熊のお母さん 「ほら来なさい。今日はシャケの獲り方を教えましょう。」
熊の子ども 「何でシャケを獲ってしまうの?このまえは木の実を集めたし、ハチミツだっていっぱいあるよ。
それにぼく知ってるよ!シャケは川も海も泳げる水の王様なんでしょ!
そんなにすごいお魚を獲ったりしてもいいの?」
熊のお母さん 「すごいわ、もうそんなことまで分かるようになったのね。
あなたももうすぐ一人前の熊になれるわ。
それじゃあ、そのためにも何で私たち熊がシャケを獲るのか教えましょうか。」
熊のお母さん 「シャケはねえ、とっても怖い顔をしてるでしょ?」
熊の子ども 「うん。ときどき川の中からでもにらまれちゃうもん。」
熊のお母さん 「本当はね、みんな穏やかな顔なのよ。
群れの中でも少しだけなのよ、こわい顔のシャケは。」
熊の子ども 「何であんなこわい顔になっちゃうのかな?」
熊のお母さん 「そうね、その前にシャケのことをもう少し知っておきましょう。」
熊の子ども 「知ってるよ!ええっと・・・
川を下ってから、海に出て、また川に戻ってくるんでしょう!」
熊のお母さん 「ええ、そうよ。でもそれは大変なことなの。
川を下るときには、大きな流れにも自分を見失わないように。
海を渡るときには、広い世界の中にあって今の自分をしっかりと見つめて。
川を上るときには、信じる心を持ち続けること。
シャケとして生きていくことはとても立派なことなのよ。
でもね、中にはその力に我を忘れて傲慢になってしまうシャケも出てくるの。
そうなってしまうと、こんなことを考えてしまうの。」
こわいシャケ 『オレは他のどのシャケたちよりも強い。
この力で全ての水を泳ぎ、制覇してきた。
もうここにはオレの敵はいない。
川を上りきったら、次は空だ!空もオレのものだ!!』
熊のお母さん 「そう考えているうちに、みるみる顔が険しくなっていって
あんなにこわい顔になってしまうの。
水の王だけでは足りないなんて、欲張りでしょう?
鳥さんたちの空まで奪ってしまおうとしているの。」
熊の子ども 「そうなんだ。ぼくも遊び場とられちゃったらいやだ!」
熊のお母さん 「そうよね。だから、体の大きな私たち熊が
こわい顔のシャケだけを見極めて獲るのよ。
でも、注意しなさい。
『ぼくは他の動物たちよりも大きくって、魚まで捕れるんだぞ。』
なんて、威張ったりしてはだめよ。
そうしたらあなたまで恐ろしい顔になってしまうわ。
だから川に来るたびに、水を鏡にして顔を映してごらんなさい。」
熊の子ども 「うん!わかったよ、お母さん!
でも、シャケたちのために
水の中にも心を映す鏡があったらいいのにね。」
2001.02.07