オセロゲーム

先日の日曜日、所属している部会でオセロを楽しんだ。 部会の年中行事の一つで、室内競技として、この時期に点字と共に行われている。

一年ぶりのオセロである。今年は9名の会員がオセロを楽しんだ。 盤上を両手で探りながら懸命に次の一手を考えている。

「あー、隅を取られた!」「わー、白ばっかし!」「はさめる場所がなーい!」などと あちこちから悲鳴にも似た歓声が上がりにぎやかだ。

だが、オセロと言えども勝ち負けがかかっているから内心は決して穏やかではないであろう。

盲人用オセロには、いくつかの特徴がある。これしか使ったことがないので、一般のものと同様か、あるいは類似しているのかも知れないが、簡単に紹介してみよう。

まずオセロ盤だが、色はグリーンで二つ折りとなっていて、この中に石をケースごと収納できるようになっている。だから携帯にも都合が良い。

盤上は格子状の枠で仕切られていて、手で押したり触ったりしても盤上野石が簡単に動かないようになっている。 また、盤上野中心と対角線上の4カ所にポイントのマークがついている。

石は白と黒だが、白石はすべすべで、黒石はざらざら模様となっており、指で触って容易に白黒の判断がつくように工夫されている。

更に、石には磁石が入っていて枠内に軽く固定されるようになっている。 また、石ケースへの収納も、この磁石により安定していて散らかることはない。

このように、盤や石への工夫で盲人でもオセロを楽しむことができる。 盲人用オセロは子供や高齢者を始め、一般の人にも使いやすいユニバーサルデザインとなっているように思うのだがどうだろうか。

オセロは、欧米ではチェスに次いで人気のあるゲームとかで、日本でも各地で競技会や大会が開かれている。

当然ながら、ルールも細かく決められているのだろうが、私を初めとして、縦・横・斜めに挟んだ石を取れるという程度しか知らない。

お遊びなので、各自がそれぞれのルールで行うこととした。

まず、じゃんけんで勝った方が手番を取るか石を取るかを選択する。

つまり、じゃんけんで勝った方が先手を取れば、相手方が自分の好きな石を、手触りの良い石を選べるというわけだ。もちろん、その逆の選択も可能である。 オセロでは、先手番が有利なのか、白と黒ではどちらが強いのかも知らないのだが…

序盤こそ石の数も少ないので縦 横 ななめと手で触っても判りやすいが、20・30と石が入るに連れて徐々に難しくなってくる。

縦・横は確認するが、ななめ方向はほとんど見ていない。 私はもっぱら横のラインを中心に見る癖があるようだ。両手を広げて触るのだから、それが必然的ともいえるのだが。

1回戦は時間制限無しということもあり、決着するまでに1時間以上もかかってしまった。 64マスあるのだから1手が1分以上と言うことになる。

オセロの特性や盲人という事を考えれば、ある程度の時間が必要なのはやむを得ない。

私は将棋も指すが、将棋では飛車や角野大駒以外は大きな変化がないので先を読めるが、オセロでは先を読むのは難しい。

オセロは1手毎に局面ががらりと変わる。 オセロは盤の緑と石の白黒の3色で楽しむ「視覚」に訴えるイメージのゲームだと思う。

余談になるが、将棋の羽生名人は数十手先の局面が、まるで写真でも見ているかのように、パッとイメージされるのだという。 正に天才と言われる所以である。

晴眼者では盤上に並んだ石も白い線・黒い線として認識できるのではなかろうか。

更に、相手の手番中に自分の次の手を考えることも、ある程度は可能だ。 白と黒のツートンカラーだから一目瞭然というわけだ。

また、将棋のように、「3四白」とか「5七黒」のような数字での読み上げもしていない。 本来は読み上げするものなのだろうが、ルールを知らない。

だから相手がどこに入れたのか、どこを返したのかがわかりにくい。 したがって、1手毎に局面がどの様に変化したかを手で触って確認しなければならないのだが、容易に判るものではないのである。

石を入れる場所も同様である。 「ここは?だめか!」「ここは?ん、とれるぞ!」などと一つずつ見なければならない。 だから、自然に時間がかかるのだ。

それにしても、1時間は長すぎる。とても集中力がもたない。 だから私は将棋やオセロのように時間の長いゲームはあまり好きになれないのだ。

ついでながら、ここで私のオセロ必勝法?なるものも紹介したい。 だが所詮はへぼ将棋ならぬ、へぼオセロの意見であるから、マスターしたとしても勝てるとは限らないのは言うまでもない。

ここで便宜上、オセロにも将棋のように建て・横のマスに数字を割り振りする。

オセロ盤を前に置いた状態で、横第1列を左から、英数字で1 2 3 4 5 6 7 8とし、同様に左縦1列を下から、漢数字で一 二 三 四 五 六 七 八とする。

従って、左下隅は1一、左上隅は1八、右下隅は8一、右上隅は8八となる。

必勝法その1は何と言っても隅を取ることだ。

「そんなことなら誰でも知ってる。うちの猫でも知っている」って声が聞こえるようだが、そのとおり、これが何よりもの必勝法だ。

序盤で取れれば必ず勝てる。中盤でなら、きっと勝てる。終盤なら、たぶん勝てるはずだ。

上級クラスでは、あえて隅を取らない。取ったために負けた。という勝負もあるようだが、私には何故そうなるのかが理解できない。 たぶん、オセロはそれ程までに奥の深いゲームなのだろう。

それでは、隅「ここでは1一とする」を取るにはどうするか。

それは簡単である。2一や2二・1二には決して自分の石を置かない。相手に取らせるように仕向けることだ。そうすれば必然的に1一が自分の石になる。

いきなり隅に石が飛ぶわけではないから序盤からこれを頭に置いて石を薦める必要がある。

序盤はセンターを中心とする対角線のXラインを確保するようにする。 決して「たくさん取ろう」なんて思わずに一マスずつ確実に確保する。数は後で自然に転がってくる。

したがって、3三 3六 6三 6六がそれぞれポイントとなる。ここにピンマークがついているはずだ。

また、サイドラインやエンドラインに一マスを確保するのも有効だし、例えば、1四と1六に相手の石がある場合に1五に割うちするのも有効かも知れない。このような場所は相手も返しにくい石である。

オセロでは「好手」はなかなか出せないものだ。相手の「悪手」を如何にして自分の勝利に繋げるかが勝負の分かれ目ともいえる。

このようにして、幸運にも隅が取れたら、後は隅「ここでは1一」から縦 横 斜めに飴を伸ばすがごとく自分の石を一マスずつ確実に埋めていく。

いやー 我ながら見事な作戦である。 これで、あなたは間違いなく勝てる。かも?

だが残念ながら私は未だ、このような手順で進んだ試しがない。

前にも書いたが、オセロは先が読めないからだ。 こちらの期待通りに相手が「2二」に石を置いてくれればいいが、相手だって隅をねらっているのである。

うっかりすると、自分の方が「2二」へ石を入れていて、気がつくと、いつのまにか相手の石が隅に入っていたりして驚かされることもしばしばである。

「えー、いつのまに取られちゃったの?気づかなかったよー!」

ある時の終盤の局面で、四隅の四マス「例えば、1一 2一 2二 1二」の合計16こがきれいに残ってしまった。

どうやら相手も絶対に隅を取られたくないものとみえる。

さぁ、次の一手で勝敗が決する。 さんざん考えたあげく私は「2二」へ入れた。実際には考えるまでもなく、こちらの取れる場所が限定されていたのだが…

残された他の隅も同じ手順で全て取られてしまった。 相手の実力がはるかに勝っていたということである。 覚えるには1分、習熟するには一生、と言われる奥の深〜いゲームなのである。。

世の中そんなに甘くない。オセロもそんなに単純ではない。 自分の思いどおりに進めば誰も苦労はしない。 思いどおりにならないからこそゲームが楽しいのである。


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