の
    影を濡らし

    携帯を耳に
    営業マンの
    足跡が乾き

    遠ざかれば
    田舎の夏の
    庭の水撒き

    震える手で
    組み立てた
    鉱石ラジオ

    有線越しに
    聞き逃した
    音楽を探す

    初飛行(15.08.07)

    連日の降雨
    予報外れに
    雨乞い散水

    葉裏震わせ
    蝶の羽化が
    削り出され

    羽ばたけば
    放水の影が
    虹色に濡れ

    少年の手が
    埋め残した
    身の置き所

    思春期歪む
    破砕帯から
    冷たい炎が

    炙り出した
    身丈で図る
    共感滑走路

    蔓草(15.08.04)

    目立たない
    冬の雪かき
    夏の草刈り

    春蒔き種を
    収穫の秋に
    空高く放ち

    SNSの網に
    蔓延る虫を
    衛星で察知

    既視感漂う
    未明の空に
    夏の通し柱

    削り出した
    櫂を操って
    富山湾まで

    演じきれず
    浮かんだら
    記号みたい

    夏座敷(15.07.31)

    虚弱児でも
    夏が好きな
    過去形の朝

    ロボットに
    リビングの
    掃除を任せ

    イチジクや
    柿に栗など
    跡形もなく

    茗荷を残し
    生い茂った
    背戸の草刈

    虫が隠れる
    草いきれに
    弧を描いて

    水を撒けば
    匂う砂利道
    夏の逃避行

    虫捕り(15.07.28)

    夏草刈りで
    追いたてた
    昆虫の行方

    虫捕り網に
    絡め取られ
    われを忘れ

    標本ならぬ
    スケッチが
    虫籠代わり

    走行距離を
    忘れるまで
    描き写して

    つまされた
    身代わりの
    季節列車が

    運ぶ体調の
    個室で問う
    痛さ悲しさ

    午前の小舟(15.07.24)

    浮上したら
    覚えてない
    夢のかけら

    朝の儀式で
    組立て直す
    生身スーツ

    落とし込む
    肩で開けば
    肋の落下傘

    ヨメが賄う
    朝の食卓を
    骨盤で支え

    風を便りに
    乗り込めば
    手足で漕ぐ

    舳先が揺れ
    浅深問わず
    昼の船着場

    梅雨明け(15.07.21)

    猛暑で花が
    萎むように
    紙袋が破れ

    苦しい時の
    神頼みから
    解き放たれ

    車椅子から
    転がり込む
    診察ベッド

    ストレスが
    見当たらず
    問診途切れ

    誕生でなく
    出会いでも
    欺かれたら

    気づかない
    トラウマが
    ストレスに

    無抗原(15.07.17)

    70年を経て
    夏に枯れた
    盆栽の枝振

    道路を隔て
    咲き揃った
    芙蓉の翳り

    二つ重なり
    吹き寄せる
    予報円から

    風雨に晒す
    気圧が示す
    体調の行方

    鉢を割れば
    ねじれ果て
    絡む根っ子

    夜陰に紛れ
    地に堕ちて
    割れた理念

    構図(15.07.14)

    幻の庭師が
    緑濃くなる
    庭木を整え

    権力の枝に
    強いられた
    自由と恣意

    見回す限り
    緩んだ箍の
    桶の不自由

    強制された
    関心或いは
    無関心から

    バラバラに
    動く手足が
    連結し得る

    構図が破れ
    時空の壁に
    穴を開けて

    無免許(15.07.10)

    乗ってみろ
    促がされた
    自転車小僧

    稲刈り終え
    農機具屋の
    単車に跨り

    駐在を避け
    人気のない
    初体験試走

    草も枯れた
    通学路へと
    突っ走って

    農道へ曲り
    切れないで
    突っ込んだ

    刈田の畔を
    倒れそうに
    乗り越えて

    未踏峰(15.07.07)

    新緑を占う
    盆栽が残す
    謎のように

    持ち越され
    日々振舞う
    自らの不明

    天井桟敷に
    ぶら下がる
    立ち位置も

    垂直回転で
    逆様になる
    夕焼け写真

    渡れそうで
    掴み損なう
    雲の手触り

    鞍部に立ち
    見渡す限り
    初登頂の夢

    アングル(15.07.03)

    乗り手なし
    自転車でも
    倒れず走る

    砂利道から
    草っ原へと
    併走したら

    追い越され
    取り残され
    思春期から

    掘り当てる
    呼水で洗う
    姿勢の渇き

    飲酒喫煙に
    女遊びから
    癒されても

    身体に潜む
    逃げ水から
    溢れる体位


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