十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)


デルタ辺り(18.04.24)

緑の三角が
夜来の雨に
濡れて萌え

横たわった
Y字路まで
遡行すれば

甘い香りが
立ち上がり
滑り降りて

辿る鞍部を
二股に抜け
括れ撓んで

支流を束ね
扇状地深く
潜む三角州

吐けば吸う
息づく丘が
目と鼻の先

足元から(18.04.20)

酸性土には
蔓延る杉菜
裏庭を覆い

ふらつきを
踏み流して
気づく足裏

泳げなくて
後ろ向きに
水中を歩き

左手を差し
入れながら
混沌に塗れ

へその緒が
切れかかる
意識の端緒

無闇矢鱈に
絡みとられ
抜足に差足

殻破り(18.04.17)

幼い手には
持てあます
ラケットで

言葉の様に
裏表を使う
方便と真実

上下に向け
二枚舌にも
左右があり

動きはじめ
挨拶すれば
傾く天地へ

一番病には
犯されない
努力いらず

自問自答で
動き楽しむ
自然な体に

踊り場(18.04.13)

風邪をひき
体が緩んで
力が抜けて

新芽に兆す
樹木の剪定
年輪覗かせ

渡る板張り
木目に触る
逢裏感覚に

しゃがめば
下駄履きが
竹馬に代り

踏み上がる
作り付けの
木造階段へ

割り込めば
我ならざる
我の影踊る

瞬電(18.04.10)

薄暮中継の
試合画面が
消え落ちし

玄関口から
様子を伺う
辺りの停電

復旧しても
二階の窓で
雷雲確かめ

灯どころか
見上げても
星も見えず

ふらついた
命の輝きを
遊泳させて

銀河宇宙と
交信させる
霊性途絶え

段差(18.04.06)

これまでの
花付きさえ
厳しいのか

切り詰めて
老い咲かせ
庭師の剪定

季節外れに
狂う寒暖の
日々を縫い

蛙が鳴いて
花も開けば
虫も飛んで

去年までの
当たり前が
きつくなり

三和土から
上がり框へ
台を合わせ

スキップ(18.04.03)

残る紅梅の
小枝に小鳥
河岸へ花見

咲き揃った
樹影数える
遊覧船の手

母の胸から
見上げれば
赤子の目に

匂い立って
啄む花蜜の
花びら散り

水面に流れ
花筏擬きに
広がる曇天

踵で立てば
尾底骨から
喉仏へ抜け

数値(18.03.30)

貧乏暇なし
過ぎ去りて
持て余した

万歩計から
抜け出せど
動き回れず

閉じ込める
血圧計から
計り知れず

一触即発の
サービスに
追い回され

逃げ込めば
どこまでも
引き戻され

引きこもる
我が身から
食み出して

かなづち(18.03.27)

立ち騒いで
浮き泳げば
波打つ体内

五体に響く
母の鼓動を
吸い込めば

横断歩道に
転がり出た
出生走馬灯

無重力から
いまここに
吐き出され

極められた
無造作から
解き放たれ

手足絡まり
底吐く動き
もたついて

一念(18.03.23)

寒の戻りの
上り下りを
交差させて

白梅を追い
かけるでも
ない紅梅に

鳥の影一つ
寄り添わず
雨上がれば

お辞儀する
二の腕深く
揺れ芽吹き

樹間を這う
虫を追って
躊躇う樹液

立ち昇れば
声を限りの
導管の節々

手合わせ(18.03.20)

着心地まで
立ち止まる
鴨居に着物

ゴム短靴も
知らず遊ぶ
筒袖に下駄

藁草履から
はみだした
踵で踏んで

鶺鴒の尾に
狙いをつけ
辿った畦道

薬缶を傾け
注ぐ番茶に
摘むお握り

努力もなく
箸で捌ける
夕暮れ御膳

お邪魔虫(18.03.16)

糸に吊るし
風まかせに
揺らしたり

抜けた歯を
仕舞い込む
幼年の手先

擦り傷から
野山の遊び
めくり上げ

出会い頭の
蚯蚓と蛙は
塩でまぶし

犬の交尾に
水をかけて
はしゃいで

鼠を狙った
青大将には
目くらまし

年季(18.03.13)

雪吊りから
解かれても
縮んだまま

お腹緩めば
背筋伸ばす
接ぎ木の跡

好きになり
伸び広がる
上手の枝に

咲き急げば
無駄骨まで
手折られて

手放せない
幹を流れる
無駄が楽し

孕まれても
気づかない
どんな種に

人形(18.03.09)

鼻風邪で磨く
皮膚と骨の間
筋肉の季節感

伸筋と屈筋が
時を彷徨えば
手持ち無沙汰

雪解け河原に
突っ立ていた
名無しの木屑

絡みついては
削ぎ落とされ
順次生の細波

持ち帰っても
素性分からず
磨きあげれば

ぼんやりだが
透けて見える
人型の動きが

筒抜け(18.03.06)

雪解け水が
潜り抜ける
斜面の響き

埋もれても
溜め込まず
流れ去れば

立ち所まで
滑りながら
整う骨格に

纏わりつく
内臓記憶が
競りあがり

借り靴では
馴染めない
履き具合も

吹き消して
老いと衰え
乗せて春風

頸環(18.03.02)

母体を離れ
天と地まで
管を響かせ

流し込んで
溜め込まず
筒のように

喉元過ぎて
しのばせる
爪先までも

古式泳法で
閘門を経て
古希の躰に

くいちがう
間合いから
立ち位置が

膝が抜けて
腰が浮けば
首筋に目処

冬越し(18.02.27)

空を掴んで
根を張った
枝振り老木

冷たく触る
陽射しから
逃れる様に

ポキポキと
散り落ちて
残雪の寝床

取り替えた
祖父の鉢を
仕舞い忘れ

幹を握って
揺さぶれば
堆肥型抜き

突き崩せば
古希の形で
しゃがむ股

掛け物(18.02.23)

床の間には
掛け忘れた
青春の名残

ご当地人の
乗り降りに
混じりこむ

鈍行列車を
乗り継いで
移ろう季節

海峡大橋に
跨ぎ越され
連絡船の錨

雑巾掛けと
草むしりを
繋ぎ合わせ

肩甲骨まで
股関節から
這いのぼる

力み(18.02.20)

抜き膝
抜き腰
羊水が

抜けて
恐れて
重圧に

這って
舐めて
伝って

掴んで
摘んで
叩けば

棒から
円まで
描いて

解らず
難しく
破むく

不首尾(18.02.16)

窓際までも
謎のように
降り積もり

日常慣らし
知らぬ間に
刷り込まれ

処女雪など
戯れならぬ
非常識にも

惑わされて
除雪絡みの
身体捌きを

崩されても
纏った紐に
質されつつ

考古模様を
染め直せば
稽古着にも

雪灯篭(18.02.13)

合わせ手の
引き具合を
聞き分けて

川釣りから
抜け出した
兎道の仕掛

飼い犬嗅ぐ
獣跡を辿る
気配の斜面

借り受けた
空気銃でも
届かない的

手製の弓矢
投げ出せば
山菜に届き

遠い里山に
遡行するか
川面の雪が

稽古日和(18.02.09)

浅い新雪を
左右に滑る
分け目まで

気分がいい
右回りから
淀む左回り

スキップで
抜けきった
凍結迂回路

真っ直ぐに
ありのまま
普通なんて

骨格の数で
立居振舞う
分からなさ

すんなりと
動画静止画
切り分けて

成り切り(18.02.06)

干し柿から
干し芋へと
行き来する

幼児の手が
舐め触った
動きの余剰

腸骨を櫂に
仙骨を舵に
腰椎を翼に

母の骨盤を
手足で触り
音で確かめ

参道辿って
二拍一礼で
膝を合わせ

匍匐をやめ
しゃがんで
掴まり立ち

身解き(18.02.02)

結び目から
逃げ回って
絡み合った

腰紐が包み
込む感触に
骨盤の輪郭

仏壇に手を
合わせ終え
箸を動かし

春夏秋冬の
姿勢を質す
立居振舞い

身のほどに
祖父の口癖
公界知らず

骨格辿れば
幼児期抜け
産道の彼方

老体(18.01.30)

寒い晩には
素肌寝して
寝違えたら

産熱効果も
取り違える
和洋肌触り

股抜けする
老いと衰え
噛み分けて

若齢化から
老齢化する
超スポーツ

海豚に跨り
抗ってみる
自然体の腰

乗り出した
胸郭の渚に
漲る境界力

寒中散策(18.01.26)

悴む手にも
融雪水なら
温かく触り

路線バスが
踏み固めた
圧雪道路を

歩けるのか
動けるのか
踏み迷って

努力の形に
揺れる人影
凍った舗道

母の手から
離れる子が
嬌声響かせ

書棚の間を
動き回れば
興味尽きず

呪い顔(18.01.23)

火の力から
水の力まで
抱き合わせ

雪庇踏めば
夏の女から
男の伏流水

すけこまし
マジカルに
治山治水を

豪族の娘が
高貴の男に
かけた謎を

庭木の梢に
届くように
引っ張って

眼で覚えて
耳で忘れた
呪文の素顔

分け目(18.01.19)

背中越しに
眺め下ろす
手指の記憶

駅から家へ
探し当てた
歩数知らず

西の河原に
佇む影から
東の尾根へ

掛け渡され
解け流れた
喘ぎ声から

拾った猫に
家出を託し
風呂に入れ

膝から肘を
絡めた擦傷
舐め残して

逆さ水母(18.01.16)

見上げれば
腐海に傾く
ゲレンデに

破れ傘さし
日々積もる
人工雪舐め

滑り返せば
無駄な努力
踏み抜いて

声の鋳型を
溶かし込む
脈打つ鼓動

生き死にも
力み過ぎて
はずれくじ

おまけなら
人工生命の
到達点まで

剥離(18.01.12)

デパ地下の
食材の多さ
戸惑う身体

丁稚奉公で
習い覚えた
祖父の料理

米俵を軽々
屋根雪下す
身体捌きも

見失ったら
きれぎれの
食材宅配便

レシピ本も
渋滞させる
今日の積雪

行儀作法が
輝く星座の
消化宇宙へ

身動き(18.01.09)

畳部屋から
庭先までの
素振り響き

めいっぱい
さびしさが
舞い散って

声の歩幅を
掘り当てて
削り起こし

握りしめる
手解き難い
棒切れの先

打ち交わす
性と暴力の
間合い歪み

撓み尽くす
磨崖半ばに
肩幅を保ち

隠れん坊(18.01.05)

神輿担ぎの
空の青さに
捕らえられ

散歩疲れが
覆い尽くす
倦怠の窓辺

漏れ聞こえ
会話交わす
屈筋と伸筋

絡み合った
杭と坑から
言葉の火花

身構え炙り
出す日々の
夜の虹から

目覚めれば
心踊りだす
別人もどき

軒遊び(18.01.02)

一年ぶりに
袖を通した
身体を晒す

鴨居を伝い
綻ぶ家訓を
纏う衣紋掛

振り下ろす
薪割り斧に
稜線が谺し

雑巾掛した
床を踏んで
打ち交わす

唸る凧糸が
引き寄せる
釣糸の体感

家禽を狙う
鼬の気配に
体幹を弄る


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