冬の楽しみは、何と言っても雪遊びである。
大人達は毎日の雪かきや屋根雪おろしで大変だが、子供は風の子。冬が来るのを楽しみにさえしている。
「雪が降ればスキーができる。鎌倉が作れる。雪合戦に雪相撲、雪迷路に雪の家。ツララ落としに落とし穴……などで遊べる)と心待ちにしている。
たとえ、手や耳を真っ赤にしていても、寒いなんて事は、ちっとも思わないものだ。
新雪の降り積もった朝は、外に出るのがうれしくてならない。
誰一人として通っていない外は、一面の真っ白いキャンパスのようでもある。
これを目の当たりにすると、無性に自分の世界を描きたくなる。
作ったばかりの竹スキーを履いて、家の前の坂道を滑る。近くの田圃や畑をゲレンデに、スキー跡を描く。所々に転んだ穴や足跡も残るが、まるで機関車の線路のようにも思えて楽しくなる。
新雪はまた、ふわふわの綿のようでもある。転んでも倒れても痛い事はないし、寝そべって、真っ青な空に流れる雲を見ていると、真綿に包まれて眠っているような錯覚にさえ感じる。
(雪迷路)とは、私が勝手につけたもので、畑や田圃の雪原に、一本道の迷路を踏んで行く。
雑誌の表紙や、ポスターなどに時々描かれている、一筆書きの、あの幾何学的なデザイン…何と言ったデザインだったろうか?ど忘れして名前が出てこない。
あのような模様を真似て、一足ずつ雪を踏んで行くのである。
思い通りのデザインに仕上がった時などは、自慢げに眺めて、満足感を味わうこともできるし、納得がいかない時には、別の場所で新たに作り直すことも可能だ。野原は正に白いキャンパスである。
この(雪迷路)で、始点と終点の2組に分かれ、それぞれからスターとし、出会った所で、(じゃんけんぽん)
勝った方が更に先へ進み、負けた方の次ぎの子と出合った所で、(じゃんけんぽん)……
どちらのチームが、先に相手側にゴールするかを競争するのである。
(雪の家)は、その名のとおりだ。ままごとの冬バージョンってところか。
斜面を利用して階段や廊下を作ったり、雪の棚やテーブル・椅子などを取り付けたりして、お菓子などを持ち寄って食べる。
主に女の子が中心で、私達は客として、(およばれ)にあずかるのである。
この他にも、モグラのようにトンネルを掘り続けるヤツとか、巨大な鎌倉を作るヤツとか、落とし穴の名人とか、山の村には、いろんな子供がいたっけ。