市川寿子様

宛て

大久保純一郎、星 子

夫妻からの葉書

残暑の御見舞申し上げます。
 いかがでしょうか、伺います。小生の方は本読みが商ばいのこととて、夏も冬も同じ明け暮れですが、お蔭様にて、健康にて−−近くの病院へ、腰の電気かけに、週二、三回は通いますが−−体調はよろしいのです。
 四月に拝借した御一家さまの写真の複製を時々出して?拝見しておる次第ですが、撮影の年月日は、明治末なのでしたか。その中に教示下さるように願い上げます。
 御姉様が美人揃いですが、実は小生、夏目さんの小説『明暗』の女主人公のお延さんが姉上をモデルにしているのかと空想しております。と申すのハ、このヒロインの父親が京都在住の漢学者で或は横地先生をモデルにしているかと思われます。

廿一日 純一郎拝

 いかがおすごしかと御案じ申し上げてます。毎日何とはなしにすごして居りますが、九月十二日より仙台に参ります。いづれかえりましてからお伺いしたく かしこ

差出し日付は8月21日となっているが昭和何年かは消印不鮮明(40円葉書)