老人力

 

近頃、物忘れが多くなった。人や物の名前がちょっと出て来ない。毎日していることに関してはそれほどでもないのだが、変わったことをしようとすると出来ないのだ。

マウス操作でパソコンを動かせない私はキー操作でパソコンに向かう。せっかちで無精者の私は少しでも早く操作をしたいがためにショートカットキーを使うことが多い。ゆったりとオルトキーでファイルを開いてカーソルキーで音声ガイドを聞きながら操作をすれば間違いのないことは承知しているのだが、そこはそれ、慌て者の私はまだるっこくてショートカットキーを使うことになる。毎日使用しているメールのチェックや新聞の読みなどをする時には間違わないのだが、少しやらなかった作業をしようとするとショートカットキーを忘れている。

先日は手痛い思いをした。トルコの旅に関する文をホームページにアップするため、総てを選択でコピーをして貼り付ける段階でキー操作を間違えて、折角書いた文をアッと言う間に消してしまった。夢のように何も無くなってしまった。これでは最初から文を作り直さねばならない。

「呆けた呆けた。」を連発する私に若い知人は「おばちゃん、呆けた、呆けたと自分で言う人は呆けていないのよ。本当に呆けた人は、自分は絶対呆けていないと言うのよ。おばちゃんのは単なる度忘れなんだから安心しなさい。」と優しい言葉で慰めてくれる。

でも、とみに老人力がついて、文を書いている最中にも物の名前が出て来ない。ああ、紫色で匂いの良い花、あれはなんて言ったっけ?と思ってもラベンダーと言う名前が出てきてくれない。諦めて、他のことをしてると、ふっと思い出す。どうしてさっきは出てくれなかったのか恨めしく思うのである。

これからの私は付いてくる老人力と付き合いながら負けないように立ち向かって行かねばならないと覚悟を新たにしている。

 

2003年10月

 

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