竹スキー

小学生の頃、スキーと言えば、ずっと竹スキーだった。私は高校を出て社会人になるまで、板スキーというものを見たことがなかったのである。 村での18年間は竹スキーで楽しんでいたともいえる。
冬休みに入ると、待ちかねていたように、新しい竹スキー作りに取りかかる。 一冬使った竹スキーは、折れたり割れたりしていて、古くて使いものにならないため、毎年、新しく作る必要があるのだ。

竹スキーに限らず、身近にある木や竹などを利用して、釣り竿とかバット、船とか鉄砲…など、たいした物は作れないのだが、いろんな遊び道具を作ることが大好きだった。

ここで、竹スキーの作り方を紹介しよう。

幸いにして、家の横が竹薮で、手頃なモウソウ竹を選ぶことができた。

竹は、3・4年経ったもので、直径が約10センチ、節と節の間が長くて真っ直ぐなものを選び、1メートルほどの長さで切る。

鉈を使って、これを上から下に半分に割る。更に、それぞれを半分に割って、4枚にする。 つまり、2枚一組として、板を作るわけだ。

4枚に割った、それぞれを、鉈やカンナを使って節や内側を丁寧にけずり、長方形の板状になるように仕上げる。

次に、キリを使って竹の先端に1カ所、後ろ寄りに2カ所、穴をあける。 先端のものは、2枚の板をハリガネで結わえて、舵取り用の縄ひもを取り付けるためであり、 後ろの穴は、足を乗せる足板に釘を打つためのものである。

足板は、長さが25センチ、厚さが3センチ、幅は、2枚一組の竹板の幅に合わせたものを用意する。

納屋とか蔵の2回などを探すと、親父が、農作業や家の修理用として、たいせつに保管してあるものを、幸運にも見つけ出すことができる。

これを持ち出してきて、えんぴつで線を引いてノコギリで挽いて作っていた。大工の真似ごともするのだ。

この足板に、2枚一組の竹板を釘で打って固定する。

更に、足板の前方に、靴かけ用の帯ベルトを取り付ける。この帯ベルトも、農作業用の、モーターや機会に使うものを拝借した。

滑るときは、このベルトの輪の中に、靴を突っ込んでスキーを履くのである。

さあ、これで、竹スキーの形ができた。最後に、先端を曲げれば、竹スキーの仕上がり…なのだが、実は、ここが一番難しい行程でもある。

私たちは、エンナカの火か、台所のガスに竹をかざして炙っていた。この加減が難しいのである。 早すぎては曲がらないし、炙りすぎると、焦げて割れてしまう。

竹を炙ると、やがて、シュンシュンと音がして、生臭いような、香ばしいような竹の匂いがしてくる。 この時を見計らって、足で踏んで一気に曲げるのだ。曲げるにも、かなりの力を必要とする。

最初は、このタイミングが分からなくて、割れたり、折れたりと何度も失敗したものだ。

コツは、曲げる部分に、予め、切れ込みを入れておくか、両サイドを少し削っておくと案外うまく曲げることができる。

曲がった板を、雪の中に10分ほど突っ込んで冷やすと、竹スキーの出来上がりだ。

小学校低学年ぐらいまでは、先端のハリガネに縄ひもを繋いで、これを引っ張ることで舵取りも可能だ。 また、足板の上にミカンの木箱を取り付ければ、立派な竹ソリとなる。

ストックなどといった、ハイカラなものは持っていないし、使わない。ジャンプの、(原田選手)のように、身体でバランスをとりながら滑るのが、竹スキーの楽しみ方でもあり、醍醐味でもある。




もどる。

ホームへ。