歳々年々花相似たり

歳々年々人同じからず

終の棲家にしたいと願って引っ越してきた現在の住まいになって公園デビューをしたのは一昨年の春だった。朝の空気の中を歩くのが大好きで何十年も続けてきた習慣をこの新居で行うにはそれなりの下準備が必要だった。

先ず前もって地形を覚えるために友に付いて貰って公園を歩き回り、自分に適したコースを選ぶ。公園の道は割りと広くて曲がり角などにはどの方向へ進めば良いか迷う場所が多い。これを自分なりに歩数で数えたり靴底に感じる石や道路の盛り上がり方などで覚えるのだがなかなか難しい。

最初の頃はよく間違えてとんでもない方向へ進んでいたりして、冷や汗をかくことも多かった。まちがえやすい場所を自分なりに関所と名付けてその辺りに来ると細心の注意をするようになってどうやら大きなへまはしなくなったが、それでもいつのまにか駐車場に迷い込んで出られなくなったり思わぬ溝にはまったりして痛い思いをする。

朝の公園は大変賑やかである。それぞれウオーキングを楽しんだ後、広場でラジオ体操が始まる。私もその中に混ぜていただくのだが体操が始まるまで広場の周囲を安心して歩き回る。いろんな人が声を掛けて下さる。中にはさっと手を貸してくださり早足で歩いてくださるのがとても嬉しい。杖を頼りに歩くとどうしてもゆっくりになるので早足の好きな私は手を貸してくださるのが有りがたいのだ。

 

その声を掛けてくださったり手を貸して下さる人もわずか2年の間に変わった。ある人はご主人の病気で朝の散歩は不可能になったり、いつも必ず声を掛けて下さる人の姿が全く見られなくなったりして、私は昔、学校で習った「歳々年々花相似たり 年々歳々人同じからず」の感を強くしたのである。

 

最もこの朝の散歩は春から秋にかけてで、冬は夜明けが遅く、寒いので、冬の間は晴れた日の午前に出かけている。そろそろ春が近好き又、皆さんとお会いできる日が楽しみである。消えて行く人、新たに加わる人、同じからずである。

2003年2月

 

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