十字路で立ち話(あるいはワッツニュー)


起動(18.09.25)

枝葉まみれ
見えてない
幹の不安に

抜け出して
立ち尽くす
転ぶ体付き

普段着から
よそゆきに
着替えたら

知と性との
縺れを解く
動きの体感

付きまとう
我ならざる
影の体位で

文字を描く
尻の骨から
首筋の骨へ

縮まずに(18.09.21)

無風なのに
影が揺れる
秋の日差し

成り行きや
計画からは
見通せない

向きを変え
群れて動く
小鳥や小魚

生きる術を
見失ってる
都市空間に

問いかける
謎の響きが
モンクから

ユーモアや
笑いならば
努力なしに

敬老(18.09.18)

刮げた尻に
転び痣だけ
数えながら

入浴させる
母と転んで
怪我を避け

六畳の畳で
転ぶ稽古が
介護の節目

浅い呼吸で
掴まり立ち
歩いた段差

杖を放して
へたり込み
軋む車椅子

空をも掴む
会話をした
床に凹みが

指先へ(18.09.14)

垂れる稲の
穂先が描く
右肩下がり

左から右へ
上から下へ
重さで描く

頭と身体に
二股かけて
揺らぐ常識

ストレスの
偏在を凌ぐ
喜びの体感

伸筋と屈筋
入れ替わる
字体の感知

捨て去って
体内自然の
声を聞けば

釣り合い(18.09.11)

私的都合に
満たされた
泡立ちから

有り合わせ
ぶら下がり
ゆらり揺れ

糸を引いた
蓑虫が喰い
荒らす動き

身を退いて
見届ければ
飛び出せる

窓口ならば
どこまでも
像の無い間

抜き忘れた
露草に宿り
天地映す露

抜け目(18.09.07)

路傍で鳴く
子猫の肌に
秋風の吹き

持たざるか
持てざるか
平等の裏表

蝶の路から
一刀両断に
零れ落ちて

皮膚に包み
隠され宿る
内臓の動き

家出しても
帰ってきた
飼猫の骨格

見据えても
届かぬ奥に
生きる初歩

土台(18.09.04)

枝葉ばかり
揺れ動いて
見えぬ幹に

しがみつき
動かぬ抜殻
老の根っ子

気も効かぬ
間柄ならば
骨身に学ぶ

肉体脱いで
転ぶ空気が
手指の角度

避けられぬ
生老病死を
占う予報円

進路予測に
見えぬ余波
撫で合わせ

不明体(18.08.31)

余念のない
昆虫少年や
植物少年時

手足の数に
羽の枚数を
重ね合わせ

絵合せする
模様を探す
不明の図鑑

何を何処で
感じるのか
捲れない体

指先で試す
飼育箱から
標本額まで

挟み置いた
新聞紙から
葉脈が透け

手返し(18.08.28)

蝉時雨など
掻き消して
弾ける川面

葦の茂みを
駆け上った
脛の擦り傷

撓み具合が
日々違った
手製の釣竿

浮き沈みを
嗅ぎ分ける
にぎり具合

老婆の手が
餅を拵える
臼の底から

握って開く
指の先まで
見透かされ

老変人(18.08.24)

バリカンで
庭の夏草を
刈り取れば

電動鎌鼬が
塒を巻いて
掘り起こす

切れ切れの
妖怪話から
人攫いまで

生きた蝮を
身包み剥ぐ
くねった指

腑分けする
手付きから
はみだせば

仕分けして
繋ぎ止める
未知の図鑑

影編集(18.08.21)

心気一転も
地べたから
転がり落ち

背に腹など
変えられる
かどうかも

尻から首へ
訊いてみる
背骨の動き

指を合わせ
抜けた腰に
まとう内臓

胴体着脱の
接点を質す
部位の角度

鍛えられぬ
身体が働く
親子通路で

果し状(18.08.17)

掃き寄せた
落ち葉から
揺れ覗いた

若木の葉を
撫でて鶯の
さえずりが

折られても
立ちあがる
古い照準器

兎追いかけ
つまづいた
四六のがま

木通の蔓に
からまった
羚羊の瞳に

こめられた
一つだけの
怒を鎮めて

異聞(18.08.14)

夏山と海を
描き分ける
夏の字画に

想いを込め
舞う身体を
上下に分け

浜辺の恋が
山小屋まで
運ばれたら

上の空から
降りそそぐ
夢中の音楽

聴き分けて
モノとコト
成りすまし

座持ち良い
臼の角度で
擦り合わせ

異相(18.08.10)

好きなもの
嫌いなもの
どっちでも

標本にして
仕分けたら
眺めて捨て

地面を掴み
引き寄せて
遠ざける朝

大地を背に
担ぎ上げた
身軽い呼吸

前へ後ろへ
膝行すれば
解ける生身

左右へ別れ
半身と半身
脇目へ潜る

老境(18.08.07)

飛行機雲が
夕を横切り
遠ざかれば

消え残って
体を撫でる
夏の悲しみ

閉ざされた
夏障子越し
美しく過ぎ

着物を縫う
亡き祖母の
淡い居住い

格子戸抜け
存の角度が
畳み込まれ

へその緒に
消えない響
織り込まれ

線引き(18.08.03)

水撒く残暑
庭木震わせ
蜩の鳴いて

夏蝉の姿も
温帯性から
亜熱帯性に

寝そべった
褐色の肌に
抜け殻の汗

体躯を運ぶ
手足の向き
不向きの影

面と向かう
衝突を避け
脇に入れば

浜辺の流木
貝掘り当て
寄せて返す

水中作法(18.07.31)

蚊がいない
庭の水撒き
夕立代わり

飛び跳ねる
虫も少ない
背戸の草刈

蛭に吸われ
むず痒い脛
夏の川遊び

引き上げた
ブッタイの
小魚除けば

タガメより
水カマキリ
タイコウチ

呼吸管探し
老いた金槌
放つ吹き矢

為す術(18.07.27)

光る蜘蛛の
巣に絡まる
揚羽蝶の羽

生身の遥か
彼方に揺れ
逃げ水の音

擦れ違った
出会いから
生じる螺旋

浅瀬を覆う
蜉蝣の動き
敵わなくて

叶うほどに
深みに嵌る
半身の流域

試し試され
深まり弾け
角度の掌が

変態(18.07.24)

暑さ凌ぎの
庭の昆虫を
見忘れても

捲り上がる
昆虫少年の
田舎暮らし

原っぱまで
飛び立った
ヤゴの背で

泳ぎ知らず
乾きあがる
水底の匍匐

選び取った
動き難さが
閉じ込める

図鑑を開き
一息つけば
手指の窮屈

飛び石(18.07.20)

切れ切れの
木陰伝いに
朝方の散歩

氷が組んだ
スクラムに
注ぐ命の水

戦後詩人の
詩の一行が
彩る熱帯夜

竦む身体に
鳥肌立った
祖母の語り

蚊帳の中に
置き忘れた
幼年の体感

聴き見つけ
出会う味で
鍛える嗅覚

発声(18.07.17)

夏の田舎は
甚平の孫に
作務衣の爺

不真面目を
着込んだら
脱げるまで

内臓感覚を
頼りに蛙と
昆虫の相撲

老いてから
体内出会う
弥次郎兵衛

日々の勤め
手指足指が
口より達者

内臓感覚が
口答えして
飛び跳ねる

末端消夏(18.07.13)

外骨格から
内骨格まで
幼年を巡り

差し入れた
手指の先で
弾く図鑑に

閉じ込めた
原っぱから
昆虫が逃げ

移り住んだ
庭先に張る
補虫網破れ

葉を見分け
食性が違う
毛虫と成虫

バス待ちの
暑さ凌ぎに
足指蠢かせ

素性(18.07.10)

からだまで
届かぬ手先
字体の如く

枝葉が隠す
幹の手触り
覚えた字画

生きそびれ
引き返せず
名残の体型

女手に絡む
出生届けの
余白の沈黙

絡み合った
綾取りから
抜けぬ躰で

衣食住貫き
見え隠れの
人体出入り

DJ(18.07.06)

組み合った
コトを拾う
入れモノを

平面図から
組み立てる
場所を探し

聴き漁った
書きかけの
譜面や図面

天地を繋ぐ
通し柱から
響く微振動

日々を立ち
あげるだけ
繰り返せば

日毎夜毎に
ままならぬ
再現に再演

微動一体(18.07.03)

庭木が揺れ
蝶も揺れる
覗き窓越し

ためらいに
ズレを浮べ
しゃがんで

ペダル踏み
街中抜けて
広場を探し

路面電車と
路線バスを
繋ぐ遊園地

見える体に
出会い頭の
見えない体

気持ちこめ
ありのまま
従う身体に


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