冬休みに入ると、兄と二人で障子はりを行った。
あの頃は、今と違って家の中のほとんどが障子戸であり、ざっと数えて40面は有っただろう。
何も寒くなってからではなく、まだ暖かい内に行えば良さそうなものだが、やはり、正月の声を聞かないと、その気になれないものだ。
破れや穴の空いた障子戸は少ないのだが、一年の間に、気付かないうちに障子が煤けて変色しており、部屋が暗く感じるだけでなく、気分も、うっとうしくなるものだ。
古い障子をポンポンと破りながら遊び半分で剥がして行く。
初めの頃は、糊付け部を水で濡らせば簡単にきれいに取れる事も知らなかったため、古紙やノリが残ってしまって苦労した。
糊も、工作用のものを直に塗っていたように思う。
作業工程などは特に問題ではないのである。
障子はりは専ら兄が中心に行い、私は向かいに座って兄の差し出す障子紙を受けておさえているだけだった。
張り替えに使う障子は大きな1枚紙ではなく、巻き紙を使っていたから、ずいぶんと手間のかかる仕事だった。
下から順に一段ずつ貼っていく。一枚分のスペースに指でノリを塗り、障子紙を乗せてピンと引っ張ってから上から押さえる。そして、二段目へ…
初めの頃は要領も悪く、しわがよったり、斜めにひきつれたりで見映えも悪かったが、年数を経るにつれて上達し、ピンと張った出来上がりを眺め、それなりに満足感を味わっていた。
新しく張り替えた障子戸を入れると、張り替えしていないものの古さが一段と際立ち、否が応でも、全てを張り替えたくなるというものだ。
家中の全てを貼り替えるのに1週間はかかったと思う。雪囲いで少し暗くなった家が光を反射してぱっと明るくなったように感じた。