十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)

最終更新日:2011/07/01

六月の走馬灯(11.06.28)

リタイアしてからそろそろ10年で
寝起きの真新しさも薄らぐ毎日に
巡ってくる誕生日の間隔も短めに。

体育館でバドを練習する子どもや
教室で授業や演習をする学生らに
透けて見える歳月の色合いの若さ。

年々歳々同じカレンダーの1年が
生きながらえた誕生日の経過毎に
大きくなる分母で割られることに。

青信号の横断歩道を渡る半ばあたり
いきなり右折車に跳ね飛ばされた時
誕生日迄の過去26年が巻き戻されて。

気がついたら反対車線に転がり倒れ
“ドン”という音にまぎれて声もなく
“お母さん”という字幕まで見えたか。

今も誰かが家族の写真や位牌を探し
途轍もない被災にまるっきり過去を
切断されたみたいに瓦礫を踏み分け。

下駄の音(11.06.24)

散歩中の犬に吠えられたみたいに
だしぬけに大粒の雨が降ってきて
四つ足と二足歩行がUターンする。

似たり寄ったりの犬の歩き方より
ロープを手にしている人それぞれ
似たような道筋に同じ歩き方なく。

歩くリズムや話す声がいつの間に
まるで枠が取り払われたみたいで
背格好まで違ってくる生徒や学生。

梅雨時の人様々な歩き方の不思議
影のように何処までもついてくる
答えられないなぞなぞの問いかけ。

歩けるうちが花という一言だけは
明治生まれの祖父や大正生まれの
お袋の歩き方の違いを超えていた。

セビアン・グローバーがタップの
足裏で叩き分けるドラムセットを
iPadの楽器アプリでなぞってみる。

好敵手(11.06.21)

どこか近くで燕の雛が孵ったのか電線に
忙しなく群がったり飛び去ったりしている
窓の外はうんざりするような蒸し暑さに。

住宅に引き込まれた電線を選んだみたい
ふらふらあっち向いたりこっち向いたり
1羽もテレビアンテナに見向きもしない。

もう要らないからと要介護になってきた
おふくろの部屋から撤去させられたTVも
地デジチューナーを繋げば甦ったように。

取残されたような社会の窓から入り込む
いろんな情報に晒されるのが嫌になって
それともテレビのない幸せに気づいたか。

1年男子がいつの間にやら帰ったりする
中学の部活でバドを始めて試合に臨んで
勝ったり負けたりした自分との出会い方。

負けた相手に次は勝とうとする悔しさも
負けた自分を相手にする練習のやり方も
終わった会場で見つけてきたか忘れたか。

玄関灯(11.06.17)

うっすら冷房が効いた路線バスの窓越し
道路沿いのグリーンゾーンの植え替えが
緑たけなわの中休み作業みたいに映って。

ふとした心身の動きで抜け去るしかない
インかアウトか決めにくい接点あたりで
仕掛けられたここしかない出会いの岸辺。

間髪を入れず会釈を交わして相手に譲り
とらえどころのない流れに逆らわないで
乗り込んでしまう心身の動きに成れるか。

そぼ降る雨に濡れ海に向って深々と傾け
刻まれた黙礼の時間が届いた無心の底へ
手首を返して掌を合わせて下ろすほどに。

夕方に予報された雨に遭わずに帰れば
お待ちかね「HoSoNoVa」ライブTVで
細野氏が傘をさし日比谷のステージに。

「バナナ追分」そのほかやるじゃないか
飲み食いそっちのけで聴き惚れてしまい
玄関灯も点け忘れて部屋の外はまっ暗に。

Phoebe Snow に(11.06.14)

愚図ついた空模様のせいばかりじゃないが
わが家の塗装工事がもたついてしまったり
住人の体調までおかしげなことになりそうで。

ささやかなリフォームなのに事がすんなり
運ばなかったりしたのも経済効率を優先した
その場しのぎのでまかせ言葉で請け負うから。

直したい床や内装にまで手はまわらなくとも
仕上がり具合を眺める窓からさわやかな風が
吹き込んだりしてとりあえず現状維持を保つ。

近所の見知った人たちや近親者だけじゃなく
折にふれて読んだり聴いたりしてきた遠くの
人々の訃報に読み込み聴き込み不足の事など。

手元に残った作品を引っ張りだすだけでは
なんとも物足らなさがつのってきたりする
人とそうでない人とは何処が違うのだろう。

二人だけの暮らしも丸1年が過ぎてしまい
読むのは別々でも映画や音楽はほぼ一緒で
お互いの体調が影響しあうような事なども。

遠い田祭り(11.06.10)

さて衣替えしようとした薄手のズボンが
ちょっときついのはしょうがないとしても
メッシュのブレザーが着にくくなるなんて。

雨露をしのいできた家の外壁や下屋根など
梅雨をまえに化粧直ししたみたいに体型も
リフォームしないとクールビズが決まらぬ。

就業界隈でのステイタスのシンボルとして
着こなされてきた背広の役割をどうやって
カジュアルで表せるかが定着の分かれ目に。

慰安旅行など平服ででかける行事のときは
女性に男性にはとても真似できそうにない
身分や仕事ぶりにとらわれない艶やかさが。

眠気を覚ますような激しい雷雨に助けられ
2コマ終えた雨上がりのキャンパスを後に
女性専用バスに乗り込んだような混み加減。

喋り疲れたみたいな吊り革の握り具合に
iPodに詰め込んだばかりのP.サイモンや
S.テデスキ&D.トラックスが豊かに響き。

シャッター音(11.06.07)

見かける野鳥の姿も冬鳥から夏鳥になり
ホトトギスの鳴き声がなどを聞き分ける
身体モードも寒冷から温暖に切り替わる。

体調が急にどん底みたいになって退職し
なんとか持ち直すような日々の暮らしで
覚えたデジカメで撮ったのが花や鳥など。

出不精の無為のかけらみたいに溜まった
画像ファイルからプリントなどしないが
スクリーンセイバーにして眺めたりして。

何の変哲もなく見栄えのしない一枚でも
それぞれに撮った体調が裏面に張り付き
シャッフルしながらついつい見飽きない。

リタイアして元気でいられるようになり
ながらもそれなりに運動体勢の衰え方を
気付かされる老いのバロメーターもどき。

日本酒に遅れてバーボンからワインへと
好みが変わったようにギターサウンドに
目覚めたりしたのも人生の半ばを過ぎて。

  • 電子書籍が紙に負ける5つのポイント(WIRED VISION)(PC Online) http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20110606/1032215/
  • [図書館] オープンアクセスの背景にある思想とは?/オープンアクセスに対する市民の需要は?/Wikipediaのリンクはどれくらいリンク切れしている?・・・最近の研究発表状況(かたつむりは電子図書館の夢をみるか) http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20110531
  • free literature(世界中の無料公開の電子図書館へのリンクをまとめたサイト) http://www.freeliterature.org/index.html
  • だれでも・どこでも Q&A図書館(プロジェクトの概要、質問受付けフォームなど。saveMLAKのサイト) http://savemlak.jp/wiki/daredoko
  • 図書館のFacebookページを作ってみる(記事紹介)(カレントアウェアネス-R) http://current.ndl.go.jp/node/18333
  • 新しいGoogleアナリティクスのご紹介:カスタムレポートを作成してみよう(アナリティクス 日本版 公式ブログ) http://analytics-ja.blogspot.com/2011/05/custom-reports-in-new-google-analytics.html
  • OCLC、ウェブスケール図書館業務管理システムを7月に一般公開へ(カレントアウェアネス-R) http://current.ndl.go.jp/node/18331
  • OCLCのWorldCat Localの検索インデクスにCrossRef、BioOneなどが追加 検索可能論文は5億件へ(カレントアウェアネス-R) http://current.ndl.go.jp/node/18312
  • 「キッズページリンク集」に新規データを追加しました(国際子ども図書館・更新情報 - 2011年6月3日) http://www.kodomo.go.jp/info/kids/index.html
  • ブラウザやウェブについて知っておきたい20のこと(Google Japan Blog) http://googlejapan.blogspot.com/2011/06/20.html
  • 宙ぶらり(11.06.03)

    雨上がりの六月のまつりの夕暮れどき
    ありもしない自信を見失ったみたいな
    手詰まり政局を水掛け論で洗い流して。

    久しぶりの晴れ間を待ちかねたように
    やってきた塗装職人が足場を組み立て
    中断していた仕事をピカピカに仕上げ。

    夜明けまでに仏様や急患が何件あるか
    医薬図書館勤務時代に輪番で担当した
    付属病院の当直時間は慣れようがない。

    組んだ顔ぶれ次第で当夜の業務内容が
    左右されたみたいな時間をやり過ごす
    部屋の片隅にはマンガ雑誌が山積みに。

    無愛想この上なくカルテを取り出し
    ぶっきらぼうに夜勤担当に手渡して
    相手への敬意を忘れることしばしば。

    宙吊りにされることは仕事以外でも
    家や家族が丸ごと予期せぬ時空間に
    いきなり巻き込まれ投げ出されたり。

    谷渡り(11.05.31)

    鶯を追い払うように郭公が鳴き始め
    家の塗装修繕作業を中断させたまま
    愚図つく空模様に飛び交う野鳥の影。

    築四十年近い老朽と補修のせめぎあい
    足場に絡むように養生シートが煽られ
    雨風で剥がれ落ちた下塗りの破片など。

    なんだか廃屋の玄関の出入りみたいで
    雨露をしのいできた住人の身体の方も
    草臥れてきているに違いないようだが。

    晴れ間に思い立ってちょっと遠出の
    自転車ナビをセットしようとしたら
    バッテリー切れでがっくりしそうに。

    手足を使いとにかく試み続けないと
    どこがどんなふうにおかしくなったり
    ダメになりつつあることに気付けない。

    無線マウスの電池忘れを失念したり
    壊れそうなイヤフォンを取り替えて
    機器の性能よりも聴覚の衰えを疑い。

    適材適所(11.05.27)

    路線バスなんかだと真っ先に前か後の
    空いた席の顔ぶれはいつも同じようで
    中間座席は何となく適当に埋ってゆく。

    6回目の授業でコンピュータ室の机の
    並びが教卓対面から学生差向い配置に
    変わっても学生が居並ぶ席はほぼ同様。

    今頃になって原発事故がメルトダウン
    だったなんて誰も驚いていないようで
    今更だからこそ不信感は深まってゆく。

    毎回就活欠席を数えない日はないのに
    学習するのに一生懸命で先のことなど
    いっこうに休まない学生はどうなのか。

    社会に出てゆくまえにできることなら
    好きなことを好きなように好きなだけ
    2年間でもやれたらいうことないかな。

    自分が何に向いているかだなんて何の
    青虫なのかどのような葉っぱを好んで
    食べているかで蝶の姿が決まってくる。

    塗り分け(11.05.24)

    真夏日になったり梅雨を前倒したような
    雨降りになったりめまぐるしい変わり目で
    傷んだモルタルや屋根の塗り直しの見積り。

    家の建替えやリブートなんて考えられない
    五月の眩しい陽射しのような業者の説明と
    見積り金額にくらくらしそうな年金暮らし。

    寒冷地や温暖地で塗り分けなきゃならず
    層に塗り分ける外壁塗装材料もさまざま
    放射能降雨地仕様塗装なんて知らないが。

    かって発売中止になったRCサクセションの
    反原発ソングなど聴き返したくもないけど
    『試行』68の「原発問題の層」発言を見直す。

    聴くのも疲れてきた福島第一原発報道に
    吉本さんが22年前に「原発」を五重丸の
    層で塗り分けた図が鎮魂歌のように響き。

    安全性/地域・経済利害/科学技術的/
    文明史的な層を設定して整理してみせた
    発言の続きが読みたくなってくる梅雨前。

    吹き抜け(11.05.20)

    東西に窓をあけはなった2階の部屋を
    吹き抜ける風に乗って雉の叫びがまだ
    たどたどしい鶯の鳴き声を追い越して。

    遅れを確かめるバス時刻表の傍ら近く
    風に光り輝く青葉のそよぎの彼方には
    ゆるやかな稜線を下る渓谷の雪深さが。

    4限目を終えたキャンパスから乗って
    ほどなくイヤホンの音楽が途切れ始め
    なんだか身の落ちつかない座り心地に。

    CDが世に出たころからの愛聴盤など
    いっぱい詰め込んだiPodを身にまとい
    女子学生で埋まる車内のクッションに。

    授業中に私語したり携帯をいじったり
    トイレか何処かへ立ったりすることも
    ない教室で居眠りさせずに話すなんて。

    伝わる力は相手にどのように敬意を
    払えるかにかかっているようだけど
    相変わらす就活による欠席が目立ち。

    手のうち(11.05.17)

    雨上がりの庭で新緑が伸びるように揺れ
    産道を抜け出たばかりの赤子の手が震え
    立ち上がった足の怯えで筋力の彼方まで。

    歩行も覚束ない栄養失調の虚弱児童も
    わが家にあった『宮沢賢治名作選』を
    手にめくってみる握力に恵まれて育ち。

    夏の林間学校の参加も見学しただけで
    中学の部活も竹刀の握り方や振り方も
    カナヅチのままいっこうに体得できず。

    喜寿そこそこで貧乏人の解放を目論む
    社会システムが崩壊してしまったあと
    衰えゆく体力を補う身体使いに気づく。

    被爆国としての筋力不足を補いながら
    道具を使いこなすトレーニング不足も
    露な最新エネルギー革命の七段目辺り。

    「新緑の毒素」の階段で息を切らし
    東北の「モーリオ市」あたりで降り
    「イーハトーヴォ」を呼吸するまで。

    汲み忘れ(11.05.13)

    五月晴れにはほど遠い雨上がりに強風が
    取り壊されたばかりの住居跡を吹き抜け
    千切れんばかりに庭木の新緑を揺らして。

    何をどう点検すればいいか分らないまま
    まわり続けて止まらない井戸のポンプの
    夜も昼もないモーター音に急き立てられ。

    修学旅行を前に先輩部員が後輩を並ばせ
    日頃の挨拶ができていないように掛声も無く
    部活動を妨げる行為に退部届けを勧める。

    やりたいと決めた練習方法もその場限り
    自分は何を知らないか/何ができないか
    自問自答する学びの姿勢を何処かに忘れ。

    「調べ学習」だなんて言われなくたって
    調べるためにはまず調べるためのコトバ
    そのものを知る必要があるという気付き。

    自分の知識についての知識を持たないと
    知識に梯子をかけて知識の縄梯子を上へ
    下へと昇り降りする自在な知恵の仕組み。

    構え(11.05.10)

    ちょっとした庭の草むしり以外はまるで
    屋内退避したみたいに読み聴きしていた
    大型連休の締めはスポ少のバド試合付添い。

    練習量が足りなくほとんど勝ち目がない
    コート内でシャトルに向っていく動きを
    最後まで崩さないひたむきな初心者ペア。

    昨日できなかったことが今日できるよう
    練習を重ね明日のゲームに臨めるような
    技の習得が途切れないよう持続できれば。

    そのような場自体が途絶えているような
    被災地の子どもらの現実を忘れないよう
    大会に臨めと開会の挨拶で言われたって。

    瓦礫の眺めをバスツアーでなんてことが
    やりきれないほど切羽詰まってしまった
    あちこちで被災者であることの難しさが。

    渡る橋も出発する駅も壊滅しているのに
    子どもらはどうやって初めてラケットを
    握ったりカメラで写す嬉しさを運べるか。

    場外パス(11.05.6)

    萌える緑を持て余し気味な五月連休
    花が終わったあとの深呼吸みたいに
    在宅介護の日々の名残の影が揺れて。

    デイサービスが利用できない連休や
    年末年始の過ごしかたも身につかず
    老後の生きざまを学び忘れてしまい。

    乳幼児期に世話をしてもらったお返し
    などと言い聞かせたりした気休めにも
    数時間毎に中断された生活時間の紙魚。

    無理矢理でも身体を動かし続けようと
    三日に一度は寝込んだり祖父はお袋の
    介護の手間もほどほどに自然死に向い。

    満期だろうが前倒しだろうが仕事から
    解き放たれた放課後の解放感を生きる
    なんて事のなかった同僚や知人の後姿。

    暮らし向きの様々な位置づけに抗って
    どのようなパスの受け渡しができるか
    人それぞれの老いの自然に流されがち。

    連休飛翔(11.05.3)

    無愛想な隣人みたいなわが庭なのに
    これまでとは違った盛んな花つきも
    五月連休の花瓶の底に埋もれたまま。

    どう人間の自由と幸福を呼吸する
    四足歩行から立ち上がった詩人が
    やがて元の歩みに戻ったりしたら。

    手に握った道具を使いこなせない
    不自由を肘や肩や股関節の感覚に
    解消しながら意識を力にできるか。

    残雪の立山連峰を覆い隠すような
    薄曇り空の彼方から送り届けられ
    “nishiyan”の言葉で遥かな高みへ。

    地べたでは9・11の首謀者らしき
    男の殺害の旗が水に突き立てられ
    窒息しそうにもがく航跡の泡立ち。

    休み中に部活はあるんでしょうか
    男子新入部員らの問いかけ言葉に
    応えられない先輩部活動のレベル。

    乗り合わせ(11.04.29)

    前日の夏日が嘘のような市内を
    吹き抜ける風に堀端の緑が波打ち
    街路樹のハナミズキも千切れそう。

    雨降るバス停から聴きはじめた
    R.クレイ・バンドのライブ新譜が
    終わりにさしかかるまでの道行き。

    しばらく続いた不調を通り抜けた
    みたいに丘陵を越えたあたりでは
    今年も梨花の絨毯が煙ったように。

    何の変哲も無い見慣れた眺めでも
    3・11のあとでは身体の好不調に
    かかわらず違ったように見えたり。

    いまここの呼吸をつなぐ身体から
    遠く銀河のあたりまで連れだして
    くれそうな詩を読んだりしたいが。

    帰りがけに覗いた本屋に無くとも
    隣りのケーキ屋で売れ残っていた
    アップルパイの二人に手頃な大きさ。

    解き結ぶ(11.04.26)

    移り変わる季節をコンデジからデジイチ
    そして動画カメラと撮り損なってるうち
    帶に短し襷に長しのカメラバッグが増え。

    イン&アウトを見てスコアの記入など
    遠近両用だけではおさまらないようで
    遠目や手元や室内用そのほか眼鏡持ち。

    五人家族の頃は何かと手狭みたいで
    建て増しに手直しと持ちこたえてきて
    お袋がいなくなって二人きりの広さに。

    肌寒い昼にこれ着てみたらとヨメに
    羽織らされたLLサイズのブルゾンの
    着心地の良さがお袋の形見だなんて。

    振り上げた薪を打ち下ろさせまいと
    背中から必死に羽交い締めにされた
    落とし所が判らぬままに今日ここへ。

    人一倍小さかった中学生が剣道部で
    両手を離した握りで持て余したのに
    両手をひとつに竹刀を振る北斎漫画。

    過換気日和(11.04.22)

    インドアとアウトドアで戸惑うような
    昨日の授業日和の2コマ続きの教室で
    久しぶりにHVで立ち往生しかかって。

    なんとか授業を終え居ても立っても
    おさまらないのを持ちこたえながら
    さて救急車は避けどうやって帰ろう。

    抜けた気力でどうにか教卓の物など
    カバンにしまい込んでいるところへ
    ひょっこり書類を手にしたO先生が。

    次年度からの司書科目改訂によって
    どのような担当科目になるか示され
    しっかり受け答えができたかどうか。

    ろれつは廻るしなんとか歩けるうち
    とりあえず学科事務室へ場所を移り
    呼吸をゆったり手配のタクシー待ち。

    従来の講習科目から大学教育科目へ
    情報化社会に見合った授業環境への
    流れに棹さすような履修学生の就活。

    隣りあわせ(11.04.19)

    朝の予報どおりやってきた激しい雷雨に
    こびりついた屋根の黄砂が洗い流されず
    乾きあがるれば茶色い縞模様が浮かんで。

    東西両隣の原発保有県に挟まれて暮らす
    有事の際の風向きは事故現場への距離で
    測ることのできない被曝要因になりそう。

    放射線はともかく放射能物質の飛散など
    花粉予報のように毎日流せば変な怯えや
    要らぬお節介に振り回されることもなく。

    今年の花見のひと時の賑わいを通り過ぎ
    人ごみに出かけ群衆に紛れ込む居心地も
    独身から所帯持ちへと違った模様を描く。

    たくあん蒲鉾やお茶けを持ち寄ったのが
    コンビニ弁当とペットボトルに変わって
    知らぬどうしが行き交う土手に凧が舞い。

    離れていても互いに呼応している道筋で
    自分には見えない背中に背負わされてる
    ディバッグの日替わり中味は相方に響き。

    花の風向き(11.04.15)

    乗り合わせる中高年女性が出控えたみたいに
    Ecomyca(えこまいか)仕様で使い始める
    おでかけ定期で乗った路線バスの身軽な走り。

    授業開始を遅らせることなく始まる乗り心地で
    走り抜けた桜名所や丘陵地に乱れ咲く花模様に
    着いた先の教室で履修生みんなの顔が揃わない。

    宴会費用を義援金に当てたのを言い訳にした
    直前の予約キャンセル話を酒の肴にヨメと二人
    客足が遠のいている馴染み店で旬の味を満喫。

    聞けば大震災の直前あたりからいつもは獲れる
    春の魚が不漁だったりホタルイカなどで満杯に
    なってるはずの腹に餌のかけらも見当たらず。

    管理区域の農作物や汚染水など隔離できない
    手抜きのツケみたいに県内輸出商品の放射能
    汚染表示が求めれはじめた海外からの風当り。

    命からがら着の身着のままで引き揚げてきた
    母子家庭に吹き過ぎた風の冷たさあたたかさ
    被害者に吹く世間の風も十人十色を聞き分け。

    常も乱れ(11.04.12)

    ここ数日来も大きな揺れを挟み群発している
    余震を告げるテレビやラジオ報道を聞きながら
    一周忌を待ったみたいに手を合わせる仏間の朝。

    いつものように時間をかけて介護ベッドから
    起きて車椅子に乗り移ってその日を過ごした
    お袋がその日の夕方に急逝してしまうなんて。

    同じ部屋で迎えた祖父の死が引越し間もない
    3年目だったのに狭いわが家から溢れそうな
    町内葬で見送れたのは昭和50年の夏のさなか。

    仏になったお袋の月命日のお参りはどうも
    家族葬の場で年老いた檀家の二代目住職に
    それとなく遠ざけられた隙間に読経を響かせ。

    もののあわれから遠ざかるその日暮らしの
    しがらみに絡めとられ固まった身体だから
    凝りをほぐすように力を分散させて動けば。

    例年のごとくの花便りを待って二人で眺め
    一度も母と車椅子の花見をしなかった日々
    その日のことは暮れてみないとわからない。

    それとなく(11.04.08)

    きのうあたりから暖房要らずの陽気に
    テレビは節電や省エネを勧めているが
    義援金は一回だけで済ませられようか。

    打ち続く余震みたいに更新され続ける
    原発事故のニュースには摩訶不思議な
    言葉だらけでわからないことが増えて。

    シナリオをどこの誰が書きなぐるか
    ぼんくら頭に「パンドラの箱」やら
    「プロメテウスの火」が「復興」し。

    巷の「風評」の渦の枠外から専門家が
    放射能汚染圏外に流れ出た「恐怖」を
    「無知」に置き換えたようにあざ笑う。

    地元の「桜まつり」を囃したててきた
    「全日本チンドンコンクール」の第57回が
    3・11に急かされたように「開催中止」。

    出場者数は戦後経済成長の坂を下り
    狭い部屋では木刀や模擬剣代わりに
    ラケットを振って身体をほぐそうか。

    風向き(11.04.05)

    春休み部活の最終日の子供らの姿に
    練習の愉しみが深まるような1年を
    過ごせた新2年生なんて何人いたか。

    余震続きの被災地では酔い止め薬など
    要り用もなく離れたテレビ画面に映る
    余震テロップに身体がいわれなく揺れ。

    偉ぶりもなく穏やかに息づく佇まい
    花見ごろのお袋の一周忌が近づいて
    遺品の見返り阿弥陀像が仏間の壁に。

    日々自転車で買物に出かけるヨメに
    マスクと帽子と手袋を忘れないよう
    風向きの天気予報みたいな戯れ言を。

    コーチや先生を必要としなくなった
    時空間が一瞬でも立ち現れたりする
    場が体育館や教室をリセットしそう。

    この期に及んで身体を揺さぶられ
    習い憶えた殻を打ち破ってしまう
    心身の動きを飛び越す道具の速さ。

    先見力(11.04.01)

    ようやく晴れ上がった春空の彼方から
    まっしぐらに飛行機雲がのびる彼方へ
    宛先のない便りを届かせたい広がりが。

    被災地域の春休み部活どころじゃない
    中学生をを知ってか知らずめずらしく
    部員が揃ったのにてんでんばらばらだ。

    おしきせ「自粛」はまっぴらごめんと
    ライトアップがダメなら蝋燭持ち寄り
    あれこれ意見を交わす「長屋の花見」。

    いずれ「良くなる」見通しが立たない
    家庭内自力介護の袋小路に往き詰まる
    待ち受け画面で泣きわめいてどうなる。

    いま・ここでなにをどうしたらいいか
    前後左右上下に心身をずらせるような
    隙間を見出したワープ先から立ち向う。

    積み重ねてきた避難訓練からまとまり
    過ぎて共倒れなしないよう一人一人が
    それぞれ判断し生き延びた三陸の人々。

    薪割り(11.03.29)

    庭の淡雪の跡にうっすらと草が生え
    朝方はメッシュの帽子がなんとなく
    寒かったのに昼には心地よい風通し。

    響きに身体が細かく割れゆくから
    寝起きの凝りをほぐすかのように
    朝飯前に御鈴を鳴らし手を合わせ。

    ライフラインが消えた被災地に
    救援隊の手が届き運転手が車を
    動かし郵便配達が足を運ぶ光景。

    きつく握りしめながらラケットを
    腕に接ぎ木したみたに振っていた
    新入生がいつの間にか身体を割る。

    開いた体幹に弛んだ肩の先の肘を
    追い越した手首を追い越していく
    ラケットヘッドが空を割くように。

    演奏の技術も細かく割れていれば
    いるほど聴き慣れるほどに新しく
    へたった再生装置も見事に鳴らす。

    とどける花に(11.03.25)

    中学校の体育館に近いといっても
    気づいた時はもう春休みバド部活の
    それも初日が終わってしまう時刻に。

    教職を十年続けながら第一志望の
    就活を成就させた若い顧問先生を
    あてにしてサボったのでもないが。

    被災地域で卒業式に臨む子どもらを
    テレビ報道で見かけたりして表情や
    仕種からつい溢れそうになるこの頃。

    想えば阪神大震災の後で中越地震や
    能登半島沖地震の揺れからも遠くて
    2週間前の揺れも立山連峰が遮って。

    精神科医が被災直後に書いた文体や
    ほぼ1年後に被災地を訪れた詩人の
    話し言葉などが繰り返す日々の栞に。

    自然に向かう不信を飲み込むように
    芽生える信がやがて倫理を象るうち
    善悪を隔てる地形にばらまかれるか。

    とりあえず(11.03.22)

    どんより曇った朝空の隙間から
    陽射しが伸び雨上がりの屋根に
    偏西風が運んできた黄砂が残る。

    ファインダー越しに鶯が鳴いた
    梅の木あたりをのぞいていたら
    電話が鳴って顧問の部活連絡が。

    目立たない三文判を押すような
    日常の隙間で原発事故について
    語るツイッターを調べてみたり。

    当初発表された避難区域などで
    外国人と日本人と距離の違いが
    テレビ報道だけじゃおさまらず。

    壊滅的な地震と津波の自然災害に
    被さってきた人工の自然災害とで
    振り回されそうになる身体の記憶。

    ふと義援金アプリに手を出した
    などとヨメに喋ったりしていて
    お袋の一周忌の費用も義援金に。

    寛容(11.03.18)

    シーズンを締めくくるのに絶好の
    スキー日和なのにその気になれず
    一昨日は部活への顔出しが億劫で。

    朝方の胸痛で目が覚めたり日中に
    身体がおかしな具合になりそうで
    掃除や片付けごとで息遣いを保つ。

    震災報道のテレビから抜けようと
    録り置き映画やダウンロードした
    音楽などともすれ違う日々の流れ。

    いい歳をして何ともヤワなようで
    その場のフツーを探して目立たず
    臆せずいま・ここを呼吸するだけ。

    都会の計画停電の闇から退去する
    外国人のように被災地の真っ暗闇を
    避難して県内への移住も始まって。

    陸・海・空から始まった支援だが
    福島第一原発めがけ人工の豪雨を
    降らせて冷却する妄想に捉えられ。

    黙祷(11.03.15)

    ヨメと無病息災な冬越しの一コマ
    背戸の雪囲い取り外し作業日和に
    未曾有の大震災の渦中にある人々。

    3月11日の午後はB.メルダウの
    素晴らしいライブDVDの終盤で
    「揺れ」を感じ画面をTVに切換え。

    ただならぬ地震と津波速報画面に
    身体を引き止められそうになった
    家を後に二人して夕暮れの街中へ。

    前売りを用意した志の輔落語会の
    幕が予定どおり上がった古会場は
    満員の盛況だったが座席が窮屈で。

    休憩の間も携帯したTV画面に映る
    きれぎれな被災画面をどのように
    受けとればいいのか身体が戸惑う。

    東日本を襲ったとてつもない壊滅の
    厳しさが明らかになればなるほどに
    追い討ちをかける原発の2次災害が。

    後はその場で(11.03.11)

    トイレを使って流し忘れたり飲んだ
    ワインボトルを片づけようとしたら
    半分ほど残っていて床にこぼしたり。

    PCで書きためたバド関連ファイルが
    壊れたのに気づかなかったりしていて
    バックアップごと駄目にしてしまった。

    体育館に集まる小中学生や教室に
    やってくる学生に相対する時など
    準備したメモや資料などは白紙に。

    春めいてもいないのにボケられるか
    去年の花見ごろに介護の手を離れて
    逝ってしまったお袋に笑われそうだ。

    親と子による老々介護がきつくなる
    日々の流れでヨメともど看取るうち
    どこまで故人の意を汲みつくせたか。

    “あんたら二人だけの家族葬にして”
    それに続く法事などは言い及ばず
    あちらとこちらを行き交うばかり。

    特等席(11.03.08)

    しぶとい“カダフィ大佐”ならぬ“冬将軍”が
    最後のあがきみたいに雪を降らせたりして
    灯油タンクの底から眺める石油産出国情勢。

    第1次オイルショックの頃に建てた屋内の
    ガス配管のコック部分が現行基準に合わず
    取替え作業ついでに家具配置の見直しなど。

    50インチに満たないテレビ画面が大きく
    なったみたいに映画が見えるようになる
    ソファの置き場所が狭い洋間のどこかに。

    さてテレビ画面の対角線の長さを2倍した
    あたりに腰掛けブルーレイHDに録画した
    「ミレニアム」を映して観れば試写会気分。

    視野角にピッタリはまった1部の展開に
    並んで観ていたヨメのリクエストもあり
    夕飯を休憩にして2部に続いて3部まで。

    照明をLEDに替えたり目にきついような
    高画質はシアターモード設定で眺めたり
    どうやら映画館から二人の足も遠のいて。

    ほころび(11.03.04)

    一夜で積もった屋根雪が眩しく傾いて
    桃の節句の寒さしのぎにヨメが着込む
    真新しいセーターの袖口にほころびが。

    近所で買って間もない品物らしいが
    とりあえず手元のホッチキスで綴じた
    その場しのぎの貧相で手前勝手な手際。

    春を前に喧しい入試ネット投稿騒ぎで
    誰でも入れるよう門戸を開いたままで
    卒業できるかどうかは本人の努力は幻。

    不正事実の心当たり受験生に呼びかけ
    一等最初に当事者同士でまず話し合う
    なんて事からますます遠ざかるばかり。

    大学の図書館で働きはじめた当時から
    学内で騒ぎを起こした学生を教職員が
    問答無用とばかりに警察に下駄を預け。

    教育ママやパパが夢見る教育の場から
    受験生を不正行為の容疑者扱いされて
    安くない受験料の払込先もほころぶか。

    学びの風(11.03.01)

    新年度授業の準備に取りかかる矢先に
    梅の花便りならぬ「カリキュラム」の
    提出依頼を受け取りなんだかうんざり。

    すべからく文科省のお達しへの対処も
    換骨奪胎を旨とすべしなんて言い草も
    自己点検評価業務の山に押しつぶされ。

    短期的効率や業績評価からほど遠くて
    行政が踏み込めそうにないのが教育や
    研究だけじゃなく医療や介護の現場も。

    入試問題のQ&Aサイトへの投稿など
    朝飯前みたいなご時世から取残され
    「想定外」に隔離されているのは誰。

    学年歴のベルトコンベアに乗っかり
    授業評価アンケートなどをやらされ
    就活で疲れた教室で起きていられるか。

    せめてぐっすり寝かせるべきなのか
    ちょっとでも覚醒の夢が見られたら
    これまでとこれからが違ったものに。

    雲の手触り(11.02.25)

    スキー以外の遠出に縁が無くとも
    週半ばのポカポカ陽気に冬眠から
    引きずり出されたみたいに街中へ。

    衝動買いできるCDは見つかったが
    ネットで在庫を確認していたのに
    お目当て本は富山店にはなかった。

    日頃読んでいる著者のブログへの
    書き込みがツイッターにシフトし
    立ち読みするにはiPadがぴったり。

    部分的に参照する本は電子本でも
    一冊とおして読む作品ともなると
    紙の頁をたどる読後感が優先する。

    地震や反政府運動ニュースなどは
    新聞やテレビを見る前にネットで
    覗き見しながらスクラップしたり。

    手帖やノートに書き込んだりなど
    クラウドサービスを使いはじめて
    入力用タッチペンが新しい文房具。

    めぐりあわせ(11.02.22)

    春眠暁をおぼえずにはまだ早過ぎるようだが
    まるで1月の天気をひっくりかえしたような
    2月の好天続きで身体の具合も外向き加減に。

    子どもらのバド練習会場まで出かけるのに
    引っ張り出した自転車のタイヤを膨らまし
    雪が消えた歩道を走ればサイクリング気分。

    枝折れのなかった庭木に撒布してもらった
    防虫剤が庭の残雪を汚し悪臭となって漂い
    白蟻駆除処理後の家屋みたいな住み心地だ。

    第1次オイルショックのころに建てた家の
    LPガス暖房用のコックが安全基準の点検で
    ひっかかったりして対応策を講じることに。

    庭木や家だけじゃなく住人もくたびれたか
    それぞれ十年ほど遅れてやってきたような
    夫婦で左右を取り替えた五十肩の痛みなど。

    吊り棚からの出し入れや洗濯物の棹掛けが
    ままならなくなったり老年にさしかかった
    祖父やお袋が嘆いていたのを引き継いだか。

    潮時(11.02.18)

    2度目でシーズン最高みたいな
    一昨日のピカピカのゲレンデに
    冬を置き忘れてきたみたいな雨。

    シルバー割引じゃない1日券が
    5枚になったら1日券と引換え
    後期高齢者はリフト料金フリー。

    やりたい時が始め時といったって
    楽しめるまでにそこそこ手間隙を
    かけなきゃならない身体的格差も。

    二回目の運転手に素性を聞かれ
    答えた出生地がたまたま同じで
    共鳴した引揚者の暮らしの場面。

    戦後が共有させた貧乏を潜って
    やがて「一億総中流」の潮目を
    読み違え島流しの行末を彷徨う。

    結婚前の手取りに戻ったみたいに
    昼は滑って夜にバドミントンなど
    当たりまえだった頃から遠ざかり。

    手ぶれ(11.02.15)

    心あるかぎり逃れられそうにない
    生まれながらの不安というものは
    へその緒を断ち切られたことから。

    不安定をひっくり返したみたいに
    回転が遅くなって横になった軸を
    逆さに立て直して廻り続ける独楽。

    かって大相撲や紅白に見入ったが
    今じゃスーパーボウルだけじゃなく
    グラミー授賞式などが二月の定番に

    90年前後のソ連・東欧情勢を新聞で
    追っかけたみたいに北アフリカほか
    中東情勢などをネットで読むこの頃。

    ホールドが安定するよう両手で支え
    遠くを写せる交換レンズで動画など
    撮ったらブレが多く見るに耐えない。

    スキーのストックで支えてもいいが
    首紐で吊るすようにしてへその前で
    身体を三脚のように構えて撮ったら。

    覗き窓(11.02.11)

    いつもとは違った重しの強い冬空の
    蓋が二月にはいってズレたみたいに
    溶けた雪の照り返しが眩しくなって。

    まだ薄暗い朝の仏間で鳴らしている
    お鈴の響き具合で身体がスッキリと
    目覚めたりする叩き加減が揃わない。

    電気釜の内釜を棒で突いたりして
    鳴りがとてもよかったら旨い飯が
    炊きあがるなんて思い過ごしかも。

    「面影ラッキーホール」をBGMに
    ミラーレスデジイチで写す呼吸を
    どう整えればいいのか迷いそうに。

    授業が一段落した教室の学生らや
    体育館の部活が乱れる中学生にも
    いま/ここを写し取っている眼が。

    社会的な圧迫感に小突き回され
    ふざけたりサボったり反発して
    生き続けるしかない細かな震え。

    うすぼんやり(11.02.08)

    床の間の掃除がてら1階と2階の
    高岡銅器をなんとなく置き換えて
    その重い冷たさに手指がびっくり。

    組み立て式の夫婦鷹は叔父さんの
    新築祝いだったが兜の置物がなぜ
    わが家にあるのかが定かじゃない。

    三反百姓の小倅が二十代の終わり
    オイルショックに揺れた前年だが
    田畑や屋敷を売り払って街場へと。

    結婚した勢いだけで土地を買って
    加速したみたいに家族が住む家の
    推敲を重ねた図面を棟梁に見せた。

    やや見通せそうに感じた世の中が
    所帯を持った頃から掴みどころを
    見失ったみたいで分らないままに。

    新築なった茶の間で七十歳以上の
    老人医療の無料化に縁がなかった
    祖父は大相撲中継に身を乗り出し。

    老齢と老化(11.02.04)

    凍りついた庭木の雪玉も溶け落ちて
    二十日ぶりに晴れ上がった界隈では
    久しぶりに雀が群れをなして電線に。

    スキー板のワックスがけなど準備を
    見届けたヨメが手配したタクシーの
    運転手が運賃を値引きしてくれたり。

    カービングスキーに乗り換えてから
    10シーズンあまりは家庭内の事情で
    年間滑走が途切れてしまったことも。

    なんとか滑りこなしているヨメだが
    ストレートの板で滑っていたころの
    滑り方に戻ったみたいで動画で確認。

    新しい技が不十分で身についおらず
    持続が途切れそうになったりすると
    古い技を持ち出して間に合わせたり。

    お互い歳を取ったようでやっている
    意図と結果がちぐはぐにかけ離れた
    形に収まりそうになってしまいがち。

    特効薬(11.02.01)

    先月末からの大雪が峠を越したが
    除雪作業の汗がきっかけみたいに
    ひいた風邪もくぐり抜けたようだ。

    寝込むほどではないが外出予定は
    すべてキャンセルした3泊4日で
    テニスやサッカーをわが家のTVで。

    アジア杯を勝ち取った日本代表の
    攻守自在な闘いぶりには風邪など
    気にならなくなってしまっていた。

    Jリーグを2か月ばかり視察して
    短期間で見事なチームを仕上げた
    ザッケローニ監督の手腕やいかに。

    くわえて彼をイタリアから呼んだ
    サッカー協会原博実技術委員長の
    組織的なしっかりした仕事ぶりが。

    どんな風邪の時も薬だけじゃなく
    医者にかかったこともないのだが
    野口晴哉『風邪の効用』が手元に。

    初滑り(11.01.28)

    背戸の屋根から滑り落ちた雪が
    雪囲いを埋めて小屋根に届いた
    頃合いを見計らって汗ばむ除雪。

    前後期3コマの教室を締め括る
    実習や演習課題や期末筆記など
    学生の手の跡に目を通す作業も。

    スポ少バドや部活の子どもらも
    それぞれ違う立ち位置から始め
    どのような出口へ抜け出せたか。

    老化と老齢の違いを数値化した
    データで説明できないようだが
    成績の評価も授業の過程の内に。

    毎回の拙い話に付き合ってくれる
    学生と教室で過ごした時間は同じ
    なのにそれぞれの学び直しが違う。

    そろそろ冬場の天気が三寒四温に
    落ち着いてくれないと初滑りなど
    やらないうちに1月が終わりそう。

    降ったり止んだり(11.01.25)

    お正月から雪が降り止まない地域は
    さぞ大変だろうが県内各地の積雪でも
    山沿いと東西の違いがはっきり色分け。

    なんだか冷蔵庫のなかで暮らすみたい
    世相の景色を拭き払ったみたいなのが
    アジア杯サッカー日本代表の戦いぶり。

    カタール戦の後半で退場者を出したが
    何度も見慣れたこれまでのもう駄目を
    ひっくり返した長谷部の中央突破パス。

    サイド攻撃一本やりで崩し損ねるうち
    試合が終わってしまうみたいな壁から
    抜け出せないスポ少バドの子どもらが。

    6年生最後の大会で競うべき相手に
    これまでとは違う気合いの入れ方で
    結果を気にせずゲームを楽しめたら。

    練習で着膨れしてしまうこともなく
    状況に応じて生きのびられるような
    技のポケットをどうやって育てるか。

    身の丈サービス(11.01.21)

    学生の就職難のご時世だから就活を
    優先させるべきなのかもしれないが
    最終授業日の期末筆記もままならぬ。

    ネットで注文していたお気に入りが
    待たされたあげくにダブって届くも
    返品し難い素晴らしさをおすそ分け。

    発売を待ってネットで注文したのに
    在庫なしで入荷未定の交換レンズを
    地元家電店が週明けに持ってきそう。

    郊外の専門店で買った眼鏡が壊れて
    持ち込んだ時など店主が代わっても
    運動や授業に間に合わせ無料修理を。

    特注品だったのに一両日で富山と
    東京を往復させ直したとのことで
    素早い対応に恐縮の行ったり来たり。

    いざという時の替え眼鏡を手元に
    備えようとその時は思っていたが
    いまだに遠近両用は一つ使い続け。

    雪道(11.01.18)

    今季2度目の寒波で歩道も埋まり
    しかたなく圧雪状態の車道を歩き
    子どもらのバド練習に付き合った。

    つるつるに凍った道を藁靴で滑り
    田畑を真っ白に硬く覆いつくした
    雪原の道なき道を辿ったことなど。

    38や56豪雪で汽車やバスが途絶え
    通勤途上から歩いて職場に向ったり
    家に帰り着いた歩きから随分遠くへ。

    車道の夜間除雪作業や通学や買物に
    不十分な除雪体制を整えて欲しいが
    どんな道でもしっかり歩ける整体を。

    はっはっとした息継ぎで喘いでいた
    お袋は浅い呼吸で思うように歩けず
    転げ落ちるように車椅子の人で果て。

    久しぶりに雪道を歩いて温もったが
    歩き方だけじゃなくスキーもバドも
    足腰の扱いや動きをどう維持するか。

    わからないとわかる(11.01.14)

    教室での質問に応じて帰る廊下で
    背後から“センセイ”と何度も呼ばれ
    ようやく自分のことかと振り返れば。

    繰り返し更新させられてきた時間講師が
    いまだに身につかないようにわかるとか
    わからないということがはっきりしない。

    やってきたこと以上にわかっていたり
    最後になってちっともわからないのも
    いずれの学生もわかりかたのちがいだ。

    はじまりは同じように見えていても
    いつの間にか座り続けた椅子の数ほど
    わかりかたの色合いに染めあげられ。

    何がわからないかということだけが
    わかっただけでもよしとすればいいし
    わかるほどにわからないことの深みが。

    答えようのない問いは出せないから
    わかってもわからなくても横っ飛び
    ぶつかったら上でも下でも逃げ道を。

    手狭な響き(11.01.11)

    例年の「暖冬予報」が途絶えたみたいに
    今のところ積雪は大したこともないけど
    半端じゃない寒さに多重暖房をやったり。

    さまざまな暖房器具を使い捨ててきたが
    祖父さん手作りの火鉢などもゴミに出し
    麻雀台に使ったりした火燵はまだ使える。

    団地の一軒家で新婚の借家住まいを始め
    ほどなく郊外に新築して呼び寄せ家族に
    合わせた間取りも二人の沈黙の空き部屋。

    テレビのお正月番組を見なかった分だけ
    積ん読の山が崩されたということもなく
    火燵で日頃読んでる著者のネット音源など。

    なじんだ家族や親戚の声が遠くなったり
    いつの間にやら途絶えてしまった知人の
    忘れてしまった声が歳月の消印を響かせ。

    家事も覚束なくなった頃の母の詩吟など
    身近で聞こえなかったようなことなども
    遠ざかった後になってようやく届いたり。

    二草粥(11.01.07)

    氷点下のゲレンデでスキーを愉しめば
    身体も伸びやかにあたたまってきそうな
    今朝からの冷え込みで晴れ上がった空。

    七草なんてどうでもいいとばかりに
    ヨメが拵えてくれた餅入りの粥だが
    梅干しを加えたら美味しい温もりに。

    年越しの寒気とはまた違って冷え込んだ
    正月の街中を通り抜けた昨日の教室には
    1年後期の授業を就活で休む学生がいたり。

    加齢も加わって昨夏の猛暑と同じで
    あまりの温度差に晒されたりすると
    身体に痛みが出たり胃腸も弱まったり。

    いずこを眺めても持ちこたえるだけか
    年々暮らし向きの気持ちなどもきつく
    とりあえず身体をゆったり息づかい。

    まだ凍てつく路肩を避けるよう出かけ
    昼をまたいだ冬休みバド部活も終わり
    中学にはいって始めた伸び盛りの姿が。

    空席(11.01.04)

    年末年始の降雪予報とはうらはら
    歳暮れに積もった庭雪のあちこち
    穴があいたみたいな雪融け跡が。

    初滑りにも出かけず正月飾りも
    喪中でひかえながらもこっそり
    お節料理を肴にヨメと飲み繋ぐ。

    座り心地がぴったりしなくなり
    取り替えた椅子もしっくりせず
    空席みたいになった姿勢を探す。

    前がかりになり過ぎたり背中が
    ふんぞり返り気味になっていた
    椅子のバランスを身体に合わせ。

    中空に吊られたみたいな呼吸で
    空席を見つけるような居心地で
    座ったり立ったりする振る舞い。

    しなやかな革袋に骨骼を浮かべ
    頭蓋と骨盤を透かし見るような
    曇り空から牡丹雪が舞いはじめ。


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