オーストラリア
赤道を越えて
日毎に薄れていく視力を感じ「もう一人歩きは出来なくなった。」という思いに立ち向かう様に「点字を学ぼう。」と決心したのは昨年の十月のことでした。
それからの私は初めて白い杖を手に富山のライトセンターへ週に一度通いはじめました。
すると思いがけず手助けをしてくださる方が多くセンターへ出かけるのが楽しみとなり点字の学習にも励みがつきました。「今日はどんな出合が待っているかな。」とセンターへ通い初めて半年私はラジオで視覚障害者の海外旅行でオーストラリア、フィジ島へのツアーのあることを知りました。そしてそれに申込をしてしまいました。
さあ、その後が心配になってきました。
出発までの一カ月の間に心配ごとの一つひとつをクリアーしてゆきました。
そしてとうとう赤道を越えてオーストラリア、フィジ島へ行って来てしまいました。
勿論おおぜいの方の善意あふれる介助を受けてのことです。
それは素晴らしい旅でした。
オーストラリアではコアラを抱きました。牧場訪問では牛の乳絞り、羊の赤ちゃんへのほ乳をさせてもらいました。
シドニー湾をクルージングしたショウボートではマラカスを手に生演奏に加わわり、その素晴らしい景観の説明を受け私はとても幸せでした。
常夏の国フィジーでの体験はとてもユニークなものでした。
ニサ・ブラ「今日は」カタカタ「暑いね」の言葉、たくさんの出合い、体験を想い出という袋につめて帰って来ました。
半年前の暗い気持ちの私とはすっかり変わってしまった自分に満足しています。
1995年5月