十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)


空洞(18.12.18)

分厚い本で
ヒトの起源
をなぞった

指先が描く
人という字
啄むように

翔び集まり
電線撓ませ
姦しい椋鳥

人が読める
自分だけの
明確な言葉

絡まり取る
紐のような
身体の隙間

気が乱れて
纏っている
空気の調べ

柔弱(18.12.14)

飛行船から
抜け出した
胴体と手足

背景を撮す
ドローンの
孤独な動き

静止画など
動画からの
撮りこぼし

一つ玉から
手指で摘む
手先の挙動

自撮りする
残像めいた
五体の虚像

数限りない
負い目から
気づく隙間

風雪除け(18.12.11)

波板数えて
軒下の柱に
嵌め込めば

体の節々に
腰痛散って
背伸びの腹

置き石から
割れ瓦まで
持ち出して

場当たりに
地面の凹凸
埋め合わせ

切れ切れに
撚り合せる
針金の劣化

折々過ぎし
日暮し緩く
綴じ合わせ

仕掛け(18.12.07))

モンク伝が
響き渡るか
木とガラス

吹き抜けて
キラリ輝く
飛行船から

洩れてくる
ジブリ展の
メッセージ

新しく開く
部屋の扉の
奥の手触り

覗き込めば
馬鹿を生き
るからくり

不可思議な
呼吸の体が
透けて見え

手離し(18.12.04)

立ち騒げば
飛ぶ鳥など
落とす夢が

寝そべった
習慣に躓く
稜線の輪郭

跨ぎ超せば
内観の如き
形式を奏で

有為自然に
影を落とす
重心の飛翔

吊り上がる
高さを抜け
気付く盲点

俯瞰すれば
鳥肌立って
気化する窓

腹積り(18.11.28)

引き出しを
開けた間際
やもり逃げ

ひもじさを
閉じ込めて
伸びる腹が

餌を求めて
四足歩行で
逃げ回るか

屈み込んで
物陰伝いに
聞き耳立て

目線届かせ
二足歩行で
階段下りて

隙間を辿る
捕物気分が
腹這うまで

一方通行(18.11.27)

偶々ながら
定まったら
予定になり

母の庇護を
掻き分ける
手触りから

出生の轍が
未詳の体を
乗り継いで

見え隠れの
気付きやら
見落としで

誤り偏った
心身操作が
手枷足枷に

突き崩せぬ
身体坑道を
出し抜いて

とっとき(18.11.23)

Y字枝から
切り出した
枝振りの間

引き手なら
人差し指と
中指合わせ

不断の的を
質す上体が
張り巡れば

中指と離し
くっつける
薬指と小指

まとまれば
下半身から
すり抜けて

込み上げる
腰のあたり
間なしの間

居住まい(18.11.20)

字数で数え
看板の言葉
通りすがり

銀杏並木の
左右の濃淡
立ち止まり

振り返って
数えきれぬ
軒先の紅葉

落ち葉踏む
無数の影が
居合わせて

山茶花から
数珠繋ぎに
泡立草まで

揺れる薄が
山肌を掃き
清めて秋茜

しゃがみ立ち(18.11.16)

歩くまえに
かたことを
喋りだして

何の努力も
した覚えが
ないのだが

四足歩行を
抜き去った
コンセント

掴まり立つ
家具の角を
切り落とし

耳目の先で
定まらない
軒下の面影

見るまえに
触っている
しっかり感

取り零し(18.11.13)

さようなら
海の向こう
生まれ故郷

携帯を新調
しても探せ
ない岸辺で

笹舟静かに
老いた影を
乗せ放てば

底知れない
居着き忘れ
寝転がって

肘立て伏せ
揺れる船底
近く遠ざけ

木々を数え
木片を並べ
こんにちは

離脱(18.11.09)

電線揺らし
群がる小鳥
剥がれ翔び

ふと屈めば
気落ちして
蹲るばかり

膕から肘に
通り抜ける
事故の欠片

歪みの淵に
放り出され
密室に晒す

傍観視線の
縁に添って
潜り抜ける

気の触りが
砕け散れば
尺取り虫に

立ち回り(18.11.06)

名も知らぬ
鳥を濡らす
秋雨前線に

後先知らず
取り残され
技を見失い

暮らし培う
身体作法が
途切れても

殴り倒した
弟の兄から
やり返され

右へ左へと
逃げ回れず
引き返せず

震えあがり
重心が傾き
渦巻く独楽

蝕視(18.11.02)

開いた本の
頁から逸れ
た視線の先

積み上がる
ビル建設の
昇降機の中

陽だまりの
庭を掃けば
飛び出す影

箱の動きと
尻尾を繋ぐ
紐が輝いて

揺れる今が
塒を巻いて
透けて見え

蜥蜴の動き
箒の捌きで
掃き清めて

系統図(18.10.30)

どこか違う
今朝の雨音
肌引き締め

棒切れから
木刀の反り
振り分けて

ズレと湾曲
移ろう日に
肉体あずけ

履き違える
歩き心地が
手に届けば

未踏の影を
踏み分ける
空気の流れ

密かに響く
渦を掴んで
身体の奥へ

浮き身(18.10.26)

満月見上げ
眺め数えて
字余りの影

忍び寄った
神無月から
見え隠れて

雲一つない
裸身が谺す
紅葉の谷筋

病葉浮かべ
静まり返る
カルデラ湖

行き止まる
老いの舟に
乗り合わせ

新月までに
反らす化身
抜き差せば

捨て身(18.10.23)

植え込みに
紛れ込めば
蜻蛉の目玉

陽だまりに
半身を拾う
温もりの影

山肌遠くに
風を聞けば
紅葉の囁き

動けないも
動けるのも
葉脈の裏表

学び過ぎて
見失いそう
変身と変人

井桁崩しで
入れ替わる
身の程の幅

逍遥(18.10.19)

古木を撫で
庭の年輪に
老いを聴き

噛みしめる
歯の衰えに
骨格を整え

腹八分目で
保つ筋肉の
運動と滋養

皮膚を叩き
眺め任せて
暴れ転べば

生きるから
死ぬまでの
内臓の波間

半身に浮き
沈む日々の
寝返り愉し

浮遊窓(18.10.16)

高く浮かぶ
雲の隙間に
楔を打って

定かならぬ
野鳥の影が
擦過すれば

日々の瞬き
手癖足癖で
狭まる思考

茶碗の縁や
グラス底の
汚れ落とし

窓際に寄り
覗き見する
蜻蛉の複眼

立ち消える
視野の枠を
広げ羽搏く

巫山戯て(18.10.12)

更新できぬ
PC使い覚え
指先辿れば

組んず解れ
遊び呆けた
小学裁縫室

中学課外で
薪割り肥桶
担いで疲れ

平安鎌倉へ
修学旅行で
逃げ出すか

捨てきれぬ
親子関係の
端っこまで

撫で摩って
摘み投げて
驚くばかり

撫で解き(18.10.09)

秋風そよぎ
枯葉散って
振り解かれ

幹も露わな
倒木の影が
伸び広がる

公園歩めば
群がる鳩が
路を開けて

鼻先垂れる
重力の杖が
水面を撫で

餌を求める
錦鯉の口が
群がり寄せ

下駄代わり
杖を履いて
石山を歩き

自在に(18.10.05)

稜線を揺り
動かす紅葉
山肌を降り

雑草に潜む
カマキリに
手足を縮め

前後左右に
強ばるほど
泣き叫んで

この前から
繰り返せば
この後まで

散歩道遠く
左右の膝と
膕が後押し

天使の輪が
スキップで
転げそうに

ざわめき(18.10.02)

庭の一角で
樹木を揺り
動かす野鳥

デジカメで
追えば葉陰
素早く隠れ

全身を運ぶ
流れは凡て
重力の元に

僅かな間を
分身となる
土台が生き

行き来する
心が彷徨う
聖道と浄土

果てしない
距離を消す
隔たり僅か

裸足(18.09.28)

自転車降り
歩く地べた
躓く夏疲れ

秋の重力に
傾く日差し
弧を描いて

寝込むほど
腰の奥まで
書き込まれ

もがき歩く
日々の岸辺
生かす重し

傾く納屋の
漬物樽から
転がり落ち

叱りながら
爪先立った
祖父の罵声

起動(18.09.25)

枝葉まみれ
見えてない
幹の不安に

抜け出して
立ち尽くす
転ぶ体付き

普段着から
よそゆきに
着替えたら

知と性との
縺れを解く
動きの体感

付きまとう
我ならざる
影の体位で

文字を描く
尻の骨から
首筋の骨へ

縮まずに(18.09.21)

無風なのに
影が揺れる
秋の日差し

成り行きや
計画からは
見通せない

向きを変え
群れて動く
小鳥や小魚

生きる術を
見失ってる
都市空間に

問いかける
謎の響きが
モンクから

ユーモアや
笑いならば
努力なしに

敬老(18.09.18)

刮げた尻に
転び痣だけ
数えながら

入浴させる
母と転んで
怪我を避け

六畳の畳で
転ぶ稽古が
介護の節目

浅い呼吸で
掴まり立ち
歩いた段差

杖を放して
へたり込み
軋む車椅子

空をも掴む
会話をした
床に凹みが

指先へ(18.09.14)

垂れる稲の
穂先が描く
右肩下がり

左から右へ
上から下へ
重さで描く

頭と身体に
二股かけて
揺らぐ常識

ストレスの
偏在を凌ぐ
喜びの体感

伸筋と屈筋
入れ替わる
字体の感知

捨て去って
体内自然の
声を聞けば

釣り合い(18.09.11)

私的都合に
満たされた
泡立ちから

有り合わせ
ぶら下がり
ゆらり揺れ

糸を引いた
蓑虫が喰い
荒らす動き

身を退いて
見届ければ
飛び出せる

窓口ならば
どこまでも
像の無い間

抜き忘れた
露草に宿り
天地映す露

抜け目(18.09.07)

路傍で鳴く
子猫の肌に
秋風の吹き

持たざるか
持てざるか
平等の裏表

蝶の路から
一刀両断に
零れ落ちて

皮膚に包み
隠され宿る
内臓の動き

家出しても
帰ってきた
飼猫の骨格

見据えても
届かぬ奥に
生きる初歩

土台(18.09.04)

枝葉ばかり
揺れ動いて
見えぬ幹に

しがみつき
動かぬ抜殻
老の根っ子

気も効かぬ
間柄ならば
骨身に学ぶ

肉体脱いで
転ぶ空気が
手指の角度

避けられぬ
生老病死を
占う予報円

進路予測に
見えぬ余波
撫で合わせ

不明体(18.08.31)

余念のない
昆虫少年や
植物少年時

手足の数に
羽の枚数を
重ね合わせ

絵合せする
模様を探す
不明の図鑑

何を何処で
感じるのか
捲れない体

指先で試す
飼育箱から
標本額まで

挟み置いた
新聞紙から
葉脈が透け

手返し(18.08.28)

蝉時雨など
掻き消して
弾ける川面

葦の茂みを
駆け上った
脛の擦り傷

撓み具合が
日々違った
手製の釣竿

浮き沈みを
嗅ぎ分ける
にぎり具合

老婆の手が
餅を拵える
臼の底から

握って開く
指の先まで
見透かされ

老変人(18.08.24)

バリカンで
庭の夏草を
刈り取れば

電動鎌鼬が
塒を巻いて
掘り起こす

切れ切れの
妖怪話から
人攫いまで

生きた蝮を
身包み剥ぐ
くねった指

腑分けする
手付きから
はみだせば

仕分けして
繋ぎ止める
未知の図鑑

影編集(18.08.21)

心気一転も
地べたから
転がり落ち

背に腹など
変えられる
かどうかも

尻から首へ
訊いてみる
背骨の動き

指を合わせ
抜けた腰に
まとう内臓

胴体着脱の
接点を質す
部位の角度

鍛えられぬ
身体が働く
親子通路で

果し状(18.08.17)

掃き寄せた
落ち葉から
揺れ覗いた

若木の葉を
撫でて鶯の
さえずりが

折られても
立ちあがる
古い照準器

兎追いかけ
つまづいた
四六のがま

木通の蔓に
からまった
羚羊の瞳に

こめられた
一つだけの
怒を鎮めて

異聞(18.08.14)

夏山と海を
描き分ける
夏の字画に

想いを込め
舞う身体を
上下に分け

浜辺の恋が
山小屋まで
運ばれたら

上の空から
降りそそぐ
夢中の音楽

聴き分けて
モノとコト
成りすまし

座持ち良い
臼の角度で
擦り合わせ

異相(18.08.10)

好きなもの
嫌いなもの
どっちでも

標本にして
仕分けたら
眺めて捨て

地面を掴み
引き寄せて
遠ざける朝

大地を背に
担ぎ上げた
身軽い呼吸

前へ後ろへ
膝行すれば
解ける生身

左右へ別れ
半身と半身
脇目へ潜る

老境(18.08.07)

飛行機雲が
夕を横切り
遠ざかれば

消え残って
体を撫でる
夏の悲しみ

閉ざされた
夏障子越し
美しく過ぎ

着物を縫う
亡き祖母の
淡い居住い

格子戸抜け
存の角度が
畳み込まれ

へその緒に
消えない響
織り込まれ

線引き(18.08.03)

水撒く残暑
庭木震わせ
蜩の鳴いて

夏蝉の姿も
温帯性から
亜熱帯性に

寝そべった
褐色の肌に
抜け殻の汗

体躯を運ぶ
手足の向き
不向きの影

面と向かう
衝突を避け
脇に入れば

浜辺の流木
貝掘り当て
寄せて返す

水中作法(18.07.31)

蚊がいない
庭の水撒き
夕立代わり

飛び跳ねる
虫も少ない
背戸の草刈

蛭に吸われ
むず痒い脛
夏の川遊び

引き上げた
ブッタイの
小魚除けば

タガメより
水カマキリ
タイコウチ

呼吸管探し
老いた金槌
放つ吹き矢

為す術(18.07.27)

光る蜘蛛の
巣に絡まる
揚羽蝶の羽

生身の遥か
彼方に揺れ
逃げ水の音

擦れ違った
出会いから
生じる螺旋

浅瀬を覆う
蜉蝣の動き
敵わなくて

叶うほどに
深みに嵌る
半身の流域

試し試され
深まり弾け
角度の掌が

変態(18.07.24)

暑さ凌ぎの
庭の昆虫を
見忘れても

捲り上がる
昆虫少年の
田舎暮らし

原っぱまで
飛び立った
ヤゴの背で

泳ぎ知らず
乾きあがる
水底の匍匐

選び取った
動き難さが
閉じ込める

図鑑を開き
一息つけば
手指の窮屈

飛び石(18.07.20)

切れ切れの
木陰伝いに
朝方の散歩

氷が組んだ
スクラムに
注ぐ命の水

戦後詩人の
詩の一行が
彩る熱帯夜

竦む身体に
鳥肌立った
祖母の語り

蚊帳の中に
置き忘れた
幼年の体感

聴き見つけ
出会う味で
鍛える嗅覚

発声(18.07.17)

夏の田舎は
甚平の孫に
作務衣の爺

不真面目を
着込んだら
脱げるまで

内臓感覚を
頼りに蛙と
昆虫の相撲

老いてから
体内出会う
弥次郎兵衛

日々の勤め
手指足指が
口より達者

内臓感覚が
口答えして
飛び跳ねる

末端消夏(18.07.13)

外骨格から
内骨格まで
幼年を巡り

差し入れた
手指の先で
弾く図鑑に

閉じ込めた
原っぱから
昆虫が逃げ

移り住んだ
庭先に張る
補虫網破れ

葉を見分け
食性が違う
毛虫と成虫

バス待ちの
暑さ凌ぎに
足指蠢かせ

素性(18.07.10)

からだまで
届かぬ手先
字体の如く

枝葉が隠す
幹の手触り
覚えた字画

生きそびれ
引き返せず
名残の体型

女手に絡む
出生届けの
余白の沈黙

絡み合った
綾取りから
抜けぬ躰で

衣食住貫き
見え隠れの
人体出入り

DJ(18.07.06)

組み合った
コトを拾う
入れモノを

平面図から
組み立てる
場所を探し

聴き漁った
書きかけの
譜面や図面

天地を繋ぐ
通し柱から
響く微振動

日々を立ち
あげるだけ
繰り返せば

日毎夜毎に
ままならぬ
再現に再演

微動一体(18.07.03)

庭木が揺れ
蝶も揺れる
覗き窓越し

ためらいに
ズレを浮べ
しゃがんで

ペダル踏み
街中抜けて
広場を探し

路面電車と
路線バスを
繋ぐ遊園地

見える体に
出会い頭の
見えない体

気持ちこめ
ありのまま
従う身体に


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