十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)


年越し(13.12.31)

晦日の夜廻りで
拍子木の鳴りが
いい打ち合わせ

一年を振り返り
払い落とす煤に
紛れ込んだ新年

歳に似合わない
カレンダーなど
どこに吊るそう

暖房のなかった
風呂やトイレの
暮らしが遠のき

遅れをとり戻し
立ち居ふるまう
日頃の身体捌き

追いつけなくて
気付いた頃には
すでに通り過ぎ

伝聞(13.12.27)

歳暮れ距離感を
かき消すように
みぞれから雪へ

さほど変わらぬ
積もるほこりを
確かめる煤払い

軒下に移動した
祖父伝来の鉢に
遠い餅つきの影

「恋」と「革命」の
幻を臼と杵で搗いて
囲炉裏で焼いて食べ

満州から戻られた
村人の世間話など
盗み聞きしただけ

結露してきた窓を
拭取ったりしても
もう何も聞えない

粒立ち(13.12.24)

作品中のCGが
見事になるほど
映画が薄っぺら

怪しげな音源の
超廉価版CDでは
Jazz名盤が泣く

極上の暇つぶし
寒い日の読書や
音楽に運動など

フォアハンドは
翼を畳むように
バックハンドは

翼を拡げるよう
肩甲骨を使って
鳥人間を再創造

リクリエイトで
フェルメールの
時空が更新され

不自然(13.12.20)

木枯らし一号と
春一番との間の
冬将軍のように

人間のあり方を
識別させようと
成り立つ世界が

見通されている
ランガナタンの
図書館の五原則

生き延びるため
知恵や体力など
の用い方を学び

生産と消費との
隔たりを調べる
情報が制御する

俯瞰視線を経て
自然過程を逸れ
労働が食み出し

居留器(13.12.17)

今日の空模様を
一日の終わりに
なんと書込めば

灰色をグレイと
言い換えられる
文献を拠り所に

ランドサットの
解析映像を読む
書物蔵を見つけ

鳥人間みたいな
DNAの記憶へと
頁を羽搏かせて

見失った距離を
測り直すように
稽古を繰り返す

余白がグレーに
固まらないよう
整える呼吸から

新入生(13.12.13)

融雪散水の列が
一直線に走って
寒いドミノ倒し

階段に一段一段
腰かけながらも
下りていた人と

行交った時など
新入生じゃなく
見学者と見違え

校舎のどこかに
エレベーターや
スロープなどが

開架書架の間を
行交うどころか
車椅子も通れず

車椅子の学生が
居残ったような
三階の階段教室

身仕度(13.12.10)

暖かい晴れ間は
背戸の雪囲いが
二番目冬支度に

ヘルメットなど
被ってやるのが
定番になったが

サイクリングや
スキーなどでは
使わないままに

衰えた体力でも
身のこなし方で
チューンナップ

眼鏡を取り替え
くたびれてきた
コートを着流し

ペダルを踏出す
道幅をはみだし
聳え立つ冬山へ

手遅れ(13.12.06)

両者減量に負け
リングで闘った
試合のむなしさ

正体不明家族や
要介護家族から
お呼びがかかる

なんて事を経た
今となってから
工事など不要の

モニター機器や
人感センサーを
取付けてみたら

いや〜な感じが
20年近くも前に
はじまっていた

阪神の大震災や
地下鉄サリンの
前年の首相発言

テロップ(13.12.03)

起き抜けに耳を
澄ましていても
寝過ごしたなら

やらねばならぬ
やりたい事など
どうでもよくて

なにがなんでも
なんてないけど
やってみようか

追い追われない
曖昧さだけなら
切羽詰まらない

せねばならない
日常の選択肢が
決まりごとなら

逆さ望遠鏡から
遠い昔のデモが
同時多発するか

二色紅葉(13.11.29)

傾けた傘で
掬いとった
水たまり裏

濡れ落葉も
舞い上がる
風の吐息が

打ち続いた
アジアでの
自然災害に

憲法九条と
二十一条が
酸欠状態で

きときとの
もの言えぬ
高齢冷や水

不自然でも
反自然でも
見た目でも

手がかり(13.11.26)

自転車で秋を
駆け抜けない
うちに雪吊り

冷たくなった
手に指のない
手袋を用意し

掃除をしたり
キーボードを
たたく季節に

運動するのに
最適な眼鏡を
掛け違えたら

スプラッター
ゾンビ作品を
画面タッチで

拡大鏡に続く
読み方として
指に新しさが

搬送辞退(13.11.22)

街路樹の紅葉が
氷雨に濡れ光る
艶消しの画面で

ゾンビ漫画読む
手触りが冷たく
立ち往生しそう

時間講師作業も
古稀を目途にし
抜けだしきれず

やらずもがなの
赤から紫に移る
老化の祝いなど

呼吸しそこなう
ストレスなんて
見ず知らずなら

人それぞれだが
臓器の選択性に
任せるしかない

料金不足(13.11.19)

11月の恋人から
樹木の茂みまで
素早く尾を引き

書き損じたまま
寒空を飛翔する
冬紅葉の便箋が

羽撃きとなって
宛先不明のまま
巣箱に仕舞われ

出かける寒さで
数年ぶりに着た
内ポケットには

同性愛と多重な
人格が織りなす
見返りサーカス

空中ブランコが
時雨で剥がれた
切手の下に現れ

薬草(13.11.15)

色づいた紅葉の
傍らの歩道橋が
枯葉を掻き集め

踏みしめ響けば
バンジョーから
船出した山並み

アフリカの渚に
映えるピアノが
奥地へと運ばれ

フルートの音が
瀑布の展望台に
散りばめられて

ブッシュマンが
引抜いた薬草の
根が埋め戻され

大地に響き渡る
うねりを聴取る
ピアニストの影

冬構え(13.11.12)

冷気の彼方から
百舌の鳴き声が
薄氷を呼び寄せ

無人のカットが
漫画や映画等に
無言で挿入され

貧乏でつながる
なんて事が遠い
画面の彼方から

後戻りできない
消費つながりで
コマ割りの外へ

今日の出来事を
歌詞の解らない
唄声がひもとく

雪吊りを待って
立ち尽す庭木に
飛来しない水鳥

余興(13.11.08)

一コマ終えたら
午後の控室まで
持越された忘物

銀杏並木に並び
臭い思いをして
拾わされた午後

緑地帯に踏込み
銀杏拾う人影が
車道に長く伸び

通学から通勤へ
無免許の谷間で
列車に乗り換え

自転車で余暇を
走り抜けてきた
眼鏡の埃を払い

寒さで音出しに
手間取るような
老いの鋳型崩し

破れ障子(13.11.05)

鳶が輪を描いて
濃くなった秋の
網の目を縫えば

張り替えのため
取り外しにくい
障子が持出され

隙間風が吹抜け
掴めず触れない
教育のはじまり

眺め草むしった
今はない家族の
途切れた気配に

いつかどこかで
雌雄が女と男に
成るよう触合い

問答が深まれば
信と不信の間で
明滅する静けさ

逆光(13.11.01)

秋の彼方に遠のく
裏山から県境まで
向う見ずな山歩き

何体あったろうか
ヨメについてきた
狸のコレクション

鼻の欠けた老婆が
山道で行き交った
獣を数珠につなぎ

石のような蝦蟇に
カモシカの静寂が
呼吸していた山奥

蛇行する流域伝い
庭先の軒下に届く
ユスリカの繁殖力

しばしとどまれよ
小突き回し回され
虫柱の筆圧のまま

岐路(13.10.29)

鰯雲がクジラ雲に
臓器移植してまで
ロックし続けても

秋に唄う原住民の
枯葉の下で隠れた
石ころのような声

バックコーラスで
唄われた死ぬには
もってこいの日は

1905年あたりの
勝ち戦のちまたで
粉々に崩れはじめ

無駄話を敷き詰め
車座になって唄う
遠いアンソロジー

レコードの棚から
書棚まで途切れた
歴史の歩数を数え

空砲(13.10.25)

カエルの鳴き声が
窓越しに音もなく
降る雨を過っても

閉ざされた視界の
驚きが覆い被さる
雲の向こう側まで

弱さと独善が渡る
蜘蛛の糸が縦横に
はりめぐらされて

いつまで経っても
調べつくされない
幻の本文が空騒ぎ

ネットで予約した
巫女の耳が聴いた
文脈のチケットで

予約したみたいな
トーク&ライブの
10月の図書館開き

指思案(13.10.22)

田植えと稲刈りに
子供も駆り出され
指や鎌の使い分け

指相撲に疲れたら
思案投げ首薬指を
絡ませ引っ張って

五本指に入れない
剣道クラブ活動の
指を縫う蛇の感触

ラケットに鞍替え
握り忘れた竹刀や
ドラムスティック

カウンター伝いに
聴くピアニストの
出番前のひととき

足もと掬われたら
足裏から逃げだす
小指が驚きに震え

紅葉列車(13.10.18)

庇の影を撥ね除け
百舌の鳴き声鋭く
朝の窓辺を横切り

山肌を刻むように
積もる谷筋の雪が
紅葉に溶け込んで

台風一過の斜面に
踏み迷ったような
レールが延び急ぎ

トロッコを押して
乗合わせた人影が
まばらになるまで

海辺の観覧車から
山麓のゴンドラへ
紅葉列車が橋渡し

おしぼり特急から
ダム湖に航跡残す
遊覧船の窓辺近く

はだか虫(13.10.15)

曇り空の飛蚊症か
どこからともなく
軒下に揺れる蓑虫

出不精というより
後先わからぬまま
ぶらさがり加減な

ロードムービーが
日に1本観れたら
何処でも行けそう

飲食営業中に焼け
出された夫婦から
紡ぎだされた旅が

あかはだかになり
仲が良くも悪くも
結婚詐欺が拠り所

なんだか生々しく
どこか可笑しくて
切なかったりする

遊動(13.10.11)

番の蜻蛉が庭先で
生暖かい風を避け
破れ羽根を休めて

浮遊する光と風が
網目状に反射する
空のキャンパスへ

雲上の図書館まで
くねくねと曲がる
アプローチが遠く

時が熟する秋には
見えてくる歪んだ
影の向うの空地で

門を抜けあちこち
遊動の挙げ句には
どんな批評の像が

破れ果てた世代の
隙間に吹き荒れる
往路と復路を映す

好奇の泡(13.10.08)

サイクリングでは
稲穂前の朝露光る
初夏を走っただけ

違和感なく走れる
季節になってきて
伴わない走路事情

文武両道方面なら
全国模試や大会で
遠くを見渡せよう

家庭や地域の陰が
教室やら体育館の
隅っこに陣取って

偏差値と勝敗から
ラインが引かれた
就活前線が泡立つ

根気採用の果てへ
見るから観るまで
身体稽古の積重ね

蜘蛛を逃がす(13.10.04)

庭の金木犀が匂わず
出かければどこから
ともなく追いかけて

田舎暮らしを間引き
引越し家族に付添い
軒端に立ち尽くせば

その後の一家の姿を
家の屋根や壁越しに
繰り広げられるまま

虫喰いだらけの葉に
似せたようにどこか
粗雑な蜘蛛の巣が的

射抜こうとして絡む
無関心の原っぱから
世間との焦点がボケ

春の庭を飾るように
鳥を呼び寄せていた
木瓜の花が狂い咲き

蜻蛉(13.10.01)

カレンダーが変わり
開け放った窓枠には
光と風の羽織が揺れ

刈取る手応え少ない
雑草の絵筆が描いた
辺りの樹木の奥行き

フェアな姿勢なんて
無意識の型に嵌って
歪んだ動きの元締め

鳩尾で風を受けとめ
五臓六腑が翻訳する
季を誰かと交わせば

鎖骨から伸びる腕の
しなやかさで蝋燭を
仕留めるように消し

身体と歳月が交わす
日々の動きを躾ける
立ち居振る舞いへと

使途不明(13.09.27)

肌寒く晴れてきた
朝空に冷めやらぬ
楽天球団優勝の響

東北を舞台にして
フィナーレ間近な
“あまちゃん”の朝

揺れる蓑虫の下の
素焼きの鉢の縁を
周回する毛虫の謎

見えない糸で繋ぐ
風と重力の作用が
織りなす軒下から

書き込みが少ない
答案が舞い上がる
誰もいない教室へ

糸口を伝うように
見た目と五感から
交流する冥想掘り

鼻歌(13.09.24)

裏へ回って見れば
夏に食べ合わせた
麺類のような混線

振返るまでもなく
笊で掬ったような
Y字路での出会い

洗いざらしの声が
掻き消されたまま
見え隠れする生簀

時には日に何本も
他人が見た夢から
旅行記を紡ぎだす

引き篭もったまま
旅の驚きを綴った
画面で仕切られて

廃線まで終らない
ロードムービーの
サウンドトラック

月に篝火(13.09.20)

食後の庭に出れば
茶色いカマキリが
中秋の満月を眺め

コーヒーをこぼし
使い物にならない
キーボードを叩き

ハードディスクが
おしゃかになった
静けさの向うから

川面に砕け散った
月明かりの土手を
散歩した夜が匂う

冷酒をなみなみと
注いだ杯に映った
親の姿が小さくて

湖面の向うの岸で
篝火を焚きながら
夜の土壌へと消え

反転(13.09.17)

娑婆中の水蒸気を
搾り取って各地に
降らせたことなど

そ知らぬ秋空から
不問にされた影が
置き去りにされて

分かったと思った
途端に分からない
自分は行方不明で

子供の一日は長く
心から納得せずに
遊びに満たされて

老人の一日は短く
心から納得させる
理解などほど遠く

あたりまえの事が
そうでなくなれば
生き死に繰り返す

空っぽ(13.09.13)

書誌整理を終えて
ダメ押しみたいな
出戻り残暑の週末

飲み食いつないだ
日々の仕込み方を
忘れてしまったら

空っぽの内臓から
空振りするだけで
言葉にもならない

減量しすぎたまま
リングに上がった
ボクサーのパンチ

漱石の『門』から
歩みだした夫婦の
像の遥か彼方まで

尋ね倦ねて帰らぬ
湖面を飛立たない
水鳥の泡立つ鳴声

折り返し(13.09.10)

朝陽を受けて
閃光のように
庭を切り裂く

もぬけの殻の
蜘蛛の巣から
たどってみる

7年先なんて
49年前と同じ
あやふやだが

すでに赤線も
大人への禊も
見果てぬ夢で

向こう側から
こちら側から
暮しの鞍部で

老いを眺めて
出逢う場所が
確保できれば

眼鏡拭き(13.09.06)

戸惑うような
気温の低下に
メガネが曇る

剪定しすぎた
庭木の眺めに
職人技を数え

亡くしてみて
ようやく親の
姿があらわに

覚えられない
お経のように
遠ざかる声が

弾丸のように
言葉に当って
砕け散ったら

メガネ拭きで
日々の汚れを
拭取る時間を

知恵の輪(13.09.03)

クロスバイクを
夕暮れの豪雨で
置いて帰ったら

翌日あまりにも
気温が下がって
置き場所を忘れ

一夏の出来事が
対岸の風景へと
後退したように

手足の動かしで
体内に分散した
景色を拾い集め

どうあがいても
出来上がらない
働き方を試せば

歪みや偏りなど
邪魔でしかない
絡み具合が弛み

重なり時(13.08.30)

住人じゃとても
きれいさっぱり
刈りこめられず

強くなった雨に
意識の枝振りが
削ぎ落とされて

毛虫で丸坊主に
なった枝に隠れ
羽化する蝶の姿

害虫駆除ついで
うっかり噴霧し
飛立たつ事なく

日常の掃除から
とりこぼされた
埃のように逃げ

跡形も残さない
ぞろ目の時刻の
デジタル表示が

生い立ち眩み(13.08.27)

過ぎて行く夏の
昨日の疲れなど
朝の排便と共に

一気飲みなんて
立ち食いなども
ごめんこうむる

虚弱児から渡る
壮年期の橋桁が
揺さぶられると

読み飲み衰えて
視力も排尿時の
勢いも弱まるか

疲れ直しならぬ
ロボット掃除や
電動草刈機など

並みの暮らしの
重量制限からも
解除されようか

遠雷縦走(13.08.23)

ずぶ濡れになって
逃げるように辿る
稜線が迷路のよう

途切れた地図から
滑落した記憶まで
縫い合わせている

雲間から差込んだ
温もりが柔らかく
高山植物を揺らす

未踏の坂道に立つ
道標に抗うように
ルートを探せるか

待受ける死の谷の
迂回路がとぐろを
巻く渦に弾かれて

老いる心身の座で
目覚める動きから
気づく働き方まで

盛夏遡行(13.08.20)

書誌の森での
下草刈りから
伸び広がる枝

ぶら下がって
一回転すれば
着地できるか

性愛を営んで
踏み倒された
夏草が起きて

数えられない
事の終わりを
繰り返し告げ

胎児の頃から
聴きなれない
裂目を遡行し

有史以前から
読みなれない
肌触りを縦走

順次石(13.08.16)

掃除とお参りを
済ませ待たせた
タクシーで帰る

車窓から遠のく
駅までの景色に
懐かしさ薄れて

廃線跡の道路を
往来した旧盆の
ゆとりをなくし

大正11年印の
墓石の判を刻む
スタンプラリー

坂道を上り下り
スーパー老人が
建てお袋と眠る

立寄る所もなく
乗り継ぐ辺りへ
吹き抜けながら

屋上にて(13.08.13)

図鑑カバーを
壁に貼ったら
どんな眺めに

屋上に誘われ
待受けていた
数々の出来事

殴り合っても
絡み合っても
測りきれない

青春交叉点を
どうにか抜け
老いの深みへ

山から海まで
双眼鏡で辿る
流域の深さに

届くかどうか
庭木に水撒く
ホースの長さ

夏の拡大鏡(13.08.09)

図鑑のページを
散策したりして
虫を見かけない

夏を広げて見る
拡大鏡が漫画を
より面白く見せ

お袋の使い古し
円形の拡大鏡は
効果が薄っぺら

電子書籍などで
拡大したりして
深みは味わえず

地球儀の付録の
長方形拡大鏡で
くらもちふさこ

ネームの読取り
よりも感動的な
線とカット割り

紙切れ(13.08.06)

8月に入っての
梅雨明けの空は
そばえのようで

虫食いだらけの
紫陽花が逃した
雨傘の恥じらい

刃物に馴染んだ
手の込み具合を
取り戻せなくて

父の忘れ形見の
刀剣を握っても
抜き差しならぬ

老境から始まる
力が抜けきった
切っ先のように

巣立ちの時期を
待受けた小鳥が
飛立つ空白の空

夏ライブ(13.08.02)

腰が弱くなった
刷毛であたりを
描き直す夕方に

杉の高さまで
打上り始めた
欠けた花火が

書き文字から
印刷文字へと
耳栓に刻んだ

ビット以前の
レコード盤が
今宵の酒の肴

ハマっている
お茶で茹でた
茶まめもどき

快適おまかせ
空調を夏畳に
はだける聴衆

人さらい(13.07.30)

とっくに廃校の
同窓会の案内に
夏座敷の消印が

畳裏でとぐろを
巻いた青大将の
舌先に揺らめく

黄色い水着から
黒い水着へ泳ぎ
渡る少女の浜辺

林間学校を吹く
松林の風が運ぶ
母が綴った文面

未だに泳げない
私事を埋め隠す
砂浜の人さらい

昼寝する祖父の
鼾から抜けだし
川釣りの土手へ

水たまり(13.07.26)

バス停で聞いた
郭公の鳴き声を
置き忘れたまま

豪雨に逃げ惑う
濡れ鼠の群れが
雨脚を食荒らす

托卵のひな鳥が
雷雨が響き渡る
教室に取残され

手をこまねいて
ひび割れた殻に
閉じこめたのに

響くことのない
孵化の一瞬から
冥想の一時まで

いまここにある
水たまりに映る
空が乾いて消え

夏の額縁(13.07.23)

夏日以下だと
涼しいなどと
過ごした夏も

真夏日以下を
目安にしての
その日暮らし

汗を流す水を
汲上げている
井戸の縁から

真っ逆さまに
閉じ込められ
ぶら下がって

仄暗い水鏡に
嵌め込まれた
風景を掬えば

釣瓶を結んだ
身体が撓んで
一瞬の夏空へ

雲の轍(13.07.19)

俄雨が教える
そろそろ庭に
水撒く頃合い

砂埃を巻上げ
遠い田舎道を
走り抜けたら

手製の弓矢が
野良猫や犬を
目がけ放たれ

輪を描く鳶が
見下ろす川へ
釣り竿を投げ

吹寄せる風に
裸体の黒髪が
川面を乱せば

未知の魚群が
雲間から現れ
白昼の星空へ

夏草(13.07.16)

庭の打ち水が
悲歌を奏でた
祖父の臨終に

働くルンバで
草むしりなど
もってのほか

苔生すまでに
衰えた足腰が
草抜きを止め

電動草刈機が
訳の分らない
余命を取留め

玄関先に座り
虫の行く末を
聴き取るお袋

遊び付き合い
働いて惚れて
枯れて果てる

虫干し教室(13.07.12)

7月半ばを前に
熱さも特別から
普通に様変わり

天地入れ替えを
止めてしまった
低音スピーカー

授業中の教室に
PCを使いたい
学生が大挙乱入

ヨメの手が回す
長期間乗らない
タイヤの接地面

90分間待てない
彼女らの装いに
新しい夏が来て

教室を休みがち
履修生の席など
掻き消されそう

束になって(13.07.09)

鉢植え野菜が
双葉になって
立てないまま

間引きしても
真暑日続きで
育ちあぐねて

過不足のない
力が働くには
どんな姿勢が

身体を教材に
手近な道具を
使いこなせば

手癖足癖など
身に纏ったら
気づきにくく

日盛りの庭で
昆虫の抜殻を
写し撮る稽古

浮沈(13.07.05)

5月の日照りで
枯れそうだった
欅の盆栽の構え

濡れた鳩の目は
山も谷も見えず
羽撃くいまここ

枯れた葉裏から
身構えたような
ブルース・リー

道具を使う指が
鍛えようのない
下半身から生え

柔らかな眼光が
すべてを受入れ
立ち止っていて

険しい歳月など
どこ吹く風にも
染まらないまま

ヒーロー(13.07.02)

クサグモの巣が
花が散り終えた
ツツジの茂みに

広げたネットの
トンネルの奥の
始まりと終わり

継ぎ目などない
手入れを怠った
鉢植えの言伝え

揺らぐ屋台骨で
耳を傾け聴いた
葉っぱの震えが

崩れ落ちそうな
物語の網の目に
植え込まれたら

怪獣に立ち向う
忘れられていた
ウルトラX登場


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