十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
丘陵地を界に
呉西と呉東で
積雪が大幅に
逆転していた
12月の降雪に
甦る通勤地図
蒸気機関車の
煤煙で煤けた
呉羽トンネル
冬に往復した
積雪履歴でも
東西に分かつ
固有の生死の
波打ち際から
気を燃やして
現世と他界を
乗換えられる
銀河鉄道まで
夭折者から
現役奏者へ
架橋されて
響き渡った
ブルースの
川の色合い
赤ワインを
グラスとも
室温に並べ
埃を払って
温まったら
鳴らし続け
羊をめぐる
階段の上り
下りを数え
箒に叩きに
足手纏いの
掃除機まで
回転翼なら
二枚よりも
三枚あれば
飛び方から
滞空性まで
拡張されて
竹とんぼで
心の棘など
抜き去って
浪費の末に
届く高さで
反転すれば
人工昆虫の
空間認識で
人称を写し
忌避すべき
現実からの
距離を飛翔
吹き溜りの
平屋根から
片屋根まで
点呼された
雲の足跡が
ひっそりと
冬野菜から
旨味を掘り
下げるから
鍋料理から
冬晴れまで
早回しして
コマ落とす
積雪画面を
区切る除雪
埋められた
文化を探る
行旅不明人
雪下駄脱いで
下駄の歯並び
殴ってやろか
あいつと渡る
吊り橋効果が
覿面になって
ギターの胴に
飼うメジロの
囀りに踊った
くし形切りの
皮を下に絞る
指使いが凄く
脱げた靴など
見向きもせず
逃げた屈辱で
色を濁さずに
日々組み直す
自画像の裏へ
12月の動画で
聴き直させる
雨が霙になり
フェルメール
とラッセンを
居間に吊るし
下駄箱の上で
滑りはじめた
人影の写真も
浮遊するだけ
価値も意味も
コピーに実写
繊細すぎたら
鈍感な展示に
大雑把な閲覧
日々繰り返す
今日の歩幅で
傾きを正して
十二月の雨の
匂いを消して
降り積る雪に
庭で繰り広げ
られた鳥獣の
戯れの跡など
描き残された
余白を見つけ
百舌が舌打ち
忍び寄る猫が
聴きそびれた
屋根の落雪に
目覚めた鼠が
夜の静寂へと
家埃を撒いて
朝焼け鶏鳴に
木登り好きな
山羊の鳴声が
理解しない
人に語れば
無縁な人に
語ることも
同じである
冬の空から
眠らせずに
舞い降りる
感性の秩序
国なる幻に
抗う心から
忍従の街へ
無慈悲なる
自然作用が
架け渡され
今生の縄を
綯うような
言葉の空鏡
随分遠くへ
やってきて
代り映えが
しないよう
取り繕って
草臥れたら
出自からの
振替休日に
居直るだけ
束の間でも
踏み迷って
自信もどき
着込んだら
脱げないよ
無くて七癖
はじまりに
目途のない
助走の果て
秋の緞帳が
山肌を梳る
空の向うへ
踏み拉かれ
降り積もる
落葉の音に
泳ぐ視線の
飛行機雲が
掻き消され
立ちつくす
安定の中の
不安定へと
地上に浮く
生活視線で
飛翔を試し
乗っている
不安定から
未安定へと
乗り損なった
面接列車追う
タクシー拾い
果てしのない
行先を問われ
銀河鉄道まで
乗り合わせた
車窓の数々に
指折り数えて
猫の島影から
引き揚げられ
蘇生する少女
宇宙服を脱ぎ
少年の寝具に
目覚めるまで
最後尾に狂い
咲く中間装い
先頭列車まで
森に降り注ぐ
落葉の視線と
公園に群がる
鳩の饒舌など
どこ吹く風の
昭和の役者に
耐え難き背と
忍び難き胸の
内が銀幕から
戦後を生きた
運河の底へと
水質検査する
潜った水鳥を
追い散らして
遊覧船が過ぎ
取り残された
視線の航跡が
途絶える辺り
矩形と螺旋を
合わせるよう
体で割ったら
今夜も飲干す
グラス一杯の
ジントニック
憂き名を流す
運河を辿れば
水鳥も出払い
羨望鏡を掲げ
図鑑に逃込む
バーズアイに
捨て損なった
VHSテープの
消し忘れた傷
1週間前から
通りすがりの
BBBで巻戻す
Y字路で渡され
紛れもない犀の
警句の寄せ書き
家も家族も失い
壊れた門灯から
墓掘り人の手で
きれぎれの蛾が
十字路を照らす
角の灯りを慕い
夜が明けるまで
身を焼く思想を
羽搏かせながら
飛び立つ座標に
アジアを刻んで
群れることなく
身体を見つけた
動きで体現する
地図を畳み込む
11月の水たまり
跳ねてみようか
飛んでみようか
朝晩寒くなって
難しい地名など
11月のタクシー
規定打席に立つ
まだ冷たい手の
子らの脚よ動け
しっかり繋いで
ここぞと攻めて
歌枕になるまで
籾摺りで忙しい
米ぬかまみれの
記憶の畦道から
十一月の傾斜を
三十一文字まで
模写を重ねたら
燃え残さぬよう
半等分に折って
横置きするけど
長過ぎる線香を
三等分するよう
手折る難しさが
随分間があいた
基礎打ち相手が
返し難いなんて
衰えた体力では
円運動に頼って
いられないから
ハードパンチが
打てなくなって
ジャブだけなら
身丈に見合った
ジグザグ螺旋で
当てられそうに
大きなバッタが
玄関の窓の内で
モゾモゾ動いて
窓際の庇の下へ
大型カマキリが
へばりついたら
暑い夏に一匹も
見つけられない
季節に未練でも
初冠雪の谷筋に
体内からの欲を
幾重にも滲ませ
盛り上がっても
お椀で二分けし
滑空する無欲へ
導かれた身体に
みなぎる呼吸で
摂取する命がけ
桜と銀杏並木が
日照時間を計り
落葉の音を聴き
紅葉から黄葉へ
沈黙を滑らせる
樹木の心変わり
植物の佇立から
見えない腰痛が
忍び寄る風向き
心因性のようで
抗鬱剤が効くよ
と語った詩人も
すべて体を頭で
制御する錯誤を
指摘する達人も
不可能に見えて
試みるしかない
始源への遡行に
途切れた小骨を
たなびかせたら
秋の名残の蜘蛛
忍び寄る野良猫
急降下する野鳥
察知する樹木に
行ったり来たり
振り子運動から
螺旋階段を経て
骨骼を連動して
張り巡らしても
届かない触手で
体内を弄ったら
横超を繰り返し
螺旋に抜け出て
菱形になるまで
飛躍を裏返せば
横取り綾取られ
光と風と樹木が
交差する水辺の
柔らかい芝生に
滑るように秋の
霊柩車が窓から
渡り鳥を放って
旅立ちの映画を
解体させる絵で
埋め尽くされた
防犯カメラでも
撮りきれなくて
もてあます運河
小ガモを背中に
亀の真似をする
親鳥がコマ送り
庄川峡の船から
近鉄線の窓まで
走りぬけた紅葉
空模様の崩れを
見計らってでも
いるような野鳥
暇を見つけては
羽根を動かせば
こころ宿す体で
受容と発信まで
日々繰返すなら
様々な数珠繋ぎ
メンバー構成で
多種多様な人が
混在する種目に
性癖が集まって
癖が見通せない
アンバランスが
唯一の拠り所の
感受時空ならば
身体こそ環境に
狂い咲きした
木瓜の蜘蛛が
雲隠れしたか
早さを求めて
高速電脳網に
繋ぐ蟄居暮し
産業社会から
追い立てられ
吹き込まれて
一時だけでも
乗り合わせる
束の間の早さ
体感してみて
身体に関わる
字面はどうか
見直す早さは
繋ぎ直したい
躰と體の違い
ほどよい空調に
打てば響かない
夏太鼓が遠のき
風が運んできた
窓越しの雲行き
空耳に響いたら
葉っぱが散って
ギクシャク踊る
モンクのピアノ
静まりかえった
舞台の袖に立つ
異邦人の体つき
あの手この手で
仮面を剥いでも
型にはまらない
孫との散歩での
影踏み遊びから
取残された踊り
遠足で宮島峡の
ポットホールに
ちりばめられて
コトあるたびに
モノにこだわる
着の身着のまま
二十世紀後半の
事実と事物から
食い繋いだ身体
泥濘に足を入れ
砂利道に躓いて
這い這いを忘れ
裏山の奥深くで
宇宙を見上げて
川原の土手でも
脱ぎ捨てられた
思いの坂道から
這い上がる隙間
遊び呆けていた
縁側から落ちて
覗き見た縁の下
蜘蛛の巣を払い
軒先から一歩で
世間の内と外へ
祖父の公界から
母の世間体から
隔てられた仲間
逢引とも知らず
傘も開かないで
束の間通り過ぎ
握りしめた拳が
温かく緩んだら
握手で挨拶して
振返ることなく
一散にかけ戻る
軒端を探し求め
庭の日だまりで
ホバリングする
虫柱のゆらめき
蜻蛉が止まった
花付きが少ない
金木犀の枝振り
衰えた羽根なら
羽搏き直すよう
虫取りを繰返し
リタイアしたら
見失った身体を
見出す言葉から
しばしの間だけ
老いの稽古法で
名前をひも解き
体力を補う術を
遣う気力からも
遠ざかるように
陽射しから溢れ
置き場所に迷う
ソーラー自転車
吹抜ける風信が
書込んでくれた
稽古法が途切れ
北アルプスから
南下しようにも
腰痛に遮られて
泳ぎも知らずに
走りはじめても
楽しさ分からず
急須からお茶を
注ぐように身を
振り返って辿り
着込んだ着衣で
隠された廃墟を
駆け抜ける勾配
行進練習中の
輪の内側へと
摘み出されて
悪い歩き方の
お手本みたい
小学生の足並
行き場のない
グランドから
はみ出しても
若気の辺りを
どんなふうに
歩きつづけて
頭髪のように
歳月に晒され
薄くなっても
体のどこかで
渦を巻きつつ
老いを結んで
黄色くなって
タイプを叩く
枯葉の隙間に
吊り上げられ
肌身離さない
幻のクレーン
望遠レンズで
月の裏側まで
井戸を掘って
とっておきの
螺旋パンチを
汲上げる滑車
胎児の観相で
ワープすれば
腹掛の奥まで
気配を消して
腹が決まれば
腰も入りそう
出合えぬ力が
人を見くびり
我身を裏切る
身体を通して
何事かが続く
信と不信の間
見合った時の
内側が幾層に
擦れ違ったら
虚しく前向き
いま・ここに
戻る繰り返し
整えようにも
何事に対して
ズレていれば
内部で確かに
動く何かから
順次生の力へ
不安な朝空の
雲間から抜け
落ちたように
庭木に止まり
囀り交わして
紡ぐ作法から
詰襟学生服を
仕立て下ろし
背広に着替え
心がけ知らず
もたずに稼ぐ
渡世の御衣木
手を合わせて
半身のままで
こじあければ
死者と生者と
互いを思って
拝み合う幅が
夏から秋にかけ
雨が西から北へ
土砂災害を連ね
一級水系が五つ
二級水系の数が
30県内101河川
土砂災害を防ぐ
砂防ダム効果で
守られる暮らし
テロの標的から
戦場の殺戮から
69年遠ざかって
干上がらされて
空っぽにされた
条文のダムから
言葉の河川敷に
理念が排砂され
蟹の泡も消えて
17年も待って
羽化した蝉の
抜け殻の内観
父母が編んだ
型無しの家で
無心が揺らぎ
這い回っても
まだ立てない
関節のあたり
透けて見えた
あばら骨から
滑り落ちそう
囲炉裏端から
転げ落ちない
地図を頼りに
潜り戸を抜け
軒端遊びから
遠出するまで
撒水ホースを
使うことなく
8月が過ぎて
秋雨もどきが
こびりついた
土埃を洗って
出遅れた蝉が
ヨタヨタして
鳴声もかすれ
身元不明だが
俯きながらも
衝立ての陰で
冥想の裸身に
不在を集注し
机上に飾って
Gパンを脱ぐ
娘の肢体から
気化する裸像
季節変わりが
常識的ならば
身体感度にも
声をかぎりの
手をかざして
見渡すかぎり
海と潟の境を
知らない魚が
逡巡しながら
潮目に止まる
海鳥の影から
側線を全開に
深くて静かな
自前の自然が
目覚めた泳ぎ
剣でも刀でも
断ち切れない
撓みを響かせ
午後に草刈り
算段してたら
庭師が剪定に
胡散草一本も
残さないよう
削り取られて
見なれた庭の
整形手術後に
置忘れられた
手技の跡から
身体の捌きを
手箕で振分け
作業場の隅で
飽かず眺めた
大工の鉋がけ
釜で米を炊く
要領で道具が
的を射抜いて
寡黙な樹木が
大気を荒らす
雷雨に打たれ
ひげ根の先で
行方不明者の
声を探りあて
葉脈の触手で
画像検索から
割り出せても
解剖列車では
辿り着けない
身体像の果て
気が駆け巡る
自然と存在に
切り裂かれて
おもむくまま
規矩を超えず
気化する姿で
空調の効いた
図書館で涼む
読書人の戯れ
やってこない
利用者ならば
上とするべし
その時々なら
中なる利用に
とどまるだけ
いつも入浸る
下の利用なら
見て見ぬふり
下の下になる
居残り利用は
鼻つまみ者に
上客は読まず
中客は借りて
下客は買って
刷り込まれた
自明のように
揺らぐ樹木が
飛立つように
切倒されても
幻の根が伸び
録音で流れた
校内放送での
自声に戸惑い
録画試合中の
他人のような
我が身の映像
自他を分かつ
身体像を喰う
ゾンビの動き
固有の身体へ
命がけ出逢う
客人のように
もてあそばれ
漂うだけなら
文化的孤島で
ホームレスに
別れを告げる
通信が吹抜け
タクシーから
見放されたら
歩くしかない
明治や大正を
生きた祖父や
叔父の暮しに
書付けられた
間に合わせる
生活思想から
ほど遠い道で
拾い読みした
汗だく回覧板
台風に洗われ
浅く差し込む
陽射しに乾く
屋根を転がり
庄川の河原へ
日除けが伸び
左右いずれも
ままならない
ターンの数々
曲がりすぎた
嘴を打ち砕き
飛び直せるか
打直す古綿で
肌を磨いても
遠い飛距離で
夏竿が振られ
途絶えた鮎の
塩焼きの香り
蝉声のしない
夏を過ごせば
海も遠のくか
泳げないのに
黒い三角褌で
川音に戯れて
虚弱な身体で
自然な泳ぎを
水底に置忘れ
林間学校など
体育の授業も
見学しながら
身体にとって
運動とは何か
自問自答して
数センチでも
体内の自然に
潜り込めたか
逃げだす虫の
姿も見えない
むなしい草刈
ボールを投げ
あたった壁に
穴を穿つまで
棒を手始めに
竹刀を振って
木刀まで手に
斧を振るって
薪割りならば
田舎暮らしで
日本刀を手に
抜いて納める
動きも解らず
相手も違わぬ
間合いの故の
抜き差しなら
朝から真夏日に
背戸の草刈など
身体が反応せず
治療中の歯茎も
嫌がってるから
呑むのも控えめ
草刈バリカンで
69年目の夜空を
虎刈りに染めて
草いきれの中へ
倒れ込むように
抱き合ってたら
獅子舞の杖術で
棒切れのような
擦り傷だらけで
温もった堆肥の
ミミズで釣りへ
夏草の向うまで
梅雨明け空に
ヘリの爆音が
遠ざかる辺り
避難下山する
滑落者の影が
背負子で揺れ
未定の没年が
近づくほどに
首折れ彷徨い
荼毘のような
光景で閉じる
老境の鞍部へ
登りはじめの
食べ合わせで
へたり込んで
行程はたせず
眠りこけたら
夕暮に目覚め
棒、しを噛む
なんて書いた
はるか昔だが
手に手をとり
まさぐりあう
哀しい身体で
見つめ合って
鍛えるなんて
ほど遠い出自
掌に滑らせる
程よい硬さの
赤樫の長さで
押して引いて
通り道で杖が
ブレない型に
成して崩せば
生きる螺旋も
メビウスの輪
天蚕と握手した
早乙女山の麓に
飛翔のためらい
立ちすくむ枝が
無意識の谷間へ
払い落としたら
むしった泥草を
けんけんぱして
蹴り込むように
鉈の切り込みに
食い入る意志が
はめ込まれたら
手足が届かない
まだ見ぬ果実が
たわわに実るか
狂い咲きの夏の
踊り場を踏んで
どんな涼を求め
古いA325から
新しいF306へ
教室が変わって
廊下側に学生が
集中するくらい
明るすぎる窓側
デジカメ向けた
曇り空の向うに
透かし見るなら
及び腰の質問も
とんちんかんな
やりとりまでが
大窓から小窓へ
三の窓を伝って
舞い降りる若さ
とにかく邪魔に
ならないような
シャッター音で
剪定作業で
刈り込まれ
花がこない
紫陽花には
刺青めいた
虫喰いの葉
投影された
網目の庭で
組み立てた
祝い言葉を
クリップで
繋ぎ止めた
宛名札付き
名も知らぬ
花の鉢植え
飲み干した
コルク栓を
指折り数え
迂路の角を
曲がったら
出会う夏女
溢れそうな
種子を噛む
蜻蛉の目玉
風に煽られ
不時着して
藻掻く脚に
玄関先から
声をかけて
傘を差出す
間も与えず
走り抜けた
ずぶ濡れの
飼主を追う
子犬の背に
跳ねる水玉
掻き分ける
空気の流れ
雨雲の匂い
梅雨空低く
私服を整え
時間を跨ぎ
寄せて返す
波の鞍部で
泡立つ影に
浮足立って
浮遊すれば
足場が崩れ
当て所なく
腰も砕けて
藻掻くだけ
触れた底で
一度浮かぶ
泳ぎの型が
遠くの池で
二輪の蓮が
花開いたら
胸の内にも
微かに響く
二人の唄が
書込まれた
未来が遥か
過去に浮き
沈み揺れて
家計の底に
天窓を穿つ
針を下ろす
誕生月毎に
磨り減った
不安に浮く
水面を歩く
型を旅して
身体を折畳み
庭で半夏生が
年季を数えて
日々の体操が
習慣のように
織り込まれた
畳の部屋から
起き上がった
立ち居振舞い
話し言葉から
書き言葉へと
手をこまねき
遣り繰りやら
擦り合わせも
ままならない
無言を頼りに
不器用に絡む
切なげな試み