トルコにて

形の残らないもの

 

今回のトルコ旅行はスムーズに始まった。前泊無しの出発だったので、いつも飛行機に乗る時、障害者は最初に乗り、降りる時は最後になる。それでは成田での集合時間に遅れるので地元空港の搭乗カウンターに着いた時に羽田では早く降ろして欲しいのだと申し出た。窓口の係員はキーを打ちながらなるべくご要望に答えますとのことだった。そこで羽田到着と同時に客室乗務員が迎えに来てくれ飛行機のドアが開くのを待って機外に出た。そこには空港職員が出迎えていて、彼の誘導で素早く成田行きのリムジンバスに乗れた。お蔭で遅刻は最小限の時間ですんだ。

成田での搭乗ゲートへは初めて空港内のモノレールで移動した。これはトルコ航空と日航の共同運営便とのことで機内のアナウンスは、最初トルコ語、英語、日本語だった。座席に収まったが通路を往復するスチュワードの足音が私のシートにズシンズシンと伝わって来るのでこの飛行機で長時間飛べるのだろうかといささか心配だった。機内で配られる手拭きは、強烈な匂いのする代物でいつまでもその匂いが手に残り食事には不向きなように思えたのだがトルコ国内を旅する間その匂いの強いお手拭はついて回った。

私はどちらかと言うと遺跡は苦手なのである。でも今度のトルコの遺跡を回って認識を新たにした。半世紀近い昔、世界史で教わった言葉がかすかによみがえり何千年もの前の物が現存するこの国の魅力にとらわれた。

食事の際の飲み物は、出来るだけその土地の物を試すようにしているが、今回はアイリンと言う山羊のミルクで作った、飲むヨーグルトふうの物、それと干し葡萄を絞って作ってあると言うお酒、ラクは水で割ると白く濁るアルコール飲料を何度か楽しんだ。実はこのラクを一本お土産に求めてきた。これは今度、呑べいの息子が帰省したら一緒に飲もうかとしまってある。

果物は実に豊富でデザートの時もダイナミックに盛られていた。お土産店でトルコ石やトルコ絨毯を日本語の巧みな現地の店員に強く勧められたが私はそろそろ身辺整理に入らねばならない身、形の残るものは不要である。後に残らないもの、思い出だけで満足な人になったのである。

2003年10月

 

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