台湾

 

 チャイヨ[頑張れ)

 

亡夫の3回忌に帰宅した息子に伴われて、彼の勤務地台湾へ旅した。

雪の舞う高岡を後にして、初めての関西空港へ着いた。

ここでは、彼の準備をしてくれたラウンジで、出発時間まで飲み物を頂きながらゆっくりとくつろいだ。

行きのフライトは、偏西風に逆らっての飛行で約2時間40分だったが、帰国するときは1時間も短縮した1時間40分だった。

風に乗るのと逆らうのでは1時間も違うのかと感心した。

到着した台北空港に、降りたとき、高岡からの服装では暑く「暑い、暑い」を連発する私を見て、出迎えの運転手は「アツイ、アツイ」と真似をする。旧正月を最南端のリゾート地クーチンで過ごすため、翌日、息子の運転で彼の家族と共に高速道路に乗った。

彼の地の人は、旧正月の休暇を南で過ごすのが多いとかで民族の大移動になる。出発した日が大晦日だったので、たいした渋滞にも会わず5時間のドライブで目的地に着いた。

ホテルへのチェックインには時間があり、そのまま最南端の岬へ行った。

ここは、左が太平洋、右が南支那海で左右の水の色が違うと言う。

ホテルへのチェックイン後、ビーチへ出てみたが湾内なのに波の力は強く、波打ち際に立つ私から、押し寄せた波が引くとき、片方のサンダルを波に奪われてしまった。

食事は、いろいろと珍しいこの国にしか無いといわれるものも食べたが、最初はレストランの水槽に泳ぐ、イセエビやカニを自分で選んで、目方を量り好みの料理にしてもらった。

果物好きな私は、南国の変わった果物にもいろいろと挑戦をした。

ホテルでの目覚めで1番嬉しかったのは、小鳥の鳴き声だった。

極楽に居る鳥は、このように鳴くのでは無いかと思わせる綺麗な声で、話をし合っているように囀る。

音感がよければ、おたまじゃくしで記録をしたいほどの音楽的な鳴き声だった。

旧正月を祝うライオンダンスは、日本での獅子舞を連想させるが、獅子は瞼を開けたり閉じたりしながら、多彩な演技をしていると言う。

音楽は強烈で、持たされたカメラのケースがびんびん振るえていた。

最後に、口から吐き出すキャンディを拾って食べると、今年は良いことがあるというので、私も孫の拾ってくれたのを1個食べた。

この国で面白いと思ったのは、子供料金は年齢で区別をするのではなくて、身長1メートルを越すと子供料金を払うのだという。

所変われば品代わるだが、柄の大きい子は早くから料金を払わねばならない。

 

ホテル滞在中に生まれて初めてプールに入った私に、ビート板を持ってきた息子がバタ足をするように命じる。

浮もしない私は、彼の指示通り膝を曲げずに水面を叩き、くたびれては一休みをしていると、泳いで来た台湾の子が「チャイヨ。チャイヨ」というが、何を言われているのかさっぱり分からず、私は微笑むだけだった。

見回りに来た息子の説明によると、頑張れ頑張れと言っているという。

加える油と書いてチャイヨ、つまり頑張れなのだそうだ。

年取った婆ちゃんに、油を入れてエンジンをかけろと言う励ましだったのであろう。

帰国は、台北空港からファミリーサービスで関西空港へ着き、出迎えてくれた大阪在住のいとこに、新大阪駅まで送ってもらって帰宅をした。

台北空港では台湾の女性にトイレで親切にしてもらい、夜の高岡駅では又、階段を手伝いましょうかと申し出てくれた人のお世話になって、無事帰宅できたのだった。

        2001年1月

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