雪の音

11月の少し早めの初雪以来、比較的に安定した空模様が続きこの分だと雪の無い正月が迎えられるかもと密かに期待していたのですが… クリスマス寒波に乗って第2波がやってきました。果たして、このまま根雪になってしまうのだろうか。

朝の目覚めと同時に窓の外に耳を澄ませてみる。周囲は未だ寝静まったように静かだ。きっと、降り積もったに違いない…そう思いながら階下に降りて行く。

朝の準備をしながら時々走り過ぎる車の音に耳をそばだてる。(バシャバシャ、)と水をはじく音が聞こえる。

雪の降り積もった朝の外気は静寂に包まれて神聖だ。空気までが澄んでいる。誰かが、(雪の匂いがする)と言っていたが、このみずみずしい感じを言うのだろうかと大きく深呼吸をしてみた。

片手を伸ばして、掌で雪を受けてみる。雪の結晶が掌の温もりで淡く消えて行く。子供の頃に見たイメージが懐かしく浮かんできた。

以外と積もっていないかも知れないと期待しつつ、足を一歩踏み出してみる。(サクッ)とした感覚。5センチ程度かな?

続けてもう一歩を踏み出す。(ザックリ) どうやら20センチは有りそうだ。

粉雪 綿雪 淡雪 粗目雪…と雪を七変化に例える唄もあるが、20センチの積雪を目の当たりにして、雪を楽しむ気分はどこかに素っ飛んでしまった。

とにかく、雪すかしが待っている。北陸の雪は水分をたっぷり含んだ(べた雪)だ。僅かに乗用車2台ほどの駐車場を除雪するだけで20分もかかってしまう。

県内の各スキー場は、これからが本格営業であり、スキーファンには待ちに待った雪かも知れないが、雪国で生活する視覚障害者にとって雪は百害有って一利無しと言っていいだろう。

毎朝の除雪作業もさる事ながら、外出が一層難しくなる。 歩道の誘導ブロックや路肩のコンクリートブロック・用水の縁や道路の端など、今まで歩行の際の目安としていた物が全て隠れてしまって見当が付かなくなる。

雪は視覚的に周囲の風景を覆ってしまうばかりではなく、私にとっては感覚的にも風景を隠してしまうのである。

更には、降り積もった雪によって周囲の音が吸収されてしまうため、音による判断も困難となる。

白杖も使えない。足下も悪い。音も消える……根雪と共に私も永い永い冬眠生活に入ってしまう。


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