十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)
行きも帰りも
跨線道路下を
列車が通過し
待ち合わせた
乗継ぎバスが
目の前を通過
市内バスなら
通過するまで
押しボタンを
控える老婆が
生き残ってる
梅雨空の下で
紫陽花が咲く
山手の雷鳴に
水かさが増し
渦巻く川面に
殴り書きして
駆抜ける雨脚
満杯の除湿器の
水を捨て流せば
落ち梅が濡れて
ジーパンを脱ぐ
露な女の胸内に
落ちこぼれたか
びっしり朝露に
濡れた渇きから
遠ざかる自転車
ようやく透明な
埋め込み地図で
動きを印刷する
次巻配本までに
整えた骨格から
刈取られた読み
気を交わすなら
刹那を打ち出す
寸止めの身体に
手足もがれて
授業日を狙う
就活毛虫退治
教科書なんて
図書館利用で
十分間に合う
小・中・高で
まとわされた
殻の脱皮には
十重二十重に
羽搏ける場を
托卵できるか
共感視線から
羽化した手で
受肉を剥いで
骨が剥き出す
静かな動きを
書込む足場に
植込みの緑を
突き抜けたら
もう初夏だが
洋傘を逆さに
差し掛ければ
梅の実が降る
イタリックの
活字の窓から
文庫本を眺め
庭先の天日に
色づき並んだ
梅干しの数が
途絶えそうな
その日暮しの
引用の果てで
眠たがってる
身体の部分に
泳ぎ着くまで
蝸牛のように
雨の舌触りが
通り過ぎたら
巻き戻された
ミニ旅行から
帰ったばかり
草臥れ果てた
ソファで寛ぎ
メモを残して
とっておきの
ケースに挟み
閉じ込めても
窓にかざせば
映画が終った
心持ちばかり
写し取られて
もぬけの殻が
積み重なって
仲間に誘われ
三角ベースで
走り回る前に
ボールを投げ
返してくれる
父が墓の下に
入った年齢の
先がまったく
尻切れとんぼ
世間と向合い
独り相撲しか
取り口知らず
ぶち当たって
跳ね返される
壁の模様など
クラゲの海で
溺れかかって
泡立つままに
蒸し蒸しして
誰も乗らない
エレベーター
鏡の向うから
透けて見える
誕生月の空白
大きな揺れに
転ばないよう
抱きとめられ
薬缶や鍋など
金物屋の軒が
グラグラ揺れ
水田の畔では
打寄せる波で
脚がすくんで
善悪限りなく
もらい受けて
おくりびとに
朝靄を抜ける
郭公の鳴声に
かき消されて
六月と七月の
星占いの数を
聞き逃しても
誕生月の雨を
着流す上着の
袖を捲りあげ
安く旨そうな
ワインを探し
開栓するまで
頁をめくれば
まるで動めく
図書館みたい
のめり込んだ
ゲームの音も
聞えないほど
中也が詠って
見つけた骨で
座って食べて
他人の技から
盗みなさいと
教えられても
肩のあたりに
食べのこした
鶏脚の痛みで
痺れた硬さが
解けたように
動きを消化し
常識に紛れた
街中から外れ
駆け抜けても
埋もれた骨に
行き着く前に
納骨堂で休む
陽射しの路線を
午前に潜ったら
午後の停留所で
眼を休めてから
映画村を旅して
五感を遊ばせる
毛虫の握力から
蝶の羽撃きまで
圧縮された地図
距離感にと惑う
吹替え版よりも
字幕版に導かれ
休憩する窓際の
蜘蛛の巣に絡む
夕暮のフォント
日が沈む直前の
乗り換え案内に
導かれた覚醒へ
降りだした雨を
待ってたように
傘をさした傍を
すり抜けながら
上昇していった
抜き身の切っ先
ネジを巻忘れた
手首の古時計が
知らせる傾いた
日々の畳み方に
馴染んだような
庭の躑躅の花の
付き具合が庭に
やってくる虫や
鳥を遠ざけても
花付きが盛んな
新顔の雑草など
誰が運んでくる
リタイアしたら
ブルーマンデー
がどんな色へと
体力が衰えても
身体反応で占う
パフォーマンス
最高作を問われ
次回作と答える
高齢ピアニスト
再会色鮮やかな
礼文島のウニを
引き立てる食器
街中から聳える
山並みの残雪が
萌える緑に映え
シャクナゲ咲く
山間で鶯を聞く
山歩きの記憶が
さほど混まない
バス内で座席を
ゆずられそうに
教材用のPCの
都合でより広い
教室へ移ったら
授業前の教室の
引き戸を開けて
通させられたり
老いた見栄えに
予想外ではない
学生らの露払い
事が動き始めて
気付く前々から
国家の方向性に
縦横に切結んで
適不適否を問う
九条通を見納め
昼夜晴雨かまわず
吹き止まない風に
画鋲でとめた緑が
バラバラ抜け落ち
素足で踏まないで
武芸書を紐解けば
使ったことのない
筋肉痛の在処など
思いもよらなくて
市内バスの窓から
見えたことのある
夜学の同窓生から
送られてきた書の
封を切らずに読む
透視の術を試せど
「労学同帰」やら
「遊学一意」など
当時の四字熟語が
僅少差を守り
あるいは逆転
して勝ちきる
吹荒れる風に
萌える緑など
狂ったように
老化の階段に
軟着陸しても
馳せ上り下り
受粉が途切れ
果樹園の端へ
高架橋が伸び
住まいを問う
風水の質問が
廊下を洗って
強風が磨いた
山脈の視界を
遮らない座り
乗り手のない
貸出自転車を
数える陽射し
バスと市電が
繋いで見せる
今日の居心地
伴侶同伴だと
iPod鳴らさず
Kindleも不要
手狭な球場に
埋もれていた
観戦履歴書が
入場者のない
BCリーグの
外野芝生席に
ベンチ席から
立ち上がって
覗き込む隣人
庭木を揺らし
慌てふためき
耕耘機が通い
授業の準備に
手間取ってる
真新しい教室
襟を正したら
葉裏に逃込む
モビルスーツ
ミラーリング
設定のための
抜け道知らず
教卓に花咲く
赤ちゃん肌の
質問に戸惑い
十数年続けて
予測できない
適切な仕組み
雑草が繁った
葉陰で昆虫が
小刻みに震え
時間や空間を
圧縮しながら
きりもみして
正解の模写を
図鑑にしても
分類しきれず
届く言葉など
産んで殖して
使い尽すまで
書き損じたら
足止め喰らう
年齢不詳の声
響く未解決な
身体の層から
宇宙の彼方に
春陽を響かせ
きりもみする
でんでん太鼓
交叉しながら
緑を切り裂く
手裏剣の喉笛
前籠を擦抜け
前輪に絡まる
自転車の鎖を
知恵の輪でも
あしらうよう
外せだなんて
情報のハブを
止めるのなら
まず停電だが
身動きならぬ
もつれを解く
注油の心意気
無為や徒労など
街中での暇潰し
場所がなくなり
西部劇をはじめ
時代劇映画など
喫茶店の彼方へ
跡地に座礁して
行き倒れそうな
還暦の身体捌き
しなやかに梳る
春雨が緑の紐で
身体を縛り上げ
乾布摩擦を抜け
普通を見失った
木の芽時の不調
偏りの気付きが
紐解かれてから
新たな待ち合い
タンポポと
蓮花の間で
雉が鳴いて
散り遅れて
花筏めいた
丘陵地の麓
饒舌な嘘が
浮び上がる
梨花の敷物
終わらない
稽古の謎が
立ち上がり
型くずれの
きっかけを
忘れ去って
あるがまま
しばし掴む
消えゆく道
散り梅枝に
訪れた鶯が
鳴き惑って
命日の夢に
田舎の地で
居残る母が
営んでいる
本屋ならぬ
図書館へと
入り込んで
宮沢賢治の
名作選なら
中巻がまだ
欠けていて
目覚めても
唯一だった
蔵書の背が
空白のまま
番の鶺鴒が
小走りする
越冬裏通り
川縁や公園
丘陵あたり
いっせいに
花開いたら
見所もなく
通り過ぎて
見境もなく
女子力など
徒花みたい
警戒心から
猜疑心まで
羽搏かせて
散り散りに
擦れ違って
交叉したか
切詰めすぎた
前年の剪定が
花を咲かせて
したくないや
すべきでない
枠組が薄らぎ
剥がれ落ちた
雪害の破片を
嵌め込んだら
積年の桟から
螺旋を描いて
動きの橋渡し
釘の響き鋭く
打ち込まれた
虚空の身体へ
冥想の朝から
囚われないで
エクササイズ
庭木の緑より
雑草の伸びに
花芽の春便り
打ち損ないの
スイングから
弾かれた新芽
見つけられた
新しい振舞が
描いた弧から
振り抜き様に
とどけられた
挨拶を交わす
声のありかを
確かめられた
自他が出会い
身体さばきも
組立て直され
無駄も省かれ
1階窓際から
2階の窓際の
陽射しの下へ
動かすように
タモリの窓が
消えた昼過ぎ
むかつく人も
いけてる人も
みんなまとめ
人物目録から
ゆるキャラへ
綱渡りしても
踏み外さない
サングラスの
奥の深さから
きれもせずに
今日の縄目へ
むなしからず
防寒深靴で
歩くことの
なかった庭
冬の記憶が
取り外され
雪吊りの柱
ひび割れた
スキー靴を
仕舞い忘れ
日陰斜面へ
脱ぎ捨てた
セーターに
春の昆虫が
抜殻を残し
飛去ったら
置き忘れた
蠢く内観を
羽搏かせる
紅白前後し
花開く梅の
間で外され
柱が抜かれ
背伸びする
庭の植込み
風化の響を
灯すように
石灯籠の傘
掻き分ける
葉脈の奥へ
ほとばしる
乾き具合が
寒冷地から
抜けだして
肌を抜けて
筋肉に触り
骨の髄まで
どうしても
書架高くへ
読み終え本
爪先立って
取り出せば
掃除届かず
木製脚立に
上り見渡す
読書履歴も
読み繋いだ
本の記憶も
埃まみれで
脚立に座り
拾い読めば
椅子に化け
新着初刊を
開く脇机に
早変り脚立
昨夜の満月に
晒された梅が
一気に膨らみ
1シーズンに
400km以上の
滑走距離より
その日の滑り
それぞれ違う
愉しさの数々
前に進むから
背後を気遣う
闇夜の心地に
銀河の果てへ
生死を問わず
読み書き計算
身体の各層に
掌をめぐらし
紙飛行機投げ
山と平野を
隔てながら
立ちこめる
朝靄の向う
溶ける雪を
追いかけて
畦道を辿り
蕗の薹など
探し歩けば
見下ろした
前足飛越え
谷筋へ獣道
暖かすぎる
リフト上で
植物の微睡
動物の匂で
目覚めたら
骨を響かせ
読み違えた
天気予報と
準備不足で
雪質良好な
ゲレンデへ
出かけ損ね
晴れ渡った
一昨日など
公民館での
スポ少団の
お別れ会で
子らの姿に
これからも
バドをやる
楽しさ溢れ
無駄が多く
回り道でも
果てしなく
板書している
背中目がけて
ぶつかる前に
庭に入り込む
猫の気配など
家の奥に居て
日本刀の鞘に
抜き差しする
曲線を走れば
いつ開こうか
水差しの花が
戸惑ったまま
渦巻くように
霧吹きを押す
指先の問掛け
持つ間もなく
握っているか
掴んでいるか
朝陽に浮かんで
水蒸気が逃げる
弥陀ヶ原の傾き
3月初めにして
ひと滑りごとの
ゲレンデの雪質
アイスバーンで
身体を固めすぎ
バランスを崩し
シャーベットで
動き過ぎ固まり
バランスを崩し
新雪斜面ならば
自重をしっかり
乗せたラインで
知りえなかった
身体の使い方の
外へと滑り始め
行けるとこまで
なんて言っても
いいかげんだが
たいして汗など
かかないうちに
息切れしそうに
働き続けるうち
結婚して建てた
住まいを維持し
リタイアすれば
老いゆく母親の
介護のかたわら
教室と体育館を
往来する距離も
近くて遠くなり
広がる裾野から
見えない頂まで
何枚の潜り戸が
残雪を避けて
まだら模様に
樹影が連なり
腕組みをして
岸辺を探せば
流氷の歯軋り
取り残されて
自問自答する
うねりに沈む
砕けた明日の
姿勢を変える
風向き知らず
帆を立ち上げ
巡らす問いに
揉み解されて
そこかここか
あるやなしや
眺めせしまに
思い通りにも
何のためにも
ならないのに
捨てきれない
途切れがちな
空調機の働き
言葉と身体が
出合い損なう
動きのように
見ず知らずの
人称を名のる
体感を頼って
次から次へと
立ち現われる
関門の向うへ
両肩を働かせ
双方で引いて
打ち放せるか
明るい窓の外で
雪が舞うように
視界の手前でも
捉えようとして
定らない呼吸が
身構えたりする
建物を吹抜ける
風が光り輝けば
影が響き渡って
動きについてる
呼吸が呼び込む
乱れを着込んで
お互いが邪魔に
ならない個々の
動きが恊働して
授業で一度でも
自分に聞えない
喋りができたら
ここから先は
行こか戻ろか
橋の袂に立ち
自在な滑りの
コース選びが
明暗を分けて
○×記入より
複数課題から
設問選択解答
答え易さより
難しさを選ぶ
教室の学生に
そこまでとは
思いがけない
レポートなど
十五ばかりの
橋桁を数えて
欄干が揺れる
誕生日の雪を
風信のように
握りしめたら
目覚めた朝が
同じ零下でも
肌触りが違い
ゲレンデでも
雪質の変化に
足裏が笑って
コーヒーから
立上る湯気に
溶ける屋根雪
落雪に驚いて
飛び去る鳥を
撮り損ったら
どんな笑顔で
四十過ぎから
生き延びるか
冬もほころぶ
暖かい日和の
船底で水漏れ
古びた楽器が
奏でる音楽に
聴き入る耳が
見たことない
生死の行方を
人称で数えて
落ち葉を拾う
手の隙間から
草が生え伸び
求愛の物語に
混じり込んだ
嘘を抜き取り
どこまで深く
人称を失って
腐り果てれば
自転車で走れて
新調除雪用具も
片づけてしまい
ネクタイ下げて
後期最終授業に
出かけてみたり
履修年度違えば
科目選択学生の
様相も様々だが
学生が座るのは
座席数が余裕の
教室のどの辺り
窓側を選んだり
出入り口がある
壁側や後部座席
真ん中あたりが
お気にいりでも
齧りつき少なし
期末に近づいた
教室から眺めた
ゲレンデに雲が
半島を目指して
健康寿命が滑る
斜面の遥か向う
振り返り見れば
雪煙舞う稜線に
青みをます違和
映写前の銀幕が
映し出す昂りの
迂回路の裏側へ
吹き抜ける風が
解体させる影で
掘抜かれた井戸
扇状地を潜った
伏流水の流れが
湧き出す湾深く
まんまる寒月が
庭先で見上げた
雲間を刺し抜き
弛んだ雪吊りで
絞め殺すように
樹木の影が凍る
夜の山並みから
張り巡らされた
風が眠りはじめ
聞き耳を伏せた
家並の設計図を
測量する風向き
月光をかき消し
降り出した雪に
地下水が跳ねて
夜道を足で穿つ
遊牧民の鼓動が
側溝伝いに聞え
水鳥の影少なく
光と風が揺らぐ
城址の掘り割り
山並みが川面に
まばゆく映える
雪のない河川敷
無雪の成人式に
こっそり紛れて
抜けだし半世紀
田舎から郊外へ
居所を新築した
冬場の引越しも
産気づいてきた
ヨメを産院へと
連れ添った時も
履き潰す長靴が
雪の少ない冬に
句読点を打って
どんな高見から
降下する冷気に
乗り合えたから
忘れてしまった
凍り輝く冷気を
眺めている姿勢
地表に舞い降り
溶けゆくまでの
結晶のひととき
組み合わされた
脚に立った腰に
両肩が落ち込み
座布団を離れて
浮遊する球体が
俯瞰する座右か
冥想の呼吸から
はじまる姿勢が
頭頂を吹き抜け
週一時間出勤の
再開を待ってた
グラデーション
雪明かりと風が
見慣れた風景を
異様に浮遊させ
隠された普通の
暮らしの諸相が
夕闇を彩り始め
人相書きが宿す
耕された来歴が
浮かび上がって
正視に耐えない
弱さを見つめる
冥想のきっかけ
関節の働具合を
聴取った内臓が
唄いだしそうに
快晴の山並みが
照り返している
スキー場あたり
滑ることを知り
上達することを
学ぶために調べ
道具と身体とが
一体化するまで
考え続けながら
気付かなくても
呼び覚まされて
繋ぎ合わされる
単純な動きから
組み合わさった
働きへ統合され
抜けだすまでの
びっくりできる
小躍りも束の間
年賀の駒届く
正月三日目に
漸く雨上がり
下駄箱に飾る
馬の置物から
響いてくる姿
蹄の音も高く
裸馬に跨がり
田舎道を駆け
冬場に向って
車で引越しを
手伝った青年
手にした鞭で
砂埃を払って
戻った馬小屋
汗ばんだ馬の
目に映る窓を
吹き抜けた風