宮ごもり

村の男の子だけで、大晦日の一晩を「お宮サン」で過ごす事が昔からの習わしだった。
新年を迎えるに当たって、神様を明るく賑やかに御迎えする意味があったのかも知れない。

夕方になると、それぞれが布団や食べ物・ラジオや玩具などを持って村の神社に集まる。

古い「お宮サン」は隙間だらけだったが、軒下まで覆われた雪囲いと、部屋に仕切って有る囲炉裏に炭火が赤々とほこっているので、子供達には寒くはなかった。

お腹が空いたら餅を焼いて食べ、トランプやカルタで遊び、ラジオを聴いたり歌ったり 相撲をとったり、太鼓をたたいて見よう見真似の獅子舞を踊ったり…

時計が0時を過ぎると、村の衆が一人二人と初詣に上がってくる。時々、ミカンや菓子などの差し入れを貰うこともあった。

子供達だけの楽しい一晩だが、困るのが生理現象である。お宮サンは神聖な所なので便所が無い。さりとて、境内や敷地内に用を足す事もできない。

一番近くの家で借りるか、自宅まで戻る必要があるのだが、暗闇の中、小さな子供は、淋しがって一人では出れないので上級生が付いていく事になる。

こうした事で、村の中での人間関係や連帯感などを強めていたのかも知れない。




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