田植えが一段落した農閑期の6月に田祭りとして虫送りを行っていた。
村の神社に神主を招いて、祭式を執り行い、稲を荒らす害虫を追い払い五穀豊穣を祈願するものである。
男の子達は学校から帰ると神社に集まる。
年長者が太鼓を担ぎ「ドーンドーンドンドンドン」と打ち鳴らしながら先頭を行く。
他の子供達は「いっさいむーしおくれ なーにむーしおくれ」と大声で虫送りの歌を歌いながら村中の田圃を練り歩くのである。
小さな村ではあるが、一回りするには1時間ほどかかった。
その道中の所定の田圃に神主から頂戴した祈願の「おふだ」を竹の棒に付けて立てていく。
ふだを立てる場所は全部で15カ所ほどあったと記憶している。
おふだを立てる図面などがあるでもなく、立てる場所や虫送りの歌などは、こうした年中行事に加わることで年長者から年少者に自然に引き継がれていったものである。