イギリス

 

触って来ました。

いつかゆっくりと回りたいと願っていたイギリスへ視覚障害者に的を絞って実施されるツアのあることを知り初めて参加した。これまでの旅は健常者、肢体不自由者、視覚障害者の交じり合った中への参加だったが今回は視覚障害者とそれを介助する人とのみのツアだった。故に、あらゆる物に触れて来た。従来のツア仲間とは違い、先ずツアリーダーとも始めてのお付き合いになるので、いささか緊張気味で成田へ一人旅し、リムジンバスの降り口へ出迎えてくれた彼に会えた時はほっとした。成田での前泊の後翌日いよいよ出発。飛行機に搭乗するまでの待ち時間に、横に座った男性から声をかけてもらい、彼は演劇が好きで世界中を一人旅しながら演劇を楽しんでいると言う話を聞き、一人で行動のできる人を羨みながら自分の住む世界とは全く違う人種と触れ合えるこの雰囲気が好きである。

12時間近いフライトの後、ロンドン、ヒースロー空港で国内便に乗り換え最初の目的地スコットランドのエジンバラに着いた。長いフライトの間機内で小津安次郎の「晩春」を2度も繰り返して鑑賞できたのも日本の航空機を利用したおかげかなと思った。

 

スコットランドの旅はエジンバラから始まった。自然の岩山を利用して築かれたエジンバラ城。海に向かって据えられた大砲など撫で回して大きさや材質を確かめた。市内の観光ではタータンチェックの男性用スカート、ケルトと言うそうだがそれを身にまとった男性の演奏するバグパイプの曲は始めて耳にするものだった。

スコッチウイスキー・ヘジテセンターではあの香りの元になる物など触り、午後は湖水地方のウインダミアへバスで移動した。スコットランドの日差しは強いが気温は低く爽やかな風ですっかり気にいった。

日本人にとても人気のあると言う湖水地方の観光はウインダミア湖をクルーズ、レイクサイドを蒸気機関車で走りワーズワース博物館など回った。

次の日はウインダミアからリバプールへ。ビートルズの発祥地だけにビートルズファンならばこたえられないだろうが、私は有名な「イマージン」「イエスタデイ」くらいしか知らないが「エレノアリグビ」のモデルになったおばさんの像に触れたとき是非その曲を聴いてみたいと思った。

 

チェスタへ移動後中世の街と言われるチェスタ市内観光大聖堂などを見学してウエッジウッドの工房を見学。私は記念に一組のカップを求めた。絵は分からないので手触りで飲みやすそうな肌触りの物にした。

そこからワービックへ移動してワービック城を観光した。鎧、長剣、短剣など全てアンチックな家具や帽子など置かれたままになっているのを触った。案内してくれた女性はとても親切で、私の手をとって説明しながら触れさせてくれた。

 

次の日はシェークスピア生誕の地への訪問だった。当時のままの家が残っているのが如何にもイギリスらしく感じられ古いものを大切にするお国柄が忍ばれる。

4大悲劇の像など飾られた広場を散策していよいよ最終目的地ロンドンに向かった。

ここまでの旅は気候的に全く私好みだったのだが、後半はこの夏の異常な暑さに見舞われているロンドンとのお付き合いになった。

最もイギリスらしいと言われる風景の中をバスは走り、途中この世の天国と言われた村や1番美しい村といわれた場所に立ち寄りアフタヌーンティなどを楽しみながらロンドンに入った。

ロンドンでは同じホテルに3泊して市内観光をしたが、先ず、最初の日は大英博物館で古代エジプト、ローマ、ギリシャの部屋を中心に点字の表示のある展示物は全て手で触れていいとのことなのでさわりました!!午後はロンドン中心街トラファルガー広場など回りハイドパークのピーターパン像の近くの芝生の上に長々と寝そべり、しばしり寛いだ。

次の日は旧グリニッジ天文台の見学をして子午線ゼロの線など確かめた。帆船、ロンドン塔などバスで回り午後は王立盲人協会に立ち寄り、私は点字のついたキッチンタイマーとまな板を求めた。

最終日は朝、2千年を記念して作られた大観覧車、25名くらいが乗れる卵形をした大きな観覧車だったが30分くらいで1周しただろうか眼下にはロンドン市内が一望できたらしい。国会議事堂、ウエストミンスター寺院、バッキンガム宮殿など観光したが観光客の大勢集まっている中に宮廷の昔の女官の扮装やシャーロックホームズの扮装をした人が立っている。そこでその服装も触らせてもらった。女官の黒いつばの広いフェルトの帽子、袖の肩辺りが膨らんだの上着の内側には柔らかな毛皮が張られてこの暑さの中大丈夫だろうかと心配になり聞いてみるとシルクの白いブラウスを着ているのでそんなに暑くはないと言われる。シャーロックホームズ君もウールのインバネスを重ね着しているのでさぞ暑かろうと心配したが職業上かそんなに暑くないと答えてくれた。

地下鉄に乗るという体験もしてイギリスへの旅は終わった。

 

イギリス国内はバスで移動したが前半のドライバーはまことに明るくて愉快なドライバー、イギリス国内中、ズーっとガイドしてくれた熊本出身で、現在はロンドンで暮らしていると言う40代中ごろのガイドとの会話を聞いているとこちらまで楽しくなる。最も会話の全てが理解できるわけではないのだが、生き生きと楽しいお話の様である。彼はバスの降り口に立ってステップを降りる私に両手を伸ばすように言い、しっかりとサポートしてくれる。

後半のドライバー君は乗るときにも後ろからスマートにサポートの手を延べてくれる。いかにもイギリスジェントルマン風なエスコートをしてくれた。

食事はメインディッシュには沢山の温野菜が添えられ、メインになるビーフ、ポーク、チキン、鱒、鱸に食欲のわかない日はひたすら付け合わせの野菜を食べた。ジャガイモ、人参、マッシュルーム、お豆、ヤングコーンなどたっぷりな付け合せだった。

デザートも焼きプディング、リンゴに火を通して美味しいクリームやソースをかけたものなど美味しかった。

古い建造物が現存する国だけに階段の上り下りが多くて古い城や博物館など、らせん状の階段の昇降で私は相当足を痛め、途中から左膝がまがりにくくなると言う後遺症をお土産に帰国した。

 

2003年8月

 

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