ヨタカの姿は鳴き声の方向にある枯れ木を探す…とばかり思っていたが、薄暗闇では飛ぶ姿も見えないし、声の方向も変わる。枯れ松や電柱に止まっているのをやっと見つけて、いつの間に来たんだ?と音もなく飛ぶのには、まさに神出鬼没の感がする。20m先の電線に止まっているのを見つけたときはびっくりした。慌ててカメラを向けたが暗いのでピンボケだ!しっかり腕で固定してじっくりと撮ってみる。刻一刻と明るくはなるものの、薄暗さとヨタカの行動時間帯との狭間での戦いだ。カメラを種々調整しながら何とか撮ることができた。4〜5分して林へ消えて行った後は、周りの囀りシャワーとかなり明るくなった林からは、ヨタカの囀りは聞けなかった。

四季の野鳥たち


回想録・・・私流アーカイブス  



==支部報原稿==

2016初夏の思い出


 今年から全国鳥類繁殖分布調査が始まり、福井県内にも24カ所が割り当てられている。会としてもこれを機に県内の今を把握するために、5年間で3回の調査を行う方針が打ち出された。私も福井市周辺から永平寺・奥越地方の6カ所をエントリーして、20年ほど昔に幾度も歩いた林道を久しぶりに満喫した。調査地だけでなく昔の記憶をたどりながら、周辺の林道や思い出ポイントを精力的に廻ってみた。早朝であり囀りシャワーを浴びながら、注意深く且つ楽しく調査した中で、いくつかの思い出に残る出会いを体験したので報告したい。まさに「DeepMemories」だ

1.ヤイロチョウとの出会い

 30有余年の間でその囀りを数回しか聞いたことが無く、一度は見てみたい憧れの種だった。この調査中かどうかは不明だが、今年は県下の数カ所から囀りを確認した旨の情報が入って来た。私自身も永平寺の林道で聞けたので、今年は多いのかな?それとも調査なるが故に確認されたのかな?と半信半疑でいた.
 そんな情報の一つに、近くで聞かれたよ・・・とのこと。早速数日間通って、あの独特の囀りが頭上近くで確認できた。尾根筋にある林道からは、右に左に移動する個体を林の中で息を殺して探してみたが、姿を見つけるのは容易なことではなかった。私の頭の中には、地上でミミズ等を採食するから下薮にいるもの・・・との感覚しかなく、完全にイメージが変わってしまった。
 枝葉が茂った樹冠にいることが多く、稀に松の枯れ枝にも止まったところを初めてキャッチしたときはもう・・・。手が震えて、カメラにも証拠を残すのが精一杯で、枯れ枝のモシャモシャの中にあの「八色」が見えたのは感動だった。移動する度に林床を分けて小枝を潜り、クモの巣を払って追跡も楽じゃないが、辛うじて絵になるポジションで撮れたのが幸いだった。
  
 この尾根での囀りに呼応するかのように微かに向うの谷からも囀りが聞え、別個体がいることは確かだ。こんな狭い範囲に2個体いるとは・・・、やはり今年は多いのか?ましてや繁殖の可能性は?そんなことあり得ないだろうなぁ。
 姿は見えなくてもあの独特の囀りを聴いているだけでも十二分なのに、日の出時刻は周りの囀りシャワーが最っ盛りで、アカショウビン、クロツグミ、キビタキ、サンコウチョウ、メジロ、ヒヨドリ等々が混じっている。これをICレコ―ダーに録音し繰り返し聴く鳥キチには、この「贅沢な至福の時間」を楽しむのは最高だ。また改めて写真を見ていると、色彩の美しさはもちろんだが、ズングリして尾が無いぐらい短くふしょは長く、枝に止まっている姿は、今にも前にポコンと転がるのではないかと思われるほどの体形に驚きでもあり感動もした。
 2016年3月に「改訂版 福井県の絶滅のおそれのある野生動植物」(福井県RDB)が発行され、これには保全上重要な鳥類として129種が掲載されている。ヤイロチョウは絶滅危惧T種に指定されており、他の危惧種と共にその情報管理には注意が払われている。ヤイロチョウは県内でも囀りは度々確認されているものの、姿は未確認とされている。もし確認されたとしても厳しい情報統制の基にあるのだろう。県外では姿の確認情報が洩れた結果、多くのカメラマンが押し寄せ、地元の方々に多大の迷惑をかけ、トラブルになったことがブログにも載っている。このことに鑑み、今回の情報も最も信頼の置ける少数の会員に限られ、カメラマニアやマスコミに対しては厳しい情報統制を強いてきた。それでも洩れた可能性は否定できない。

2.ヨタカとの出会い

 今回の繁殖調査は早朝から実施しているが、夜明け前の暗い時間帯に鳴く野鳥もいることから、3時には西郷林道から二枚田幹線林道、また永平寺林道等を移動しながら耳を研ぎ澄ましていた。トラツグミが数カ所で「ヒィー、ヒィー」が聞え、1オクターブ高い声も確認できた。車を止めて確かめるとヨタカの「キョキョキョ・・・」の声。久しぶりに聞く声だが姿も今一度見てみたくて、明るくなりかける4時前後に林道で待ち構えていた。ヨタカの声が遠くなったり近くなったり・・・、ホトトギス、クロツグミやアカショウビン、サンコウチョウやツツドリが近くから聞こえて来る。集落近くの谷からはアオバズクの声も。
 ヨタカの姿は鳴き声の方向にある枯れ木を探す…とばかり思っていたが、薄暗闇では飛ぶ姿も見えないし、声の方向も変わる。枯れ松や電柱に止まっているのをやっと見つけて、いつの間に来たんだ?と音もなく飛ぶのには、まさに神出鬼没の感がする。20m先の電線に止まっているのを見つけたときはびっくりした。慌ててカメラを向けたが暗いのでピンボケだ!しっかり腕で固定してじっくりと撮ってみる。刻一刻と明るくはなるものの、薄暗さとヨタカの行動時間帯との狭間での戦いだ。カメラを種々調整しながら何とか撮ることができた。4〜5分して林へ消えて行った後は、周りの囀りシャワーとかなり明るくなった林からは、ヨタカの囀りは聞けなかった。


 今までの経験から、ヨタカは深林にいて夜行性の野鳥だから、姿を見るなんてことは至難な事だと決めつけていた。まさか電線に止まるなんて考えも及ばなかったことだ。たまたま電線が敷設された林道だったことだけなのか?周辺に居ついた個体が林道の車に警戒感を露にしたのか?これが本来の習性なのか?ヨタカって不可解な野鳥だ。
 ヨタカは福井県RDBの絶滅危惧U類に指定されており、来年からの繁殖調査では、この経験を活かして夜間調査もやってみたいと思う。早朝とは言え、明るい時間帯では聞けない野鳥がいることも忘れてはならない。

3.アカゲラとの出会い

 永平寺町の尾根筋で調査していた時、林道脇に半分枯れたイタヤカエデの大木からキツツキの雛の声が聞えてきた。枯れた幹に上下に2個のキツツキの巣穴が確認できた。こんな枯れ木はキツツキにとっては最高の営巣場所で、数年前にも繁殖したことが判る。この自然環境ではアカゲラかアオゲラだろうが、調査を終えた翌日にブラインドをして観察することにした。
  
 標高700m前後の林道周辺は、コナラ、ホウノキ、クヌギ、カエデ類を主とし、尾根筋にはブナも少々混じる自然林で、シジュウカラやイカルからホトトギス、クロツグミ、コルリ等里山から深山の野鳥も多い。ブラインドの中でそんな野鳥を楽しみながら待っていると、巣穴からのヒナの声に呼応して、アカゲラが口いっぱいに虫を咥えて巣穴に近づいてきた。ヒナが頭を出して餌を食べると親はすぐに飛び去る。やっぱりアカゲラだったのだ。
 夫婦が交代で餌運びをして子育てに懸命だが、10分も経たないうちにまた持って来る。よくぞこんなに虫を探してくるもんだなぁ・・・と感動しながら観察していた。ヒナも日毎に成長しているようで、巣穴から外の様子を見渡す姿が可愛い。見つけてから4日目に巣立ったようだ。まさに繁殖調査の醍醐味だった。

4.ニュウナイスズメとの出会い

 大野市での調査の後、旧和泉村のスキー場へ廻ってみた。以前にここでニュウナイスズメを見たことがあり、もしかして・・・?の感覚が当たった。スキー場のベンチで休んでいると頭上の樹でスズメとはちょっと違う鳴き声に気が付いた。探すと枝から電線に止まったニュウナイスズメを確認した。頭頂は明るい茶褐色で頬の黒斑がないので間違いなくオスであり、近くにメスはいないか?と探したが見つけることは出来なかった。
 

この個体は近くの河川敷の草むらへ隠れたが、他の個体も隠れている可能性が高いと思われた。以前にはスキー場の裸地でメスも確認されているので、今の季節に確認されたことは繁殖の可能性が高く、再度の確認が必要と思われる。今回の改訂版福井県RDBでは初めて準絶滅危惧種に指定され、今後の生息状況が注目される
 
 今回の繁殖分布調査に参加して、多くの思い出に残る出会い(Deep Memories)を経験し、最近忘れていた感動を呼び起こしてくれた。こんな身体に感謝しながらこれからも元気に鳥見を続けたい。



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